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土術と陶芸

 翌日、さっそく南兎平原に出向いて、モイザの新しい技を確認させてもらうことにした。自宅敷地だと的がないからね。兎を的と言ってしまう僕も結構悪だけど。

 モイザにも土術のボール技があるかと思ったんだけど、どうやら使えないっぽいようだ。

 その代わり土のバレットと土の壁が使えるようで、特に土の壁は僕の火の壁よりも少し硬い。さすがにフレイムスフィアだと突き抜けちゃうけど、十分な強度とだと思う。

 ただ、僕に見せたかったのは普通の土技じゃなく、どうやら別の技だったらしい。先ほどのように土の壁をまた展開、ちょっと色が違う?

 モイザが触って見せてくれたので、僕も試しに触ってみると、さっき土の固い感じと違ってなんか柔らかい。

 そうか、これ粘土なのか!お試しで離れてもらいつつフレイムスフィアを当ててみる。さっきの土壁はまっすぐ突き抜けちゃったけど、粘土壁は当たった部分が緩やかに曲がって、スフィアの勢いをかなり抑えた。結局突き抜けちゃったけど、ただの土壁よりも全然耐久性が高そうだ。


「すごいなモイザ。これなら熊の攻撃も少しは防げそうか?」


「――――。」


「ん?これはメインじゃないのか?」


 まだまだあるといわんばかりのモイザ。粘土壁が崩れてそそくさと手元、いや脚元?に魔力を使い、灰色の粘土の塊を出すと、それを壺の形に形成していく。出来上がったのは野球ボール大ほどの小さな壺だった。


「なにこれ、え?これ陶芸のスキルか?」


「――――。」


 どうやらこれが陶芸みたいだ。ろくろとか必要ないんですね。さすが魔法です。

 せっかくかわいらしい見た目の壺だけど、このままというわけにはいかないだろう。さっきの粘土壁も崩れて跡形もなく消えちゃったし。


「――――。」


「ん?なんだ?」


 モイザが頑張って何か伝えようとしてる。僕とフレウドを足で指してるけど・・・


「コ!」


 フレウドがフレイムボールを出してようやくわかる。焼き上げしろってことか。でも乾燥させる必要があるんじゃないか?それに焼き上げようの窯だってないし・・・

 えぇい、まぁいいか!フレウドはフレイムボールを出したけど、それで焼き上げようとはしなかった。つまりあれだと多分粉々になっちゃうとかそんなんだろう。

 窯、炎で包む、焼き上げ、そういうのをイメージしてたら、あの手にまとわせたフレイムハンドを思い出した。やってみるか。


「炎を愛でる手、フレイムハンド。このかわいい壺を焼き上げてくれよ。」


 両手に炎を纏いながら、地面に置かれた壺を持ち上げる。この炎でそっと包み込むように、壺の内側にも炎を入れたりしながら、焼きあがりしっかり固まるのをイメージ。

 ゆっくりじっくり焼いてたけど、1時間くらいはたっただろうか。何とか焼き上がり灰色というか白というかそんな感じの色になった。ちょっぴりさっきよりも小さくなった壺はちょっと爪でつつくと、カツンカツンといい感じの音を響かせる。どうやらこの状態になったら完全に残り続けるみたいだな。


「――――!!」


「おぉ、嬉しいか?なかなかに時間かかるからすぐにとはいかないけど、僕でも焼き上げられるんだな。」


 というか、陶芸ってこれでいいのか?もっと時間かけるものだった気がするけど。まぁ現実と同じくらいにかかりすぎるとゲーム的にどうなのってところか。

 商業者ギルドに陶芸について聞きに行って、専用の道具を買おうかと思ってたんだけど、必要なさそうだな。


「あ、そうだ。この壺を染色してみないか?あとフレウドのハチマキも色を変えよう。」


「コ!」


 翼を上げるフレウド。ってあれ、翼を広げたフレウドの翼内側、あんな緑っぽい色だったっけ?昨日ちゃんと見てなかったな、あれも進化の変化か。ぱっと見の色の変化はなかったからわからなかったよ。

 自宅に戻って、モイザに染色をしてもらう。壺は青色に染まり、家の中の飾りとして置いておく。何か花でもさしたら花瓶っぽく使えそうだ。

 フレウドのハチマキは買ってきた緑に、これで炎と風のデュアルって感じが増すだろ?というと喜んでいた。

 モイザやレササ達の糸輪も染色、モイザは自分のを買ってきてた紫に、独特な色だけど、毒を意識してるのかな・・・

 他の蜘蛛達の分はみんな赤色に染めていた。足元についた糸輪、アクセントとしては悪くない色合いだと思う。

 これで自宅作業はあらかた終わったかな?あ、一度店に顔を出しておくか。兎面をかぶり、店舗方面にと行く。

 裏口から入ると、店舗内では6人のお客さんが商品を見ていた。主に糸玉と茹で緑甘樹の実だけど、ほぼそれしか買うものないのに6人もいるとは思わなかった。

 店内の蜘蛛達はちょっぴり暇そうにしつつ、お客様が離れたの後の展示ケースを確認している。在庫確認しているのかな?

 そして入り口の会計用水晶横にトレビス商長が。お客さんの相手をするわけでもなく、立っているだけだったので、こちらに気づいて近寄ってきた。


「スクーリ様。お疲れ様です。糸玉と緑甘樹の実の売れ行きは上々ですよ。」


「あ、そ、それはどうも。」


「ですがノビルやレモングラスはすでに他の方も見つけ始めたり、こちらのほうはよくありませんがね。何か追加する商品はございますでしょうか?」


 何か追加する商品ねぇ。糸で作った糸輪とかも置いてるけど、あれもそこまでって感じじゃない。やっぱ自分で作るほうがいいってことは、元素材があるといいのか。


「うーん、いっそ輸入した片栗粉でも置きますか?僕がストレージに入れれば、そのまま売り出し続けられるんですよね?」


「それはいい考えですね!永久的に買えるものではないので、購入制限は必要でしょうが、あれはそもそも大量に使うものではないでしょうし、この街には下手をすると輸入できないかもしれないところだったので。」


「そうなのですか?」


「まぁ仕方ないのです。肉類はこの街ですと兎肉がメイン。となれば4種の肉を気軽に使用できる隣町の南の肉の街への供給がメインになるはずですので、一度南の熊壁街を経由してそこへ届けられるはずです。南の肉の街としては、そこから私たちに片栗粉を回すほどのメリットはないのですよ。それに私たちとしても出せるものが劇的に増えたわけではないので。」


「なるほど・・・」


 輸入の輸入になったら、結構な量の輸出で答えなきゃいけないだろうし、なにを入れて代わりに何を出せるか商長たちは結構悩んでるわけか。


「まぁ、そこは私たちの勝手な話ですので、スクーリ様がこの店で片栗粉を売りに出すのは問題ありませんよ。他の街に出したくない素材であるならば、輸出をすでにしていないはずですからね。」


「そういうものなのですね。なら一人一つの制限で出させてもらいますね。」


 僕の分なんて10もあれば十二分に足りる。残りはすべて展示ケースの一つに入れておく。僕が作業を終えるとこっちを見ていたお客さんの一人がさっそく購入していったようだ。

 まぁこっちチラチラ見て話を聞こうとしてたもんね。そりゃ気になってただろうね。それくらいは許そう。お客なんだし。


「じゃあ僕は明日には向うに戻ります。ストレージに追加はしますけど、無くなった場合は完売ということで。」


「わかりました。お客様にはそうお伝えいたします。蜘蛛達にもお教えいたしますね。」


 そういえばあの3匹の蜘蛛達はちゃんと店のこと覚えてるんだろうか?覚えたとしてもお客さんとの意思疎通は難しいだろうけど・・・

 まぁそこらへんどうするのかはレササとトレビス商長に任せてしまおうか。蜘蛛達の接客が難しいとなったら、別に商業者ギルドから人手を借りるつもりなんだし。

 それにしても商品数が少ないかな?そうだ、商品がもう少し必要なら、残りの時間で少し焼き物でもモイザと一緒に作って並べてみるか。


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