第二話 久々~
BuonoBuonoでピザを食べ、私は徒歩で帰路についていた。
(目的地の設定や、ランニングのペースについては帰ってからブログに記載しよう)
これからこのグルメランニングを始める初心者に向けて、私はブログを書いている。
と言うか、これから第1回目を書く予定だが……
走っている最中に色々説明するのは大変な為、一旦家に帰ってからまとめなければならない。
そうこう言っていると、とある看板が目に入ってきた。
赤の背景に黄色のMの文字、マクドナルドこと、マックの看板だ。
ぐぅ、ぎゅるる、という音が腹から鳴る。
(……やはりピザ一枚では足りないか)
気が付くと、私はマックの戸を叩き、メニューを食い入るように見つめていた。
「えーと…… とんかつ照り卵……」
「とんかつ照り卵単品で宜しいですか?」
若い女性の店員に確認され、私は思わずこう答えた。
「あ、やっぱりとんかつ照り卵のセットで」
番号を呼ばれ、スプライト、ポテト、とんかつ照り卵のバーガーの乗ったトレーを持ち、空席を探し彷徨っていると、久々に見る顔の男を発見した。
「オイ、速水、奇遇じゃないか!」
席に座っていたのは、かつての会社の同僚、鍋敷健之助だ。
今日は日曜で休みなのか、いつものスーツとは違い、私服姿の出で立ち。
大手家電メーカーの営業で、かつての私の同期だ。
ヤツは大学を卒業し、入社して現在13年目。
私と働いていた時は平だったが、今なら何かしらの役職がついていてもおかしくは無い。
「おら、座れよ。 少し話、聞かせてくれよ」
「……」
正直、自分の今の状況が上手く行っているとは言い難く、コイツと話をするのは気乗りしなかった。
鍋敷が言う。
「お前、今何の仕事してんだよ? また営業か?」
「……」
まさか、グルメランナーをして、ブログを書いているとは口が裂けても言えない。
「……中々良い求人が無くてな」
すると、ホットコーヒーを口に運んでいた鍋敷がむせ返る。
「ぶっ、ごほっ…… おまっ、まだ働いてないのか? 会社辞めて2年とちょっとだろ。 お前大手志向だからなぁ…… いい加減、中小でもどこでも働かないと、社会復帰出来なくなるぞ」
ぐっ、と膝上に潜ませた拳を握り固める。
本当に厄介な男に捕まってしまったものだ。
さっきから、口に運ぶポテトは砂の味のように感じられる。
だが、半分は図星だった。
「……適当な会社に入ったら、前より忙しいのに給料が安いということもあり得る。 それに、会社のランクを落としてまで働くのは惨めだ」
「言ってる場合かよ、速水」
仕事のノルマに追われて働くのに嫌気が差した私は、勤続10年を境に会社を辞めた。
しばらくは働く気にはなれず、半年後に転職エージェントを使って就活を再開したものの、良い求人にはありつけなかった。
「鍋敷、忙しいんでな」
腹が立ち、席から立ち上がると突然、鍋敷が言った。
「待てよ、お前、カレー好きだったよな?」