君に言えなかったこと。
70年目の朝だった。
熱い熱い夏の日。
数えて6月の19日。
突然、からだが浮いた。
ふわりふわりと。
空に舞い上がり、ゆっくりと高度二千メートルまで。
沈んでから、初めての空だった。
ただ、泣きたくなった。
わたしはひとりで、飛んだ。
音もなく。
思い出すのは、お前と飛んだいつもの日々。
空を見上げ海を眺め。
天候が荒れると残念そうに息を吐き。
出撃のときはいつも軽口を叩くこととか。
それはわたしのため、とか。
お前の着艦の丁寧さと正確さ、とか。
神経を擦り減らしてでも飛行訓練はやめなかったなぁ、とか。
ああ。
沈みたくなかった。
もっと飛んでいたかった。
他でもない、お前と。
死ぬときは廃棄されるときだと言っていたのに。
そうでありたいと願っていたのに。
お前は私を残して行ってしまった。
なあ。
お前は知っていたんだろうか。
私の気持ちを。
寂しかった。
お前に傍にいてほしかったことを。
ごめんなさい。
お前に謝りたかったことを。
行くな。
お前と離れたくなかったことを。
ありがとう。
お前に礼を言いたかったことを。
好きだった。
今も情けないくらいお前が好きだと言うことを。
お前に伝えていたら、何か変わっていたんだろうか。
ああ、それでも。
お前はいない。
だから、私はただひとり、歌い続けよう。
お前と見た海で。
お前と飛んだ空で。
お前だけのために。
「知っていた。お前の気持ちも、俺の気持ちも」
「俺はお前のために飛び、生きようと思ったんだ」
「お前は俺の気持ちに気づいていただろうか」
*
やっと、
ついに、
完結‼
です‼‼
実は両片思いなふたり。
ここまで読んでくださった皆様に、無上の感謝と愛を。
ありがとうございました。
2013.07.28
淡




