表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

不器用な僕シリーズ

[エンド1]続・不器用な僕だから、最後くらいは笑顔にしたい。

作者: ちゃとらねこ

[独白]よりは普通に短いです。


[独白]不器用な僕だから、最後くらいは笑顔にしたい。を読んでいない方は、そちらから読むことをオススメします。続編なので。→https://ncode.syosetu.com/n5869gw/



置き土産えぇぇー!



「あ、そうだ。叶絵、コレ」

「ん?何、この箱?」


 夏休みに入って少しした頃、唐突に彼がプレゼントらしきものを渡してきた。夕焼けに照らされたてオレンジ色になったラッピングが、小箱を包んでいる。


「もちろん、俺からのプレゼント・・・って言いたいとこだけど、預かりものだよ。君に渡してくれって」


 それって、まさか―――――


「・・・開けて、いいのかな・・・?」

「彼は『渡して欲しい』としか言ってなかったし、叶絵が決めるべきじゃないかな」


 あの日から常里くんとは何の音沙汰もなく、急に渡されても困ってしまう。でも、もらったからには開けるべきだよね・・・。


「じゃあ、開けるよ?」

「うん」


 機嫌を損ねないか心配だったけど、その心配はいらなかったみたい。


 そっと箱を開くと、先ず目に映ったのは一冊の本。


「これは・・・?」

「・・・ラノベだ。しかも、純愛系の・・・私が好きなジャンルの」

「そうなの?」


 ふと感想を語り合った日々を思い出し、胸がなんだか切なくなってくる。

 やっぱり、もうああやって語り合ったりできないのかな。


 本を取り出した下には、"2つのアクセサリー"と2つにたたまれた"一枚の紙"が。


 紙を手に取って開くと、そこには簡潔にまとめれた文章があった。


「なに、それ・・・」


 常里 一道くん。なんで、あなたはそんなにも・・・。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 あの日から、僕の心は軽くなった。

 きっと、自分を縛りつけていた約束がなくなった――――いや、なくなってしまったからだろう。


 たが、その分、心に余裕が生まれた。もしかしたら、僕の抱いていた感情は、ある意味では楔のようになっていたのかも知れない。今では友人も何人かできて、一緒に遊びに行く機会にも恵まれるようになった。きっと、彼女に出会う前の僕のままでは、あり得なかったことだろう。この点に関しては、彼女に土下座してもいいくらいには感謝してる。



 今日は一人でショッピングモールに来ていた。目的はラノベの新刊の購入。先月の終わり頃に出たものを、丁度都合がついた今日に買いに来ているわけだ。


「えっと〜・・・あ、あった!お?この新作面白そうだな。じゃあこっちも買ってっと」


 ふとそこで一冊の本に目がいった。

 彼女への"置き土産"の一つである、あの本だ。


「読んで、くれたかな・・・」


 きっともう元の関係には戻れないであろう僕らの関係の中で、最後にオススメすることになった一冊だった。


 本屋で妙にしんみりしてしまった僕は、気を紛らわせるようにフードコートへ向かった。スマホの時計は、12:30と示していた。


 ハンバーガーを注文して呼ばれるのを待っていると、一件のメールが届いた。



〈あらい:元気にしてるか?〉



 新井さんだった。実は先日、街中を歩いていたときに偶然再会し、そのときに連絡先を交換しておいたのだ。



〈つねり:元気ですよ。

     それより、急にどうしたんですか?〉



 送信したタイミングにピッタリ合わせて呼び出しのコールが鳴った。受け取って席に戻り、ハンバーガーを齧りながら画面に目をやる。



〈あらい:いや、そのな。お前もよかったら俺らの飲み会に来ねぇか?〉


〈つねり:なんでそんな話になったんですか・・・〉


〈あらい:実は、知り合いにお前の話をぼかしながら話したらさ・・・〉


〈つねり:話したんですから、まぁ、いいですけど〉


〈あらい:すまん。

     で、そしたら皆で慰めようって流れになって〉


〈つねり:つまり、慰められに来いと〉


〈あらい:すまん〉


〈つねり:わかりましたよ。都合が合えば行きます〉


〈あらい:ありがとな!〉



とまぁ、飲み会に誘われることになった。なんやかんや、最近は結構充実した生活を送れている。


 その後、フラフラとショッピングモール内を歩いたり、途中で母親にお使いを頼まれてスーパーへ向かったりして、帰路につく頃には夕日がオレンジ色に染まっていた。


「そういえば、アレは付けてくれてるかな?」


 ひとりごちたところで、誰にも声は拾われない。


 僕が贈ったもう一つの贈り物。果たしてあれは、二人にどんな感情を与えただろうか。出来れば、喜びであってほしいな。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜


―――――――――――――――――――――――――――


叶絵さんへ


僕からあなた達二人に、心ばかりの贈り物をさせていただきます。


前にアクセサリーが欲しいと言っていた気がしたので、ブレスレットにしました。ファッションのセンスは自信がないので、気に入らなかったら捨ててください。


その石はサードオニキスというらしいです。石ころなんて送られても、困るだけかもしれないですね。


最後に、この1年間、楽しかったです。どうか末永くお幸せに。


                 君の笑顔を願って   常里 一道


―――――――――――――――――――――――――――


 なんで2つ入っていたの、なんて疑問はいらなかった。


 気づいていたからだろう。


 でも、おかしいよ。


 なんで、ここまでしてくれるの?


「大丈夫?」

「え?」

「泣いてるよ」


 知らぬ間に、私の頬がしめっていた。


「にしても彼、俺にまでくれるとはね・・・しかもお揃いで。まさか恋敵に塩を送ってくるなんて。それもこれも、叶絵の幸せのためにってことか。一途にも程があるよ、ほんとに・・・」


 今になって気づいた。


 彼の思いの強さを。


 昔の私を叱りたい。


 なんで、あんなに簡単に「惚れさせて」なんて無責任なことを言ったんだろう。


 でももう私のそばには、彼はいない。


 ごめんね、あなたを裏切って。


 そして、ありがとう()()()()


 最後のプレゼント、大事にするよ。



 頬を伝う雫がブレスレットに落ちてはじける。


 夕焼けに染まるその場所には。


 少女を託された一人の男と。


 泣きながらも可憐に笑う、少女の姿があった。

現在作者は燃え尽きております。

エンド2はいつになるかわからないのでご了承ください。


続編じゃなくて[独白]の叶絵視点を書くかも・・・


いづれにせよ、いっきにかきあげたので、休ませて・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 主人公、普通に気持ち悪いですよ? 男がこの思考とかあり得ないし
[一言] この彼氏さんは彼女のしていたことを叱らなきゃおかしいと思うけど、そんなことがあったとしても時系列的にはこのシーンより前の話でしょうね。
[一言] うーん……真相は「単に彼氏出来たけど半年キープして振り回してました」ってだけなのがなぁ。 じゃあ、主人公が半年の間に惚れさせたりしたら、彼氏の方を振ったのでしょうか? きっとそんな事せず、両…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ