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プロローグ

 あきらは困惑していた。



 

 自分たちは、幼馴染の通う高校の文化祭に、応援で来ていたはずだ。

 暗い教室内で、己が務めに励んでいたのだが……。


 

 今、眼前にあるのは日の光、白い壁、そして、無数の人の姿。



 わずかに目を動かしただけでは、天井が見えない白亜の内壁は、陽光を反射し、屋外かと錯覚しそうなほどにまばゆく、人々は色とりどりの頭髪をきらめかせ、その髪色と等しく、様々な装いをしていた。

 しかし、その中に、現代の装いをしているものはいない。それだけでも驚くのに十分であるのに、彼らの半ばは帯剣していた。


 

 ここは日本ではない。地球でもない。未知の地だ――と五感が訴える。



 夢でないことも確かだった。突き刺すような視線が痛い。

 動きを止めた男たちの視線は、すべてこちらに向いていた。



 落ち着け、落ち着け、冷静に――



 心の中で、強く自分にいいきかせる。

 彼らの目に、今の自分たちの姿がどう映るか、映っているか、玲はわかっていた。驚愕に見開かれた彼らの目が、それを如実に語っている。


 高まる心音をなだめるために、玲は深呼吸をした。

 幸いなことに心音は、それ以上、高くも早くもならなかった。安堵で、こわばっていた顔が、かすかに緩む。そこでようやく友人たちに目をやった。

 友人たちの表情は硬かった。そんな友人たちに声をかけたかったが、その時間はなかった。


「ば、ば、化け物!!」


 悲鳴に似た声があがった。

 誰が発したかはわからなかったが、どうでもよかった。

 声はひとりのものだった。が、玲たちを凝視する、彼らの心の声であることは、確かだった。


 玲はつぶやいた。自然といつもの声がでた。


「やっぱりねー」


 その声は、友人たちに届いたようだった。二人の友人が微笑みを、もう一人の友人が、呆れたような視線を玲にくれた。

 普段と変わらぬ自分の声は、想像以上の効果を友人たちと自分にもたらした。

 顔が、自然と微笑むのがわかる。玲はそのまま口を開いた。


「恐怖は万国共通ってことね」




 



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