旅立ち
ようやく旅立ちです。4話かかりました。
じわじわと書いてますので、今後ともよろしくお願いします。
ガルゼンのなんとなーくなキャラデザは決めてきました。
セルナの旅立ちを祝うかのように、空は雲ひとつない快晴だった。
「さあ、参りましょうガルゼン様!ここから、私の巡礼の旅が始まります!」
ベルヴィアの穏やかな風に吹かれながら、セルナは振り返って元気いっぱいにそう言った。
「一つ、気になっていることがあるんだが……聞いてもいいか?」
「はい。なんでしょうか、ガルゼン様?」
セルナの瞳をまっすぐに見つめながら、ガルゼンは問いかける。
「どうして、アレとやり合おうとしてるんだ? それが世界に必要なことだってのは俺も理解してる。だが、お前を見てると、それ以上の何かがあるように思えてならない」
「……そうですね。一緒に旅をするなら、先に伝えておくべきことでした」
セルナはひと呼吸おき、静かに語り始める。
「私の両親は、魔物に殺されました。孤児になった私は、運よくマルダ様に保護され教会で育てていただいたんです。今の私を見ていただければ分かるように、訓練と教会の仕事に励んできました。ですが――」
彼女は一瞬言葉を切り、伏し目がちに続けた。
「……私は、どうしても許せなかったのだと思います。両親を奪ったあの魔物たちを。ガルゼン様もご存知だと思いますが、この世界の魔物たちは“崩明災”をもたらす災厄級の魔物の封印から漏れ出た魔力によって生まれるとされています。学者たちは、それを“残滓”と呼んでおります」
それは、ガルゼンもよく知ることだった。メヒアカ大陸において「崩明災」や「カトルナ」を知らぬ者はほとんどいない。この世界を守るため、祈り人たちが命を懸けて旅を続ける理由でもある。
「これから話すことは、シスターとしてあるまじきことだと承知しています。それでも私は――《カトルナ》を封印し、復讐を果たしたいのです」
セルナはまっすぐにガルゼンを見上げた。
今まで訓練で見せていた一喜一憂の表情の奥に、こんな強い覚悟が秘められていたとはガルゼンには予想もつかなかった。だが、思い返せば鬼気迫るようなあの目も、今なら納得できる。
「……なるほどな。俺としては文句はねえよ。動機なんざ、人それぞれだしな。」
そう言いながら、ガルゼンは少し気まずそうに頭をかいた。
「両親のこと、変に思い出させちまったなら悪かったな。」
「いえ。このことは、マルダ様から“ガルゼン様には話すように”と言われていました。きっと聞いてくださると思って……」
セルナはどこか寂しげに、遠くを見つめた。
「……さてと。湿っぽい話はここまでにするか」
ガルゼンは手をパンと叩いて、空気を切り替える。
「はい!それで、まずはどこに向かえばよいのでしょう?」
「そうだな……。地図上じゃ、ここから一番近いのは“水のセアラ灯台”だな。途中にある《ナシーネの街》に立ち寄って補給していこう。試練の内容も、確かそこまで厳しくはなかったはずだ」
古びた地図を広げながらガルゼンは言う。
「ここからなら、二日もあれば着く距離だ」
「分かりました!旅のことは初めてなので、ガルゼン様にお任せします」
「……だから、様付けはやめてくれって言ってるだろ。ガルゼンでいい」
「それは無理です!マルダ様から、小さい頃によくお話で伺っていました。巡礼の旅に同行していた伝説の傭兵、そのお名前がガルゼン様だと!」
セルナの瞳が輝いていた。それを見たガルゼンは、少し照れたように顔をそらす。
「お、おう……まあ、照れるけど……伝説の傭兵ってなんだそれ…。ま、まぁいいか。行くぞ、セルナ」
「はいっ!!」
晴れやかな空の下、ベルヴィアの村を出発する二人。
――セルナは、胸いっぱいに希望を抱いて。
――ガルゼンは、今度こそ旅を完遂する覚悟を胸に。
こうして、二人の巡礼の旅が始まった。
以前より伝えていたガルゼンのキャラデザです。三面図なんて贅沢なものはないです。正面だけでなんとなく察してください_(:3」∠)_
次あたりでセルナも投稿します。女の子描くのが苦手ですが、頑張ります。