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四腕熊戦

 さてログインした今日はいよいよ熊戦だ。そしてそのまま北の熊壁街を目指すことになる。なんでもその間には街道は敷いていない。いや、熊たちのせいでしけないらしく、うっそうとした森をまっすぐ北に歩くことになる。

 一応方位磁石を店で購入しておいたので、方角は問題ないだろう。ベードも方角ならわかるようだし。

 今から入る北の熊の森は周囲を聖域の壁が覆っている。これは熊が森から外に溢れないようにするためだ。しかもこの森が結構東西方面に広い。南北方面にはそれほど広くはないけど、ちょうど森の中央に鎮座する熊とは出くわすだろうという。

 それがこの森で一番に強い熊であるというのが、フォーアームベアの情報に書いてあった内容だ。つまりその最強格と戦うのをおそれて、違う熊の縄張りを通るのもありといえばありなのだろう。

 もっとも、その手段はかなり難しいと言える。どれほどの縄張り範囲かわからないのだから。

 南の熊壁街の北門は内側に門兵がいる。そしてこの門は時々向う側からの攻撃できしむのだという。その時にはだれであろうと門を開くことはできない。

 兵士が常に見張り、門への攻撃がやんでから、2刻ほどは待たないと門の開閉は行われないのだ。

 そういうのを聞くと、今まで聖域の壁とか門とか仰々しいなんて思ってたけど、必要なことだったんだなと改めて認識する。

 今は門への攻撃は来ていないようだ。出るなら今がチャンス。申し訳ないけど、街中でベードにすでに乗って準備する。

 門兵の人は僕のほうにちょっと緊張気味な目を向けながら開門してくれた。危険だと思ったならすぐに帰還石を使うようにと、一つだけ渡してくれた。

 今後は購入するようにと言われたけど、これ戦闘中でも使えるのか。まぁ帰還石は今回、本当に危険なら使おう。用意してなかったからありがたい。

 つい時空術があるからと買い忘れてたんだよね。ミエスギルド長も買っておけって言ってたな。術法じゃいざというときにすぐ使えないもんな。


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≪識別結果

 帰還石 質:5C

 帰還の術式が込められた魔道石。手にもった状態で帰還と声を発すれば発動し、その所持者とパーティーメンバーは帰還場所へと帰還する≫

----------


 なるほど、便利だ。すぐ取り出せるように心掛けないとな。でもそれ以上にこの森に意識を集中させろ。いつ熊に襲われてもおかしくないんだ。

 1刻ほどすごくゆっくり、まっすぐ北に進んだだろうか。ベードがいつも以上に低い姿勢になって、唸り声をあげる。目の前のフレウドも、背後のモイザも、ベードの視線の先を注視してるようだ。そこにいるのか?

 刹那、ベードが思い切り横に飛びのく。さっきまでいたその場所に、ベードよりも2周りは大きい熊の巨体の左二腕が、地面を切り裂いていた。


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≪識別結果

 フォーアームベア 危:B

 前の腕部分が左右二本ずつの四本腕に分かれた熊。凶暴性が高く目についたものを襲う。≫

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 識別結果はあんまりあてにならないな!情報通りなら、術法の基本属性はそれほど効き目がなく、術法を使うなら、氷、樹、雷なんかで攻めるのがいいとか書いてあったけど、レイトの雷以外うちにその手段はない。

 レイトに頼るのは、レイトの気分次第だ。今はできるだけ僕たちでやる!予定通り、殴った隙をついて、フレウドが油弾を発射。


「グルァ!」


 乱暴に左腕の一本でその油弾を振り払う。あんまり回避行動はとらず、防ぐことが多いってのは本当みたいだな。すぐさま僕もフレイムボールで追い打ち、フレウドもフレイムボール。


「グラァ!」


 まさかの右ストレート2連打で炎弾がかき消された・・・でもすかさずベードが影術を伸ばして、熊を拘束。さらにモイザも糸で拘束。

 したけどそれも駄目、どちらの拘束も引き裂かれる。でも十分時間は稼いでくれた。クイックアップは前回の反省を生かして、この隙にかけておいた。相手との距離も十分かせげただろう。


「クイックアップの経過時間に注意しろ!フレイムウェーブ!」


 あの火力、やっぱあんまり接近戦するのはよくなさそうだな!フレイムウェーブで少しでも足止め。乱雑に腕を振り回して炎の波をかき消そうとする。

 その時、左腕の油に引火、腕部分が炎上し始める、チャンスだ!


「フレイムランス!」


「バゥ!」「コ!」「――――!」


 僕は一番投げ当てで貫通力のあるフレイムランス。ベードも影を槍先のような形状に3つほど固めて飛ばす。フレウドはフレイムボール。モイザは粘土の礫弾。

 すべてを一斉に発射した、さすがに防ぎきれないだろ!と思ったが、燃えた腕も気にせず、四つ腕をクロスさせてガードの体勢をとる。

 まっすぐ打ちすぎたせいで、僕のファイアランスとフレウドのファイアボールは腕に命中。モイザの礫弾は体全体に命中して、ベードの影の槍先も操ったのか、ガードの下を潜り抜けて突き刺さったようだ。


「グガァ!」


「ウゲッ!全然効いてねぇ!」


 ガードをといて、さらに腹に突き刺さった影の槍先の、繋がった影を引きちぎる。ってやばい、あの体勢突進してくる気だ!


「フレイムウェーブ!」


 って全然効いてねぇ!気にも留めずに6脚歩行で突進してきやがる!


「フレイムウォール!」「――――!」


 突進上にフレイムウォール、さらにその手前にモイザのクレイウォールができ上るも、どちらもあっけなく破壊される、ベードも完全に逆を向いて逃げてるけど、相手の突進のほうが早い!追いつかれる!


「クッソ!はじけ飛べ!フリップスペース!」


 今にも飛びつかんとする熊に向かってフリップスペースを飛ばしあてるイメージで慌てて対処したけど、熊の勢いは衰えず、そのままその腕は僕たちを捕らえた。

 その瞬間、ベードはわざと翻り、僕達の盾となっていた。


「ギャイン!」


「ぐっ!ベード!!!」


 ベードの上から地面にと転がり落ちたけど、それどころじゃない、今のやられ方はまずいんじゃないか!?

 いや、それより熊がやばい。ベードの手当てなんて言ってられる状態じゃない。とどめを刺さんと腕を振りかぶってる。・・・いや、その状態で止まってる?


「レイ、ト・・・」


「キュ。」


 ベードと熊の間にはレイトがたたずんでいた。明らかにその二匹より小さい体なのに、僕ですら近寄りがたい感じがある。

 熊が少し後ろに身じろいで、はっとした。それより早くベードを見ないといけない。僕はベードにと駆け寄った。意識は、あるみたいだ。でも傷がひどい。

 僕と同じように飛ばされていたモイザが近寄ってきてくれる。どうやら作ってあったポーションを傷口にかけてくれたみたいだ。僕もヒーリングハンドで手当てしつつ、レイトと熊のほうを見る。

 熊は明らかに迷っている。その振りかざした手を振り下ろしていいものかと。


「グッ!ガァ!」


「きゅ・・・」


 熊が意を決したように手をレイトに向け振りかざそうとした瞬間、熊の頭上から雷鳴が落ちた。バリバリドゴンというようなとてつもない音と光に、思わず一瞬耳と目をを塞いでしまったほどだ。

 見開いた先には、レイトだけしかおらず、熊のいただろう場所に黒ずみ跡が残っていた。


「レイト、やっぱりお前・・・」


「きゅ。」


「あ、あぁ今はそれよりベードだな。この傷じゃあ戻るも進むもできないな。一度家に転移させる。悪いけどモイザ、看病頼めるか?」


「――――。」「コ!」


「フレウドもか、よし頼む。リターンロケーション。」


 3匹を自宅帰還転移させた。残るは僕とレイトだけになったわけだ。


「きゅ?」


「あぁ戻らないのかっていいたいんだろ?いや、すすむよ。」


 おそらくその手前の魔物たちで特訓しても、この熊に僕達だけじゃ勝てない。レイトいてこその勝利だ。できるだけすぐにこの先に進む。そこで更なる特訓をしよう。反省はいろいろある。

 ベードがクイックアップがあったのにもかかわらず、熊に追いつかれたのは、僕たちに気を使いすぎたせいだと思う。完治したらもっとベードに乗ることにみんなで慣れないとな。

 そもそも、僕のレベルが低いという点もあったかもしれない。もっとレベル上げにいい場所を探そう。戻るだけなら転移でも戻れる。


「レイト、今回はありがとう。でもまた頼らないといけないということのないように、できるだけ追いつけるようにするよ。」


「きゅぅ・・・」


「無理だろってか?そうかもしれないな。でも目標値はとりあえず今のレイトだろ。僕の予想だけど、同じ危険度Bを一撃でなんて倒せるはずがない。お前まだそれでも偽装してるんじゃないか?」


「きゅ・・・」


「あぁいや、いいんだ、偽装したままでも。そのうち僕にも見せていいって思う時が来たらでいい。」


「きゅ。」


 あぁ、そうだな。そんなことよりほかの熊がきたりする前に、さっさと北の熊壁街まで抜けてしまおう。

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