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第12話 決意

この勢いのままどんどん行きます。

     ヤマタノオロチ本社ビル 五階 会議室




「怪我人は何人いる?」


 ヤマタノオロチの本社警備隊本隊は、体勢を整えるべく、五階まで後退していた。


 実質的な隊長である洋司は、現状を確認すると苦虫を噛み潰したような顔をした。


「・・・恵里、何人か元気そうなのを連れて、下の様子を見てきてくれないか?」

「はいはい、了解よ」

 

 悪いな、洋司は小さく呟くと、新たな指示を他の隊員に出す。


「全員、残りの予備弾薬がどれくらいあるか知らせろ」


 言うと、すぐさま隊員たちはベストから弾倉を取り出していく。

 だが、そのほとんどは空だった。


「5・56mmが300、だけか・・・」


 つまり予備の30発弾倉が10個、というわけだ

 現在銃に装填されている弾薬も決して多くはない。


「・・・恵里、人数分持っていけ」

「良いんですか?ここの人の分がなくなりますよ?」


 恵里が選抜した隊員は3人、残る隊員は洋司を入れ10人以上。


「そもそも数が足りてないんだ。それにほとんどの奴らは戦う体力も残ってないしな」


 一固まりになって座り込んでいる、負傷した隊員たちを見ながら洋司は言った。


「・・・そうですね、では」


 恵里は踵を返すと、会議室の扉を開け、硝煙漂う廊下へ出て行く。


 その姿を見送り、洋司は一言呟いた。


「生きて帰ってこいよ・・・」


「洋司さん・・・」


 そんな中、一人の隊員が洋司に話しかけてきた。


「・・・誰だっけ?」

「いや、まぁ・・・知らなくてもしょうがないですけど・・・」


 隊員はブツブツ言ったあと、一つ溜め息をつくと自己紹介を始めた。


「先日帰国した中東派遣隊の・・・」

「あぁ・・・。凛と一緒にいたあいつか」


 隊員は思い出してもらえて良かったような、自己紹介を遮られて残念のような、複雑な気持ちになった。


「そうです、それで一つ報告が」

「なんだよ?」


 隊員はひと呼吸置き、真剣な顔をして言った。


「僕の記憶が正しければ、この上の階が予備武器庫です」


 洋司は一瞬考えた後、「あぁ!」と大きく頷いた。


「そういやそんな物もあったな」

「あ、記憶が正しければ、ですが」

「いや、ある。絶対ある」


 洋司はニヤっとしながら言った。


「よし、俺とお前で取りに行くぞ」

「え・・・僕とですか?」


 隊員は露骨に嫌そうな顔をした。


「力仕事は嫌なんですけど」

「いいや、そしたら俺が運ぶから援護してくれ」

「・・・それならいいですけど」


 洋司は確信していた。


 これで安全を確保できると。


 しかし、この判断は失敗であったと、後々実感する事となる。




     四階 廊下




「アイラ」

「・・・なに」

「・・・私が言うのもなんだけど」


 これは貴方にしかできないの・・・。


「・・・わかってる、わかってるから」 


 アイラは亜耶の方へ振り返り、そして・・・。


「僕もわかったよ。やるべき事が」

「・・・」


 一つ、微笑みを見せた。


「あれ?二人・・・いえ、四人ともどうしたの?」


 廊下の向こう、階段のある方から一人の女性が降りてきた。


「恵里さん・・・」

「あー、そういうことか・・・」


 二人の状況を見て、恵里は全てを悟ったように笑った。


「デキちゃったか」

「「違います!」」

「あはは」


 それで。


 恵里は真面目な顔をして言った。


 普段の彼女からは考えられないほどの真顔だった。


「やってくれるの?」

「・・・はい」


 アイラも真剣に答えた。


「そう」


 その気迫を感じてか、恵里はふぅと息を吐いた。


「でも、私は何もできないからなぁ」


 恵里はそう言って空の弾倉を見せびらかしてきた。

 なにか、戦闘でもあったのだろうか?


「あ、アレ!」


 唐突に、美夏がそう叫んだ。


 その声に覆いかぶさるように、凄まじい轟音が廊下を震わせた。


「またヘリ!?」


 そう、廊下の窓から見え隠れするように、一機のヘリがホバリングしていたのだ。

 どうやら多目的ヘリのブラックホークのようだ。


 機体左右に搭載された機関砲はしっかりと五人を捉えていた。


 美夏と美春は自分の銃器を構え、臨戦体勢に入っていた。

 アイラと亜耶もヘリのコクピットを睨みつけていた。


 だが、恵里だけは何事か考えているようだった。


「ちょっと待って、このヘリ・・・」


 そう恵里が言いかけた瞬間。


『お久しぶりです!』 


 そんな声がスピーカー越しに聞こえてきたのだ。


「え、誰ですか?」

『あれ、もしかして忘れられてる?』

『・・・かも、しれないな』


 そんなやり取りを繰り広げる二人のパイロットに、恵里は一声かけた。  


「あの時のパイロットと副パイロットですよね!」

『あ、覚えていてくれましたか!』

「「「「え?」」」」


 とりあえず恵里の知り合い、という事となったヘリのパイロットたちは、五人にとある朗報を知らせた。


『習志野の部隊が、つまり私たちの仲間が到着しました、あと少しの辛抱です!』

「という事は・・・?」

『もうすぐ全館の制圧が完了します!』


 お、おぉ・・・、と五人はあやふやな歓声を上げた。


『ですがまだ敵はいます、気を付けてください!』


 それだけ言うと、ヘリはローターの回転数を上げ上昇していった。


「な、なんだったんですか?」


 美夏が恵里に聞いた。

 美冬も同じような事を思ったらしいく、恵里に視線を向けた。


「ま、まあ・・・」


 恵里は答えに言い淀み、飛び去っていくヘリを見つめた。


「と、取り敢えず・・・行こうよ」


 アイラが促すと、「そ、そうね」と亜耶も同調し、結局うやむやのまま進むこととなった。


「ところで、そのウランはどこに?」

「それなんだけど・・・」   




     最上階 某室




「さぁ、あとはアイラたちが到着するだけだ」

「はい、そうですね」


 飯嶋大悟は女に語りかけた。

 その口ぶりは、まるで誕生日プレゼントが入れられた箱を開ける子供のように興奮したものだった。


「き、貴様ら・・・。こんなことが許されると思うな・・・」


 壁際には、ヤマタノオロチの最高責任者、貴崎陽一郎が転がされていた。


 よく見ると、部屋のあちこちは血で汚れ、弾痕が各所に残っている、悲惨な有様だった。


「黙れ、お前がそんな事を企んむから、こういう事になっただろう?」


 大悟はニヤっとした笑みを浮かべ、陽一郎の元へ歩み寄った。

 そして。


「があぁっ・・・!?」


 その腹部に蹴りを入れた。


「くっくっく、楽しみだなぁ!ここでお前の最愛の『物』どもを壊していくなんてな!」

「・・・や、め・・・ろ」


 陽一郎の声は、大悟に届くことはなかった。 

あとちょっとです。

もう2話ぐらいでまとめます(嘘・・・かな?)。

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