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セルナ

まだ何も始まってない。そんな感じです。

のんびりと書いていますので、生暖かい目で末永くお楽しみください。

 扉の向こうから足音が勢いよく迫ってくる。石畳を打つ靴音がぴたりと止まったが、扉はすぐには開かない。

 数秒の静寂ののち、呼吸を整える気配とともに、扉がそっと開かれる。

「は、はい!セルナ、参りました!」

 声の主は、先ほど受付で対応してくれたシスターだった。

 走ってきたのだろう、シスター服の裾がわずかに乱れている。細身の体にはまだ幼さが残るが、その目には芯の強さが見える。

 ガルゼンは、これがマルダの言っていた“祈り人”かと訝しむように彼女を見つめた。

「セルナ、こいつが私と五十年前に旅をしたヤツだよ」

 マルダが笑いながら紹介する。

「前に話しただろ? こいつがガルゼン。見た目は人間と変わらないが、年齢は500超えてから数えるのを辞めたとさ。種族は……まぁ、それは後で本人に聞きな。ともかく、私が信頼する数少ない友人さ」

 セルナは目を丸くした。

「こ、この方がガルゼン様……!? 本当に……?」

「どのガルゼンを想像してたか知らないが、俺がそのガルゼンだよ。このばあさんとは、昔巡礼の旅に同行した仲でな。……まあ、詳しくは聞いてると思うが、その旅はマルダが片腕を失って終わった。あの時は、別の祈り人が旅を完遂して、崩明災は防がれた」

 ガルゼンは少し申し訳なさそうに語った。

「なーに言ってんだい」

 マルダが豪快に笑い飛ばした。

「あの時は仕方なかったのさ。片腕くらいくれてやるよ。それに……」

 彼女はにやりと笑った。

「そのおかげで、今回セルナの護衛にアンタをこき使えるんだから、安いもんさ」

「おいおい……この子だって、いきなり俺みたいなゴツい傭兵と旅するなんて嫌だろ。なあ?」

「わ、私は……ガルゼン様と旅ができるなんて、光栄です! 嬉しいです!」

 ぶんぶんとガルゼンの手を振るセルナ。その勢いに、ガルゼンは「えっ……?」と引き気味になる。

 マルダはドヤ顔だ。




「それじゃあ、手合わせでもしてもらおうか」

 マルダの言葉に、ガルゼンは軽く頷く。

「そうだな。本気で打ち込んでくれ。お前さんの実力を見ておきたい」

「はい! 胸を借りるつもりで、全力で行きます!」

 教会の庭で、二人は対峙する。ガルゼンが申し出たのは、旅の前に実力を確かめるためだった。

「私が見届けるよ。セルナ、このナメた顔の男をぶっ飛ばしてやりな!」

「はいっ!」

「いやナメてねえよ!? ああもう、言っちゃったな……。仕方ねぇ、始めるぞ」

 ガルゼンは木剣を手に取る。対するセルナは、両手にガントレットを装着していた。

 ガルゼンの目がわずかに細まる。あのガントレットは、かつて練習の為にマルダが使っていたものだった。

 シスター服を脱いだセルナの姿には、以前の華奢な印象はなかった。適度に鍛えられた筋肉が、確かにマルダの“しごき”が本物だったことを物語っていた。


 ――そして、彼女の姿がふっと消えた。


 次の瞬間、ガルゼンのすぐ目の前にセルナが踏み込み、右のフックを繰り出す。木剣で弾いたが、すぐに左へ回り込まれる。セルナは一歩も引かず、間合いを詰め続けた。距離を取りたいガルゼンに、セルナは構わず攻め立てる。

(……変わってねぇな)

 ガルゼンの脳裏に、かつてのマルダの戦い方がよぎる。距離を詰めてひたすら攻め、反撃の隙を与えない。

 まさに、彼女の流儀そのものだ。

 だから、試したくなった。


 ――あの頃と同じ技が、果たして通じるのか?


 ガルゼンはセルナの攻撃を捌きながら、懐かしい間合いの感覚を探っていく。

 ――今だ。


 左足を半歩引き、誘い込む。セルナがさらに踏み込んできた瞬間、体をひねって木剣を回す。

 セルナの攻撃を受け流し、その勢いのまま彼女を地面に転がした。


「勝負あり!」

 マルダの声が響く。

「攻め方が真っ直ぐすぎる。もっと体を振って、フェイントを混ぜろ」

 ガルゼンは手を差し出しながら言った。

「ありがとうございます。やっぱりガルゼン様には敵いませんね」

 セルナはその手を握って立ち上がる。

「でも筋はいい。マルダより強くなるかもな」

「なんだいその言い方は! 全盛期の私の方が強かったに決まってるじゃないか!」

「そうですよ、ガルゼン様。私なんてまだまだです。治療魔法だって、まだ未熟ですし……」

 マルダがムッとした顔でぷいと顔をそらし、セルナは少し肩を落とす。

「ま、でも旅に出るには十分な強さはあるな。魔物に遭っても大丈夫だろう」

「本当ですか!? 良かった……! 自信、なかったんです」

「自信持ちな。私が鍛えたんだよ?」

「いや、その鍛え方が問題なんだって……」

「いちいちうるさいね、まったく。反省はしてるわよ」


 ガルゼンは、マルダはすでにこの世を去ったものと思っていた。

 だがこうして、再び顔を合わせることができた――それだけは、素直に嬉しかった。

 セルナもまた、自分に出会えたことを喜んでいる。


 ……それでも。


 この少女とともに巡礼の旅に出る――その先にある“結末”を思えば、胸の奥に重いものが沈んでいくのを感じていた。

おそらく次の次あたりで旅立ちます。

その時にはキャラの外見とかも投稿しようとか考えています。

ガルゼン・セルナ・マルダの3人の外見とかイラスト描いておきまーす。

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