第二話 いつもとは違う日常
9月17日月曜日、2学期が始まって2週間がたった。全て一学期と何にも変わっていない。今日もいつも通りの日常が始まる。退屈な日常が。
HRが終わり、午前中に3時間授業をする。3時間目の授業が終わると、生徒たちはいっせいに盛り上がる。
「やっと終わったーーー!!!」
「飯、早く食おうぜ!!」
毎度のことながら異様に騒いでいるな。なぜそんなに喜ぶんだ?俺には分からない。俺以外の連中が全員喜んでいる・・・わけではなかった。俺の隣にもう一人、無表情のままの奴がいる。佐竹だ。そういや、佐竹が笑ったとこ一度も見たことないな。まあいいか。どうでも。
食事の時間が終わり、少し長い休憩時間がある。俺はいつも自分の机で眠っている。佐竹はいつも、教室を出てどこかへ行く。少し気になるが、つけていくつもりは全くない。そしてチャイムが鳴り、午後からの授業をうける。
学校が終わり、俺は家へ直行する。そして少し休んでから晩ご飯の調達、つまり買い物に行くわけだ。両親がいないから俺は自分のことをすべて一人でこなす。8年前からやっているんでもうさすがになれている。ついでにお金は俺のおばさんからもらっている。すごくありがたい。
そして晩ご飯を一人で作り、一人で食べ、一人で寝る。まあ大体10時半てとこか。その分、朝は5時前に起きる。退屈だが、別にやることも特にないし、仕方なく、ランニングしている。ついでに俺はクラスで3番目に足が速い。(自慢ではない、事実を述べただけだ。)
とまあ、これが俺の1日の動きだ。ランニングが終わると朝食を食べ、制服に着替え、朝7時に家を空ける。学校までは徒歩で30分ぐらいかかる。今日もまたいつも通りの日常が始まる。
9月18日火曜日、HRが終わり午前中に3時間授業をする。いつも通り。3時間目の授業が終わると生徒たちが盛り上がる。いつも通り。
「あー疲れた!」
うそつけ。
「早く飯食べようぜ!!」
うん。いつも通り。こんないつも通りの日常、ここまでは。
食事の時間が終わり少し長い休憩時間がある。だが、今日は目がさえて眠れない。しょうがないので屋上に向かう。屋上は好きだ。この街を一望でき、静かで、太陽の光が温かい。眠れないときはいつもここに来る。自分のお気に入りの場所なのだ。
「・・・・!!」
うん?少し、話し声が聞こえる。なんだ?少し気になる。
「・・・行ってみるか。」
そこには金本を含めたいじめっ子ら4人が佐竹をいじめていた。
「なんだ・・・ただのいじめか・・・」
俺はその場を去ろうとした。だが、体が動かない。
―なぜだ?
俺の体はどんどん、いじめっ子のほうに近づいていく。
―俺は何をしている?
俺は金本の肩をつかみ、思いきり殴りつけた。
―体が言うことを聞かない。
金本たちはおれを恐怖の眼差しでみながら逃げて行った。
―これは本当に俺なのか?
佐竹がこちらを見ている。俺は心底ほっとした。
―なぜ?俺はノーハートだろ?
午後の授業が終わり、俺は家へ帰る準備をしていた。
「ねえ。」
だれかに呼ばれたので振り向くと佐竹が立っていた。
「なぜ助けてくれたの?」
さあな。本当にわからない。俺はノー・・・あれ?なんで佐竹はそんな質問をするんだ?それも、いきなり。普通の奴はまず「助けてくれてありがとう」とかいうんじゃないのか?失礼だとは思わないが最初はみんなそういう物だと思っていた。・・・一回、聞いてみるか。
「すまないが一つ質問いいか?」
「先に答えて。」
「ああ、すまない。・・・正直わからない。体が勝手に動いていた。」
俺はまじめに答えたつもりだ。幸い、問い詰められなかったのでよかった。
「じゃあ、質問、どうぞ。」
(だれもいないな・・・よし)
「お前、ノーハートか?」
別にノーハートだからどうしたとかそんなものはない。ただ、気になったのだ。ここ2週間、佐竹の態度はまさにノーハートそのものだったから。
「ええ、そうよ。」
当たった。まさか当たるとは思ってもいなかった。若干そんな気がしてなくもなかったが。
「だから何?」
ノーハートって言ってるけどどう見たってツンツンしている女の子だよな。
「悪いな、少し気になっただけだ。」
「フ~ン。あなたは?」
「へ?」
「あなたもノーハートなの?」
「ああ、まあな。」
隠す必要なんてないしな。別に知られたって関係ない。というか、ノーハートってこんな感じだったっけ?今のおれたちは間違いなく普通の人間の会話をしているんだが・・・。
「そ。じゃあ。」
「ああ。」
本当にノーハートなのか?あいつも、俺も。
次の日、金本が仲間をたくさん引き連れておれに向かってきた。3分もかからずに全員ぶっ飛ばした。動かなくなるまで。
―あ、やっぱり俺、ノーハートだわ。