最初の審判~第三審~
※未完成※
海中にソナー音が響き渡る。
「三番艦より全構成員に通達。現戦域に確認できる敵総数1200。内、500以上のラプトル級を確認。他700は合成獣級と原生強化種と確認。現時刻、一三:〇〇(ヒトサン:マルマル)より状況開始の条件クリア。本部からの連絡を待機せよ。」
「先遣隊より緊急連絡!大量の敵がD-23エリアにて出現。内五体がラプトル級!!!私たちでは抑えきれません、至急応援を!!!」
地に唸る爆音、空を裂く炸裂。
「地上本部より通達。作戦コード「粛清」を実行へ移します。状況開始、正規軍、戦闘を開始してください」
女性隊員の命令とともに一斉に銃を構える兵士たち。特殊兵装を装備した兵士が海から大量に砂浜に現れる。それを待っていたかのように襲い掛かってくる奇妙な生物たち。
「第二航空師団より通達。状況開始を確認、爆撃及び降下作戦を開始する」
平原に落とされる黒い塊。それらは空中で拡散しそれぞれがミサイルのように奇妙な生物へと降り注ぐ。同時に降下していく兵隊たち。パラシュートで降下していく兵士。その中には何も着用せずに直下していく者もいる。彼らは四人、地上にクレーターを形成して着地する。彼らの年齢は非常に若く、周囲の兵士たちとは浮いている。兵士たちが降下してくるまでの間。前方に手をかざしている。彼らの目の前には爆発や雷撃が生物たちを襲っていた。彼らは兵士たちが降下したのを確認するとにやりと相槌をうちあい前に向かって走って行った。兵士たちはバックパックから銃を取り出し弾層を補充し遊底をスライドして撃鉄を起こす。兵士たちの眼に火が入り前方の少年少女たちを見つめる。すると兵士の一人が叫んだ。
「遅れを取るな!フォースゼロに続け!!!」
兵士たちが風を切り進んでいく。目指すのは前方の森林。
*
陽炎が揺れる街の喧騒の中、一人の少年が歩いていた。
天城武である。額には汗を流し、先ほどまで傷口があったはずの場所を抑えながら歩いている。左手には非常に大きなケースを持っている。形からするとギターか何かのようにも見えるが、天城と同じ大きさのそれはとてもギターを連想させるようなものではない。あまりの大きさに道行く人の視線は天城に釘付けである。気まずくなった天城は垂れ下げていたケースを背負うようにして持ち直す。脳裏には先ほどの少女が浮かぶ。
なぜだろう?あの時、起ったことが妙に頭の中に残り少女のことが頭から離れない。殴られた傷は悪化するどころか綺麗さっぱり跡形もなく消え去っていたのだ。痛むはずの場所が妙に安らいでいる。
天城が神妙な顔をしてぼそっと呟く。
「…第7熾天?」
その場に立ち止り考え込む。
「…いや、まさかな」
天城は再び歩き出し。ビルの闇へと消えていった。
*
蒸し暑いトラックの荷台で少女は魘されながら眠っていた。
道は劣悪で、常に揺れ続けている。少女の周りには数名の若年兵士たちが同じようにトラックに揺られている。彼らの大半は下をうつむき、そして小さく泣いている。少女は急に目を覚まし周りを確認する。自分のすぐ隣にいる女性兵士に話しかける。
「……ねぇ、ここはどこなの?あたしはさっきまで前線にいたはず」
女性兵士は少女の呼びかけに反応する。
「…よかった。まだ生きてたのね。あなただけでも生きていて良かったわ」
その言葉は少女の胸にひどく突き刺さった。
「あたしだけって…前線には私を含めて32名はいたはずよ!なぜっ!」
言いかけたその時、運転席から通信が聞こえてくる。
『…前線エリア全滅、先遣隊は壊滅状態です。正規軍第二航空師団、及び第三艦隊海兵隊中衛部隊の全滅を確認。前衛が完全孤立…前線西エリア第七中隊より!敵の数が多すぎる!!!至急救援を!なんだ!?うわぁ!!やめっ……西エリア愛知駐屯兵団の全滅を確認。西エリアから漏れ出した敵に警戒せよ…中央司令部より各員、ステージ2へ移行。現任務を放棄し指定座標へ移動せよ。まだ損害が小規模な部隊は北側E-5移動せよ…』
運転手が慌てて通信を切る。一人の男性兵士が発狂し始めた。
「どうせみんな死ぬんだ!!!…はっ、ははは!そうだどうせ死ぬならここで死のう!!!そうだよな!オイ!!!」
そういった直後、少女の隣にいた女性兵士が男性の脳天を打ち抜く。銃声とともに悲鳴が上がる。血しぶきが少女の頬にかかる。
「死にたい奴は死ねばいい!私はここに生存者を少しでも増やすために独断で動いている!これは本部の意志ではない、私個人の意思だ。私は君たちに生きてほしくてやっている。その死体をタグを取り捨てろ、死体は乗っていても意味がない…」
少女の瞳は動揺して震えている。突如、脳裏によぎる光景。
あゝ、そうか。あたしはだからここに居るのか。
※未完成※