mission_1「最初の審判~第一審~」
気がつけばそこに俺がいた。
プロローグ
美しい彫刻の施してある木製の扉の前に一人、制服の少年が立っている。
扉は両開き式、扉の上部には「校長室」の文字。
ドアノブに手を伸ばすがあと数センチのところで少年は手を止めた。
内側から声が聞こえるのだ。扉に耳を当て中から聞こえてくる言葉に注意する。
「・・・・・ぁあ、・・・そうか、では今夜いつものホテルで。」
声の主は男性、電話をしているようで女性の声も聞こえる。
『じゃあね!まってるからぁ。』
何とも妖艶な女性の声だ。少年はこぶしを握り背後にあった壁をがんがんと殴る。
しばらく殴った後にスタスタと扉の前まで戻り、強引にも扉を蹴り飛ばし強行突入。
少年の目は血走っている。
「てめぇ!仕事しろ!!!!」
校長室の文字が傾いた。
mission_1「最初の審判~第一審~」
校長と思われる男は穏やかな声で答える。
「なんだ、きみか。」
少年は近くにあった展示物である日本刀をショーケースから強引に取り出し男に向かって突きつけ、これでもかというほどに顔を近づけて机に片足を乗せる。
「てめぇ、まさかまた女との約束か?」
まるで、やくざの恐喝だ。
「何を勘違いしている。何を隠そう、仕事の約束だ。」
「女との約束が仕事~?笑わせてくれるわ!なにが「まってるからぁ」だ!!!
お前いい加減にしろよ、てめぇが仕事しないせいで俺が残業手伝わなきゃいけねぇ
んだからな!!!」
男は軍服を着ている。深緑を基調とした日本軍使用の軍服だ。
「私は忙しい、文句があるなら早く済ませたまえ。」
「じゃ、なぜ俺を呼んだ!」
男は「あ~!」と適当に相槌を打ち、机の引き出しから一冊の本を突き出した。
本の題名は「結審」。「これを読みたまえ」と手渡しする。
「何だよこの本は?」
「上からの指令書だ。もう、わかるな?」
少年はうつむき小さくうなずいた。が、次の瞬間にはすでに先ほどのぶち切れモードに入っている。しばらく口論していると、壊れた扉を不思議そうに見る女性が入ってきた。こちらも男と同じ軍服を着ている、歳は少年と同じか少し上ぐらいだ。
「天城君、大佐、いったいこれはなんです!?」
まるで恐ろしいものを見てしまったかのような顔をしているが無理もない。部屋の扉は壊れ、校長室と書かれたプレートは傾き、太刀を持った少年が自分の上司を恐喝しているのだ。
「天城」と呼ばれた少年が口を開く。
「ゲッ!星河?!」
「「ゲッ」とは何ですか!外道とわいえ、あなたが今、刃を向けている相手は上官ですよ!
自分より階級の上のものに刃を向くとは下官にあるまじき行為ですよ!」
そう、この男は女性がそう呼んだとおり「大佐」なのである。
そうこうしていると女性の後ろから、武と同じ制服を着た少女が現れる。
なぜか星河の後ろから顔を出そうとしない。
「天城君!そろそろ太刀を下してください。」
「あぁ、わりぃ。」
太刀を鞘に入れ下緒に戻す。いつまで隠れてるのかな?
「・・・・火野愛美、です。」
どうやら恐喝現場を目撃していたようでかなり怯えているようだ。マナミと名乗った少女はポケットに数枚の紙を入れていて、それをごそごそといじっている。その中から一枚を選び出し、武に近づく。
「どうぞ、私からできることはこれぐらいです。」
渡された紙には中央に赤い文字が書かれている。少女はすばやく星河の後ろに隠れていく。
すると星河がしゃべりだす。
「今回はそれを持ち歩いてください。理由はまた後日。」
「用件は以上だ。目障りだからさっさと立ち去れ。」
今にも猛り狂いだしそうな武の姿がそこにはあった。
武は廊下を歩いている。事実だけ述べているが、それが十分すぎるほどの事実だ。
いや、それこそ奇跡なのではないのだろうか。
いや、ケンカを売った相手が悪かったのだ。
武がケンカを売った人物、「大佐」と呼ばれていた男、女好きな男の名は「破島幽翔
(はじまゆうと)」という名前だ。
日本人ならだれでも知っている人物、いわば超有名人だ。ところが問題はそこではない。
彼は超能力を持った人間で、その能力も「破壊神」といわれる部類の超危険人物だ。
というのも、簡単に言えば大陸ひとつ吹き飛ばすのも彼にとっては朝飯前なのだ。
彼の能力、「荷電粒子を自在に操る」という能力だ。そして今、武の右の頬には焦げ跡がある。
ここまで説明すればおおよその予想はつくのではないのだろうか。
武は破島に喧嘩を売り、堪忍袋の緒が限界に達した破島がその能力を使い一括。
十分ぐらい前だろうか――――
――――約十分前―――――
「ああ!もう限界だ!!!いっぺん三途の川見てこいや!!!」
そういって武はこぶしを握り大きく跳躍。「まったく。」と厭きれた星河は手にしていた
端末で隔壁を閉鎖。施設中に警報が鳴り響く。
閉鎖された空間で、武の拳が破島に当たる刹那、暴風が吹いて武は吹き飛ばされる。
「この野郎!卑怯だぞ!正々堂々戦え!!!」
警報アナウンスが流れる。
『警告、異常量の荷電粒子を確認。システムダウンします。』
「毎度、君の相手は疲れる。いちいち隔壁閉鎖しなくてはならない。」
「それはお前のせーだ!!!」
よく見れば破島の周りにはオーロラが発生している。
「ちっ!一筋縄ではいかないか!!」
武は右手を大きく後ろにかざす。すると何もないところから突如、閃光がおこり
ロングソードが引き抜かれる。剣先が怪しく輝きを放つ。
「覚悟!――――」
武は切りかかると同時に気を失った。
それから少し経ったときには、隔離の解けたぼろぼろの校長室で星河に膝枕をされて寝ていた。気を失ったわけを聞いてみると、どうやら荷電粒子をもろに浴びたらしい。
右の頬の傷はビーム状の攻撃にやられたという。
そして校長室には破島の姿はなかった。
――――と、いうわけである。
「とりあえず消毒ぐらいしとけ」と書置きがあり。指示通りに医務室に向かっているものの、この学校はとても広いので、かなりの時間がたってしまい、傷口は既に乾燥してしまった。
傷口がひりひりと痛む。っと、次の角を曲がれば医務室がある。
部屋のドアを開けようとしたとき、ドアは勝手に開いた。そのままバランスを崩し前のめりに倒れてしまう。部屋から人が出てくる。
部屋から出てきたのは自分より少し身長の低い女子。かなり急いで出たようでこちらに気づいたときにはすでに遅く、目が合ったときにはぶつかっていた。
そのまま両者後ろに倒れる。
「ごめん!!いきなりだったから―――」
武が言いかけた瞬間に、少女の蹴り上げが顎にクリーンヒット。
(水色のストライプ柄!!!)
少女がはっとし、慌ててスカートを抑える。どうやら口に出してしまったようだ。
「あんた・・・何言って!!!死ね!!!!!」
空中を舞う武のみぞに強烈な右ストレートが繰り出される。そのまま壁にぶち当たりK.O.
。・・・情けない。
「あらあら、まあまあ」と医務室担当ののんきな先生が出てくるが、それすらも朦朧とした意識では幻に見える。会話が断片的に聞こえてくる。
「だ・・・こいつが・・・てるから!」
「・・もこ・・にきたっ・・・ことは・まぁ!・・たい・・・へん!」
えっ?何が大変なんだろう。
「はこぶ・・・・って!!!」
「・・やよ!な・・・でこんな野・・・・を!!!!」
腹部に激痛が走る。
「ガァ!!!!お願いもうやめて!」
平和な日常など、この男子高校生には許されないのだ。
~第二審へつづく~
非常に失礼ではありますが、感想・修正箇所など、いただければ喜ばしい次第であります。