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第37話:カオティックリキッド


「はー。肥大王ねぇ」


 現れるのは浅層の三階層が多いという。今から乙級ハンターがダンジョンに潜って、肥大王と会敵する……ようにふるまう。俺もその一人であり。つまり肥大王を一人で撃破できることを前提に運用されるというわけで。


「機嫌」


 その肥大王の排除のためのミッションが開始され。俺がダンジョンに潜ると、見知らぬ女子が俺に話しかけてきた。朗らかというか友好的に俺に近づいて、抱き着いてくる。一応危険も覚悟したが、そういうことは一切なく。


 えーと。誰コイツ。


 ていうかパイオツが酷い。おそらくFを超えている。こちらに走って近寄ってきたときもバインボインに揺れていたので、俺はとっさに目を逸らしたくらいだ。この巨乳の女の子はいったい誰ぞ。


「メテオール」


「メテオール!?」


「肯定」


 ムギュッと俺を抱きしめて乳圧を伝えてくるメテオールは、確かに喋り方がそれっぽい。


「機嫌?」


「御機嫌かなら然程でもないぞ」


「疑問」


「ちょっと厄介事抱えていてな」


 あーあー。あとおっぱいを押し付けるな。俺の脳がダメになる。相手がスライムだと知って。ソイツが人間に変化していて。ついでにカオスボディだから色んな万物に変身できると知っても。そもそもコイツは何故巨乳に。


「乳房」


 ムニュウと押し付けられるその質量に俺は慌てて意識で素数を数え始める。とはいえ十七くらいまでしか知らんのだが。


「協力」


「ああ~。パイオツでダメに~……ん? 手伝ってくれるのか?」


「肯定」


 いや。そもそもお前は卍山下ウツロのテイムモンスターだろ?


「肯定」


 許可なく俺に従うのはいいのか?


「仁義」


 どこで覚えた。その言葉。


「たしかにお前は不死だし。損耗しない戦力としては妥当か」


「叡智」


「馬鹿言うな。巨乳を前にエッチでいられない男子なぞ存在しない」


「後刻報告」


「すんません。それに関しては黙秘でお願いします……」


「態度次第」


 余計な知恵を付けやがってからに。


「で、草原エリアか」


 どこまでも広がる草原。空も高く。そもそもここダンジョンだよなというツッコミはあれど。俺はここからは正体を隠すために仮面を被る。特にけれんみもない仮面だ。制作者の意向で宗教的な模様が描かれているが、俺にはどうでもいい。


「で、肥大王を探さにゃならんのだが。心当たりあるか?」


「皆無」


 ですよねー。そもそも浅層にいるとは言っても、その浅層にだってエリアがあるのだ。もし草原エリアにいないのであれば、俺のこれからは徒労になる。


「グルル……」


 もちろん肥大王だけを探せばいいわけでもない。ここがダンジョンである以上、モンスターだって普通に湧いてくる。俺がメテオールのおっぱいにアワアワしているのは、決して童貞だからではない。とはいえリインのちっぱいだって貴重な人類の財産であることも事実で。大きければ良いというわけじゃないぞ。大きければ問題は無いんだが。


 で、現れたのはヘルハウンド。口から火炎を放つ犬型モンスターだ。ていうか、ここで炎を撃たれると俺としては結構困るのだが。なにせ草原エリアだからな。枯野に火を放つ、とまでは言わないが、炎上すればどうなるものやら。と思った時にはヘルハウンドは火を放っていた。


「放火」


 で、そのヘルハウンド目掛けてメテオールが疾駆する。まぁコイツの場合。俺の事情がバレても問題にならないので、その点で言えばオーケーなのか?


 火のついた草原が、辺りを火炎地獄に変貌させる。ホメオスタシスがあるダンジョンで、別に火災を気にしてもしょうがないし。俺はヘルハウンドに向かって襲い掛かる。


「ワォォン!」


 相手は四体。うち二体をメテオールが引き受け、残り二体を俺が引き受ける。ガバァと顎を開いて俺に襲い掛かるヘルハウンド。その顎を、俺の跳ねあがった足が蹴り上げる。と思ったら、その一撃でヘルハウンドの頭部が消し飛んだ。


「……あら?」


 今の俺はジュラシックを部分展開している。それでも足りすぎるのか。まぁたしかに浅層だもんな。下層のモンスター相手にするような勢いではやり過ぎるか。


「ワォォウ!」


 さらにもう一匹。クルリと身体を軸回転。そして振るった踵回し蹴りがヘルハウンドを絶命させる。落ちたドロップアイテムを拾わずに、メテオールを見る。既に決着がついていた。アルカヘストでヘルハウンドを溶かしているメテオールを見るに、心配も無用か。


「エーテルプリズムいるか?」


「所望」


「じゃあ食っていいぞ」


「感謝」


 で、巨乳美少女のまま、拾ったエーテルプリズムを口に入れて、そのまま吸収するメテオール。


「ていうかアルカヘストて」


「強力」


「そりゃなぁ」


 錬金術でいうところの万物溶解液。つまり溶かせないもののない強酸だ。質量に依存している相手であれば無条件で消滅させられる攻撃。正確には消滅ではないのだが、ここでは議論しない。


「火災」


 で、ヘルハウンドの起こした火が、草原を燃やしていた。


「ほっとけ」


 俺は下層に向かう階段を探す。ついでにさらにポップしたヘルハウンドが襲ってくる。


 炎を吐くヘルハウンド。その放射器のように口から出る炎を、


「――冷氷凍寒――」


 俺は温度を下げることで鎮火させる。


「魔術?」


「魔術だな」


 メテオールの疑問にも答える。そして。


「――圧縮狭搾――」


 前に突き出して広げた手を、その眼前にある空間ごと握りつぶす。強力な圧縮作用が発生し、それによってヘルハウンドはミンチになった。俺がプロキッシャーとして行使可能な魔術だ。人類側には公開していないので今のところ俺にしか使えない。これでウィンディーズ王道魔術のように回線を公開して、使用にロイヤリティを要求すれば俺は金持ちになれるのだが、あえてしていなかった。


「さて、階段探すか」


 とにかくメテオールにとっても問題が無いことを確認できただけでも朗報だ。


「無茶苦茶」


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