表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/180

火術の特訓をしてみた

特訓ってほどの内容でもない気がするけど、いいよね!

 宿からでて冒険者ギルドに到着、三日連続ここに来てるな。

 まぁ、このDWDでの住人の冒険者は、ほぼ毎日通うんだろうけど、左のテーブル一番手前にドーンが座っているのを発見。


「おう、来たな、んじゃさっそく南兎平原にいくか。」


「はい、特訓ですね、その前に一つ聞きたいんですけど。」


「なんだ?」


 特訓するのは僕はありがたい、でもドーンを付きあわせるのだから、確認はしておかなきゃいけないことがある。


「報酬についてどうしますか?昨日のご飯だっておごってもらっちゃったし、さすがに何もなしで特訓にも付きあわせるのは・・・」


「なんだそんなことか、気にするな、といいたいが、確かにだ、報酬分配はパーティーに付きまとう。こういう特訓の場合、教えるのに金を要求する奴もいる。

 そうだな、じゃあ今日は10分の1だ、俺はそれだけもらう、いいか?」


「え、そんな少なくていいんです?」


 さすがにそれは低すぎなんじゃないだろうか。ちょっと不安になってくる。


「良いんだよ別に、ちょっと俺に考えがあってな。10で100リラってのは、アタックラビットの素材じゃ破格って言ったが、それはあくまでも普通なら、だ。

 まぁその辺はベテランの俺に任せてみろよ、悪いようにはしない。」


 どこか悪そうな顔でいう彼は、光っていた机の三角錐に触れて、その光を消した。



 そして、またやってきました兎の草原。

 ただ、おとといとは違ってちらほらと人の姿が見える。

 とはいえ、みんなバラバラな場所にいて、他の人の邪魔にならないようにやってるようだ。

 僕はドーンを追うように草原の奥のほうに、完全に人の見えないあたりまで歩く。


「この辺までは、わざわざ兎狩りにくる奴は少ない。

 まぁ別に秘密にするようなことをするわけでもないが、一応、念には念をだな。」


 うーん、余計に不安な感じになってきたぞ。


「あんまそんな顔するなよ、俺についてあるいたから、こんな奥まで兎に会わなっただろ。

 そういうところもお前に感じてほしいんだ。」


 そういえばそうだ、盛り上がった土が見えるような位置を歩いていない。

 ドーンくらいになれば、敵との遭遇を避けるのもうまいってことか。

 おそらくだけど、兎だけじゃない、もっと危ない敵に対しても。


「なるほど、勉強になります。」


「おう、よく学べよ、索敵と隠密だけは俺も自信がある。

 脅威に見つからないようにするには、先に脅威を見つけなきゃいけない。何が自分にとって脅威か、わからなきゃいけねぇ。それをわかったうえで、脅威から隠れてやり過ごす・・・

 なーんてな、この辺の魔物じゃ、そこまでギスギスやることはないんだが。もっと奥、この先の林に入るなら、それくらいできたほうがいい。よっぽど、全部を倒す自信があれば別にいいけどな。」


 うーん、まだまだ始めたばかりだし、そんな自信はない。戦闘だけじゃなくて、そういうところにも学ぶことは多いってわけだ。

 こりゃ王都を目指すなんて先の先になっちゃうかなぁ。

 まぁゆったりやろう、時間はたっぷりある。


「おっと、今日のメインは火術だったな、俺は火と水を持ってるが、攻撃として使えるのは、

 火球をとばすファイアボール、これもけん制くらいなもんだけどな。ほとんど俺のは旅に使うための手段としてしか使ってねぇ。

 集めた木に種火ように着火する火術と、この前も使った、火を消火する水術だ。だからあんまいろいろ教えられねぇんだ。」


「いえ、大丈夫です、お願いします。」


 この間のように腕ごと燃やしちゃったりしたときに、消火の術があるってわかってるだけでも、気の持ちようは違う。安心して失敗を恐れずに、火術の練習ができる。


「んじゃあ、あそこにいそうな兎で、まず俺のファイアボールを見せるぞ。」


 ドーンがそういうと、盛り上がった土に向かって歩き出す。僕はその場にとどまって、じっくりと見ておくことにする。

 兎が出てくると、腰のナイフを抜き右手に構える。兎は出てはきたが、どうやらドーンに突撃してこないようだ。

 あんな堂々と立ってるのに、気づいていないのだろうか。僕の時はすぐに突撃してきたのに、ドーンが握っていた左手を開くと、その手から少し離れたところに、ピンボールくらいのオレンジの火の球が浮かび上がる。

 ドーンが振りかぶると、手にそうように火が動き、投げるモーションとともに、手から完全に離れて、火の玉は兎に向かって飛んでいく。それとともにドーンが一気に兎に近寄っていた。

 火の玉に集中してたからか、しっかりとわからなかったけど、

 まるで大きく踏みしめた一足で、兎まで届いたように見えた。

 兎は火の球を横腹にもろに受けた後、ドーンの握るナイフが首筋に突き当てられていた。

 そのままドーンは兎を解体して、袋に詰めてからこちらに歩いてくる。


「どうだ、けん制にしかなってなかっただろ、こんなもんなんだよ、俺の火術はな。」


「いや、その、ファイアボールよりも、一気に飛んで、兎にナイフ突き立てたほうがすごかったかな。」


「ほー、そっちのほうがすごいって言ってくれるのか、ありがてぇことだ、まぁファイアボール当たってひるまなきゃ、あそこまできれいに首を狙えねぇよ。」


 おどけるように言うけど、どうだろうか。確かにひるんだからこそ、すんなりとできるというのはあるだろう。

 でも、この兎くらいなら、ファイアボールでひるませなくても、あのナイフを首に突き立てることはできるのだろう。実際、あの距離まで気づかれずに接近したら、あとはあの速さで仕留めたのだから。


「まぁ、ファイアボールの使い方は俺じゃあれくらいだ。

 でもファイアボールをできるようになるための知識なら、俺でも教えられるってわけさ、とりあえずやってみるか。」


「はい、お願いします。」


 正直、あの足さばきやナイフ技術を、教えてもらいたいなんて思ってしまうところだけど、あそこまで行きつくのは苦労するだろう。僕は速と技のステータスはそれほど高くない。

 今は一番高い秘のステータスを生かす術を覚えたほうがいい。


「まぁ、いっても全部感覚次第だ。手から離した位置に、火球を出して、投げる。そのイメージだけでファイアボールはできる。

 イメージだけで難しけりゃ、手を広げたときに、ファイアボールって声に出すと楽になるぞ。

 まぁ初めは、手を広げたままやるんだ。広げた瞬間につけるってのより危なくはない。」


「これ[詠唱]とかは必要ないんですね。」


「あぁん、術式構成だぁ?あれはもっと大規模だったり繊細なものに使うんだよ。

 それを個人で使ってる奴なんて、この街じゃ両手で数えられるくらいしかいねぇぞ。」


 あ、詠唱はDWDでは術式構成っていうのか。でもちょっと意味が違うような気もするけど、まぁいいや、深くは考えないようにしよう。

 使う人はあんまいないのは、この街がそんなに厳しい環境じゃないからなのか。

 他の街でもそうなのか?その辺は街を移動できたら考えるかなぁ。


「まぁとにかくやってみろ。万が一手が燃えたりしたら、俺が消火してやる。

 投げる位置はさっきの兎がいたあたりにしろ。他だと生きてる兎がいるかもしれねぇからな。」


 よーし、じゃあまずは上向きに手を広げて、火の玉をイメージ、大きさはさっきのドーンのピンボールくらい?うーん、なんか小さすぎて難しいかんじがする。

 野球ボールくらい、もまだ小さい。えぇい、じゃあバスケットボールくらいだ。


「ぉぉぅ!出たよ!」


「いやいやいや、でけぇよ!アタックラビットと同じくらいの大きさあるじゃねぇか!」


 うん、手から少し離れた位置に浮かぶ火球はデカイ。なんせバスケットボールほどの大きさだからね・・・

 ドーンのを見た後だと、この大きさがやばいのはわかる。


「まぁいい、それ投げ飛ばせるのか?」


「やってみます。」


 うーん、片手じゃ難しいか。

 杖も出してないし、両手で包むように持って、頭上に振りかぶって、オーバーヘッドパスのように投げる!

 着弾地点は、先ほど兎がいた地点より、少し奥になってしまった。草原の草が燃え上がる、このままなら引火するんじゃないか?


「おい、なんであんなに長く燃えてるんだよ!くそっ、消すぞ!」


 ドーンが炎に駆け寄って、その燃え上がる上から水をかぶせて消化する。

 うん、申し訳ない、ナイス判断。


「その、なんかすいません。」


「あぁ、いや、お前は初心者なんだからしょうがないんだよ。

 しょうがないんだが、本当に魔素量大丈夫なのか?体がだるくなったとか、吐き気とか。」


「えーと、ないですね、でも一応数値見てみます。」


「そうしてくれ・・・」


 ちょっと魔のステータスだけ確認。200から190になってるだけだ。僕の身体的にも全く問題ない。


「数値的に言うと10減ってるくらいですね。20分の1というところです。」


「おま、それくらいが普通なのか?いや、炎術士だってそんな気軽にできるはずは・・・

 それとも炎だと消耗が強いが、これは火だからか?うーん、あんまり術法使いと組んだことないのが響くな。まぁいいか、今気にしてもしょうがねぇな。」


 結構ぶつぶつと考え事してたけど、僕がかなりすごいことをしているのか?

 そんな自覚は全くないんだけど。


「あの、結構すごいことしてるんですかね、僕。」


「さぁな、ちょっとギルドに帰ってから、術法使いと話してみるさ。別にどうこうしようとは思わねぇよ、話す相手も選ぶ。

 ただ俺の基準からいうとすごいな。俺のファイアボール、あれで50も消耗するんだぞ。」


 うぅん?そんなに消耗してたの?僕の魔素量でいうと4回も使えば0だ。

 そりゃあんなの使ったら、心配してくれるのもわかる。


「魔素量は0にならないように気を付けろ、0になっても動けなくはないが、体がだるくなって、吐き気、場合によっては吐血もある。数値的に0になっても、実は術法を使うことはできる。数値的に言えば、いわゆるマイナスだな。

 ただ、そうなったら、もうあるくのも困難。ヘタすりゃ死ぬ、間違っても過剰には使うな。

 安全圏として10は残しとけ、体が無理だと思うならもっと残せ。何度も言うが、数値に頼るなよ、体のことは体に聞け。」


「了解です。」


「よし、まぁとりあえず、まだまだいけそうなのはわかった。んじゃ、少し離れたあっちに兎がいる、さっそく向かって使ってみろ。」


「うっ、了解です。」


「おっと、そうだ、腰に杖刺してるだろ。そうやって体につけてるだけでも、杖の追加恩恵は受ける。手に持って術法使うやつは、杖の先に力を集める、ファイアボールでいうと、杖先の離れたとこに火球ができるわけだ。打ち出しかたは、人によっていろいろだから、工夫するところだな。」


 なるほど、杖を持ったままならそういう方法があるのか。

 でも、今回は術法メインでやる、杖は腰につけたままで行こう。

 少し歩けば、土の盛り上がったところが見えた。そこから兎が出てきて、突進してくる。急いで左手にさっきの火球をイメージする。そして、火球が出来上がったけど、オーバーヘッドじゃ間に合わない。ならば、胸元から押し出すような、チェストパスもどきだ!

 まっすぐに突っ込んできた兎は、飛んできた火球にぶつかり、ぶつかった位置で燃えながら地に落ちる。周りに燃え移らないかとちょっと焦ったけど、消火できるドーンがいる。

 でも、ドーンは消火せずにそれを見つめていた。何故か、兎が燃え尽きるまで周りの草には燃え移らなかった。


「いまの見てわかったか?標的を意識すると、火術ならそれ以外に燃えうつったりしない。水ならほかのは濡れない。」


「うぅん、便利ですけど、不思議ですね。」


「そうか、来訪者には不思議なのか。俺たちはそういうもんだと思ってるし、そういうもんだとみてきたからな。」


 あぁ、そうか、意識すればこれはゲームなんだ。そういう世界なんだよなぁ。

 まぁそういうもんだとするのが思っちゃうのが一番だな。


「それより、見ろよ、出来上がってるぜ。」


------------

≪識別結果

突撃兎の炭

強力な火によって炭化した、アタックラビットの一部≫

------------


 識別すればしっかり炭ができているのがわかる。

 あ、突撃兎そのものを識別するのを忘れていたな。


「ほぉ、予定どおりだ、前回はすぐに水かけちまったからな。これならあの偏屈にもっとたかってやれるぜ。でも問題にもなるか?いや、これくらいなら平気か。どうする、お前が持つか?」


 いやいや、今問題になるかもって言ったじゃないですか。

 確かにポーチはあるから僕でも持てるけど。


「えっと、ドーンが持っててくれるとありがたいです、聞いてくれるってことは、それでも依頼として問題ないんですよね?」


「あぁ、俺は冒険教官だからな、俺が直接受け取りした時点で納品となるぜ。」


 にやにやとしやがって、僕が持つっていうか試してたんじゃないだろうな?

 でもすぐに真剣な顔に戻る。


「お前、ちゃんと識別特訓しておけよ。そうしたらなんで俺がこんなこと言ってるのかわかる。この素材は話題には絶対なるからな、出どころを隠すのはありだ。」


 えぇ、隠したほうがいいのか。あれでもそんなのを僕に依頼として渡したよね?


「あの、そんな話題になりそうなことを、一人でやらせようとしたんですよね?」


「あん?いっただろ、お前なら俺に相談にくると思ったって、昨日は急すぎて無理だったが、今日ならお前についてこれるの、わかってたからな。

 まぁ、相談に来ないで、勝手に集めて提出したなら、それで話題の中心になって、お前が質問攻めに遭えばいい。

 相談してくれりゃ、それくらい肩代わりしてやるよ。一応、お前の教官をしたんだからな。」


 にっとわらう彼は、きっとやさしさと気遣いの塊なんだろう。

 僕がどう考え、どう行動するのかは冒険者ならある程度自由だ。自由だが、行動の結果に伴う問題が起きたら、自分で解決するのが基本だろう。

 そういう自分だけで解決しなきゃいけないことを、受けてくれるだけでも、ありがたいことこのうえない。


「よし、さっさと10集めちまおう、いけるよな?」


「はい、大丈夫です。」


 そこから残り9匹を突っ込んでくる前に識別しつつ、ファイアボールで焼いて出てきた炭も識別。

 どれも同じ識別結果だけど、同じものでも繰り返すのが大事なんだそうだ。


「はっ、結構早く集まったな、これなら明日中には面倒ごと片付きそうだな。とりあえずは先に報酬だ、証明を出してくれ。」


 証明を差し出すと、100リラを渡された。


「それはとりあえずの額だ、分配とかいろいろ不安かもだが、とりあえず受け取れ。

 そういうのも含めて、明後日にまた会おう。そうだな、ギルドより北門の外で待ち合わせにするか、光と土の刻までにはいるから、それくらいに来てくれ。」


「えっと、了解です。」


 明日はこの兎の炭のごたごたがあるんだろう。そういうのを任せてしまうのは、ちょっと申し訳ないけど、わからないことだから巻き込まれるのもちょっと怖い。

 今はドーンがまかせろと言ってくれるのに甘えておこう。


「俺はすぐにギルドに戻る、おそらくそのまま研究院行だ。飯はそっちで食うことになるな、そうだな、兎肉でもうまいところがある。北門への大通りの途中にある、突撃兎の看板の店だ。朝食、昼食にはあそこのサンドを俺もよく食うからな。」


 おぉ、いい情報を聞いた。でも、食べるだけじゃなく、せっかくだから作りたいんだよなぁ。


「なるほど、今日は行ってみます、でも自分でも料理したいんですよね。」


「あー、そうだな、解体は一昨日やったからできるだろ、自分で肉をとって、焼いてみるのもいい。

 種火の方法教えてやるよ、ただ木が必要になるか。俺だったら森に行って、木も取ってこれるんだけどな・・・

 商業者ギルドの隣の店で見繕うといいぞ。種火使えないやつ用のも売ってるしな。」


 そうして、ドーンがアイテムポーチから5本ほど木片を出して、5本を簡単に組み合わせた後、そこに指をさしたら燃え始めた。

 さらにもう5本ポーチから取り出して組み合わせる。僕もそこに指をさして、種火を思い浮かべる。

 ドーンより少し強かったけど、危なすぎないほどの焚火になった。

 一応これで焼いたりすれば料理としても成り立つようだ。店で木片が用意できれば、明日にでも練習するか。

 僕はもう少し草原に残ることにしたけど、ドーンは冒険者ギルドに帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ