ディヴィジョンマウンテン第11層
視界の休憩させつつ、ちゃんとベードが寄ってくれた11層の魔物である膝上くらいの大きさのヤギの識別を済ませておく。
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≪識別結果
フットマウンテンゴート 危:F
山のふもとに住む山羊。同種以外には猪突猛進がごとく突っ込んでいく≫
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うーん、山羊といってもあの独特なまがった角はないのか。まぁ皮はドロップするらしいし。
「とりあえず僕は少し休憩。3人でやってみてていいぞ。」
「ばぅ。」「――――。」「コ。」
ベードが目の前の山羊を影爪で仕留めたところから戦闘開始。近場にいた数匹がこちらに気が付き突進してくる。
前方と右方面の山羊にはベードが影術で応戦。左側はフレウドが炎術で燃やし尽くす。後方を見てみると、モイザが土壁と粘土の礫で一掃していた。
もしかしてこの間3人で話してたのは、こんな風にどこを見張るかの会議だったのかな?
ベードとモイザのカバーしてる範囲が広いな。フレウドはあんまり広範囲的な技がないのか?
「フレウド、風術と炎術を合わせて広範囲にばらまけないのか?」
「ココ。」
「うーん、一種類ずつしか術法は出せないのか?この間は油術と風術を合わせてたじゃないか。」
「コ・・・」
「なんだ?あれは油と風で使えたのか?たしかにそのあと炎だと威力とか範囲は増すけど、初動は遅れるか・・・」
そういえば僕は炎術出しながらそれをもう片手の水術で消せたけど、フレイムボールとウォータボールみたいに同時に使ったりはしてないな。
あ、そうだ!合成のスキルに術法合成があったっけ?ってさすがに今のスキルレベルじゃ術法合成なんて無理か。
うーん、ここで試すもんでもないかな。合成のレベル上げもそのうちしないとなぁ。
「さて、僕の調子も戻ったし、ベード、右側の山羊の相手は僕に任せてもらおうか。」
「ばぅ。」
つい使いやすいし強力な炎術に頼りがちだけど、この機会に水術のスキルレベルも上げていこうか。
ウォータボールをバスケットボール大の大きさに膨らませ山羊に命中。はじける水しぶきとともに山羊が少し吹き飛んで絶命したのを確認。
まだ3匹ほど迫ってきてる、ウォータボールで対応するなら、さっさとしないといけないな。ちょっと右手と左手どちらにも集中。それぞれの手の少し離れたところにさっきと同じ大きさのウォータボールができ上る。そのまま両手を押し出すようにどっちも発射!
よけることもせず真正面からその水弾を食らい絶命する山羊。突進はいいけど、少しはよけようとしたほうがいいんじゃないかと思いつつ、もう一匹にもウォータボールを食らわせてやる。
そんな調子でベードに乗りながら殲滅しつつ進む。3,40匹ほどは倒しただろうかというところで職レベルがアップ。
水術のレベルも思ってたよりも結構上がってるな。これならウォータボールじゃない技も使えるかな?試しに左手を握って構え、左手の上に右手を添えて、強く弦を引くイメージしつつ、右手を引く。引いてきた場所にできあがる水の細い矢を山羊に放つ。
「完成、ウォータアロー。」
水矢は山羊の額を貫き、貫かれた山羊は転倒して少し転がった後、消滅していった。これならもっと効率的に行ける。
矢を一気に3本引くイメージで右手を引くと、人差し指から小指のそれぞれの間に矢ができ上る。そして放てば、一気に3匹を貫くことができた。
「うーん、さすがにこの山羊だからうまくいってる感はあるな。ダンシングエイプみたいなやつらだったら無理だろうね。」
「ばぅ・・・」「――――。」「ココ?」
ベードは申し訳なさそうにそうだろうといってくれた感じ。モイザはそうですねと言ってくれた感じ。フレウドはそうか?と言われたように聞こえた。
フレウドが僕の動きをまねるように両翼を前に出し、左翼をそのままに、体をひねるように右翼を引く。翼と翼の間に小さい風の矢ができ上る。炎じゃないのはフレウドも普段使いじゃない術法の練習かな?
放たれた風の矢を正面に受けて倒れてしまう山羊。まっすぐ来るだけの相手とはいえナイスヒット。一撃だったし、威力もそこそこはあるんじゃないか?
フレウドも僕のほうに向いてどこか自慢げだけど、まだ2匹ほど迫ってきてるぞ。一応援護射撃をしておくか?
いや、すぐに山羊のほうに振り向いて、すぐに風矢を翼を引いて作り上げる。今度は二本出来上がり、その二本が放たれて山羊を貫いた。
「だいぶ使いこなせてるじゃないか。炎術もうまくできるといいな。」
「コ。」
任せろと言わんばかりにさっきと同じように翼を引くと、炎の矢ができ上る。なんだ、それができるならもっと広範囲に対処できたんじゃないのか?
そう思って聞いてみると、今ようやくできるようになったという感じに返事された。なるほど、僕のを見続けてたからできるようになったのね。じゃあそういうことにしておこう。
そんなフレウドに対抗するかのように、モイザが見てほしそうにこちらをつついてきた。
モイザは4本を使い、前足の1本を僕と同じように構え、残り3つの足を引くと、その脚の間に粘土の矢ができあがった。それを後方から迫る3匹の山羊にと放ち、あっけなく倒してしまった。
「お前ら、アローはいいけど、他の術法もちゃんとやっておけよ?貫くならランスのほうが威力高いんだし・・・」
「――――!」「ココ・・・」
そんなことがありつつ、11層を抜けた。抜け切るころには種族レベルも1上り、 種族レベル7、職レベル2になったわけだ。魔に振ったポイントも15で、魔素も1万をついに超えた。
けどこれでもまだ魔素は足りないかな?正直急激に使うことがあるから困る。どんどんレベル上げしていこう。まだ時間はあるし、このまま12層も超えてから、いったん宿に戻って13層の魔物について聞きに戻ろうか。