最終話 行こう。
最終話です。この話はエピローグとなっております。ここまでこの小説を読んでくれた皆さん本当にありがとうございました。
「卒業証書、黒田零斗。以下同文。」
1月19日月曜日。卒業式が行われる。佐竹、もうお前が死んでからもう2年もたつんだぜ。本当、あっという間だった。
「よお。」
「金本、卒業できたのか。」
「あたりまえだ。これでも少しは改心したんだぜ。」
「ハハッ。悪い、冗談だ。」
こいつはお前も知ってるだろ。そう、昔(つっても2年前だが)俺や佐竹をいじめていた金本だ。お前がいなかったらこいつは俺の一番の親友だ。
「お前変わったよな。」
「?何が?」
「自分でわかるだろ。2年になってから・・・いや、正確には1年の2月ぐらいからかな。お前は感情が表に出るようになった。」
そう。2年前のあの日、俺は決めたんだ。佐竹の分も泣いたり笑ったりすることを決めたんだ。そう、あいつの分も。
「そうか。そうだったな。」
「なんでなんだ?」
「・・・知りたいか?」
「ああ。」
俺は周囲を見渡す。誰もいないな。
「今日でこの学校を去るんだから隠す必要もないな。金本。誰にも言わないって約束してくれるなら俺の家までついて来てくれ。」
「・・・わかった。」
というわけで、俺は金本と一緒に家に帰ろうとしたが、校門をくぐった時、誰かに呼び止められた。
「黒田先輩!」
「先輩・・・?」
おいおい、俺は部活なんかやってねえぞ。とかなんとか思ってたら一人の女の子がこっちに向かってきた。
「あ・・・あの・・・。」
「どした?」
これはわざと。ちょっとからかってみたくなっただけだ。
「ずっと好きでした!付き合ってください!」
まあ、こうなるだろと大体予想できた。だけど俺は付き合うつもりは少なくとも今はない。佐竹のことがどこか心に引っかかっているのだ。
「悪いな。好きって言われたのはうれしいけれど俺には好きな人がいるんだ。」
「そうですか・・・。じゃあ仕方ありませんね。それでは。」
その女の子は悲しそうに去っていった。そして金本がいった。
「てめえ、どんだけ告られてんだよ。」
「今ので13人目。」
「このリア充め。」
まあいい。それにしても、あの女の子、少し佐竹に似ていたな。まあ、似てるだけで、佐竹本人じゃないってことはわかってるけどな。
「いくぞ。」
改めて、家に帰る。帰る途中にまた一人、俺に告白してきたがあっさり振った。
俺の家についた。
「さてと、こっちだ。金本。」
俺は庭に案内する。そこにはまだ新品のようなお墓があった。
「きれいだな。誰のお墓だ?」
「佐竹だ。」
金本が心底びっくりした声を上げる。
「なっ!?どっどういうことだ!?」
「とりあえず、家に入れ。事情はそこで説明する。」
俺は金本を家に招き入れた。
俺は事情をすべて打ち明けた。佐竹が転校したと言われていたその日に、佐竹を病院で見つけたこと。それから毎日佐竹のお見舞いに来ていたこと。そして、2年前のちょうどこの日、佐竹が死んだこと・・・。
「そして、佐竹の骨がこれだ。」
俺は金本に佐竹の骨壺を見せる。金本はどうやら納得したようだな。
「・・・フゥー、そっか。お前らにそんな事情があったなんてな。」
俺は身支度を始める。
「何してんだ?」
「今日、この家を出るんだ。2年前からずっと決めてた。」
「・・・どこに行くつもりなんだ?」
「さあ?まあとりあえず。」
俺は一呼吸おいて金本に言った。
「雪が見えるところがいい。」
そして、俺は家を出た。家には金本がただ一人、ぼおっとしていた。
なあ、佐竹。お前は本当に雪が好きだったよな。雪が降ると子供みたいに大はしゃぎしていた。今でもその面影は残っている。お前といた期間は短かったけど俺にとってはとても大切な時間だったんだ。
「なあ、佐竹。」
俺は空を見上げる。空は曇っており雪が降っている。
「今日はどこに行こうか?」
―ノーハート~感情を持たない少年~ 完
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