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星降る夜から

作者: 太刀風 紫雨

「それでそれで!?」

急かす僕の頭を父は撫でながら物語の続きを話す

「それからなー…」

僕はこの話を聞くのが好きだった

街に伝わる伝説。




『星が降る街』




街がいつもより賑やかだ

なんて言ったって今日は『星祭り』!

学校も仕事も半日で終わって、夜は星空のもとで家族や特別な人、大切な人と過ごす

「きら〜?起きているの〜?ご飯食べちゃいなさ〜い。」

「はーい!」

おばあちゃんが下から僕の名前を呼ぶ

タンタンタンッと軽やかに階段を降りていく

「おはよう!」

「おはよう」

「今日はいつもより起きるのが早いな。」

おじいちゃんが苦笑しながら言う

「だって、今日は”星祭り”だもん!」

僕はこの日が近づくとお父さんを思い出す

星祭りに関係しているお話をよく聞かせてくれたから

「今日帰ってきたら一緒に行こうね!」

今はお父さんもお母さんもいないけど、2人が生きていた頃から変わらず、毎年僕は家族と過ごしている

今年もおじいちゃん達と3人で過ごす

「急ぎすぎて怪我しないように気をつけるんだぞ。」

たしなめるおじいちゃんに向かって

「うん!」

と、朝ごはんを食べながら答えた。





「さよーならー!」

やっと終わった!

早く帰って準備しなきゃ!

「きらりー!この後、暇?」

「かなた君。なんで?」

今すぐにでも駆け出したい気持ちおさえ、かなた君の話を聞く

「お祭り、一緒に行かねぇ?他の奴らも誘ってさ!」

「あーごめんね!おばあちゃん達と一緒に行くことになってるんだ〜」

顔の前で手を合わせ、謝る

「そっかー…残念だけど仕方ねえな!もし見かけたら声かけろよ!」

かなた君は口調はぶっきらぼうだけど、とっても優しい子だ

「うん。もちろん!楽しもうね!」




「ただいまー!」

玄関の扉を勢いよく開ける

ドタドタと走りながらリビングに駆け込んだ

「ねぇ!早くお祭りに…」

2人がいつものように迎えてくれる。

「「おかえり。」」

ただ、

「おばあちゃん、足どうしたの?」

おばあちゃんの足にはギプスがはめられていた

「昨日降った雪が凍っていたみたいで今朝、裏庭で転んだのよ〜。」

「大丈夫なの?」

「お医者さんは骨にヒビが入ってるだけで折れてはいないって言っていたよ。」

「そっか…。」

折れていないなら早く治るかな?

お手伝い、これまで以上に頑張らなくちゃ…!

「それでね。」

おじいちゃんが僕の方に向き直る。

「お祭りには行けないから、お友達と行っておいで。」

「え…。いいよ!僕もお手伝いとかするよ!」

「お前、今日の星祭りずっと楽しみにしていたじゃないか。」

「でも…」

まだまだ、家事が残っているはず…

「気にしなくてもいいのよ〜私達はきらりが幸せそうなのを見るのが好きなんだもの〜」

そう言っておばあちゃんは僕の頬を優しくなでる。

おじいちゃんも頷いている。

「おばあちゃん…おじいちゃん…」

僕はとっても幸せだと思う

「お土産!買ってくるから楽しみにしててね!」






星祭りが行われているのは街の中心である広場『ポラリス』

空が暗くなると、夜空の星を模した明かりが灯る

真ん中の噴水の所に、かなた君達の姿が見えた

「かなたくーん!」

皆が僕を見る。

「「きらり!」」

「どーしたの?」

「何かあった?」

かなた君含め、皆から声をかけられる

「今日、一緒にお祭りまわってもいい?」

「え?でも、ばぁちゃん達と行くって…」

「おばあちゃんが怪我しちゃったんだ…。それで、友達と一緒に行っておいでって言われた。」

「大丈夫なのか?」

かなた君が聞く

「多分…。でも、元気そうではあったかな。」

「そっか。じゃあ、ばぁちゃん達の分まで楽しもうぜ!」

「うん!遊ぼう!」

おー!っと手を上げ、僕はかなた君たちと出店に向かった






「あ!」

星祭りの帰り道

空が暗くなりはじめて少したつ

「ん?どうした?」

「星せんべい買ってきてって言われてたんだった!」

僕は買い忘れをしていることに気づいた

「一緒に行くか?」

そう聞いてくれるかなた君に

「んーん。大丈夫。今日は楽しかった!ありがと!」

と伝えると、

「おう!また学校でな!」

「じゃあね!」

「うん!またね~」

と、皆とお別れした






「えっと…どこだったっけ…?」

星せんべいのお店どこかで見かけたと思うんだけど…

キラッ

「ん?」

目の端で裏山の空が光った

それは、大きな流れ星だった


ゴウンッッ


直後、激しい地響きがした

「きゃあ!」

「地震か!?」

お店の様々な星の形をしたランプが揺れる

「もしかして……!」

隕石…?宇宙船!?

SFや宇宙が好きな僕の頭の中からはお煎餅のことなんかもう抜けていて、気づいたら裏山へと駆け出していた






「う〜ん?」

この辺だったと思ったんだけどなぁ。

探し始めて20分ぐらいたったけど、全然見つからない…

「気の所為だったのかなぁ?」

そろそろ帰ろうかなぁ…。

ガサガサガサッゴンッ

「え…?」

なんの音…?

音がした方に向かって声をかける

「だれか…いるの…?」

ガサ……

草をかき分け奥を見る

「……ッ!」

「え…」

そこにいたのは大きさ30cmくらいの生物(?)だった

猫にとても似ているけれど、猫じゃない

もっとまん丸いフォルムだ

しかも、立っている

お腹の部分に星の模様が光っていて、その瞳は中に銀河が詰まっているかのように煌めいていた

「……」

「……」

じっと見つめ合う

「えっ…と…。君は………。…なに?」

初めて見る…。

未確認生物ってやつ…?

「…!…!」

オロオロと慌てふためいている

喋れないのかな…?

すっ…と屈み、手をのばす

「怖く…ないよ?」

ビクゥっ!

「……ナ…」

ん?なにか…



「オレサマニサワルナ!」



えぇ〜…そういう反応…?

「喋れるの?」

「アタリマエダ。コレクライ。」

話も通じてる

「大丈夫?この辺に隕石?宇宙船?が落ちたかもしれないんだけど、怪我とかしてない?」

「ダイジョウブダ。ソモソモ、ソレハ オレサマダ。」

「?」

「サッシノ、ワルイニンゲンダナ。ソノ”インセキ”?”ウチュウセン”?トイウノガ オレサマダ。」

「え!?あれ君だったの!?」

「タブンナ。」

「大丈夫なの?」

「ダイジョウブダ。オレサマタチハ、ウチュウデモ クラセル ヨウニ”ガンジョー”ダカラナ。」

なるほど…宇宙ってやっぱり過酷なところなんだ…。

「ソレヨリオマエ、ヨクフツウニ ハナセルナ。」

正直びっくりしたが、少し頭が麻痺してるみたい…

「やっぱり…君は…未確認生物なんだね?」

「チガウ。」

「え?だって、動物みたいなのに話せてるし『良く普通に話せるな』って言ってたよね?」

「チガウ。オレサマハ ”ミカクニンセイブツ”デハナイ。ホシノセイダ。」

「星のせい?星になにかされたの?」

「ホシノ セイレイダ!」

「あぁ!”星の精霊”!」

未確認生物もとい、星の精霊はうんうんと頷く。

「僕初めて精霊を見たよ!早く自慢しなきゃ…!」

「ダメダ。」

「え?」

「ワレワレノ ソンザイハ、ヒミツダ。」

「なんで?」

「ナンデモダ。ソレヨリ、ナマエハ ナント イウ。」

「僕?僕は”きらり”友達からは”きら”って言われているよ!」

「”キラリ”カ。オレサマハ”シュース”ダ。ヨロシクナ。」

「うん、よろしく?」

ちょこんと出された前足?と握手を交わす。

「ん?」

「ナンダ?」

「シュースは秘密の存在なんだよね?」

「ソウダ。」

「『よろしく』していいの?人間にバレちゃだめなんだよね?」

「アァ。ダイジョウブダ。キラリニハ テツダッテ モラウカラナ。」

「え?な、何を…。」

シュースは上を見上げる

「”ソラ”ヘカエルノヲダ。」

……え。






場所を移して僕の家

入るのに苦労した…。

絶対に2人に不審に思われた……。

「どうぞ…。粗茶ですが…。」

と言ってお茶とお菓子を出す

「粗茶」の意味あってる?

「アリガトウ。ン?コレハ?」

シュースは小さなお菓子をつまむ

「”星の欠片”っていうお菓子だよ。星祭りが始まる頃作られる砂糖のお菓子。」

「”ホシノカケラ”…。」

パクっ

「ッ!ウマイ!」

「それは良かった。」

気に入ったようでパクパクと食べている

「それで?その…空に帰るって?」

シュースは手を止める

「アァ、ソウダ。オレサマハ、ソラカラ オチテキタ。」

「うん。つまり、僕の見た隕石?はシュースだったってことだよね。」

「ソウナルナ。」

「うん…。でもどうやって帰るの?」

「……。”ホシガフルマチ”のデンセツヲ、シッテイルカ?」

「え?うん。僕の街に昔から伝わる伝説だよ。」

「ソレヲシッテイルナラ、ハナシハ スグスム。」

「どゆこと?」

「ソノハナシヲ、ジッコウニウツセバイイ。」


「いや、無理でしょ…。」


「ナゼダ?」

こてん。と首を傾げる

「だって、あれはただの”伝説”だし…”おとぎ話”だから…。」

「デモ、オレサマノ ソセンハ、カエッテキタゾ?」

「え?」

「ニンゲンニ、タスケテモラッテナ。」

「そ、そんなのシュースの祖先が勝手に言っただけじゃ……」

「”ホシノセイ”ハ キオクガ、ホゾン サレテイク。ソノ ニンゲンノ カオモ、シッテイル。」

保存…。映画みたいに見れるってこと?

1人で考え込んでいると…

「……タノム。」

今までに聞いたことのないか細い声だった。

見知らぬ土地で一人(一匹?)。僕だったらどれだけ心細いだろう…。

周りには人がいるのに、お父さんとお母さんを亡くしたときは心細かったな…。

シュースのお腹にある星模様の光もこころなしか暗くなって見えた

「……やろう。」

「エ…。」

「僕がシュースを宇宙に帰すよ!」

「ホントウカ…?」

「うん!約束する。」

ぱぁっとお腹の星を瞬かせる。

絶対シュースを宇宙へ帰す!

「まず、伝説の物語を書き起こそう!」







〈空が澄んだ冬の夜、ソレは現れた。

ソレは不思議な話をする。

祠の鍵は開く…と。

鍵穴は星の形。

開かれた場所には光の源。

再びソレは導く。

次は心を探しに行くらしい。

その心は凍っており、何をしてもだめだった。

暖かな星は凍った心を溶かす。

深く潜れば届く。

心の奥底に眠るきらめきに。

星は行く手を示す。

その先には守護者が立ちはだかる。

宇宙の闇を照らすのは一つの星。

その星を手に入れることができたならば、宇宙への扉が開かれるだろう。〉







お父さんが話していたのはもっと物語風になっていたけど本当に伝わる伝説こんな感じ。

「うん…。」

「フム。」

「ほんとに帰ってこれた?」

「カエッテ コレタワ!」

「う〜ん。まずは解読…からかな。知ってることとかあったら言ってよ?」

「マカセロ!」

「じゃあ初めから…。」






それから、シュースの話も聞いたりおとぎ話の方も参考にしてみたりして色々なことを調べた。

そして大体場所もわかった。

「シュース、行ける?」

「オウ!」



「おばあちゃん!おじいちゃん!星せんべい忘れちゃったから買ってくるね!」

「無理にじゃなくていいのよ〜」

おばあちゃんはそう言うが

「ううん。忘れ物もしちゃったから見てくる!行ってきます!」

と言って、広場へ向かう

嘘ついてごめん!ちゃんとお煎餅買ってきます!






人気のいないところでシュースをカバンから出す。

「苦しい」というシュースを無理やり詰めた。

誰かに見つかったら絶対に「それ何?」って聞かれるもん。

「まずは『祠』!祠は多分いつも行ってるところだと思う!」

「ジャア、ソコニ ムカオウ。」






「ここじゃないのかなぁ?」

首を傾げて目の前にある祠を見る

山の麓にある祠。

「僕の街の祠ならこれだと思うんだけど…」

祠の周辺を探してみたけど何もないし、鍵もかかっていて開かなかった。

「おかしいなー。シュースは…」

そう言って僕は振り返る

シュースは違う方向を向いていた

「シュース?」

「ムコウダ…。」

「え?」

「ムコウカラ、ホシノ”ケハイ”ガスル。」

「星の気配?」

シュースは見ていた方向に向かう

「ちょっとまってよ!」



「すばしっこい…」

意外と速かった

「キラリ。」

「何?」

僕が顔をあげると目の前にはさっきとは別の祠があった

ただ、周りには苔や草が茂っていて荘厳ともとれるし、ボロいともとれる

そんな祠だった

「ココダ、コノ ナカカラ”ケハイ”ガスル」

「この中?」

「ソウダ。」

「初めて見る祠だなぁ。どうすれば開くんだろう?形はさっきと似てるけど…」

祠の扉のところには星のくぼみがある

「モノガタリナラ、ホシノイシデ、アクンダヨナ?」

そこに石をはめると回るらしい

「うん。でもそんな石無いし…。」

「ニタモノハナイカ?」

キョロキョロと辺りを見回す

「似てるもの…」

あっ!

「ナ、ナンダ!?」

僕はガシッとシュースを掴む

「あった。」

「ハ?」

「お腹!」

シュースのお腹にある星の形が一緒だ!

こころなしか光が強まって見える

「コレヲ ドウスルンダ…?」

シュースのお腹にあるのは模様であって、はめて回せようもない

「……とりあえずかざしてみる?」

なにかのセンサーがつくかも?

「キラリ、タノム。」

まん丸ボディなので登るのに苦労していたシュースはそう僕に頼む

「はいはい。」

僕はその星の形のところまでシュースを持ち上げた

すると、


ガチャンッ


「あ、開いた?」

鍵が外れる音がした

「開けるよ…?」

扉を引くと


キィ……


と音を立て開いた。

そして中には宝石のように輝く欠片が置いてあった

「オォ…」

「これが光の源…」

ライトを照らして見てみる。

「きれい…。」

かなり細かい粒もあるので落とさないようにカバンに入れた。


次は『心』を探す






「この近くだとここだけだと思うんだ」

「ハートイケ カ。」

「うん。このハート池は別名”こころ池”とも言うんだ。あと、今みたいに冬だと水が凍るから…」

『暖かな星は凍った心を溶かす。』って事なんだろうけど…

でも、どうやってこの凍ってる池を溶かすんだろう…

それに、『深く潜れば届く。』ってことは潜るんだよね…ここに…。

「アレヲ、コオリノウエニ、オイテミルノハドウダ?」

光の源のことだろう

「やってみるよ」

凍った池の水の上に数粒バラまいてみる。

「「…………。」」

「何も起こらないね。」

「ドウシタモノカ…。」

考え込む

「これって…食べられるのかな…」

「ダイジョウブカ?アタマ。」

「いや…だってなんか星の欠片に似てない?」

「サッキノ、オカシカ」

シュースは手にある光の源をパクリと口に入れた

「ちょっと!シュース!」

パアァァァ…!

「え?」

「カラダガ、アツクナッテキタ…!」

シュースを取り巻く空気が熱い

「あっ見て!」

シュースの後ろにある池が少しずつ溶けていた

手をかざすとその速度は速くなっていく

「溶ける!」「トケル!」

「でも、潜るのはどうする?息続かないよね?」

「イキ?」

「うん。息。」

「ナンダ ソレハ?」

「え?あれ?シュース…」

息してない!?なんで!?

「………そうか!宇宙だからか!住んでるところが!」

酸素が少ないから、息をしなくてもいい体になったんだ!きっと!

てことは……

「寒いのも平気なの?」

宇宙の気温はとてつもなく低いことで有名だ。

「ソレモダイジョウブダ。オレサマガモッテコヨウ。」

シュースはふんぞり返りながら答えた。



「気をつけてね!」

「ウム。」

”ヒカリノミナモト”ヲゼンブ、タベルトネツハ、マシタ。

「イッテクル。」

コオリガ、トケテイク。

オモッタヨリ、フカイナ。

ミマワスガ、ソレラシイモノハ、ミツカラナイ。

ドコダ…

ン?コレハ…

マタ、ケハイガ…

グングン、ススンデ、イクト…

アッタ…!

キットコレダ…!

ソレハ、クサ?ミタイナモノニ、オオワレテイタガ、ハコニハイッテイルカラ"カギ"ハモンダイナイ


パキパキパキ……ッ


「ン?」

コオリガ、モドッテイク

シマッタ…!

ハヤク、ウエヘ…!



ザパァ!

「シュース!」

キラリモ、イヘンヲ、サッチシタノダロウ

コオリハ、オレサマノウシロマデ、セマッテイル

リクマデハスコシ、キョリガアッタ

「掴まって!!!」

キラリガ、アサイトコロマデ、アシヲイレテ、キノボウヲ、マエニダス。

"ニンゲン"ハ、コノサムサニハタエラレナイダロウニ…


パシッ


ツカムト ドウジニ、リクノホウヘト、キラリガヒク


「あった!?」

スッ、ト"カギ"ヲ トリダス

「よかったぁ~!怪我は?してない?」

「ダイジョウブダ。ソレヨリ…」

キラリノ、アシヲ ミル

「ダイジョウブナノカ?」

「いや…寒い……」

「…………」

ピトッ

「コレデ スコシハ、アタタカイ カ?」

オレサマノ カラダハ、イマ アタタカイ

スコシデモ、サムサガ ヤワラグ ダロウカ?

「シュース…。ありがとう!とっても暖かいよ!」

オレイヲ イウノハ、オレサマ ダ

「レイニハ、オヨバン」






「『星は行く手を示す。』っていうのは街の広場だと思う。」

僕達は広場に向かいながら話す

「ナゼダ?」

「広場の名前は『ポラリス』っていうんだ。北極星と同じ意味で、昔の人はそれを見て今自分がどこに進んでいるかとか、迷ったときに重宝されてたみたいだよ。」

「ナルホド。キラリハ、ホシニツイテクワシイナ。」

「うん。お父さんが研究者だったからね。宇宙の事について研究してたんだ。だから、僕の将来の夢はお父さんみたいになること!」

「イッショニ シゴトヲ スルノガ ユメカ?」

「ううん。それはできない。お父さんはもういないんだ。」

そう答えると

「…スマナイ。」

と、シュースは言った

「へーきだよ。おばあちゃんとおじいちゃんがいるから。お母さんと仲良く暮らしてると思う。」

見上げた空には星がもう、輝いている

「……人が死んだときに流れ星が流れるって話知ってる?」

白い息を吐きながら僕はそうシュースに聞く。

「キイタコトハ アル。」

「人が死んだときに流れ星が流れるってことは僕、星になってると思うんだ。死んじゃった人たちは皆。」

「タクサン ホシハ アルカラナ」

「うん。だからきっと…。」

離れてても僕を見守ってくれてる。






「鍵をさすのはどこだろう。どこかで見たような気もするんだけど…」

ここは、広場、ポラリスにある噴水の前

お祭りはもう終わり、今は片付けている人が少しいるくらいだった

皆、家に帰って家族とかと過ごしているんだろう

「オモイダセ!」

シュースはカバンの中から小声で叫んだ

「ちょっとまって…。」

いつ見たんだろう…昨日かな?昨日どこ行ったっけ…?

「輪投げの所…?西の公園…?」

あ!違う!

「噴水……噴水だよ!」

かなた君たちと話してたときに見たんだ!

「フンスイ?」

「これだよ!これ!」

僕は目の前にある噴水を指差す

水がたまに途切れるその瞬間、柱の部分に鍵穴が見えた

「アレカ!トドクカ?」

「やってみるよ!」

タイミングを見計らって鍵穴にカギを入れる


ガチャッ


開く音がした。


ガガガガ…


噴水が小刻みに動く。

「え…。壊れたりしないよね…?」

「ナ、ナンダ…!?」


ポウ……ッ



噴水の上にある星の彫刻に光が灯る

そしてそこから、一筋の光が伸びる…

「あっちは…」

光の先には






「やっぱりここ、僕の家だ…」

僕の家だった

光は裏の方に伸びていたから、裏手に行ってみる

裏庭は広い

そこにはおばあちゃんが手入れしてる花壇と井戸があり、井戸の屋根にあるランタンには光が灯っていた

「ここ…?」

「ナニモ オコラナイゾ?」

僕らは井戸の前で止まった

すると


ガチャン!


「シュース!」

シュースがいたところから柵がでてきて檻になってしまった


ゴォウッッ!


井戸を見ると井戸の中の水が龍の形になって外に出てきていた

「よくここまでたどり着いた…。」

ここが伝説では最後…

物語では魔物を倒すっていってたけど…

どうやって倒せば…

と考えていたが、

「頑張った褒美に1つ願い事を叶えよう…」

龍は僕の方を向き

「お前の…願いを叶えてやる…」

と言った

「え?」

「人間…お前の願いを言ってみろ…何でも叶えてやる…」

僕のって…

「それって僕らで1つってことですよね…?」

「そうだ…。」

ここまで頑張ってきたのは僕のためじゃない

「それじゃあ僕じゃなくて…」

「父親と仕事をすること…それが夢だったんだろう…?」

「……!」

何でも叶えられるってことはお父さんを生き返らせられることもできるの…?

「お前がする願いは1つではないのか…」

「キラリ。」

今まで黙っていたシュースが口を開く

「シュース…」

「オマエノ スキニ シタラ イイ。」

「でも…もしそんなことしたら…」

シュースは帰れないんだよ…

「オマエニハ タクサン セワニナッタ オレサマハ デアッタ ニンゲンガ オマエデ ヨカッタト オモッテル。」

シュースは僕の目をまっすぐ見て言う。

「オレサマハ ニンゲンノ セカイデ イウ"トモダチ"ダト キラリノ コトヲ オモッテイル。トモダチノ シアワセハ オレサマノ シアワセダ。」

友達…

「オマエノ シアワセヲ エラベ。」

違う。シュースは友達なんかじゃない…。

「…わかった。」

僕は龍の方に向きなおる。

「決まったか…」

「うん。僕の願いは…」

そう、僕の願いは………


「シュースを家に帰してあげてください!」


「ハ…?」

「……。良かろう…。」

「チョットマテ!ダメダ!キラリ!カンガエ ナオセ!」

「シュース…。」

檻がなくなり、自由になったシュースが僕のもとへ駆け寄る。

「シュースが言ったんだよ。『友達の幸せは自分の幸せ』だって」

「キラリ…」

シュースの目には涙がたまっていた

「でも、友達とは少し違うかな。」

「エ。」

シュースが固まる


今日は星祭りの日。


家族や特別な人、大切な人と過ごす日。


「シュースは僕にとってもっともっと特別な…」



「『  』だよ。」



シュースのお腹が輝く

喜んでくれてるのかな?

そうだとしたら僕も嬉しい…





シュースの体が光りはじめる。

「そろそろかな…」

「キラリ。」

「ん?なに?」

これでお別れだと思うと少し悲しくて、でも笑顔でお別れしたくて、変な声になってしまった。

僕は屈んで目線をシュースに合わせる。

「オレサマタチ、"ホシノセイ"ノ ナカニハ、ナクナッタヒトノ ハシワタシヲ シゴト トシテイルモノガ イル。」

「うん。」

「ダカラ キット ……」

シュースはまた僕の目をまっすぐ見て言った

「オマエノ"リョウシン"ハ シアワセニ クラシテイル。オウエン シテイル。」


「オマエヲ ミマモッテイル」


もう、最後なのにシュースの姿が涙でぼやけて見えなかった。

「オレサマハ ソノ シゴトニ ツコウト オモッテイル。」

ピト…

シュースの手が頬に触れる

「ダガ、アマリ ハヤク クルンジャナイゾ。キラリ。」

「っ…!うんっ…!うんっ…!」

「オレサマモ オウエン シテイル。」

シュースの手はひんやりしていたけど、その心はハート池のときのように優しく、暖かかった。









「せんせー!あれは何!?星座!?」

「んー?あれはね~オリオン座だよ!」

今日は1年に1度の星祭り

近所の子供たちと星空のもと、課外授業へ僕は出ている

「へぇ~!先生は何でも知ってるな~!」

「そりゃ、宇宙を専門とする研究者ですから!」

そう、宇宙専門の研究者として

「ねぇ、何でせんせーは研究者になったの?」

子供から質問される

「ん?それはね~」

それは…

「見守って、応援してくれてるからだよ。僕の両親と…」








「秘密の親友が!」







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― 新着の感想 ―
[一言] 大冒険でしたね! 最後の終わり方もとても良かったです。 楽しく読ませていただきました。
2022/01/19 20:34 退会済み
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[良い点] 謎解きみたいでおもしろかったです。 知識だけの研究者じゃなく、伝承を語るのもうまい先生になりそうですね。
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