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ー僕とご主人様―

――カタ――タン。

 微かな音を捉え、僕はその先を見上げた。

――タタン、タ、タン――トタ、タタ、タン――。

 揺れる様に響く音が、僕の三角の耳へと届く。

 独特なリズムを刻むこの足音は、間違いなくご主人様の寝ぼけた音!

 まだ誰も居ないこの部屋のドアが開くのを、僕は専用のベッドの淵を自慢の白い尻尾で撫でながら待った。


 真っ暗な部屋の中、ドアに嵌め込まれたガラスの向こうに二本の足が見えた瞬間、僕のお腹がキュウっと鳴った。

 カチャリと小さな音が響き、待ちに待ったドアが開く。

「わふっ!」――お腹減った!

 そう訴える僕に、ご主人様はまだ半開きの薄い黒目をこちらに向けて来る。

「喉が渇いたの? ジョンタロウ」

「ワゥワゥ!!! わぅん」――違うんだ! 腹減った!! そして僕の名前は“ジョン”だよ!

「分かった、分かった。ほら、お飲み。ジョンタロウ」

 そして求めてない水器が僕の目の前に降りて来た。

「ゥワンwワン。。ワゥん」――いや、違うんだ。水じゃないし、“タロウ”は要らない。

 寝ぼけたご主人様は、僕の言葉を理解してくれない。

 いつもは優しく僕を見つめてくれるのに、寝起きの時だけは救いようの無いほど髪はあっちにもこっちにも跳ね、意識もあっちにもこっちにも飛んでいる。

 ――美人が三割減だよ。ご主人様……。

 ガッカリ俯き加減でチビチビと水を舐めていたら、急に水器が浮き上がった。

「――ッ?!」

 声にもならない驚きに器の行く先を見詰めると、肩あたりまである髪を一纏めにし、幾分マシな恰好のご主人様と目が合った。

「ジョンタロウ、散歩行こっか」

――だぁかぁらぁ! “タロウ”は要らないし、腹減った!! メシをくれ……。 



 

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