第六話 ノーハートたちのクリスマス
12月25日火曜日。今日はクリスマス。雪も降っており、最高の一日となっている。俺以外。この寒さはうっとうしい。
「黒田君!!」
「おー」
佐竹がやってきた。俺にとっては、お前のはしゃぐ理由がわからないんだが。
「なんでしけてんの?クリスマスだよ!!」
「知らねえよ。行くぞ。」
なんでわかんねえんだよ。俺はノーハートだっての。俺は佐竹と一緒に買い物に行く。
「よっこらしょっと!!」
「本当、お前って力あるよな。」
買い物が終わり、今、俺たちは佐竹の家にいる。それにしても、買い物しすぎだろ。見た目だが一袋5キロ近くあるんじゃねえか?それを二つ持つなんて、化け物め。
「別にいいじゃない!」
「はっきり言って俺でも持ち運べるかどうかわからない。」
「うるさいわよ!ほら!黒田君も手伝って!!」
「ああ、わかってるよ。」
そして俺は佐竹の部屋をどんどん飾りつけする。そう、俺たちは、佐竹の家でクリスマスパーティーをするんだ。二人っていうのが少しさみしい(つっても心はないが)けどな。
「よ~し!かんせ~い!!」
パーティの準備が終わった。目の前のテーブルには豪華な料理があった。
「黒田君!始めようよ!!」
「おー。」
「行くよ!せ~の」
「「メリークリスマス!!!」」
パン!!パパン!!
事前に手渡されたクラッカーのひもを引き、俺はさっそく料理にかぶりついた。一日中、買い物に付き合わされておなかがすいていたのだ。
「あ!まだ乾杯もしてないのに~!!」
「いいじゃねえか。早くしないとなくなっちまうぞ。」
「む~。」
どんどん、料理が減っていく。本当に佐竹の作った料理はうまいな。
「プハー。ごちそうさん。」
「意外となくなるの速かったね。」
やばい、少し食いすぎた。しばらく動けそうにないな、これ。というか佐竹も食いすぎたのか?さっきから一歩も動いてないぞ。
「あはは。少し食べすぎちゃった。」
「ああ、俺もだ。」
佐竹が「一緒だね。」と言いながらくすくす笑った。その姿を見て、俺も少し笑った。
やっと動けるようになったので、料理の後片付けに入る。この後片付けが終わったら帰ろうかな。時間は夜8時を回っていた。
「俺、この後片付けが終わったら帰るぞ。」
そういった瞬間、佐竹は仕事していた手を止めた。そしてこちらにとても残念そうな顔を向けた。
「・・・なんだよ。」
「泊まっていかないの?」
へ?いやそもそも泊まるための用意持ってきてないし。
「いや、迷惑だ・・・」
「トイレはこっちの扉で、お風呂はあっちの扉ね。洗面台もその近くにあるから。」
(無視された!!)
俺は半ば強制的に佐竹の家に泊まることになった。そういえば、前にもこんなことがあったような・・・。まあいいか。
「なんで、布団がねえんだよ。」
「別にいいじゃない。」
佐竹の部屋にはベッドが一つと、机が一つあった。ただ、佐竹によると、この家には布団がないらしい。
「よくねえよ。俺はどこで寝りゃいいんだ?」
佐竹はベッドを指差した。続けて問う。
「じゃあ、お前はどこで寝るんだ?」
さっきと同じところを指す。・・・やな予感がする。
「・・・まさか、あのベッドに二人で寝るってことか?」
「うん。」
俺はとっさに感じた。今、帰らなきゃまずいことになる!!動いたが、腕を佐竹につかまれている。
「逃がさないわよ。」
「おまっ・・・いてててて!!!」
掴まれた腕をねじられる。力があるので結構痛い。
「く~ろ~だ~クン。」
背筋がぶるっとした。これも感情なのか?初めて感じる感情だ。というかどうしてこうなってる!?佐竹はこんな奴じゃないはず・・・
(あ・・・あいつ、夕食のとき、酒飲んでた・・・。)
「は~な~せ~!!!」
「い~や~よ~!!!」
俺は、佐竹に捕まえられながら、ゆっくりベッドの方向に。そしてついに俺はベッドに、目の前には佐竹が。
「うふふ。」
「や~め~ろ~!!!!!」
その瞬間、俺の体に佐竹の体が落ちてきた。佐竹はスースーと寝息を立てて眠っている。
(か・・・間一髪!!)
ラッキーと思ったのもつかの間、佐竹の体が俺の体にべったりくっついていて離れない。
(うわぁ・・・しょうがねえ、このまま寝るか。)
俺は毛布を体にかけ、ぐっすり眠った。
12月26日水曜日。俺はいつも通りの時間に目が覚めた。体を起こそうとするが、起き上がれない。
(ああ・・・そうだったな・・・)
俺が起きたのは午前5時半。一体いつまでこうしていればいいんだと不安に思った。
午前9時。佐竹が今、やっと目が覚めた。佐竹は、起きて状況を判断し・・・
「ヘンタイ!!」
俺の左ほおをびんたした。相変わらずの怪力でかなり痛い。
「黒田君・・・こんな・・・」
「いや、やったの佐竹だからな。」
「え?」
俺は昨日の夜のことを佐竹にすべて説明した。
「あはははは!!!ごめん!!!黒田君!!!」
「ごめん!じゃねえよ!かなり危なかったぞ!!」
一通り説明が終わり、何とか誤解は解けた。やっぱ酔ってたんだな。
「ったく、もう酒飲むなよ。」
「うん。わかった。」
朝ご飯を食べ終え、帰宅する準備を始める。
「よし!じゃあ、帰るわ。」
「うん。また来てね。」
「あんな思いはもううんざりだぜ。」
「あはは。」
さて、帰ったらどうするかな。
「・・・シャワー浴びてぇ。」
よし。風呂に決定。
未成年の飲酒はダメですよ。