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雅虎

〈憲法は罅割れたのか記念日よ 涙次〉



【ⅰ】


 ベルゼブブと云えば- とテオが回顧する。「奴に誘惑された、あの* 自滅願望の坊や、吉田雅虎は、今、眞田雅虎(さなだ・まさとら)と名乘つてゐるんですよ。SNSで。だけど、いくら苗字を變へたつて、雅虎の名の重み、それから相も變はらぬ自滅願望コメで、彼だとバレるのは必定。カンテラ兄貴が云つた通り、一種の莫迦ですよね」


「あゝ、あの坊や、釈放されたのか。確かカンさん、一生懸命生きてる奴しか斬らん、とか云つて、彼奴(きやつ)は警察に身柄預けたんだよな」とじろさん。



* 当該シリーズ第11話參照。



【ⅱ】


 サン=ジュストの爆死後、彼の靈魂は未だ魔界を彷徨つてゐる。ベルゼブブが、彼の人氣を利用して、何か惡だくみ出來ぬ物かと、思案してゐた。丁度、雅虎(今は眞田と名乘つてゐるやうだが、バレバレなんだよ!)の釈放と、その時期が重なつた。

 雅虎、すつかりサン=ジュストのカリスマに、「やられて」仕舞つてゐる昨今だ。



【ⅲ】


「シュー・シャイン」‐「サン=ジュストの靈魂が魔界に居殘つてゐます。要注意です」カンテラ「よく調べてくれた。あいつはカリスマがある方だから、靈魂となつても何かでつかい惡事を、模索してゐるに違ひない」



⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈魔絡みの人生ならばそれはそれ名を變へたとて實は變はらぬ 平手みき〉



【ⅳ】


 更生プログラム、と云ふ物があり、特に少年犯罪で惡質な足跡を殘した者、はそれで釈放後も、更生振りを確認されるのである。一言で云へば、「その後」の生活を自ら語る場、である。【魔】にして見れば、惡人になる素質を持つ者を更生させるなど、持つての他、なのであるが...

 サン=ジュスト、得意の自爆テロを、そこで雅虎に引き起こさせやうとしてゐた。雅虎は、ベルゼブブと組んだサン=ジュストに甘言にまんまと乘り、【魔】に改造されてしまつたのである。

 カンテラ、その事は知らない。



【ⅴ】


 だが、SNS- 雅虎はやはり一種の痴愚である。彼の爆破予定な更生プログラムについて、バラしてしまつたのだ。

 一瞬で、サン=ジュスト、彼に見限りを付ける。「余計な事を... 案外使へん奴だつたな」要は、彼は自分に注目が集まりさへすれば良いのだと、これでサン=ジュストにも分かつたやうだ。雅虎にとつては、自己顕示慾こそが生きる証しであり、死ぬ為の大義名分なのであつた。


 テオも、すぐさま彼のコメをキャッチ。「相變はらずの間拔けつぷり」と、その更生プログラム会場や、開始時刻など、即調べ上げてしまつた。


 これは- 俺も我が儘云つてないで、彼奴(きやつ)を斬つて「やらねば」なあ。でも、氣色惡いのも、變はりないのだつた。あ、これ、カンテラの「思ひ」ね。



【ⅵ】


 不承不承だが、カンテラ、じろさんに着いてきて貰ひ(かう云ふところが、カンテラの「大人になり切れない」一面)、現場に向かつた。


 雅虎「あゝ、カンテラさんが僕を斬りに來てくれた。これで惡事に(まみ)れた人生ともおさらばだ」カンテラ(膨れつ面で)「その為に、更生プログラムがあるのではないか。お前はアホか」カンテラ、彼の方を見ずして、斬つた。爆破の前に間に合つた幸運もそこそこ、カンテラ、兎に角、嫌な仕事だつた。

 じろさん「まあこれでいゝつて事にしやうよ」



【ⅶ】


 勿論、謝禮は、更生プログラム当事者、行ふ側、受ける側、から出た。あまり多額とは云へない。それ程、予算的な浮きはなかつたし、刑務所から出てきたばかりの人たちに、そんな余裕がないのは、明らかであつた。

「ち、しけてるぜ」と、カンテラ云つたかだうだか。



【ⅷ】


 だが、これは前回彼と相まみえた時、カンテラが雅虎を斬らなかつた、と云ふ事に端を發してゐるのだし、どの道彼のやうな者は、斬らなきやゐなくならない。カンテラ、その事をぢつくり、考へた夜だつた。


 お仕舞ひ。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈憲法の日にそぐはぬは大義なる稱し方かな實直であれ 平手みき〉



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