第二話
怖いもの見たさで心霊スポットに行くのはよくある話。
かく言う俺・小島も、友人の山根と肝試しに来ている。
車を走らせ、たどり着いたのは、古びた洋館だった。
すこぶる大きい訳ではないが、2階建てで、相当に寂れている。
小島「うわ……マジで出そうな雰囲気してんな」
とは言え、俺も山根も霊感体質というわけではない。ただの怖いもの見たさだ。
だから、特に気負うこともなく、俺たちは一緒に洋館内を散策する。
床は見事に穴だらけで、下の階が覗けるほどだった。どうやら地下室もあるようだ。
ひと通り1階の散策を終え、次は上か下かという話になった時――山根が口を開く。
山根「二手に分かれないか?」
小島「また死亡フラグじみたことを……」
とは思ったが、実際のところここまでは何も起きてない。ただのボロ屋敷って感じだ。
なので俺たちは、10分後に1階で落ち合うことを決めて分かれることにした。
小島「良いんじゃない」
俺は承諾して2階へ。山根は地下室へ向かう。
2階もまた穴だらけで、見下ろせば地下の様子まで見えてしまう。
穴越しに山根の姿が確認できた。
山根「おおっ!? お〜〜」
何かにリアクションしているようだったが、特に異常はなさそうだ。
俺も特に変わったこともなく、探索を進める。
それから10分が経ち、集合時間になった。
だが――山根は来なかった。
数分待っても姿を現さない。
さっきは何も無さそうだったのに……。
嫌な胸騒ぎを覚えながら、俺は山根を探しに地下へ向かった。
地下室もまた語るほどのものではなく、ガラクタが散乱していた。
一つ一つ覗き込みながら進むと、大きな業務用の冷蔵庫を発見する。
それが――なぜか稼働していた。
小島(……電気、通ってたのか?)
気になって扉を開けてみた。
中には、豚肉、牛肉、鶏肉……
そして――山根の生首。
それを見た瞬間、血の気が引いた。
目は開いたまま、こちらを見ている。
俺は手がふるえ、恐怖で固まってしまった。
そのときだった。
背後から、「ズルッ、ズルッ」と何かを引きずる音が聞こえた。
恐る恐る振り向くと――そこにいたのは、
紫の女だった。
白衣のような血染めの衣を着て、手には肉包丁。
その背には、山根の身体を担いでいた。
紫の女は無言で山根の遺体を放り投げ、俺の方へとゆっくり近づいてきた。
小島(ヤバい……殺される)
俺は反射的に逃げ出し、階段を駆け上がり、洋館から飛び出す。
車に駆け込むように乗り込み、鍵を差し込んで回す。
だが――エンジンが、かからない。
小島「くそっ……動けよっ……!」
何度も、何度も鍵を回す。
急がなければ――紫の女が来る!
ガチャッ――ブルルゥン!
ようやくエンジンがかかった。
念のため、後方を確認する。
追いついてきてないか――?
横を見る。
が、そこにはすでに紫の女がいた。
車のガラス越し、俺と対面する位置に。
まるで、待っていたかのように。
そして彼女は、ゆっくりと肉包丁を振りかざし、ガラスを叩き割った。
――次の瞬間、俺の頭に激痛が走った。
小島「ああああっ――!」
――俺は頭をたたき割られ、それと同時に布団から飛び起きた。
またかよw