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ノウハウ

「はぁっ!」


「ていっ」


 一緒に行動するようになったウィルとリズベットは現在、第五階層の中心辺りにいた。

 二人が戦っているのは相変わらずキラーアントでウィルもリズベットも危なげなくほとんど一撃で倒すことができている。

 ドロップアイテムをリズベットが拾い、腰に付けているもう既に明らかに許容量を超えている小さなポーチに詰め込んで一息つく。


「って、何で普通に魔物と戦闘してるのよ!」


「え?何さ、急に…」


「だって貴方魔物除けのアイテム持ってるんでしょ?」


「魔物除けのアイテム?…何それ?」


 空いた口が塞がらないとはまさに今のリズベットのことだろう。

 女の子にも関わらず、大きな口を開けたまま間抜けな顔をして固まってしまっている。


「はぁ、私が馬鹿だった。よくよく考えてみれば魔物除けなんて高級なアイテムをこんな奴が持っている訳がないわよね」


 ウィルに聞こえないくらい小さな声で呟いたリズベットは大きく溜め息を吐き、当の本人であるウィルは不思議そうに首を傾げている。


「まぁ二人だと攻略も早いし、ウィルの動きも結構いいからこのままでもいいか」

(それにしても、いくら二人で攻略してるからって魔物が全く脅威にならないってどういうことかしら?それに私の調子もいつもよりかなり良いし…)


「リズベットさん大丈夫?」


「えぇ、大丈夫よ。それより貴方の戦闘中のヤル気の無い声どうにかならないの?」


「え?…あはは、善処するよ」


 冷や汗を掻きながら笑って誤魔化すウィルのあの声にはきちんと理由がある。

 まぁ、簡単に言ってしまえば気合を入れて攻撃すれば明らかにオーバーキルしてしまうからだ。

 漸く手加減を覚えてきたウィルはどうしてもあんな声が出てしまうのだ。


「…まぁいいわ。今日はそろそろ休みましょうか?」


「休む?」


「そうよ。この先に安全エリアがあるからそこで休みましょう」


 リズベットに言われるがままに安全エリアと呼ばれた小部屋に入っていく。

 安全エリアの出入り口は今入ってきた通路しかなく、入り口の両脇には大きな壺が設置されている。

 その壺からは怪しげな紫色の煙が出続けているが、どうやらこれが魔物除けのアイテムらしく、入り口付近に設置することによって魔物の侵入を防いでいるようだ。

 リズベットは部屋に入るなり奥の角を陣取り武器を置いて座り込む。


「貴方も早く座ったら?」


「う、うん。…あの、どれくらい休むの?」


「そうねぇ…一人二時間くらいは寝たいから四時間近くは休憩ね」


「えっ!?此処で寝るの?」


 ウィルにとってはダンジョン内で寝るなんて考えられないことで、初めて一日中潜った時も寝ずに徹夜だったので尚更だ。


「当然でしょ。外は今真夜中だろうし、大きいダンジョンなんて一週間泊まり込みとか当たり前なんだから」


「じゃあ二人一緒に寝れば二時間で済むでしょ」


「はぁ…いくら安全エリアにいるからって必ずしも魔物が入って来ないとは限らないし、他の探索者だって来るかもしれないのよ…見張りは必須なの。私が先に見張りをするから先に寝なさい」


 ウィルもよくよく考えてみればダンジョンで寝食をすることは必須で、ペース配分や帰りのことまで考えながら攻略できて初めて探索者と言えるのだろう。

 ウィルが今までいたダンジョンは別の意味で異常で、寝食など他のことは一切考えなくても攻略できるような場所だった。


(ふふっ。漸く探索者っぽくなってきたな)


 ウィルはそう思いながら、大きなリュックサックを枕代わりにダンジョンの冷たい地面の上に横になり眠りについた。




「……て…起きて」


「…ん」


「そろそろ交替しましょ」


 ウィルはダンジョンの中だというのにかなり熟睡出来たようだ。

 初めての本格的なダンジョン探索に精神的な疲労と隣に仲間と呼べる人物がいたからだとは思うが…それでもあったばかりの人間に警戒心を抱か無すぎだとは思う。

 現にリズベットも少し困った顔をしている。


「貴方、熟睡しすぎよ。何かあった時に咄嗟に動けるようにしなきゃ…じゃあ私も寝るから見張りよろしくね……変なことしたらたたっ斬るから」


「ふぁい…」


 リズベットはそう言うと壁に寄り掛かるようにして座りながら寝てしまう。

 ちゃんと左横には武器である細剣を置き、しっかりと左手で鞘を握りしめている。

 これなら直ぐにでも右手で剣を抜くことができるだろうと、ウィルも感心しながら見る。

 しかし直ぐにやることがなくなってしまったウィルはリュックサックから干し肉を取り出し齧る。

 干し肉を齧りながらボーっと暗く奥まで見通せない通路を見ていると、一人の男がやって来た。

 赤茶色のボサボサの髪の毛に、最近手入れをしていないのか無精髭を生やした中年の男だった。

 背中には身の丈ほどの大剣を携え、白銀に輝く鎧をガチャガチャさせながら歩いてくる。


「おっと、先客がいたか…」


「どうも」


 ウィルは座りながら軽く会釈をする。

 鎧の男は部屋の中央に大剣を降ろしながらドカッと座り込むと、ウィルに話し掛けてきた。


「ボウズ、お前面白いな」


「…は?」


 いきなり見ず知らずの人に面白いと言われ、自分の顔が変なのかと心配になってきたウィルは慌ててペタペタと顔を触る。

 それを見るなり鎧の男は笑い始める。


「いやぁ、すまんすまん。面白いのはお前さんの顔じゃなくて強さというか…存在だよ」


 今度は存在を否定されたのかと思った。


「お前からは強い臭いがするが弱い臭いもする。…経験と強さがあっていないというか……意味不明だなお前」


 やはり存在を否定された。

 ガハハッと笑う男を前にウィルのテンションは下がる一方だ。


「俺はアランだ。これも何かの縁だ…よろしくなボウズ」


「…ウィルです。僕はよろしくしたくありません」


 ウィルがそう言うとアランはガハハッと笑いながら立ち上がり部屋から出て行ってしまう。

 一体何をしに来たのか、ウィルには自分を馬鹿にしに来ただけのように思えてしまった。

 暫くの間見張りをそっちのけで落ち込んでいると、リズベットが起きだした。

 大きく伸びをしながら欠伸をする彼女を見て、熟睡するなと言っておきながらずいぶんよく寝てましたねとでも言ってやろうかと思ったが、口から出る寸前でその言葉飲み込む。


「ふぁ~……どうしたの?」


「僕って変なのかな?」


「うん」


 まさかの即答にさらに落ち込み始めるウィルをよそに、リズベットは身体を解しながら荷物をまとめる。


「ほら、早く行くわよ」


「…はい」


 気分が沈んだままのウィルを引き連れながらも、リズベット達は無事に次の階層、第六階層に到達することができた。

 第六階層に着くなりリズベットは腰のポーチから何も書かれていない紙と鉛筆を取り出した。


「それは何?」


「マッピング用の紙よ。此処からは私も未知の階層だから書かないと迷っちゃうわ」


「へぇ~」


「……やってみる?」


「え!いいの!」


 ウィルの期待した視線に耐えきれなくなったリズベットは紙と鉛筆を渡す。

 ウィルはマッピングの説明を聞きながら歩き始める。

 マッピングは至って簡単だった。

 まず通路は線で描き、大体二十歩毎に一センチ程度の線を引く。

 行き止まりならバツを描き、部屋に出たら四角を描く。

 分かれ道があれば短い線だけを描いておき、此処に分かれ道があるということだけが分かればいいようだ。

 ウィルは初めてのマッピングに集中しすぎて、少し前を歩くリズベットが立ち止っていることに気付かず、ぶつかってしまう。


「ちょっと!戦闘中よ!」


「え!?声掛けてくれればいいのに」


「掛けたわよ!」


 リズベットは怒鳴りながらも順調にキラーアントを倒していく。

 魔物を倒し切りアイテムを回収するとリズベットのお説教が始まった。

 ダンジョンで一つのことに集中してしまうことは死の原因になりかねない。

 常に周囲を警戒しなければ何が起こるのか分からないのだ。


「…ということだから、マッピングは私がやるわ」


「…はい」


「はぁ…それにしてもいやに順調ね」


「いいことじゃないの?それよりボスって何階層にいるの?」


「情報によると第七階層らしいわ」


「へぇ…って次の階層じゃん!?」


「そうよ。だからもう少し気合を入れなさい」


 その後もウィル達は順調に第六階層を攻略していく間、ウィルはリズベットからこのダンジョンのボスのことを聞いた。

 まず此処のボスの名称はジェネラルアント。

 ただでさえ大きいキラーアントよりも更に二回りくらいも大きい。

 しかもジェネラルアントは蟻のクセに剣と盾を装備し、更には自身の甲殻は鎧のように堅いという。

 更に言ってしまえば、ジェネラルアントは部下であるキラーアントを何匹か従えて待ち構えているらしい。

 ある程度リズベットの説明が終わる頃に丁度第七階層に降りる為の階段を見付けた。


「じゃあ此処で少し休憩がてら作戦を考えましょうか」


 そう言ってリズベットは階段があるフロアの壁際に寄り座り込む。

 ウィルもそれに倣ってリズベットの近くに座る。


「じゃあ作戦だけど、まず私がジェネラルの注意を引くからその間に貴方は雑魚をさっさと処理しちゃって…貴方ならキラーアントくらい数匹いても大丈夫でしょ」


「それは良いけど、一人でボスの相手して大丈夫?」


「大丈夫よ。貴方が来るまでは守りに徹するから」


「分かった」


「それでジェネラルを相手する時は、一人がジェネラルの注意を引く役ともう一人が攻撃する役に分けるわ。それを役をチェンジしながらやるわよ」


 役をチェンジする理由は至って簡単。

 ただ壁役の専門職がいない今、攻撃する人より防御する人の方が負担が大きいからだ。

 敵の攻撃を防げば手が痺れたり握力がなくなったりするし、躱すにしても凄まじい集中が必要になるからだ。


「それと攻撃の時は火魔法の攻撃がお奨めよ。ジェネラルには剣が通りにくいから…まぁ、なるべく魔法がいいかもね」


「了解」


「…じゃあ、行くわよ!」



 ウィル・レントナー

 性別:男 年齢:15 種族:人間

 Lv:16

 HP:957(21・20097)

 MP:360(21・7560)

 STR:256(21・5376)

 VIT:213(21・4473)

 INT:173(21・3633)

 MND:147(21・3087)

 AGI:226(21・4746)

 DEX:272(21・5712)


 スキル

 ・体術(2)・剣術(2)・短剣術(1)・槍術(1)・棒術(1)・双剣術(1) 

 ・斧術(1)・弓術(1)・盾術(1)・投擲(1)

 ・火魔法(1)・雷魔法(2)・風魔法(1)・水魔法(1)・土魔法(1) 

 ・探索(1)・暗視(2)・鑑定(1)・先読(1)・手加減(1)

 ・料理(1)・木工(1)・調薬(1)・算術(1)


 称号

 ・器用貧乏:スキルは取得しやすいが、スキルレベルは上がりにくくなる。

 ・一万回踏破:ダンジョンを一万回踏破した証。称号を手に入れてからのダンジョン踏破回数倍ステータスをアップさせる。

 ・孤独な探索者:ソロでダンジョンを一万回踏破した証。仲間ができた時、仲間のステータスを自分のステータスの10%アップさせる。(発動中)



 リズベット・フェミナント

 性別:女 年齢:16 種族:人間

 Lv:21

 HP:1014(2010・3034)

 MP:748(756・1504)

 STR:533(538・1071)

 VIT:444(448・892)

 INT:533(364・897)

 MND:444(309・753)

 AGI:533(475・1008)

 DEX:370(572・942)


 スキル

 ・細剣術(4)・火魔法(3)・風魔法(2)・探索(2)・算術(3)


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