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五日目



ユニーク1000人突破!

読んで下さって本当にありがとうございます!


第一章も完結しました。


時代イメージも中世か迷った結果古代に決定しました。

古代のイメージが今ひとつ湧かないですが、異世界ファンタジーなので大目に見てくださいww








「こんな事になるなんて!!」



悲痛な面持ちで私とジュノットの両親は亡骸を見つめる。

政略結婚を拒んだジュノットは、毒をあおり、自らの生涯に幕をとしたのだ。

表向き。



「そこまであの人がよかったの…!」



まあ、自作自演する程度は愛してるよ。

思った以上に愛されていたみたいで、ショックの強い両家の両親に罪悪感を感じるので、少し席を外し、教会の外に出る。



「ふぅ…」



「パリシア姉様じゃないか!」



「あら、こんな所に居て良いのかしら?」



「良いんじゃない?自殺されるくらい、結婚したくない相手なんだろう!」



はあ、最悪。

外に出るとお姉様と愚弟がいた。

興味ないフリもできない本当は優しいお姉様。

待望の嫡男に甘やかされて育った自己中心的な愚弟。

高慢な口調のお姉様は、嫌味をよく言う愚弟といると性悪女にしか見えない。

だから、愚弟と一緒にいちゃダメなんだって!!



「じゃあ、同じ事態にならないように精々苦心したら?」



「なっ!」



生憎言われっぱなしは、性じゃないんだよね!

愚弟が何か言い返そうとしたタイミングで、お母様が呼ぶ声が聞こえた。

どうやら、一旦家に帰る事になったみたい。




 * * *




「パリシア、ごめんなさい…。私達がムリヤリ結婚させようとしたばかりに…」



「お母様が悪いんじゃないわ…」



屋敷のお母様の部屋にお母様とお姉様と一緒に居る。

孫を想い悔しがるお父様や男に想いを寄せてる愚弟は居ない女性だけのお茶会。



「本当に嫌だわ!男同士なんて穢らわしい!非生産的じゃないの!」



「お姉様。そんなこと言っては怒られるよ」



「事実よ!確かに不思議な色をしてるけれど、身内の贔屓目を抜いたってパリシアは充分美人じゃない!何が不満だって言うの!」



「不満と言うか、ロザラオを愛してるんだよ」



怒り爆発のお姉様の声のボリュームが上がるのを注意しながら宥める。



「私は大丈夫よ。確かにジュノットの死は悲しいけど、ジュノットの愛を二番目に理解してたのは私だと自負してるもの。それより、お姉様の方が面倒でしょ?」



話を逸らすように姉の嫁ぎ先の話題を出したけど、更に眉を下げるお母様とお姉様の反応に失敗したと確信した。



「ええ、面倒だわ!夫の愛人の男に好意を寄せられるし、おかげで夫はまるでわたくしを嫉妬混じりの憎悪を向けて冷遇するもの!わたくしが何かしまして!勝手に向こうが惚れてきたのよ!色目を使った?はあ!?ふざけるのもいい加減にして欲しいものだわ!わたくしの好みは夫のようながっしりした方で、あんな軟弱な優男じゃないのよ!勘違いも甚だしい!あの男もあの男よ!タイプの男に嫁げて、愛されないなりに目の保養になったり、あわよくば友人の立ち位置に立てた筈なのに、惚れた腫れたで冷遇よ!冷遇!」



「お、お姉様、落ち着いて」



「これが落ち着いていられますか!向こうじゃ悪口一つ言えやしませんもの!」



早口で捲し立てるお姉様に苦笑する。



「お姉様は猫ばかり被らないでもう少し自分を出したら?」



「わたくし、自分の口調が高飛車に聞こえるのを自覚していますわ!その上、悪口でも言ってみなさい!悪女の出来上がりよ!」



「でも、自分を出さずに信用が信頼を得ようなんて虫がいい話だと思うし、自分を出さずに得た信用や信頼って最終的に相手への裏切りじゃないの?」



「う゛…でも…」



「確かに妥協は必要だけど、隠す事は妥協じゃないと思う。隠す事は悪じゃないけど、隠すばかりはダメだよ。それは、きっと相手の為であって自分の為であると思う」



「う゛ぅ~…」



「今すぐ変われなんて言わないから、少しずつ自分の意見をだそう?」



「………前向きに考えるわ」



「前向きに行動してよね」



表向きジュノットが死んだ日にあまりにも不謹慎だったかな?とも思ったけど、私は仮死状態だって知ってるし、ぶっちゃけあんまり悲しめないのが事実なんだよなぁ。



「二人とももうそろそろ寝なさい」



「え?あら、もう暗くなりはじめたのね」



「今日はお開きにしよっか」



「そうしなさい。明日、起きれなくなるわ」



「そうね。おやすみなさいお母様。行くわよパリシア!」



「あっ!お姉様待って!おやすみお母様!」



バタバタとお姉様の後を追って騒々しくお母様の部屋を後にする。

何か、お母様空気な気がしたけどいつもだから気にしたら負けだ。



「じゃあ、おやすみパリシア」



「おやすみお姉様」



私とお姉様もしばらく歩いてから自分の部屋に別れた。

お姉様の部屋は私の部屋の一つ向こうなので安心だ。

私は、自分の部屋に入ると手早く着替え、質の良いシルクの喪服から、市井の年若い既婚の娘が着るような服を纏う。

窓を開け、木をつたり外に出て、ジュノットの眠る教会に走る。




 * * *




「ロザラオ!!」



今まさに毒を飲もうとしていたロザラオを止める!

この計画の欠点は、謹慎中のロザラオに計画を報せる事が出来ない所だった。



「止めるなパリシア!ジュノットが居ない世界なんか生きる意味がない!!」



「だから待って!ジュノットは生きてるの!仮死状態なだけ!」



私の言葉にロザラオは、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で見つめてくる。



「どういう…」



「ジュノットを仮死状態にし、死んだことにしてロザラオと静かに暮らして欲しいの」



「それは…」



「ジュノットが望んだことよ!もう少しで薬の効力が切れて目を覚ますはずだから…、ロザラオにジュノットと一緒に逃げてもらいたい!」



ロザラオが衝撃を受けた顔をしたが、ジュノットを愛してるロザラオはこの話を呑む。



「ダメだ!!ジュノットは何を考えているんだ!!」



「え…?何で?」



ロザラオがこの話を呑むと確信していたから、あまりにも意外な発言に次はこっちが唖然とした。



「何で?って!パリシア!俺達が出ていったら知らない奴と結婚することになるんだぞ!!」



ああ、本当に私って大切に想われてたんだなぁ。



「大丈夫!胸張って幸せだって言えるような結婚するから!」



自信満々に言ってのけたのに、ロザラオをこの後、一悶着あった。

ジュノットと同じようになんとか説き伏せれた事に一先ず安堵し、長居は無用なので屋敷へと帰った。

屋敷もあまり無人にしてバレると厄介だしね!



「ふぁあ、寝っむ」



いつもなら寝てる時間なのでかなり眠い。

今日は新月で月の光りがないため、灯りを使い万が一にもバレたりしないように、朝一に起きて着替えなければいけないので、すぐに寝床について眠気に身を任せた。



―コツン



まどろみの中聞こえた小さな物音に意識が覚醒する。



―コツン



窓の方から聞こえる睡眠を邪魔する音に眉間に皺を寄せながら近付く。



「ッ…!」



窓から下を覗けば、小石を持ったロザラオとジュノットが見える。

さっきの音は小石が窓にぶつかる音だったんだろうけど。

そんなことより!何で居るの!?

窓を勢いよく開く。



「あっ、やっと気付いたわね」



「『気付いたわね』じゃないよ!なに考えてるの!?もしバレたらどうするの!」



「悪い。でも、聞きたい事があるんだ」



笑顔のジュノットに正論という名のツッコミをいれれば、ロザラオに苦笑された。



「聞きたいこと?」



「ああ、パリシア」



「私達と一緒に来ない?」



「え…?」



突然のことに頭がついて来ない。



「あの後、目覚めたジュノットと一緒に話し合ったんだ」



「私達はパリシアを一番に愛せないわ」



「それでも、パリシアが他の男の隣で笑ってるなんて我慢ならない」



最後の一言にロザラオとジュノットの声が被った。



「だから、パリシア。私と結婚して下さい。幸せにするわ、約束よ」



「ジュノット…」



「パリシア。我儘な俺達を許してくれるなら、俺達の妻として死ぬまでともに歩んで欲しい」



「ロザラオ…」



窓に足をかけて、ロザラオとジュノットに向かって飛び降りる。



「ッ私でよければ喜んで!大好きだよ!」



焦ったように抱き留めてくれたロザラオとジュノットに泣き笑いで言えば、二人の腕に力がこもった。

本当は不安だったんだ。大切な二人を失うことも、知らない人に嫁ぐことも。



「じゃあ、行くか」



「そうね」



「うん」



私達は、闇夜の中に消えていった。


人知れず噛み合った歯車が回りだす。

小さい頃から見ていたやたら鮮明な追憶のような夢の意味なんて考えたこともなかった。


それでも今を後悔しないように生きる。

未来も最善も分からないから、今の私の赴くままに生きる。

だって三人で笑いあってるだけで充分幸せだからね!









第一章はロミオとジュリエットのあらすじを題材に書きました。




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