一話 継続は力なり(挿絵有り)
今、私は自宅のアパートの前で屈伸をしている。
これから向かうのは、駅前にある評判のピザ屋、BuonoBuonoだ。
Buonoとはイタリア語で美味しいを意味する。
それを二つ重ねる店名、味に余程の自身があるのだろう。
時計をチラと見やる。
時刻は11:29分だ。
(まだ、時間があるな)
ではここで、軽く私の自己紹介をしよう。
私の名前は速水豚太(35才、体重92キロ)
現在ニートだ。
仕事を辞めてから二年と一ヶ月、家に引きこもる生活は私の心を蝕んだ。
「これは、いかんな……」
ベッドの上に寝転び、天井にある染みを眺めながら私は呟いた。
先行きの見えない人生。
このままでは不安に押しつぶされてしまうと、私は立ち上がり、外へと続く玄関の扉を開け、走り出した。
ネガティブだった私の感情が、どんどん溶け出して行く。
「本当だった…… 本当だったのだ!」
ユーチューブで連日の様に、「うつ病、仕事」などというワードを検索し、どうすれば立ち直ることが出来るのか、経験者からの意見を聞いた。
その中で最も多かったのが、運動をする、という意見だった。
元々運動が嫌いな私は、運動か…… とため息交じりに呟いたが、いよいよメンタルの限界が来たため、重い腰を上げた。
それから私は朝10時頃からランニングをする日々を送り始めた。
当時の体重は91キロで、何故か太ってしまったが、精神的には安定している為、良しとする。
それ以来、私はランニングにハマり、生まれて初めてランニング用の服を購入した。
以下、現在ランニングの際に身につけている服装である。
ウェア→黒のパーカー(ユニクロ、1990円)
ボトム→グレーのスウェットパンツ(ユニクロ、1990円)
シューズ→赤のランニングシューズ(アディダス、5186円)
ランニング歴は1ヶ月ちょっとの為、上着とズボンはユニクロだ。
ただし、靴は少し値の張るものを選んだ。
最初の1週間でただ走ることに嫌気が差した私は、目的地に昼飯を食べる所を設定し、何とかランニングを継続することに成功している。
……おっと、そろそろ時間だ。
私は、駅前のイタリアンを目指し、走り始めた。