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第9話 リーダー

 小説の男を、いつまでも小説の男と呼ぶわけにもいかないだろう。

それに、どういった経歴の持ち主なのか、非常に気になる所だ。

男は胸に自分の手のひらを当てて、自己紹介を始めた。


「改めて、私、堀ノ内猿彦と申します。 年は40で、従業員100人程度の人材派遣会社の経営をしております」


 経営者、と名乗った瞬間、みなが驚くのが分かった。

まさか、会社の社長をしている人間だったとは……

鉄さんがこれ見よがしに驚いて見せる。


「会社の社長さんでしたか! それならば、これ以上の適任はいませんな」


 鉄さんは一気にこの堀ノ内と名乗った男に興味を示したようだ。

しかし、私の中で、違和感のような感覚が芽生える。

さっき彼が発した、「バレなければいい」という発言。

ただの一社員のセリフなら、したたか、と言うだけで済むだろうが、これが社長となると話が違う。

不正、犯罪、ブラック、そんな言葉が脳裏を過る。

恐らく、こんな感情を抱いているのはサラリーマンの経験のある私くらいかも知れないが……

とにかく、油断はできない。

そんな私の不安をよそに、鉄さんが場を仕切るようにこう言った。


「では早速、これからどうするかを……」


「その前に、一つ、決めたいことがあります」


 鉄さんを遮り、堀ノ内が話す。

 

「私たちは小さな会社のようなものです。 これから必然的に、トラブルへの対処をするケースが出てくるでしょう。 その時、揉めるのは避けたい」


「……何が言いたいんですか?」


 焦れったい物言いに、宮本君が聞き返す。


「……この中から「生け贄」を決めたいと思います」


「はァ!?」


 素っ頓狂な声を上げる宮本君に、まぁまぁ、と鉄さんが諭す。

しかし、生け贄、とは一体どういうことか?


「会社とは、みんながみんな、働いてる訳じゃ無い。 下の人間が働き、上の人間が甘い蜜を吸っている、そういうモノです。 この場合、働き手は一人で十分。 そして、何かあった場合、生け贄になるのも一人で良い」


(何を言っているんだ……)


 まるで、ブラック企業の社長の物言いに、宮本君が、ふざけんなよ! と声を張る。

本間さんも、ちょっと待って下さい、と嫌悪感をあらわに詰め寄る。

堀ノ内は人差し指を唇に当てて、静かに、と言って話を続ける。


「生け贄はクジで決めます。 あみだでも、木の枝を集めてハズレを決めて引くやり方でもいい」

 

 一色触発、そんな空気が場に満ちたが、鉄さんがいきなり手を上げた。


「……それなら私が生け贄になりましょう。 彼をリーダーに推したのは私ですしな」


 少し間があった後、鉄さんが生け贄になることが決まった。

まさか、こんな形になるとは……

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