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ディヴィジョンマウンテン第40層

 翌日は予定通り39層を駆け抜ける。時折羽音が聞こえる距離に蜻蛉が通ったのは不快だったけど、下手に手出しすると余計な時間を食うからな。

 不服だけどできるだけこちらがよけて走るように、ベードに頼んで走ってもらうようにしてた。ベードも嫌な音だったようなので予想よりも避けてたけどね。

 そのせいか思ってるよりも駆け抜けるのに時間はかかったけど、それでも2刻弱といったところだ。さすがベード、ありがたい限りだ。

 そして40層は情報通り、一面の砂地地帯が広がっているのを確認。思ってるよりも厄介そうだなこりゃ。


「ベード、足は取られないか?」


「ば、ばぅぅ・・・」


 うーん、無理ではないけどやっぱり今までと同じように走るというのは難しいか。


「とりあえず聞いてたボスの姿も今は見えない。カマキリのように階段出待ち型ではないようだね。気配を消して歩くのは行けそうかな?」


「ばぅ・・・」


「わからないか・・・」


「きゅ・・・」


「なんだレイト?今まで通りは難しい、という感じか?」


「きゅ。」


 どうやら草地での気配の消し方は十分だけど、砂地はそうはいかないみたいなかんじのようだ。ある程度ならば大丈夫なんだろうけど、ここにいるのは一個体で危険度Cの魔物だからな。

 むしろ相手は砂地に慣れているどころか、この砂地の下に潜んでいるという情報だ。いつもはこちらの奇襲による先制攻撃だけど、むしろこちらが奇襲を受ける可能性まであるな。


「階段付近には気配はしないし、この辺の砂地で走る練習しよう。レイトは砂地での気配の消し方も教えられるのか?」


「きゅ・・・」


「なんだ?教えられるけど、僕のいる前ではという感じか?」


「きゅ。」


「わかったわかった。じゃあお前に任せる。モイザとフレウドもつきあってやってくれ。誰かが乗ってるか乗ってないかでもだいぶ違うと思うし。」


 一番重いのは僕なんだけど、レイトも含めて3匹乗ってるだけでもベードとしては集中力を使うだろう。そしてまさかの僕がソロでの待機時間となってしまったわけだ。

 生産器具は料理セット以外は宿に置いてきちゃってるし、こういう時はやっぱり時空術の練習かな。といってもこの後戦闘があるだろうから本格的にはやらないけど。

 特に空間術の練習は、ダンジョンでも寝る前にはできる限りやるように心掛けてる。やればやるほどに少しじゃ全然成果が出てこなくなってるのがちょっと難しいところだ。

 スペースボールを手元に出して、それをどんどんと大きくしつつ、できるだけ長い時間継続させるのが最近の練習方法だ。

 一番単純なボール系術法だけど、大きくするのには結構コツがいる。バスケットボール大にはすぐできるけど、そこからもっと大きくするのが難しい。

 特にスペースボールなんだけど、今じゃバランスボールの大きさくらいまで膨らませるから自分に触れるわけで、弾き飛ばすとか吸収するとか余計な意思が入ると危ないものに変化する。無害なように何でもないただゆがんだように見えるボールを作り出す、これが集中力が結構いる。

 半刻ほど維持し続けたところで霧散させて終了。1刻ぶんやると結構消耗しちゃうからな。とはいえ、全然時間つぶしにならないな。

 なんかいい感じに時間を潰すべきだろう。そうだ、ここのボスは地面を潜っていてちゃんと索敵しないとひどい奇襲を食らうってあったし、索敵の練習をするべきか。

 空間術で何かできないだろうか、フリップエリアをもっと大きく広げて、悪いものを弾くんじゃなく、入ってる異物を見つけるような。

 思ってるよりもいけそうな気がする。ソナーとかそういうイメージでいいんだもんな。ただソナーは水中ってイメージだし、こういうのはやっぱサーチ?


「よし、サーチエリア。」


 できるだけ広く、広くをイメージ。せめて、そこに何かいる、そしてそれがどれくらいの大きさなのかってのがわかればいい。

 うっ、これ目を開いてると視界情報と察知情報が重なる感じになってきついな。しょうがない今は目を閉じるか。これは慣れるためにも要練習だな。

 お、この大きさはベードだな。ちゃんといる位置がわかる。ちょうど階段を出て右側のあたり、結構壁際で走り回っているようだ。

 たったままじっと動いてないようだけど、潜伏の練習ってそんな感じなのか?たしかにいつも走り回っても平気だけど、伏せたりとかしてるのかと・・・

 あれ?なんか変な明らかにでかいのがちょうど察知範囲に、やばい!ベード達のほうに近づいてる!

 慌てて目を開けてさっき察知した場所にと走る、間に合うのか!?あいつ結構な速さで砂の中を進んでたぞ。

 階段を下って待ってるんじゃなかったか!砂地に出たけど足がとられて思うように走れない!


「見えた!ベード!モイザ!フレウド!・・・ってあれ?」


 ピカッっと紫の線が砂地を貫いた。あぁそうでしたね。レイトさんがいるんだもん。僕が変に心配することはなかったか。

 砂地が大きくへこみその中から飛び出してきたのは丸焦げだからか、元の色なのか黒くデカイサソリ。あの大きな両手の鋏と二本の尾の先の毒針は受けたらひとたまりもないだろう。資料にあったとおりの見た目だな。


----------

≪識別結果

マウンテンツインテイルサンドスコーピオン 危:C

山の砂漠に住む二尾を持つ蠍。砂の中を潜り進み、獲物を凶悪な鋏でとらえ、二尾の毒針で貫き殺す≫

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 そこからは歩くように近寄ったけど、ぎりぎり識別範囲だったな。ちょっと見てたらすぐに消えてしまったよ。


「き、きゅぃ・・・」


「あ、いや、護ってくれてありがとうだから、落ち込むことはないんだけどな。」


 レイトも僕を見て、あ、やってしまったと言ったように感じた。今回はしょうがないとしておくけど、ちょっと消化不良感もあるかな?

 今まで通りならボス部屋には一匹だけ、とはいえ油断はせずにベードに乗って察知空間をできるだけ広げる。感覚じゃなくあんな風にそこにいるだいたいの物がわかるのはいいな。


「というかレイト、あいつはあれだけ遠くからこっちに気がついて近づいてきたのか?」


「きゅきゅ。」


「あそこまで縄張りだったのか。それで砂地の沈んだ音?そんなかんじか?」


「きゅ。」


 なるほど、この広大な砂漠一層全部がサソリボスの縄張りで、砂地の沈んだ音で察知されてしまったのか。

 これはかなり危険な相手だったな。僕達だけでは確実に先手を取られていただろうし、そのあとも砂地にもぐられたらどう対処するべきだっただろうか?

 これまでの傾向から考えて、この先もたぶん砂漠が続くのだろう。その警戒もあるので40層でベードの足慣らしをしてもらって進んだからか、何もいない砂漠を進むのも結構時間がかかったけど、おかげで最低限という感じではあるがレイトからもよしを貰えたようだ。

 とりあえず祭壇の青い炎が灯ったのを確認したら、41層をチラ見だけしておく。予想通り一面の砂漠が続く。ここからは冒険者ギルドに情報の乗ってない魔物になるわけだけど、ギルド長だったら何かしらは知ってるのだろうか?ちょっと砂漠に潜られたらの対策も考えたいし、焦って進むのはよくないな。とにかく一度戻ってゆっくり考えよう。

リュクスたちが戦うか、どうしようか悩んでいたのですが・・・ついこういう形にしてしまいました。


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