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裏切られた俺、ダンジョンの最深部で『無限召喚ガチャ』を引いた結果、神々と最強パーティを結成して世界にざまぁする件

作者: 妙原奇天
掲載日:2025/10/10

 仲間を信じていた。

 それが間違いだったと気づいたのは、背中を剣で貫かれた瞬間だ。


「悪いな、レオン。お前の“ギフト”じゃ足を引っ張るだけだ」

 勇者カイルの声が冷たく響く。

 目の前で、仲間だったはずの魔導士エリナが笑った。

「最下位ギフト《無限召喚ガチャ》? そんなゴミ、誰も欲しがらないわよ」


 血を吐きながら倒れ込む俺を置き去りに、奴らは光に包まれて帰還の転移魔法を使った。

 ――置き去り、ではなく“処分”だ。

 ここはランクSSS、誰も生きて戻れないダンジョン最深部。


 意識が遠のく中、俺のギフトが勝手に起動した。

《――召喚ガチャ、発動――》


 音がした。

 光が弾け、空間が震えた。

 現れたのは、黄金の髪を揺らす女神だった。


「……召喚者よ、汝の絶望を見た。救済を望むか、復讐を望むか?」

 俺は迷わず答えた。

「復讐だ。あいつらを――地獄に叩き落とす」


 次の瞬間、七柱の神々が現れた。

 戦神、魔神、知神、死神、運命神、時間神、そして“無の神”。

 彼らは俺の契約に応じ、頭を垂れる。


「主よ、我らが剣を差し出す」


 その瞬間、俺のステータスが跳ね上がった。

 レベル9999。攻撃力、測定不能。

 絶望は終わった。

 ――ここからが、“ざまぁ”の始まりだ。


 光が消えると同時に、空気が変わった。

 冷たい風が、俺の頬を撫でる。

 ダンジョン最深部はもはや暗闇ではない。

 七柱の神々が放つ光が、闇を押し返していた。


「主よ、まずは身体を癒しましょう」

 聖神が指先をかざす。淡い光が俺を包み、裂けた肉も、焦げた皮膚も瞬時に修復された。

 そして、死神が静かに言う。

「貴様を殺しかけた者たちの“寿命の糸”、まだ我の掌の中にあります」

 手をかざすと、黒い糸が七本。

 全て、俺を裏切った勇者パーティの名が刻まれていた。


「……殺すのは簡単だ。しかし、それでは足りない」

 俺は糸を見下ろしながら呟いた。

「奴らには、“希望を見せた上で”叩き落とす」


 戦神が笑う。

「それでこそ我が主。復讐は一瞬より、永遠に続く方が美しい」


 俺は神々の力を統合する。

 魔神が渡した“虚界の鍵”を使い、地上への転移門を開いた。

 行き先は――あの日、俺を裏切った仲間たちが祝勝会を開いている、王都の大聖堂。


 門を抜けた瞬間、眩い光と歓声に包まれた。

「勇者カイル様! 魔王討伐おめでとうございます!」

 民が叫ぶ。神官が祈りを捧げる。

 その中心に、カイルとエリナ、そしてかつての仲間たちが立っていた。

 彼らの足元には、俺を“犠牲にした”と誇らしげに記された石碑。


 俺はゆっくりと歩み出た。

 人々が一斉に振り向く。

 ざわめき、悲鳴、そして恐怖が混ざり合った。


「な……なぜ……生きて……」

 カイルの顔が青ざめる。

「お前が死んだはずだ! 最深部で……!」


「そうだな。だが――“俺のギフト”は、まだ終わっていなかった」


 手をかざすと、天井が砕けた。

 そこから、神々が降臨する。

 戦神の大剣が空を裂き、聖神の光が街を照らし、死神の影が大聖堂を包む。


「な……なんだ、この光……!」

「神々だ……神々が、降りてくる……!?」


 人々が膝をつき、祈りの言葉を叫ぶ。

 だが、神々が向ける視線はただひとり――俺にのみ注がれていた。


「この男こそ、真なる契約者。我らの主である」

 聖神の声が響いた瞬間、世界が凍りついた。


「おい、やめろ……やめてくれ!」

 カイルが震える声をあげる。

 だが、俺は静かに告げた。

「やめる? あの日、お前が俺にそう言ったとき、聞いてもらえなかったよな」


 エリナが叫んだ。

「お願い! あれは間違いだったの! 償うから!」

 俺は笑う。

「償い? じゃあ――お前の“命”で払え」


 指先を弾く。

 死神の糸が弾け、エリナの体が霧のように消えた。

 カイルが膝をつく。

「……やめろ、頼む……」


「いいや、これで終わりじゃない」

 俺は宣言した。

「お前たちの“栄光”を、俺が塵に変えてやる」


 神々が同時に詠唱を始めた。

 天が裂け、大地が震える。

 王都を覆っていた聖光が、次第に“虚”へと変わり――

 城も神殿も、祈りの声さえ、光の粒となって消えていった。


 その中で俺だけが、静かに立っていた。


「主よ、これで終わりですか?」

 知神が問う。

 俺は首を横に振った。

「まだだ。世界は奴らに膝をつかされた。だから――次は、この世界そのものを作り直す」


 虚空の中、俺の背後に七柱が並ぶ。

 その瞬間、俺の中に新たな力が宿った。

 “創造”――神々が持つ唯一の力。


「この腐った世界は、裏切りで出来ている。なら、俺は――信頼で出来た新しい世界を作る」


 レオンの声に呼応して、虚無が形を変えた。

 崩れ落ちた大聖堂の跡地に、光の都が現れる。

 人は再び集い、互いを裏切らぬ誓いを立てた。

 新しい歴史が始まる。


 かつて勇者だった男の名を、誰も覚えていない。

 だが、世界は今も語り継ぐ。

 ――“裏切られた男が、神々と共に世界を救った”と。



 燃える王都の残骸を見下ろしながら、俺は息を吐いた。

 焦げた空気の中に、かつての仲間たちの声がかすかに響いている。

 泣き叫び、命乞いをし、許しを乞う声。

 だが、それらはもう届かない。

 神々の加護を受けた俺の足元で、世界は再構築されつつあった。


「主よ、勇者カイルがまだ息をしています」

 死神が報告した。

 瓦礫の下、片腕を失い、血に塗れたカイルが這い出してくる。

 それでも、あの傲慢な瞳だけは失われていなかった。


「……俺たちは、世界のために戦ったんだ。お前だって、仲間だったじゃないか」

 懺悔にも似たその声に、俺は鼻で笑った。

「仲間? それを言うなら、なぜ俺を捨てた?」

「違う、あれは……お前を守るために――」


 その言葉を聞き終える前に、俺は手を伸ばした。

 光の糸がカイルの胸を貫く。

 魂を掴み出し、目の前に引き寄せる。

 透明な炎がその魂を包み、ゆっくりと形を変えていく。

 やがて炎の中から一匹の小鳥が現れた。


「勇者カイル。お前は、今から永遠に“真実を語る鳥”としてこの世界を彷徨え」

 鳥が悲鳴のように鳴き、飛び立った。

 その声は人の言葉となり、世界中に響き渡る。

 ――勇者は偽りの英雄だった。

 ――裏切られた男こそが、真の救世主だった。


 世界の歴史が、音を立てて書き換わった。


 エリナのいない空席、カイルのいない玉座。

 勇者パーティの名は、永遠に“裏切り者たち”として記録された。

 そして代わりに、“神々の契約者レオン”の名が新たな聖典に刻まれる。


 だが、俺の心は静かだった。

 復讐を終えた後に訪れる虚無を、俺は最初から知っていた。


「主よ、世界の均衡は崩れました。どうなさいますか?」

 知神が問う。

「均衡なんて最初から存在しなかった。強者が奪い、弱者が従う――それがこの世界の真理だ」

「では、再びその“真理”を築かれますか?」

「いや……今回は違う」


 俺はゆっくりと手を掲げた。

 かつて滅びた王都の上に、光が立ち上がる。

 それは神々の力を通じて生まれた“新たな世界樹”だった。

 枝は天を貫き、根は地を包み、世界全体に命の循環をもたらす。


「この世界は裏切りで壊れた。ならば次は――信頼で築く」


 戦神が剣を突き立てた。

「我ら神々は、主の理に従おう。だが、主よ。お前は神ではない。人間だ。永遠は持たぬ」

 俺は笑った。

「それでいい。俺は“終わりある王”として生きる。神々よりも短く、だが人よりも長く」


 聖神が微笑んだ。

「では、我らはあなたの国を守りましょう。“レオンの光”として」

 神々の姿が一人、また一人と霧のように消える。

 彼らは世界の基盤に溶け込み、海や風や大地の法則そのものとなった。


 静寂の中、俺は一人、廃墟の中央に立つ。

 目を閉じると、ほんの一瞬――

 かつて共に笑った仲間たちの声がよみがえる。

 笑い合い、飯を食い、肩を並べて戦った日々。

 あれも、全部嘘だったのか?

 ……いや、あの瞬間だけは確かに“本物”だった。

 それだけで、十分だ。


「もういい。全部、終わった」


 俺は天を見上げ、最後の命令を告げた。

「世界よ、再誕せよ」


 瞬間、光が世界を包んだ。

 山が甦り、海が生まれ、星が瞬き、人々が再び息を吹き返す。

 ただし、裏切りを知らぬ新しい民として。

 かつての勇者たちの記憶も、戦いも、誰の心にも残らなかった。


 そして、最後に残ったのは――俺だけだった。


 風が吹く。

 空は青く澄み、鳥が鳴いた。

 その鳥は、小さな声でこう囁いた。


『ありがとう。あの時、仲間でいてくれて』


 俺は目を細め、空へと手を伸ばした。

 カイルの魂が宿る鳥が、光の中へと消えていく。

 その姿が完全に見えなくなったとき、俺はようやく微笑んだ。


「……これで、ようやく本当に終わりだ」


 世界樹の光が大地を包む。

 神々の声が風に溶け、誰も知らない新しい時代が始まる。


 そして人々は、語り継ぐ。

 ――かつて“神々の王”と呼ばれた男がいた。

 ――彼は世界を滅ぼし、同時に救った。


 その名はレオン。

 裏切られた冒険者にして、創世の王。

 彼の“ざまぁ”こそが、世界の再生だった――。


                      【完】

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