ディヴィジョンマウンテン第48層
休憩を終えて48層に突入。そういえばここまで来た砂漠環境だけど熱いとか寒いかはあんまり感じないな。ベードも平気そうだし、明るいけど太陽があるわけじゃない影響かな?
入って少しするとすぐに地中に魔物の気配がサーチエリアにかかる。なんというか細長い魔物のようだけど、こっちにまっすぐ向かってきてないか!?
「ベード飛びのけ!」
「ばぅ!?」
慌てて指示すると、今ベードがいたちょうど真下から赤黒く、僕の腕くらいの太さ、しかも僕の身長くらいの長さのあるミミズが地中から飛び出してきた。
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≪識別結果
マウンテンデザートブラッティアースワーム 危:C
山にある砂漠地帯にすむ血濡れた蚯蚓。砂地の中を土魔法によって泳ぐように進み、砂中から勢いをつけて砂上の獲物を仕留める≫
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ミミズだけど、砂を食い進んでいるわけじゃなく土魔法で進んでいるのか?まさかと思うけど、土魔法系を攻撃手段として使ってこないよな?
くそっ、僕達の下のほうで砂の中をうねうねとしてるようだな、識別はできたけど次出てきたらがっつり拘束する必要があるか。
「ベード、また来るぞ!ベードは影術、モイザは糸術で拘束をたのむ!」
「ばぅ!」「――――!」
「フレウド、拘束されたら一気に仕留めるぞ!」
「コ!」
再び砂中からベードに向けて飛び出してくるミミズからベードが大きく横に飛びのく。そしてモイザが糸を足先から放ち、ベードも着地と同時に足元から影を伸ばして、二人によって空中に拘束された。
フレウドは両翼を広げて矢の雨の構え、僕も右手を掲げ、フレイムランスレインを構え、風の矢の雨と同時に空中よりミミズに降り注がせる。
結構大きい体が災いし、ランダムに降り注ぐその二つの術法の雨をまともに受け、拘束に抵抗するようにうねらせていた体は動きを止めて消滅した。
「ふぅ、あっけなく片付いたけど、また厄介そうなのが来たな。しかも周囲のが集まってきてるみたいだ。」
今の騒ぎで感づかれたのか、遠めに感じてた細長い気配が明らかにこっちに近寄ってきてる。数は全部で10はいるか。一匹ならよけてからとできたけど、数いると下手に飛びのいたところを狙われたら不味いだろうな。
「モイザ、いくつもの砂壁を作ってミミズたちを砂上に追い出せるか?」
「――――、――――・・・」
ん、なんかいつもと違う感じに聞こえたけど、まだなんとなくわかる。おそらく土壁をたくさん出すのは難しい。そしてどこにいるかがそもそも難しいという感じだと思う。
「やっぱ難しいか。」
「――――・・・」
「謝ることはないよ。こうなりゃやけだな。」
一応下の階層でトカゲと蛇を結構な数相手したおかげか、すでに四属術のレベルは5まで上がった。やってみるか、地面は砂なら砂壁だな。
ウォールのスキルアーツは炎と水ではできてる。同じイメージを土ですればいいだけだ。
あとはそれを複数、今迫ってきてるミミズたちの脇腹を押し出すような感じで・・・ダメだ、これ地面についてたほうがやりやすい感じがする。
「ベード一旦降りるぞ。危なかったらちゃんとミミズたちをよけるんだぞ?ただうまく出てきたらモイザと一緒に出てきたら拘束を頼む。」
「ばぅ。」「――――。」
ウィンドシューズとサンドアダプテーションを自分にかけてベードから降りる。そして砂の地面に手をつけ、もうかなり近いからサーチエリアで場所は完全にわかる、正確な数は9か、とにかく壁で押し出す!
「サンドウォール!」
改めて地面を殴りつける。思い切りがよかったのか、9つの砂の壁がせりあがり、その壁に押し出されたミミズが空中にと跳ね上がった。
「フレウド、右前方の一匹に集中しろ!あいつが一番近い!モイザは後方3匹、ベードは前方2匹に集中してくれ!」
ベードの後ろ側から来てるやつが6匹、手前のほうはモイザに任せて僕も跳ね上がった奥側の三匹に目掛け、フレイムランスレインの雨を降り注がせる。
空中に身じろぎしてよけようとはするが、砂中に逃げられるまでに数本の槍が刺さり、とても弱った状態にはさせられただろう。
モイザは拘束した3匹をさらに別の糸で巻き付けて、グイッっと引き締めて締め倒していた。でもかなり疲れた表情をしてる。即座に出せる糸を継続させたまま絞めれる糸を出すのはかなり消耗するっぽいな。
ベードの前方から来てた3匹はべードとフレウドが難なく倒してくれていたようだ。むしろ逃がしてしまったのは僕だけということか。
そう、僕のフレイムランスを受けたミミズたちは遠くにと逃げ去っていた。逃げるという選択肢を持ってるのは結構厄介そうではある。この間のハチのように仲間を呼んでくるとかなければいいけど。
「モイザ、大丈夫か?」
「――――。」
「うーん、無理はするなよ?でもどうするか・・・」
基本は一匹だけのようだけど、戦って砂に音を出すとちょっと遠くからでもミミズたちが近寄ってくるようだ。ベードの気配もばれちゃってるようだから隠れて進み切るのは難しいだろう。
「きゅ?」
「なんだレイト?まさか手伝ってくれるのか?」
「きゅ。」
自分がやっちゃってもいいならと言われた気がする。確かにここでレイトを頼れば進めるだろう。でもそれじゃあ僕たちが弱いままだ。
「いや、今回はいい。ベード、モイザ、フレウド。気を引き締めていくぞ。」
「ばぅ!」「――――!」「コ!」
「きゅ。」
レイトの助けは今回は借りず、結構慎重に48層を進む。当然ミミズとの戦闘は道中何度かあって、また囲まれる場面もあったけど、モイザの分までできる限りフレイムランスを降り注ぎ何とか撃退してこれた。
とはいえゆっくり進んだ影響か、48層を越えたところでもう夕飯時の闇の刻前になっていた。今日はここで一旦休憩だな。
「きゅ。」
「ん、今度はなんだレイト?」
「きゅ、きゅきゅ。」
食事を終えたところで声をかけてきたレイトはベードを前足で示して、僕に何か言ってるようだけどなんだ?
「ば、ばぅ・・・」
「きゅ、きゅきゅー。」
あ、今のはわかった。なるほど、ベードが気配を消し切れてないことに問題にしてるっぽいな。確かに気配を消すのはレイトがしっかり教えたはずだもんね?
「きゅ。」
「えっと、ごめん。それで僕が何をすればいいのかがわからない。」
「きゅ?きゅきゅ、きゅー。」
「う、うーん。いつもならわかるんだけど、なんか難しいことを言ってるのか?」
いつもなら大まかに何言ってるのかわかって、それを僕が聞き返して頷いてもらって再確認するという感じで話せるのに、ベードをどうにかしたいというのはわかったけど、それ以上がわからない。
「きゅ・・・」
「ごめん、ベードをどうにかしたいのはわかるけど、気配を消せてないからその特訓させるってことなのか?」
「きゅ。」
「よし、それはなんとなくわかった。でもそのためにしようとしてることが何かがわからないな。」
「きゅ・・・きゅ。」
「えっと、40層に送れ?」
「きゅ。」
え、40層に送れであってるのか?レイトはベードに飛び乗り、僕が40層に送るのを待つぞと言わんばかりだ。
それに気づいたのかずっと頭に乗ってたフレウドはベードから降りたし、もう向かわせるのは決定事項、なのか?
「・・・わかった、じゃあここで待つ。それでいいか?」
「きゅ。きゅきゅ、きゅ。」
「ん、大体明日の昼前には帰ってくる、という感じか?」
「きゅ。」
「わかった、じゃあレイトに任せる。トランスアルター、ディヴィジョンマウンテン40層。」
ベードとレイトにだけかけるようにトランスアルタ―を使用。黒い光に包まれた二人は、光が消えると同時に飛んで行ったはずだ。
レイトには何か考えがあるはずだ。ベードのことを任せるなら、僕達はここで待とうじゃないか。