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ジェネラル

 ウィル達が下の階層に降りるといつも通り小さな部屋に出る。

 しかし先に行く通路はなく、あるのは大きな無骨な扉だけだった。


「ジェネラルアントはこの先にいるわ」


 リズベットの緊張感が伝わる様な声色にウィルも緊張したように頷く。

 リズベットはその大きな扉に触ると、ウィル達を招くかのようにゴゴゴッというような大きな音を立てながら勝手に開いた。

 ウィル達は意を決して扉の先へと踏み込む。

 暗くて先の見えなかった扉の先が、踏み込んだ瞬間にかなり広いフロアだということが認識できるようになった。

 そして部屋の奥にはキラーアントよりも大きく剣と盾を装備したジェネラルアントが待ち構えていた。

 ジェネラルアントがこちらを認識すると、剣を大きく振り上げ何かに指示を与えるようにこちらに切っ先を向ける。

 やはりこれが何かの指揮だったのか、次々とジェネラルアントの背後から六匹のキラーアントが襲い掛かってくる。


「ウィル!作戦通りにいくわよ」


「分かった」


 リズベットの合図とともにウィルは一番近くに来たキラーアントを切り伏せ、リズベットはそれを確認する前にジェネラルアントへと突撃していく。


「フレイムランス!」


 リズベットはジェネラルアントに接近しながら火属性の魔法でこちらの注意を引く。

 炎の槍となって撃ち出される魔法は一直線にジェネラルアントへと向かい顔面に命中し、怯ませることに成功した。

 その間にも距離を縮め、通らないと分かりながらも持っているレイピアで一突きする。

 案の定というべきか、リズベットの一撃は鎧のように堅い甲殻に少し刺さる程度で貫くことができなかった。

 しかしジェネラルアントは苦しむようにもがく。


(武器攻撃が効いてる?…そうかいくら鎧のように堅いと言ってもこの甲殻もコイツの一部なんだ)


 ジェネラルアントは苦し紛れなのか、それとも先程の一撃で場所を把握したのか持っている剣をリズベット目掛けて大きく振るう。

 リズベットはそれを危なげもなく躱し、相手をよく観察する。


(それにしてもやっぱり変ね。…調子が良すぎる。身体が羽のように軽いわ)


 自分一人でも攻めきることが出来ると思ったが、安全第一で防御に徹することにした。

 リズベットがジェネラルアントを相手している間、ウィルは順調にキラーアントを一匹二匹と倒していく。

 最初に出てきた六匹を倒し終えると、四匹追加で出てきたがそれもあっという間に倒してしまう。

 全てのキラーアントを倒したことを確認したウィルはすぐさまリズベットの方へと向かう。


「リズベットさん!終わりました!」


「早かったわね。じゃあ交代しましょ」


「なんか余裕そうですね」


「実際、結構余裕があるかも」


 そんな緊張感の欠片もない会話をしながらすんなりと攻守を入れ替えることに成功した。

 ウィルがジェネラルアントの攻撃を防ぎ、リズベットが魔法で攻撃する。

 そんな作業の様な繰り返しを何度か行い、徐々にジェネラルアントを追い詰めていく。

 ウィルは攻撃も弱まってきたジェネラルアントの剣を大きく弾き飛ばし、体勢が崩れたジェネラルアントの身体に思いっきり斬りつける。


「堅っ…」


「ちょっと、武器攻撃は通り難いって言ったでしょ!」


「僕魔法苦手だから」


 確かにウィルの魔法スキルは低く、効果的な火魔法は1しかない…とは言っても、ウィルのINTは3500超。

 苦手も何もないのかもしれない。

 それでもウィルは隙を見ては剣での攻撃を続けていく。


「そうかっ此処なら!」


 そう言って狙って攻撃した場所は節。

 ウィルは蟻で言う、胸部と腹部の間の節を狙って剣を突き刺した。

 今まで堅い鎧に弾かれていた剣は肉を斬るように奥まで簡単に突き刺さった。

 ウィルは突き刺した剣を抜かずに手を放し、ジェネラルアントから距離を取り、敵に向かって掌を向ける。


「サンダー」


 魔法を唱えたウィルの掌から、青白く光る稲妻が一直線にジェネラルアントに刺さったままの鉄の剣に向かう。

 放たれた雷の魔法は鉄の剣を伝い、ジェネラルアントの内側から焼き尽くしていく。

 ジェネラルアントは苦しむように鳴き、口からはよく分からない液体を撒き散らせながら倒れていく。


「…やったの?」


 静かになったフロアにリズベットの小さく呟いたような声が響く。

 その声に反応したようにジェネラルアントがビクンッと動いたが、次の瞬間には光の粒となって消えてしまった。


「ふぅ~、ちょっとびっくりしちゃったわ。それにしても貴方、魔法も十分強いじゃない」


「え?そうかなぁ」


「それにしても今日は調子が良いわねぇ。ボスも簡単に倒せちゃったし…ステータスでも確認してみようかしら」


「あっ、ちょっと待って」


 ウィルの制止を無視してリズベットは自身のステータスを確認する。

 今ステータスを確認されてしまったら、ウィルの称号の効果である“孤独な探索者”がバレてしまう。

 ウィルのステータスの10%も上がっていたら不自然に思うし、当然ウィルが疑われるだろう。

 芋づる式に“一万回踏破”の称号もバレてしまうかもしれない。

 この称号のことはあまり知られたくないのだ。


「う~ん、おかしいわね」


「え?」


 ウィルは一瞬ドキリとしてしまう。


「それがステータスにはあまり変化が無いのよね。確かにレベルは1上がってるけど、これはボス攻略の時に上がったものだと思うし」


「…へぇ~、そ、そうなんだ」


 リズベットの口振りからして“孤独の探索者”の効果は確実に出ているはずなのにも関わらず、本人には確認できていなかった。


(もしかして、この称号の効果は保持者しか確認できないのか?)


 今のウィルにはそれ以上確認する術がないので一旦考えることを止める。

 一先ず安心したウィルはこれからのことを考える。


「リズベットさん、これからどうするの?」


「どうするって…アイテム回収した地上に戻るけど…。そういえば、貴方迷子だったわね。帝都までだったら一緒に行けるけど」


「ホント!?お願いしてもいいですか?」


「えぇ、もちろんよ。それよりボスのドロップアイテムどうする?」


「僕はもうリュックに入らないのでリズベットさんが貰ってください」


 お言葉に甘えてとリズベットはドロップアイテムであるジェネラルアントの甲殻を小さなポーチの中に入れてしまう。

 ウィルにとってはダンジョンを無事に抜け、帝都に辿り着くことが今の第一目標になっているのでリズベットの提案はとても有り難いものだった。

 ウィルは光となって消えたボスの場所に落ちた突き刺した鉄剣を拾い、リュックから取り出した布で剣に着いた体液を拭き取る。


「じゃあ、行きましょうか」


「お願いします」



 ウィル・レントナー

 性別:男 年齢:15 種族:人間

 Lv:17

 HP:1149(22・25278)

 MP:432(22・9504)

 STR:308(22・6776)

 VIT:256(22・5632)

 INT:208(22・4576)

 MND:177(22・3894)

 AGI:272(22・5984)

 DEX:327(22・7194)


 スキル

 ・体術(2)・剣術(2)・短剣術(1)・槍術(1)・棒術(1)・双剣術(1) 

 ・斧術(1)・弓術(1)・盾術(1)・投擲(1)

 ・火魔法(1)・雷魔法(2)・風魔法(1)・水魔法(1)・土魔法(1) 

 ・探索(1)・暗視(2)・鑑定(1)・先読(1)・手加減(1)

 ・料理(1)・木工(1)・調薬(1)・算術(1)


 称号

 ・器用貧乏:スキルは取得しやすいが、スキルレベルは上がりにくくなる。

 ・一万回踏破:ダンジョンを一万回踏破した証。称号を手に入れてからのダンジョン踏破回数倍ステータスをアップさせる。

 ・孤独な探索者:ソロでダンジョンを一万回踏破した証。仲間ができた時、仲間のステータスを自分のステータスの10%アップさせる。(発動中)



 ウィル達の帰りは驚くほどあっさりしていて、キラーアントに一度も出会うことなく一気に地上まで行けてしまった。

 外に出ると既に日は昇り、暖かい日が射していた。


「うーーん!」


 大きく伸びをしながら新鮮な空気を吸う。

 ウィルにとってはこれほど長く潜ることはほとんどない。

 ほとんどというより村を出る前日の一回だけだ。

 その日だって攻略をしては出てを繰り返していたので、連続で潜っているという感覚はないのだ。


「後はこの道を二日くらいひたすら歩くだけよ。途中途中に簡易宿泊所があるからそこで休めるわ。もちろん雑魚寝だけど」


「へぇ~」


 ウィルにとってはそんな事でも初めて知る新鮮な体験なのだ。

 それからはウィルにとって初めての体験ばかりだった。

 途中の簡易宿泊所で知り合った行商人に、唯一拾ったキラーアントの顎を百シリンで売った。

 スライムゼリーが十シリンだったのを考えれば十倍の値段。

 ウィルは深く考えずポンと渡してしまった。

 荷物を纏めていたリズベットが後から来ると「騙されてるわよ」と一喝。

 本来キラーアントの顎は二百シリンで取引されているようだ。

 ウィルは「初めて騙された」と笑って済まし、騙した行商人と普通に仲良くなった。

 リズベットは頭を押さえて呆れていた。


 そんなこともあったが漸く帝都を囲う城壁が見えてきた。

 まだ数キロありそうだが、微かに見える城壁の高さは計り知れない。

 そんなワクワクしているウィルにリズベットが突然質問する。


「そういえば貴方は探索者になるのよね?」


「うん、そうだよ。どんな所かな?」


「それより貴方……学園には通ってるの?」


「…学園に?何で?」


 はぁ、とリズベットは大きく溜め息を吐きながら頭を押さえる。


「いい?探索者になれるのは十八歳以上、若しくは学園に在籍している者のみよ。つまり、今の貴方には探索者になる資格を満たしていないのよ」


「え……ええぇぇぇぇ!!」


 人通りが増えた街道でウィルの悲鳴にも近い声が響いた。


恐ろしいくらいにブックマークとPVが伸びていて、日間ランキングが8位と小心者の私はビクビクしてます。

ですが読んでくれている皆様には感謝感激です。

皆様の期待に応えられるようなモノが書けるか分かりませんが頑張っていきたいと思います。

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