第6話 森
気が付くと私はバスから下車していた。
それは即ち、この訓練に参加することの意思表明。
バスは半分以上の人間を中に残し、去って行った。
メンバーは私を含めた、7人。
内、男が5人、女が2人だ。
あの小説の男もいる。
(……)
私は、この少し前の出来事を思い返していた。
添乗員がスマホを回収し、小説の男の前までやって来た。
「参加ならスマホを」
「……」
男は小説をパタンと閉じて、添乗員に向きなおった。
「スマホ、持っていないんです。 アナログでして」
「ふぅ~ん、じゃあ、後からスマホが見つかったら失格にするわよ」
「失格!? ……それなら仕方ない」
ケツポケットに隠していたスマホを取り出し、添乗員に渡す。
「……ふん、ズル賢いヤツね」
添乗員は回りをぐるりと見渡し、スマホを隠していた場合は失格にする、と説明を加えた。
参加者全員のスマホを回収すると、添乗員は試験の内容を話し始めた。
(日没の17時までに、山を下った村に到着すること)
それが、この課題のクリア条件だ。
この残った7人で、力を合わせて下山しなければならない。
すると突然、ヒゲを口に蓄えたテンガロンハットの男が喋り始めた。
「……俺様は1人で行動させてもらうぜ」
一匹オオカミというヤツだろうか?
集団行動が出来ないタイプだとしたら、余程頭が切れ、体力に自信が無ければクリアは難しいように思えるが……
他のメンバーも、誰も引き留める気配はなく、さっさと立ち去ればいい、とでも言わんばかりの視線を投げかける。
30秒後、男は村で会おう、と言って颯爽といなくなった。
直後、口火を切ったのは金髪の女だ。
「集団行動出来ないヤツはその時点で失格。 だからアイツと会うことはもうないわね」
……なるほど。
既に振るいにかけられている、ということか。
だが、集団で行動するのなら、リーダーが必要だろう。
私は、チラと小説の男を見た。
あのバスの中での出来事。
スマホを回収すると言われ、まさかズボンのポケットに隠し持とうとするとは、意表を突かれた気分だった。
私にあんな発想はない。
そして、確かにこの状況、スマホがあればどれだけ有利か。
私は小説の男が次にどんな手を使うつもりなのか、好奇心を抑えられずにいた。
すると、今度は別な男が口を開いた。