その5
ようやく今月分アップできます。
「その6」もだいぶ書けているので
近いうちにご覧いただける・・・といいな!!>マテ
いつものように帰宅し、夕飯とシャワーをすませると
ゲームを起動させながらスカイプを起動させる。
ここ最近の鈴子の一連の流れである。
オンライン確認すると、いつもはいるはずの【戒】がめずらしくスカイプ上にいなかった。
(そーいや仕事が忙しくなってきたって言ってたな)
なぜか【戒】がいない、その事が鈴子をちょっぴり不安にさせる。
(あれ?なんで私、不安がってるんだろう?)
んー?と考えながらも手はいつものようにログイン画面を操作する。
そしていつものように【凪】になりギルドチャットで挨拶をすると、
【紗奈】がものすごい勢いで挨拶を返してきた。
『紗奈:【凪】ちゃあああああああああああああああああん』
『凪:うわっ【紗奈】さんどうかしたの?』
『くまおじさん2号:【紗奈】さん少し落ち着こうw』
『紗奈:だって早く言いたいんだもん!』
「凪:?』
『紗奈:【凪】ちゃんこんどのお盆暇?』
お盆?
実家に顔を出しに行こうかとは考えていたけれど、
まだ実家には何も連絡してないので特に予定はないと言えばない。
そのことを【紗奈】に伝えると、
『紗奈:【凪】ちゃんあーそぼ♪』
今、遊んでるのでは?
鈴子の頭の中には「?」がずらずらならんでいく。
『くまおじさん1号:【紗奈】さんそれじゃ【凪】さん意味わかんなくて困るよw』
『紗奈:あ、そっかごめんごめん。
今度のお盆にね【One person】のオフ会しようかって今話してたんだ。
【凪】ちゃんも参加しない?一緒に遊ぼうよぉぉぉぉぉ』
オフ会
ゲームの中の人がリアルに会って、遊んだりする・・・
鈴子はルミックスオンラインでは古参の部類の入るものの、
いままでまったく縁の無かった物だった。
【One person】のみんなに会える?
詳しく詳細を聞いてみると、【紗奈】や【くまおじさん’S】の他にも
中部地方や関西からも何人か来るらしい。
そこで【紗奈】が前々から興味をもっていたもんじゃ屋形船に乗って、
みんなでおのぼりさんツアーをしよう!と言うことだった。
『凪:えっと・・・大丈夫ですよ?』
これが一対一のオフ会なら絶対に参加しないのだが
【紗奈】や【くまおじさん’S】が参加するということが【凪】に安心感を与えていた。
【凪】がOKの意志を示すとピコンと【紗奈】からゲーム内メモが届く。
そのメモには携帯のメールアドレスと電話番号がかかれていた。
『凪:【紗奈】さんこれ・・・』
『紗奈:当日なんかあって連絡取れないと困るでしょ?なので私のを教えておくね』
話し方や行動から【紗奈】は女性だと常々思っていたのだが
こんなにあっさり個人情報を流していいものか・・・
少し悩んだけれど、書かれていたメールアドレスに自分の携帯番号を書いて送信する。
『紗奈:あ、お返事キター!【凪】ちゃんの連絡先ゲーット!』
『くまおじさん1号:【紗奈】さん俺らには連絡先教えてくれないのにな・・・』
『紗奈:だって携帯スカイプで連絡とれるでしょー』
『くまおじさん2号:女の子にはあっさり教えるのか・・・』
『紗奈:うふふ そうでーす♪てな訳で【凪】ちゃん【くまさん’S】にはナイショね?』
『凪:あ、はーい』
『くまおじさん1号:ちくしょう女の子の結束は堅いってか!』
画面の向こうで意気消沈している【くま’S】を想像して【凪】は自然に笑みがこぼれていた。
*
やっとボーナス時期を終え、経理は少し暇になる。
連日残業やら書類のチェックやらをし、残業をしていた鈴子も今日は定時上がり。
いつもは自宅近くのバス停までバスに乗るのだけれども
今日は1つ手前のバス停でバスを降りる。
そのバス停の近くには24時間営業の中型スーパーがあるのだ。
(卵は買わなきゃでしょ、お肉は安かったら買うとして・・・)
あれこれ考えながらぽんぽんかごに品物を投げ込んでいく。
そこそこの量になって、デザートコーナーに差し掛かった時、
ふととある男性が目に入った。
その男性はデザートコーナーであれやこれやを物色している。
今も手に2つプリンを持って、どっちがいいのか悩んでるようだった。
(男の人がスイーツ物色って珍しいな)
そう思いながら鈴子もコーナーを覗き込み、お気に入りのプリンを手にする。
それをかごの中にいれ、レジに向かって歩きだし、ふと気になって振り返ると
件の男性はまだ悩んでいるらしく、スイーツコーナーに立ったままだった。
(好きな味に出会えるといいね♪)
少しだけ親近感を覚えながら、鈴子は再びレジに向かって歩き出した。
*
そんなこと出来事があった夜。
ゲーム内でじゃがいも掘りをしていると【流華】から個人メッセが飛んできた。
『ねぇねぇ【凪】はオフ会行くの?』
『一応参加予定。【沙奈】さんから熱烈アピールを頂いたし。
そういう【流華】はどうするの?』
『行きたいのは山々なんだけど正義と先約があるのよー!』
『残念だねぇ』
『正義との約束蹴ろうかしら・・・』
『ちょっと待てw 正義くんとの約束が先なんでしょ?
オフ会またあると思うからその時参加でもいいんじゃない?』
『でも【凪】を一人で参加させるのは不安というか・・・』
『失礼なw私子供じゃないわよw』
『【沙奈】さんがいるなら平気かなぁ・・・どこで待ち合わせだっけ』
『東京駅の銀の鈴前に集合って聞いてるよ?』
『うー ちょっとだけでも顔出ししようかなぁ』
『リアル優先がギルドの決まり事でしょう?それに顔合わせしてる間、正義君どうすんのよ』
『その辺うろついててもらうとか・・・』
『お盆の東京駅っていつもより人混みすごいとおもうよ?
はぐれて会うまでに時間かかってもしらないよ?用事あるんでしょう?』
『うー!!!!』
『ちゃんと報告してあげるから。今回は諦めなさい』
『もんじゃ屋形船ぇー!』
『そっちか!?今度二人で行ってくればいいじゃない』
『みんなで行くのが楽しそうで・・・』
『はいはい、次回があったなら頼んであげるから。
今回はおとなしく先約を優先しなさい』
『ううう いぢわる・・・』
『www』
ひと通り会話が終わったので個人チャットの窓を閉じ、じゃがいも掘りに戻る。
ゲーム内で地面を掘る音を聞きながら、
鈴子はまだ見ぬ【One person】の面々に思いを馳せていた。