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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一騎当千の〈覇者〉

作者: わさがな

 その者を「彼」と呼ぶことにする。

 ただの平原を彼は歩いていた。その風格からして只人とは思えないくらいの覇気がある。それは目を合わせれば気絶してしまうほどのものだった。彼の歩いている平原が唯一ただの平原じゃないとするならばそこには数えきれないほどの死体が、血が残っていた。彼は死体に気にすることもなく平原をつき進んでいる。そのとき生き残っていた一匹の魔物が彼の背後に近づき鋭い爪を立て今にも襲おうとしていた。しかし


 「ふっ」


 彼が鼻を鳴らしながら腕を手を振り払うかのように動かした。その瞬間「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴっ!!!」という音を立て地面が抉れた。そして彼を襲おうとしていた魔物が首と体が真っ二つに分かれて絶命していた。彼はその魔物を一目見て


 「邪教の一味か?…………いやこの気配からして〈悪者〉の方か。いずれにしても迷惑極まりないな。」


 彼はそうつぶやき次の目標である町に進んでいる。彼の歩いた道には何も残っていなかった。

 

 《翌日》


 彼の進んだ町からは火があがっている。家は綺麗に切断され地面は穴だらけになっている。そして町の住人は安全な場所はないかと悲鳴をあげながら逃げまどい町から離れようとする。次の瞬間、その住人は殺さたことに気づくことなく絶命した。その隣には血まみれになっている彼がいた。


 「死ね!悪魔が!!」


 町を守っている騎士が彼に向かって槍を構え心臓に向けて投擲した。投擲された槍は風を帯びて回転する速度や貫通力を増し飛翔していた。当たり所が悪ければ並の騎士でさえ死んでしまうほどの威力だった。その騎士はこの技を使いたくさんの魔物を仕留めてきた。しかし今回は相手が悪かった。


 「遅いな」


 と彼は高速に動く槍をそれを上回る速度で掴み、何の苦もなく握り潰した。そして彼は常人では見えぬ速度で動き騎士を攻撃した。騎士はそれに気づき即座に体をひねり避けようとした。が、騎士の速さを10とするなら彼の速さは1000とも言えるほど差が開いていた。当然騎士は彼の動きを避けることはできず、四肢を折られていた。


 「なぜ!?このような所業ができる!?なぜその力を無辜の民のために使わない!?」」

 「?………お前は知らないのか?力を持つ強者が弱者をいたぶるのは自然の摂理であり、当然の出来事だ。我はそれを日常のごとくしているだけだ。これを普通と言ってなんとする?」

 

 彼はいつものことのように質問に答えた。騎士は青ざめた、この男はそれを享楽のためにやっているわけでもなくただ単純に、「自分は強者である、ゆえに力を振るう、ゆえに弱者を襲う」その一点を己の信条としていると。騎士は彼の考えを理解することができなかった、彼もまた騎士の考えを理解することができなかった。「質問は終わりか?」と言い彼は騎士に止めを刺すために手をあげる


 「あ…悪魔「グシャ」」


 と音を出し、騎士は絶命した。彼は周りを見渡すこれが最後一人か、と思いまた目標のために進む。

 町には雨が降り始めた、雨水は町の火を消し彼に付着した血を洗い流した。その町には魔物の攻撃にも耐えることのできる門も敵が侵入してきても撃退できることのできる精鋭の騎士達も彼には遠く及ばなかった。彼こそ今まで生まれてきた人類の中で最高にして最強の人、彼が山に剣を揮えば切断され、斧を海に揮えば割れる、千を超える軍勢を相手にしたった一人単身で戦い勝ち抜いてきた男。それはまさに()()()()だった。

 精霊に祝福されたのかもしくは造られたのか彼の出生を知る人間は彼含め知らなかった。

 彼は歩きながら先ほどの騎士が言った言葉を思い出していた。


 「『なぜその力を無辜の民のために使わない』か」


 彼は思案する。自分は、恐怖に怯えていた世界に希望の光を照らすために戦った〈勇者〉でもなく、世界を平和に導こうとした〈先導者〉でもなく、種族同士の争いを沈め手を取り合うようにした〈愚者〉でもない、自分は世界を全てを敵にまわし全てを制する〈()()〉であると。

 そして自分の夢はこの世のありとあらゆるものを己の手中に収め、大陸統一を成すことだと。そのために今、自分の邪魔をする国全てを落とし侵略している最中でもある。途中〈邪神〉の部下や〈魔王〉の手先が襲撃したりすることもあるが彼はそれをものともせず返り討ちにし進んでいる。ただ少々煩わしい時もある。


 「大陸の三割は掌握できた。この調子でいけば我の夢も叶う。だが……そうだな、少し速度を上げるか」


 そう言い先ほどまで歩いていた彼は誰にも見えない速さで走り抜ける。

 次なる国を目指して


 《数年後》

 

 そこにそのとき、彼は腕を掲げている。誰もがその腕を見る、否見なければ殺されてしまうからだ。

 ある者は絶望する、我々は負けてしまったのだと。ある者は期待する、強きあの方が支配する世界はどうなるのかと。ある者は恨む、自分の大切な日常を破壊したあの男に復讐しなければならないと。

 彼は唯一愛用している得物白銀の斧を掲げ。よくとおる威厳のある声で〈覇者〉はこう言った。


 『我はこの大陸全てを征服した最強の王〈覇王〉である』と



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