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第7話 自己紹介

 口を開いたのは身長が私と同じくらいのあまり背の高くない、やや年上と思しき男。


「みなさん、初めまして。 鉄柱武蔵てっちゅうむさし、と申します。 年は60になったばかりで、ジムのインストラクターをしておりました。 自分の力を試すべく、この訓練に参加しました。 この6人のメンバーで力を合わせ、クリアを目指しましょう。 よろしゅう、お願いします」


「60、ですか」


 驚きの声が上がる。

とても60とは思えない体つきで、実年齢より若く見える。

しかし、真っ先に自分から挨拶をし、沈黙を乗り切った。

ああ、年の功だな、と私は思った。


(……私には出来ないな)


 彼もまた、リーダーとして相応しい男かも知れない。

局面が代わり、自己紹介の流れになる。

いつの間にか輪になってみんなで集まり、時計回りにそれが進み、私も自己紹介をした。


「は、初めまして! えー、速水豚太、と申します。 えー、年は、35です」


「お若いですなぁ」


 特徴の無い私の自己紹介に、武蔵さんが返事をし、場の空気が和む。

パラパラと拍手が起き、私はペコペコと頭を下げ、どうにか自己紹介を終えた。


(ふぅ、しかし、小っ恥ずかしいな……)


 自己紹介で何をこんなに緊張しているのだろう。

どうやら私にこの場を仕切る器量は無さそうだ。

大人しくしていよう。

そう思い、顔を上げると、いよいよ小説の男の番だ。

一体、何者なのか。

男は前に組んでいた手をほどくと、回りを見渡し、言った。


「自己紹介の前に、皆さん、後ろを向いてもらっていいですか?」


「……?」


 訳も分からず、後ろを向く。

みな、言われた通り後ろを向くと男が言った。


「……やっぱり、この中にはスパイがいるみたいですね」


(……!)


 スパイ?

……どういうことだ?

小説の男が指を指す。


「貴方ですよ、林道利香子さん」


「は…… な、何で私が!」


 指を指したのは、テンガロンハットがいなくなった後に口を開いた金髪の女だ。


「あなたはスマホを持っている。 一体、誰に連絡するつもりですか?」


 驚いた。

林道利香子、彼女はジーンズをはいているのだが、後ろのポケットにスマホが入っていた。


「こっ、これは……」


「スマホを使った人間は失格になる。 しかし、それは誰かが連絡を取って伝えなければならない」


(……確かに、その通りだ)


 スパイがいなければ、誰かがスマホを使ったことは知り得ない。

小説の男は、林道利香子に目隠しをして木の根元に座らせた。

そして、彼女のスマホを抜き取ると、みなに見せた。


「これで心置きなくスマホが使えますね」

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― 新着の感想 ―
[一言] 体験のつもりが、選抜試験とはww。うっかり参加したのは、カレーにつられてるのね。団体行動をとれないものは失格と、言ったところで、口裏を合わせればなんとかなる。小説本の男性は、鋭いです。が、ス…
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