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第30話:一応学生だったりして


「くあ……」


 ガヤガヤと騒がしい教室。俺は久方ぶりに学校に来ていた。


 国立ハンター学院。


 ハンターを目指す学生を集める学院だ。いやいや。俺だって所属しているんだ。此処にいるのは不思議じゃない。だが俺に話しかけてくれる生徒は誰もいなかった。


 俺はボッチだ。友人を作ろうにも、そもそもどうやって作るものなのかさえ知らなかった。人生経験はさほど多くない。ちなみにだが俺が高等部でありながらハンターライセンスを持っていることは関係あるだろうか?


「おいーっす。じゃあ朝のホームルーム始めるぞ。お、御影。今日は来てるな」


「ういーす」


 来なくていいならあんまり来たくは無いのだが。


「動画見たぞ。グレイトドラゴンに襲われてたな。貴重な体験だろう」


「死にかけましたが」


「スライムの中に入った後は、どうやって倒したんだ?」


「目玉から銃弾ぶち込んで脳を破壊しただけ」


 まさか本当のことを言うわけにもいかず。


「ま。ドラゴンバレーはマグマで覆われているからな。立ち位置的に考えて、大立ち回りは出来んのだが」


「そゆことそゆこと」


「じゃ、出席取るぞー。相沢~」


 そうやって朝のホームルームは過ぎていき、授業も過ぎていく。とはいえハンターライセンスを取った生徒は、それだけで単位不問になるので問題は無いのだが。出席しているのは何となくだ。


「マジナ先輩! 飯にしましょうにゃー!」


 で、昼休み。俺に唯一話しかけてくる生徒。高等部一年でありながら、丙級ハンターライセンスを持っている天寺リインだ。


「おう。今行く」


 というか、毎度は毎度で毎度のように、リインは金を持っていない。なので俺が奢らないと食事も出来ない。


「えーと。かつ丼とうな丼と唐揚げ定食とチキンカツ定食とカレーと……」


 次々と頼む豪勢な食欲のリインは……まぁ平常運転で。


「いっただっきまーす!」


「いただきます」


 俺は普通に定食だ。


「授業はどうだ?」


「ついていけてるにゃーよ。っていうか国家試験受かってるんだから。そこはまぁ」


 ハンターライセンスは国家資格だ。ぶっちゃけ覚えることは多い。モンスターの種類からエリアの種類まで。それにおける注意点。対処。諸々記憶せねばならないことが多すぎる。


「マジナはずっと丁級でいてにゃ?」


「丙級くらいはなろうと思えばなれるのだが」


「にゃー。そしたら私の価値が……」


「大丈夫だ。メイド服はよく似合っている」


「セクハラにゃんだけど」


 否定はしない。


「天寺さん!」


 で、飯を食っている最中。一人の男子がリインに話しかける。


「んぐ?」


 その男子の方を見て、モグモグと口を動かすリイン。


「是非とも稽古をつけていただきたく」


 まぁそういうこともあるか。当然リインは丙級ハンター。教えを請いたい生徒だっているだろう。


「面倒」


 それをあっさり断るリインも結構容赦がない。もぐもぐと定食を食っている。


「ふっ。君には僕を訓練する権利を上げよう!」


「一人でやっててにゃー」


 もぐもぐと食べる手を止めない。


「やっぱ丙級ハンターって人気なんだな」


「今更気付いたにゃー」


「いや。わかってはいたつもりだったが」


「にゃわけで、マジナ先輩には私を養う権利を進呈するにゃ」


「一人で野垂れ死ね」


「そう言わず~」


 やいのやいの。していると。


「そこの君!」


 ビシッと某裁判ゲームの指差し方で、俺を指す男子生徒。


「何か?」


「僕の天寺さんに気安く話しかけるな!」


「はあ」


 米をモグモグ。


「嫉妬か?」


「嫉妬だ!」


 それは清々しいことで。


「で、にゃにか用?」


「ですから指導をお願いしたいのです。ボクはハンターになるための逸材だ」


 フサァと軽やかに前髪をかき上げながらイケメンの演出をする男子生徒。


「とは言われてもにゃー」


 そもそも教えてどうのこうのってレベルを超えているのだが。


「筆記試験は問題なくクリアできるのだよ。だが実施試験がどうしても。まったく国も見る目がない。僕ほどのハンターとなればいずれ乙級にも至るというのに」


「ふーん」


「というわけで僕にレクチャーを……」


「お断り」


「何故です! 僕が乙級ハンターになった暁には天寺さん! あなたを厚遇して差し上げる!」


「将来性は感じにゃいかにゃ」


「いずれ乙級にいたるハンター。それでもですか?」


「別にそこは関係にゃいけど」


「そこの君!」


 で、男子生徒は俺に矛先を向けた。


「君が天寺さんに何かを吹き込んだな! 悪意ある情報は犯罪だぞ」


 何故俺がそんなことを?


「わからないが! 他に考えられん!」


 さいですか


 別にそれを否定しようとも思わんのだが。


「リインにお願いするならいい方法があるぞ」


「拝聴しよう」


「飯を奢ればいい」


「あのーにゃ。マジナ先輩? わたしをにゃんだと思ってるにゃ?」


「フードファイター」


「否定も難しい……」


 実際にその通りだろう。学食でガヤガヤ食べているところに余計な注目が集まっている。いやだなぁこういう空気。


「天寺さん。何か食べたいものはありませんか?」


「今はいいかにゃー」


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