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私、主人公はじめました。  作者: れるの
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06「ごはん…お布団…帰りたい…」




モンスターが現れる度にマヤはあっさりと倒す。

私が必死で逃げていたモンスターが、こんなにもあっさりとマヤに倒される。

そんなマヤを恐れてなのか、中には逃げ出したり襲ってこないモンスターもいた。

勇者と村人ではこんなに差があるのだろうか。


そして、マヤがモンスターを倒した後、たまに私の体の周りをうっすらとした光が取り囲む。

凄くこの光が気になるのだが、それは私だけのようで、マヤは全くといっていいほど気にしていないようだ。


「ねぇ、マヤ?」

「何?」

「たまに私の周りが一瞬キラキラするんだけど、なんで?」


そんな私の問いかけに「こいつは何を言っているんだ」とバカにしたような呆れ顔を返す。

ポケットに手を入れ、メニューカードを取り出すと、それを指差した。


「自分のカードを見てみろ」

「え、うん」


私もカードを取り出し、ステータスを確認。

数字が…増えている。

初めに確認をした時、レベルは1だったはずなのだが、いつの間にかレベルは5に。

それと共に能力値の桁も均等に増えていた。


「わかったか?」

「私、レベルアップしてたってこと?」

「そういうこと」

「モンスターなんて倒してないのに?」


モンスターを倒すどころか、剣すら抜いていないし、触ってもいない。

マヤが倒すのをただ後ろから突っ立って見ていただけである。


「俺とお前は一応今は仲間だからな。俺が倒してもお前にも経験値が入る。まぁ俺より貰える量は減るが」

「なるほど。そうなんだ」


倒した本人が一番貰えて、微量ながらも仲間も貰えるってことか。

ということは私、何もしなくても楽々レベルが上がるんじゃない?

おいしい話を聞いたものだ…ふふふっ……


「なっ…ひたい!ひたい!」


急にマヤに頬を強く引っ張られる。

そして逆手で私の腰から下げている剣を指差した。


「お前のこの剣はお飾りか?」


どうやら私の魂胆がバレたようだ。


「しょうですおかじゃりです!あとひたい…」


マヤは頬から手を離すと、手に握っていた私のメニューカードを奪い取る。


「なんだこのくっそ低い能力値は…」


くっそ低くて悪かったね。


「ん…?は?お前、村人だったのか」

「そうです、私は村人です。つまり勇者であるあなたは私を守るべきなのです。オッケー?」

「…………」


なんとも言えない顔をして、メニューカードを返すマヤ。

そのまま何も言わずにまた歩き出した。

勇者が困っている村人を放置するわけがない。

この状況になり、村人になったことが少し役に立った。





* * * * * *






もう何時間歩いただろうか。

一向に森から抜けることが出来ない。

すっかりと真っ暗な夜になり、マヤの持つランタンの灯りが際立つ。


「ねぇ、マヤ」

「次はなんだよ」

「迷ってないよね?」

「…………迷ってない」

「何、その間!絶対迷ってるんでしょ!?迷ってるんだ!?」

「だから迷ってねぇ!…ちょっとここどこら辺かなとか思っただけだ」

「それ迷ってんじゃん」


やはり、私とマヤは迷子になってしまっていた。


辺り一面はずっと緑の木々に囲まれているだけ。

目印なんてものは何もない。

だが、ここは先程も通った道だ、と理由はわからないがなぜだかわかる。

なんとなく…などの曖昧なものではなく、確実にここは通ったと確信できる。

もしかして…


【特殊スキル (Lv.)】

・薬草作り (Lv.1)

・地形記憶 (Lv.--)

・???


やっぱりだ。

新しいスキルをいつの間にか覚えていた。

おそらく、マヤが敵を倒してくれてレベルが上がったからだろう。


えーっと地形記憶の効果は…「細かな場所まで地形を記憶することができる」か。

つまり地図が勝手に脳内で出来上がってるわけだ。

で、同じ道を通っているということは、どこかでぐるりと一周するような道を通ってしまっているということ。

行った覚えのない方に進めば、自ずと出口に出られるはずだ。


「ここは私の出番のようだね!任せておきなさい、マヤくんよ」

「さっきまで怖がって後ろをついて来てただけの奴が何を今更」

「うっ…だ、だっていきなりモンスターに襲われたら私は死ぬかもしれないし…」

「能力値くそ低い村人だもんな。はっ」

「くっ…」


鼻で笑うマヤ。

この人は本当に勇者なんだろうか。

助けてくれたものの、バカにしてくるし、見た目も勇者感ゼロ。

どちらかというと敵っぽいんだけど。


「と、とにかく私が先頭を歩くからついてきてね!あとモンスターが出てきたらすぐに助けてね!」

「はいはい」





* * * * * *





通った記憶のない道を進んで行くと、うっすらと灯りが見えてきた。

更に足を進めると、向こうの方に街が見えた。


「やっと出られた!」


灯りを頼りに街へと向かう。


街の中に入ると、深夜だからなのか、外に出ている人はほとんどいない。


「夜になっちまったし、飯でも食って今日はこの街に泊まるか…」


そんなマヤの独り言が聞こえる。

そういえばマヤには街まで送ってもらうだけの約束だった。

もうお別れなのか…。


「マヤ、ここまで送ってくれてありがとう」

「あ?あぁ。次こそはじゃあな」

「うん。ま」


たね。

と言おうとしたが、グルルルルという音に遮られた。

私のお腹の音のようだ。

…私、朝からずっと何も食べていない。

そんな気持ちも重なり、お腹が凄く空いてきた。

ゲームの中の世界にいるとはいえ、お腹は空くみたいだ。

私もどこかでご飯を食べよう。


鞄から取り出したお金は534G。

そう、初期の…ってあれ?増えてる。

もしかしてマヤがモンスターを倒したから?

経験値と同じで、微量ながら私にもお金が入るのだろうか。

そして鞄の中に自動振込されるシステム。

なんともラッキーだ。

これでご飯も食べられそう!


「…ひょっとして、お前の所持金それだけ?」

「うん」

「まじかよ。それじゃ何も食えねぇぞ」

「え」


534Gもあって何も食べられないの?

現実であれば、120円程もあればおにぎりぐらい買えるというのに。


思い返せば、この世界の色々なモノの値段を忘れてしまっている。

引き継ぎをして、アイテムに困ることがほとんどなく、ずっとお店で買い物をしていない。

それに、宿屋に泊る際も、お金は常に余裕があったせいで連打をしまくり、一体いくら払っていたのかなんて確認していない。


「一番安い食べ物でいくらなの?」

「この街でこの時間に開いてそうなのは酒場ぐらいだな。酒場はたけぇし、安くても700Gぐらい」

「700G…」


残り166G足りない。

また森に引き返して、モンスターを倒して稼ぐしか方法がわからない。

だけど、その方法も今の私には無理だ。


次に大事なことがある。

今日の寝床の確保だ。


「宿屋代は?」

「宿屋?この街の広さだと…900Gってとこだな」

「900G…」


残り366G足りない。

ご飯も食べられない。寝る場所もない。

こんなのってあんまりだ。

早くお家に帰りたい……。

ほかほかごはん…ふかふかおふとん……


「お、おい。どうしたんだよ?」

「お腹空いた帰りたい…」

「えっ…」

「お布団で寝たい帰りたい…」

「…………」

「ごはん…お布団…帰りたい…」

「……あーくそ…。わかった!俺が飯食わせてやるし、宿屋代も出してやるからそんなか」

「えっ!?ほんとっ!?ありがとうマヤ!!」

「お前、まじで切り替わりはえぇな…」


勇者じゃなさそうとか疑ったり、敵っぽいなとか思ってしまったことを全力で謝りたい。

マヤはとてもいい人だ。全世界の味方、勇者様だ。




【地形記憶】

細かな場所まで地形を記憶することができる。

世界中の地形を覚え、君も案内人のマスターに!

【宿屋】

主に旅をする人々が宿泊する施設。

街によって料金が変わる。大きな街ほど料金が高い傾向。

HP・МPが全回復し、状態異常も治ったり治らなかったり。

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