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三日目



パリシアとロザラオの絡みです。

ジュノット出てきません。


次回はジュノットとパリシアの絡みで、ロザラオ出てこないと思われます。








「ねぇ、聞きまして!」



昼時、仕事も一段落して上級使用人 ―ようは、城に勤める貴族。侍女や執事達のこと― 用の食堂で昼食を食べていれば、そろそろ行き遅れかけてるハイエナ、もとい10代半ばに差し掛かった少女達の話し声が聞こえてくる。



「ジュノット様とロザラオ様!同じ指輪をしてましたのよ!」



「えっ!?魔術師のジュノット様と騎士のロザラオ様のことですの!?」



「ええ、それ以外に誰がいまして?!」



「でも、わたくしが見たところ、指輪なんてしていませんでしたわ」



「チェーンに通してネックレスになさって、服で隠していますの!お二方が逢い引きで見せあっているのを目撃しましたわ!」



「まあ!」



うん、バカだろ?

なぜ、昨日の今日で会う?

昼食を食べながらそう思った私を誰が怒れるだろうか。



「昨日の今日で結婚なんて、きっと運命を感じられたんですわ!」



「本当ですわ!お互い犬猿の仲の騎士団と魔術師団に所属していますのに、結婚までなさるなんて!」



「まさに禁断の恋ですわ!」



うん、いろいろ違うよ。乙女達。

確かに城内で正式に会ってなくても逢い引きしてたから、昨日の今日じゃないし、男同士は正式に結婚出来ない。

所属した場所が対立してるから禁断とか以前に、男同士は禁断だからね。


きっと伯爵以上の立場で旧家の家柄なんだろうな。

男爵家で幼少を市井を走り回っていた私と感覚が違いすぎる。


キャッキャッと話す同僚達を尻目に食べ終わると手早く片付けて、王妃様の所に向かう。

王妃様付きの侍女は、私を含めても10人に満たないのだから仕方がない。

あまり侍女を連れていない姿は権力を弱く見せてしまう。



「ふざけるな!」



後宮への唯一の通り道、近衛騎士と近衛魔術師が喧嘩をして道を塞いでいる。

邪魔だ。



「ふん、脳筋がうるさいことよ」




高圧的な近衛魔術師の台詞に近衛騎士が抜刀する。



「身分をかさにするなど赦せるものか!」



「ふん、見向きもされない男が見苦しい」



「お前だってそうだろうが!だから、身分をかさにするくせに!!」



「ッ!黙れ!!」



「ふんっ!波璃の姫は俺の物だ!」



いやいやいや、私、貴方の名前知らないんですけど!?


波璃の姫とはエトルス男爵家次女・パリシアのことを指し、ようするに私を指すんだよね。

波璃とは水晶の別称であり、色なしの私を好意的に解釈した結果、波璃の名をつけられたんだろうけど、同じ透明でもダイヤモンドじゃない所は推し量ってほしい。


なんて暢気に傍観していたら、逆上した近衛魔術師が、近衛騎士に攻撃魔術をくらわせたのだ。



「なっ!?ちょっ!何をしているのですか!!」



攻撃魔術も強力なものだったらしく、近衛騎士は重症をおい、それを放置できるほど私だって薄情じゃない。



「波璃の姫!波璃の姫!私は、貴女の事が――」



「止めて!!離して!!」



近衛魔術師は、私が近付けば、まるで決闘の末に手に入れたかの如く喜んだ。

そんな訳ないのに!私は止めようとしたしただけなのに!

近衛魔術師は、自ら私に近付いてくると私の腰を抱き寄せ、逃げようとする私の頭を固定するとキスをしようとしてきたのだ。



「だから!離――」



ザシュッ



「…何をしている!」



私が近衛魔術師の急所を蹴りあげようとした時、近衛魔術師は肉を切る音と共に崩れ落ちた。

さりげなく私にもたれ掛からないようにした所に切った男の優しさを感じる。


そんな私のピンチに駆けつけてくれた王子様は、ジュノットの王子様でした。

ようするに、ロザラオですね。はい。



「ってー!!タンマタンマタンマ!!待ってー!!何トドメ刺そうとしてんの!?」



我が幼なじみ・ロザラオは、ためらいもなく、倒れこんだ近衛魔術師の心臓を貫こうとしている!って!わー!!血出たー!!



「落ち着け!!」



「落ち着いてる。慌てて殺し損ねたら元も子もない」



「何で!?」



言っておくがロザラオは、普段ジュノットの諌め役で、めったに感情に任せるような真似はしない。

多分、ロザラオがここまで激情にかられるのは、私達幼なじみに何かあった時だけだと思う。


そして、さっき私が襲われたのは、ロザラオの逆鱗に触れる出来事だったということだ。

大切にしてもらえるのは、嬉しいが、殺されるのは困る。非常に困る!困るんだよ、ロザラオ君!!



「何をしている!?」



げっ!魔術師団近衛隊長!

面倒なのキターーー!!!



「これを殺そうと」



爽やかな笑顔が眩しいよ、ロザラオ。

でも、さらに刺そうとしちゃらめーーー!!!



「なっ!?伯爵家嫡男と分かっているのか!!」



「関係ないな」



「着いてこい!!」



不承不承といった体を隠すようすもなく、魔術師団近衛隊長に連れていかれるロザラオ。

ただ!

私の服は離して!!


助けてもらった手前、言えないけどさ!!






「あの…ここって…」



「王様の執務室だ。妥当な処置をしてもらう」



豪奢な扉に唖然とする私に魔術師団近衛隊長は、そう教えてくれた。


が!


それは、言外にロザラオを追放する気じゃ!?

いや、する気だ!



「あの…あれは―」

「王、失礼いたします」



「入れ」



人の話はちゃんと聞きなさいって習わなかったの、こいつ!?



「何用だ?」



「はい、この者が我が魔術師団近衛隊に所属する者を殺そうとしまして、つきましては、厳重な処分をくだされますよう、お願いに来たしだいでございます」



「ロザラオが!?何の冗談だ!嘘だろう?ロザラオ」



「いえ、まことでございます」



居合わせていた騎士団団長が顔を鼻で笑い飛ばしたものを無表情で肯定する。

いつもが好青年な分、ロザラオの無表情なんて珍しいな。



「なぜだ!!お前がそんな奴だとは―」

「落ち着け」



確か、30前後の最年少騎士団団長が声を荒げるのを静止する王様。



「理由を聞きたい。騎士団が推していたお前が理由もなくするとは思えん」



「理由など!この者が伯爵家の嫡―」

「私が聞いたのはお前ではない」



空気を読まない、魔術師団近衛隊長のせいで一気に空気が重くなった!

王様の威厳凄すぎる!



「…いえ、その方の言う通り殺そうとしたのは事実ですし、後悔もしていません」



「なぜ?」



「王は…大切な幼なじみの少女に不埒な真似をする男を赦せますか?

私には、偏狭と言われようともその男を赦せない」



「何…まことか?」



淡々と語るロザラオにビックリしたけど、内容は嬉しい。

行き過ぎてたけど、大切だと言われて嫌な思いする相手じゃない。


さて、眉間に皺を寄せた王様に全貌を話します!

ええ、恥を忍んでね!



「はい…。こんな事を自らの口から語るなどお恥ずかしいばかりですが…」



前置きしなきゃ話せないよ!

だって、「私のために争わないで!」状態じゃん?

自分の口で?

自分のモテ話?

王様の前で?

あの状態を?

くっ!なんの拷問だよ!!



「わたくし、休憩も終わり、王妃様の元へ戻ろうとあの道を通ったのです。そうしたら、男の方々が争う声が聞こえ、内容が、その…

…わ、わたくしの事でして…。


まっ、近衛魔術師の方が、わたくしを権力で妻にしようとなさったのを近衛騎士の方が批難し、近衛魔術師の方が近衛騎士の方に攻撃魔術をかけられ、さすがにこれはマズイと出たところ、接吻されかけ、ロザラオ、様に助けてもらったしだいです!!」



女は度胸!

途中から早口になったのは、不可抗力だ!



「…団長、今までお世話になりました。追われる身になっても、騎士団で良くしていただいたご恩は忘れません」



「待て!?何する気だ!!」



「大丈夫です。命は取りません。男の象徴を切り落とすだけです」



やっちゃえ☆

口に出さずとも思ったのは、恥をかかされたんだから当然だと思う。


だから、騎士団団長。そんなすがる目で見ても寂しそうに首を横に振るのが限界ですからねww

ロザラオには、ちゃんと肯定として理解してもらえました。あれ?6年間のブランクは?



「ちょ!?それは残酷だろ!いっそ殺してやれ!!」



「嫌です。権力でパリシアと結婚しようとする男なんて生き地獄を味わえばいい。少なくとも俺はそんな害虫よりも生きる価値のない人間のために手を汚したくない。そんな男を殺した手で触れて、俺の大切な幼なじみ達に穢れがついたらどう責任とってくれるんですか」



珍しく饒舌なロザラオにみんな唖然☆

うん、違うよね。

近衛魔術師へのあまりのボロカス評価に唖然としてる。

普段、好青年だから分かりにくいけど、ロザラオはかなりの身内贔屓なんだよね。



「大切、なんだな…」



「当然です。孤児の俺にとって、幼なじみ達が家族なんです。家族のいない辛さも家族に愛されない辛さも分かるからこそ、俺は家族を傷つけられて冷静でなんていられない!」



さっきから敬語が崩れてるけど、注意する人はいない。

『穢れ』に関しては衝撃すぎて無視の方向らしい。



「ふむ…。お前の主張は分かった。今回の件、その近衛魔術師を解雇し、位を剥奪することにしよう」



「なっ!?王!それは―――」



「黙れ。この国はただでさえ女に厳しいのだ。その上、無体まで許せば問題になる」



「で、ですが!この国は他の国より群を抜いて出生率が低いのですよ!婚期の遅れた女性なら―――」



「婚期の遅れと如何様な関係があるというのだ?婚期の遅れた女なら無体をされて心に傷を負わないとでも言うのか?」



「それは…」



「違うだろう?

それに、如何様な理由があれど殺しに走ろうとしたこの者にもそれ相応の罰とし、数日間の謹慎処分とする」



「はい」



不満気な近衛魔術師隊長を尻目に安堵のため息を吐く。

私のせいでロザラオの立場が危うくなるとか嫌すぎる。


ロザラオは今から謹慎になるらしい。

あっ!ならジュノットに私が伝えとかなきゃ!

魔術師団か…めんどくさ

でも、変に思われて探られるとロザラオとジュノットの関係がバレかねないから近衛魔術師隊長に伝言してもらえないもんなー。

最悪!なんてついてない一日!

良いことあったら悪いことあるってか!コンチクショー!!!







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