[エンド1]続・不器用な僕だから、最後くらいは笑顔にしたい。
[独白]よりは普通に短いです。
[独白]不器用な僕だから、最後くらいは笑顔にしたい。を読んでいない方は、そちらから読むことをオススメします。続編なので。→https://ncode.syosetu.com/n5869gw/
置き土産えぇぇー!
「あ、そうだ。叶絵、コレ」
「ん?何、この箱?」
夏休みに入って少しした頃、唐突に彼がプレゼントらしきものを渡してきた。夕焼けに照らされたてオレンジ色になったラッピングが、小箱を包んでいる。
「もちろん、俺からのプレゼント・・・って言いたいとこだけど、預かりものだよ。君に渡してくれって」
それって、まさか―――――
「・・・開けて、いいのかな・・・?」
「彼は『渡して欲しい』としか言ってなかったし、叶絵が決めるべきじゃないかな」
あの日から常里くんとは何の音沙汰もなく、急に渡されても困ってしまう。でも、もらったからには開けるべきだよね・・・。
「じゃあ、開けるよ?」
「うん」
機嫌を損ねないか心配だったけど、その心配はいらなかったみたい。
そっと箱を開くと、先ず目に映ったのは一冊の本。
「これは・・・?」
「・・・ラノベだ。しかも、純愛系の・・・私が好きなジャンルの」
「そうなの?」
ふと感想を語り合った日々を思い出し、胸がなんだか切なくなってくる。
やっぱり、もうああやって語り合ったりできないのかな。
本を取り出した下には、"2つのアクセサリー"と2つにたたまれた"一枚の紙"が。
紙を手に取って開くと、そこには簡潔にまとめれた文章があった。
「なに、それ・・・」
常里 一道くん。なんで、あなたはそんなにも・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あの日から、僕の心は軽くなった。
きっと、自分を縛りつけていた約束がなくなった――――いや、なくなってしまったからだろう。
たが、その分、心に余裕が生まれた。もしかしたら、僕の抱いていた感情は、ある意味では楔のようになっていたのかも知れない。今では友人も何人かできて、一緒に遊びに行く機会にも恵まれるようになった。きっと、彼女に出会う前の僕のままでは、あり得なかったことだろう。この点に関しては、彼女に土下座してもいいくらいには感謝してる。
今日は一人でショッピングモールに来ていた。目的はラノベの新刊の購入。先月の終わり頃に出たものを、丁度都合がついた今日に買いに来ているわけだ。
「えっと〜・・・あ、あった!お?この新作面白そうだな。じゃあこっちも買ってっと」
ふとそこで一冊の本に目がいった。
彼女への"置き土産"の一つである、あの本だ。
「読んで、くれたかな・・・」
きっともう元の関係には戻れないであろう僕らの関係の中で、最後にオススメすることになった一冊だった。
本屋で妙にしんみりしてしまった僕は、気を紛らわせるようにフードコートへ向かった。スマホの時計は、12:30と示していた。
ハンバーガーを注文して呼ばれるのを待っていると、一件のメールが届いた。
〈あらい:元気にしてるか?〉
新井さんだった。実は先日、街中を歩いていたときに偶然再会し、そのときに連絡先を交換しておいたのだ。
〈つねり:元気ですよ。
それより、急にどうしたんですか?〉
送信したタイミングにピッタリ合わせて呼び出しのコールが鳴った。受け取って席に戻り、ハンバーガーを齧りながら画面に目をやる。
〈あらい:いや、そのな。お前もよかったら俺らの飲み会に来ねぇか?〉
〈つねり:なんでそんな話になったんですか・・・〉
〈あらい:実は、知り合いにお前の話をぼかしながら話したらさ・・・〉
〈つねり:話したんですから、まぁ、いいですけど〉
〈あらい:すまん。
で、そしたら皆で慰めようって流れになって〉
〈つねり:つまり、慰められに来いと〉
〈あらい:すまん〉
〈つねり:わかりましたよ。都合が合えば行きます〉
〈あらい:ありがとな!〉
とまぁ、飲み会に誘われることになった。なんやかんや、最近は結構充実した生活を送れている。
その後、フラフラとショッピングモール内を歩いたり、途中で母親にお使いを頼まれてスーパーへ向かったりして、帰路につく頃には夕日がオレンジ色に染まっていた。
「そういえば、アレは付けてくれてるかな?」
ひとりごちたところで、誰にも声は拾われない。
僕が贈ったもう一つの贈り物。果たしてあれは、二人にどんな感情を与えただろうか。出来れば、喜びであってほしいな。
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叶絵さんへ
僕からあなた達二人に、心ばかりの贈り物をさせていただきます。
前にアクセサリーが欲しいと言っていた気がしたので、ブレスレットにしました。ファッションのセンスは自信がないので、気に入らなかったら捨ててください。
その石はサードオニキスというらしいです。石ころなんて送られても、困るだけかもしれないですね。
最後に、この1年間、楽しかったです。どうか末永くお幸せに。
君の笑顔を願って 常里 一道
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なんで2つ入っていたの、なんて疑問はいらなかった。
気づいていたからだろう。
でも、おかしいよ。
なんで、ここまでしてくれるの?
「大丈夫?」
「え?」
「泣いてるよ」
知らぬ間に、私の頬がしめっていた。
「にしても彼、俺にまでくれるとはね・・・しかもお揃いで。まさか恋敵に塩を送ってくるなんて。それもこれも、叶絵の幸せのためにってことか。一途にも程があるよ、ほんとに・・・」
今になって気づいた。
彼の思いの強さを。
昔の私を叱りたい。
なんで、あんなに簡単に「惚れさせて」なんて無責任なことを言ったんだろう。
でももう私のそばには、彼はいない。
ごめんね、あなたを裏切って。
そして、ありがとう一道くん。
最後のプレゼント、大事にするよ。
頬を伝う雫がブレスレットに落ちてはじける。
夕焼けに染まるその場所には。
少女を託された一人の男と。
泣きながらも可憐に笑う、少女の姿があった。
現在作者は燃え尽きております。
エンド2はいつになるかわからないのでご了承ください。
続編じゃなくて[独白]の叶絵視点を書くかも・・・
いづれにせよ、いっきにかきあげたので、休ませて・・・