―カリカリごはんと待ての僕―
欲しいもの。お肉味の美味しいカリカリごはん。
楽しい遊び。コロンと結んだタオルをご主人様に遠くへと投げてもらって、ダッと拾いに走る僕はその端を咥えて捕まえると、ぶるぶるブルン! と振り回す。
「解けちゃうよ? ジョンタロウ」
笑うご主人様にタオルを取り上げられてしまうと、僕はその足を小さく二回引っ掻いた。
僕とご主人様の“もう一回”の合図。
「はい、じゃ、もう一回」
ぴょーんっと飛んで行った丸っこいタオルを、僕は一目散に追いかける。
カプリ! と咥えて、ブルルぶるッパタ、パタぶるん! 夢中でタオルを振り回している僕の後ろでご主人様が立ち上がった。
どこへ行ったのか、僕は耳で分かるんだ。
廊下の突き当りにある、小さな扉が開く音がする。
廊下の小さな扉……?
――ガザ、ザララララ――
「!!」
待ちに待った嬉しい音がする。
「わぅ!――ごはん!」
僕が解けかけているタオルをポイっと口で投げると、いつものカリカリを入れる器を持ったご主人様が僕の前に立った。
「“待て”だよ。ジョン」
この時のご主人様は、決して僕の名前を間違えない。
「お座り」
良い子の僕は、きちんと座れるよ。
降りて来た、カリカリが入った器を前にしても。
ピクリ。
「まだ。待て」
少ししか、動か、ない……よ。
そんな、たった一本の指で鼻の頭を押さえるみたいにしなくても。動かない、よ?
……っでも、まだ……ダメ?
「3」
――さん。
「2」
――にぃ。
「1」
――いちっ!
「よしっ」
――よし! キターーーーーー!!
かふかふかふっ、っふんっっ!
「そんなに急がなくても、誰も取らないよ」
笑うご主人様が優しい瞳で僕を見つめてる。
でもゴメンねご主人様。僕は、今、目の前の魅惑のカリカリに夢中なんだ。