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第八話 真実

1月7日月曜日。今日から三学期が始まる。しかし、遅いな~佐竹。

ガララッ

「は~い、席についてくださ~い。」

HR始まったじゃねえか。何やってんだよ。

「え~じつは、佐竹さんが家の都合で転校しました。仲の良かった人は残念ですが・・・」











えっ?

(佐竹が転校した?なんでこんな急に・・・)

俺は納得いかない。学校が終わるとすぐに佐竹の家に直行した。


 佐竹の家の前。俺は一人で突っ立ってる。呼び鈴を鳴らすが出てこない。

(やっぱり転校しちまったのか?)

ドアノブに手をかけた。するとドアが開いた。

「佐竹?」

中に入ってもだれ一人いなかった。机の上に、ボールペンと・・・

「手紙・・・。俺宛だ。」

俺はその手紙を読み始めた。その手紙は短く、簡潔に書かれていた。


―黒田君へ―

突然ごめんなさい。私は転校することにしました。私と黒田君はノーハート。こんな恋人みたいな関係になっちゃいけないと思ったからです。本当にごめんね。そして―


「私のこと、忘れてね・・・佐竹より、か・・・。」

そうだな、もうどうしようもない。ならばせめて、佐竹の言うとおり、佐竹を忘れよう。

「このボールペンで書いたのか・・・。」

俺はボールペンを取る。しかし、だんだん違和感を感じる。

「ん?なんか少し、色が違うな・・・。」

ボールペンをよく見る。全体は黒なのだが、これはまるで・・・

「ッ!!まさか!!!!!!!」

そうだ、これは!


―血が乾いた色!


俺は佐竹の家の引き出しを見る。ふつう、犯罪なのだが、そんなこと言ってる場合じゃない!

「ほかに!何か手がかりになるものがないのか!!」

すると一つ、封筒を見つけた。裏にははっきりと、

「国立○○病院!」

病院の名前が書かれていた。俺はそこに急いで向かった。


 佐竹がいなくなってからずっとだ。ずっと、胸がえぐられている感じがする。これはなんだ?こんなこと、初めてだ。体に異常を感じた気配もない。ならば感情なのか?まさか。俺には感情がない。なら、今、俺の体を動かしているものはなんだ?俺にはわからない。

「佐竹!!」

俺は病院に向かって走っている。通常、走って1時間はかかる道のりを俺は30分で着いた。病院の受付の人に、俺はすぐに聞いた。

「すみません。ここに佐竹っていう患者がいますか?」

「佐竹様ですね。少々お待ちください。」

(早くしてくれ・・・)

とにかく1分、1秒でも早くしてほしかった。

「はい。505号室にいらっしゃいます。」

「ありがとうございます。」

俺は階段を急いで登る。505号室だから、多分5階だろうなと考えた。予想は当たっていた。

「クッソ!ここから遠いじゃねえか!」

俺は急いだ。やっと505号室へ。「佐竹 心」と書いてあるから間違いないだろう。俺は息を整えながらドアを開けた。

「!?黒田君!?」

佐竹は驚いている。そりゃ、俺がいきなり入ってきたらびっくりするよな。

「よかった・・。会えた・・・。」

「どうしてここがわかったの?」

「これさ。」

そして、俺は佐竹の血がついてあるボールペンを取り出した。

「このボールペンに佐竹の血がついてておかしいと思ったんだ。病院は・・・家の引き出しを探らしてもらった。ごめんな。」

俺は、佐竹にボールペンを渡した。佐竹はそのボールペンを見つめ、ハァッと深くため息をついた。

「このことはだれにも知られたくなかった。黒田君にはとくに。」

「話してくれ。何があった?」

佐竹は少し、間をおいて言った。

「私、転校してきたでしょ。その時にはまだこんなことにはなってなかった。だけど1か月たったある日、突然、口から血が出て・・・。すぐに病院へいったわ。医者にはこういわれたの。『心臓に穴が開いてます。申し上げにくいんですが・・・あと4か月生きればいいところでしょう。』って。その時は何も感じなかった。・・・いや、少し黒田君のことを考えた。なぜかはわからないわ。そして私は、その病気を治す方法はあるのですか?てきいたの。ただ、医者は首を横に振った。私を助けることはできないのね。どうしようもないから、その時は家に帰らせてもらった。薬を飲めば、吐血ぐらいは止めれるって言われたから学校で血を吐くことはなかった。」

何も考えられない。ただ、俺の手は震えている。なぜか?わからない。

「だから最後くらいはせめて人間として死にたい。そう思ったの。だから、私は半強制的に感情を出した。本当は何も感じていないのに。」

そうだったのか?じゃあ・・・

「じゃあ、俺たちが一緒にいた時も何一つ感じてなかったのか?」

佐竹は黙って首を振る。

「違う。黒田君と一緒にいるとだんだん意識せずに、感情が出てきたの。そして、私は黒田君と一緒にいるうちにずっと一緒にいたいな、っていう気持ちになってきたの。」

俺もだ。俺も佐竹と一緒にいたい。

「だから突然、怖くなってきたの。死ぬのが。ノーハートなのに・・・何も感じないはずなのに・・・。」

俺もそんな感じに何かを感じることがある。佐竹も感じていたのか。

「・・・多分。」

「なんだ?」

「ありえないと思うんだけど、私は黒田君のことが好きなんじゃないかなってそう思うようになったの。」

もはやわからない。ノーハートとはなんなんだ?感情を持たない人間のことを指すんだろ?なんで今、俺は佐竹のことを心配してんだよ。なんで、佐竹が死ぬのを怖がるんだよ。なんで、俺も佐竹も同じなんだ?なぜ佐竹はおれのことが好きで、俺は佐竹のことが好きなんだ?

「だから、あの手紙を書いた。私の気持ちを捨てるために。だけど、黒田君はここに来ちゃった。驚いたわ、本当に。だけど・・・」

佐竹は一呼吸おいて言った。

「嬉しかった。感じるはずないのに、そう感じたの。」

そして佐竹は俺のほうを向いた。

「ありがとう。一人は・・・。」

言葉の語尾が少し濁る。

「一人は・・・さみ・・し・・・かっ・・・た。」

そして佐竹の顔が俺の胸に飛び込んできた。佐竹は涙を流していた。ノーハートにはありえないことだ。俺は静かに佐竹の頭に手を置いた。

 

―俺は思った。ノーハートっていうのは実はこの世に存在しないんじゃないのかと。

あと少し続きま~す。

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