第四話 ノーハートたちの休日
9月28日金曜日、今日も俺は屋上へ向かう。佐竹と一緒に。俺の新たな日常だな。少なくとも、前までのつまらない日常よりはるかにいい。最近では柵の上に座って目の前の景色を眺めている。
「こういうのって友達みたいだよね。」
「ああ。」
あの日から俺は毎日、屋上へ行っている。屋上で、いろんなことを話したりしている。笑うこともたまにだがある。本当に面白いかどうかは別として。
キーン コーン カーン コーン
「あ~あ、もうなっちゃった。」
「じゃあ、戻るか。」
最近、昼休みが短くなったように思う。実際は変わっていないのに。
最近は授業が終わると、佐竹と一緒に帰っている。こんなことしてると本当に俺たち、友達なんだなあと思う。
「さあ、帰るか。」
「うん、いこっ。」
そして、昼休みと同じように、いろんなことを話す。
「じゃあ、また月曜日。バイバイ。」
「おう。じゃあな。」
そして、いつもの場所でわかれる。一人で帰る時より、疲れがたまらない。そして俺はいつも通り家に帰り、晩ご飯を自分で作って食べ、決まった時間に寝る。
9月29日土曜日、今日は雨が降っている。最悪だ。時間つぶしのランニングもできないし。仕方ないから、今日一日は寝ることにする。寝れるかどうかはわからないが。
・・・うん。普通に寝れた。布団が気持ちよかった。時計を見ると、1時半だった。
ピンポ~ン
「誰だよ、こんな時間に。」
つい、起きたばっかりだから言ってしまった。今、雨で太陽は出ていないものの、真昼時だ。俺はとりあえず、ドアを開けた。目の前には佐竹が立っていた。
「なんでだ?」
「いや~、暇だったし、黒田君、どうしてるかなって、なんとなく。」
「いや、そうじゃなくて、どうやって俺の家知ってるんだ?」
「なんとなく。」
「なんとなくで片づけるな。ちゃんと話せ。」
「昨日、別れた後、こっそり黒田君の後をつけてたの。」
それ、ストーカーじゃねえか。あと、なんとなくって語使いすぎだろ。と、内心突っ込む。
「とりあえず、はいれよ。部屋汚いけどな。」
「あ、じゃあ、お邪魔しま~す。」
そのとき、グ~と俺のおなかが鳴った。そういえば昼ごはん食ってなかったな。
「おなかすいてるの?なんか作ってあげようか?」
「じゃあ、冷蔵庫の中の奴、なんでも使っていいから頼む。」
「わかったわ。何にしようかな~?」
佐竹は冷蔵庫を開け、何を作ろうか迷っているようだ。さて、俺は何をしようかな。
・・・思いっきり二度寝しました。時計を見ると2時15分。起きるといいにおいがした。
「何作ったんだ?」
「肉じゃが。シンプルでいいかなと思って。」
「いいにおいだな。いただくぞ。」
「うん。どうぞ。」
俺は、佐竹が作った肉じゃがを食べた。うん。すっげえうまい。俺が作った肉じゃがよりもはるかにうまい。俺は一気に肉じゃがをたいらげた。
「ごちそうさん。すげえうまかったぜ。」
「本当?よかった~。」
佐竹は眠そうな目をこすって言った。
「おまえ、寝とけよ。布団ならあるし。」
「え、でも・・・」
「いいって。まあ、確かにさっきまで寝てたけど、昨日洗濯したからそこまで汚くないぞ。」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「大丈夫だって。邪魔しないし。それに、遠慮なく寝といたほうがいい。疲れてるんだろ?」
佐竹はしばらくなやんだあと黙ってうなずいた。
「じゃあ、寝といたほうがいい。」
とりあえず、俺は佐竹を寝かし、冷蔵庫の中身を確認した。冷蔵庫の中身はきちんと整えられていた。
「・・・ありがとな。佐竹。」
俺はすぐに寝てしまった佐竹にお礼を言った。
夜8時、佐竹がようやく目を覚ました。目を覚ました佐竹は時計を見ると、いきなり、あわてだした。
「あ、ああ!ごめん!!黒田君!!」
「まあ、落ち着け、こっち来いよ。」
俺は数分前にスープを作っていた。とりあえず、目を覚ました佐竹に渡す。
「これ、食えよ。腹減っているだろ?」
「で、でも黒田君の分は?」
「俺はもう食った。」
もちろん嘘だ。とりあえず、佐竹はこうでも言わないと食べそうにないので言った。
「じゃあ、いただきます。」
佐竹は一口、スープを飲んだ。すると、どんどんスープを飲むスピードが速くなった。そして、昼の俺と同じようにスープをたいらげた。
「ごちそうさま。ごめんね、なにからなにまで。」
「ぜんぜんいいさ。それよりも・・・」
俺は昼よりひどくなっている雨を見て、言った。
「もう遅いし、ここに泊まってけよ。」
「ええっ!?さ、さすがにそこまではできないわよ!!」
「演技うまいな。」
「いや演技じゃないわよ!!!」
いや、いくらなんでも驚きすぎだろ。ノーハートとは思えないな。
「別にいいじゃねえか。明日も学校ないし。」
「そんなこといってるんじゃ・・・」
「え~と、風呂はあっこで、トイレはこっちだな。あと、洗面所は風呂と同じドアの中だから。」
(思いっきり無視された!!!!!)
「風呂、先に入れよ。沸いてるから。」
「え、ああうん。」
とりあえず、黒田の家に佐竹が泊まることになりました。少し無理矢理だったけれどね。
―あ、パジャマ、どうしよう。
9月30日日曜日、5時半に俺は目が覚めた。外を見てみると昨日の雨がうそのように晴れていた。
(ランニング行くか。)
佐竹が起きても大丈夫なようにメモを書いて出発した。
―ランニング行ってくる。7時には戻ってくるから待っててくれ。
―黒田 零斗―
7時、家に戻った。佐竹は相変わらず眠っている。俺はメモを破り捨て、パンを食べた。
9時、やっと佐竹が目を覚ました。ものすごく遅いんだが・・・。
「あっ、おはよう。」
「おう。とりあえず、パンあるから食べろ。」
「うん。わかった。」
佐竹は素直に朝食を食べ始めた。ついでに服は俺の服を使ってもらっている。
「お前の服は洗濯し終わっているから、食べたら着替えろよ。」
「ふぁい。」
「食いながら返事するなよ・・・。」
10時、佐竹の帰る準備が終わった。
「じゃあな。また明日。」
「うん・・・本当にごめんね。」
「来週、また来てもいいぞ。」
「本当!?」
「ああ。」
「ありがとう!また来るね!」
そして佐竹はスキップしながら帰っていった。ますますアイツがノーハートかどうかわからなくなってしまった。
「さてと、掃除でもするか。」
今日一日、俺は家事をこなした。