商業者ギルドで試験を受けた
商業者ギルド登録まで一気にどん
窓から射しこむ日の光に、目をこすりながら、上体を起こして体を伸ばす。DWD二日目開始だ。
一応、900R残ってるので、宿は問題ない。
できればほしいのはアイテムポーチだけど、高い可能性もあるので不安面はある。なら金策する必要があるわけで、金策といえばやはり生産なのだろう。
一応料理のスキルはあるし、行くか商業ギルド!
・・・そのまえに、冒険者ギルドで場所を聞かなければ。
依頼板の前はごった返し、5つの受付すべてに7人は並んでいる。右の依頼板から適当に一枚とって、すぐに並ぶ人さえいる。
受付の一番右に輝くスキンヘッドを発見。そこらの人に聞いてもいいけど、しょうがない、並ぶか。
ちょっと気合入れて並んだけど、7人の列はどんどん進み、思っていたより早く順が回ってきた。
「いらっしゃい、ってお前か、用件は?」
「商業者ギルドの場所を教えてもらってもいいですか?」
「・・・差し支えなければ、なんでかきいてもいいか?」
「実はアイテムポーチを買うためにも、リラを稼ごうと思うんですけど、依頼を受けて稼ぐよりも生産で稼いでみるのもいいかと思いまして。」
「あー、やっぱそうか、商業者ギルドなら、北門の少し手前にあった一番デカイ建物だ。だけど、ポーチ買う前に、一応この依頼見とけ。」
なぜか押し付けられた紙はどうやら依頼書のようだ。
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納品依頼・突撃兎の炭
突撃兎の炭:10
アタックラビットを適切な火で燃やした際にドロップする
突撃兎の炭という素材が大量に必要なので依頼します
報酬:100R
追加依頼
突撃兎の炭:100
報酬:袋型アイテムポーチ(小)
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「え、これって・・・」
「質問はなしだ、どうしてもききたけりゃ闇の刻ちょい前くらいにこい。ほら、後ろ詰まってるから、どいたどいた。」
気圧されるままに、依頼書とともにどかされる。
一応忘れないように証明に記憶させておくか。
他の人には見えないようにする練習も兼ねよう。
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リュクス・アルイン
冒険者ランク:H
【隠蔽】
所持金:900R
依頼:納品依頼・突撃兎の炭
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これで隠蔽って書かれてるより下の表記は隠れてるってことだよね。
よし依頼のほうはどうやら期限のある依頼じゃないようだし、せっかくだから初めに決めた通り、商業者ギルドに行くか。
登録までにどのくらい拘束されるかで依頼か商業者登録かを決めよう。
なお、ついうっかり道中の露店で、ルーフから垂れ下がる革細工屋と書かれた帯をみて、ドーンがつけてた、鞄型アイテムポーチの固定具や、解体ナイフホルダーのついた皮ベルトを思い出してしまい。
展示ケースをついのぞいたら、腰に巻く用の黒に塗られた皮ベルト、杖ホルダー付きを発見。
「すいません、このベルトください。」
「はいどうも、300リラになります、証明を重ねてください。」
そんな感じで、つい300リラ散財しました。受け取った黒ベルトを付けて、杖をさしておく。
露店は危険なので、それ以上は帯も見ないようにして歩いたよ。
そしてやってきました、商業者ギルド。
扉を開けて入ったのはいいけど、目の前が受付で、すぐに座っていた受付の女性が立ち上がって声をかけてきた。
「いらっしゃいませ、どのようなご用件でしょうか。」
「えっと、商業者ギルドに登録しようと思いまして。」
「かしこまりました、まずはお座りください。」
向かい側の椅子に座ると、相手も座って話し始めた。
「よろしくおねがいします、早速ですが、登録に関して、すでに証明のほうはお持ちですか。」
「はい、持っています。」
「では、ギルド登録の為、この後は試験を受けていただくことになります。」
やば、なんかなし崩し的に話進めすぎちゃった。
「あ、ちょっと待ってください、試験についてなのですが、どのくらいの期間がかかりますか?」
「そうですね、速い方でも半日、遅い方だと3日かかった方もいます。」
おぉっと、聞いといてよかった。早めにポーチはほしいし、依頼を優先するべきか。
いくらかは見てないけど、ドーンの使ってたような袋を露店で見かけたし、値段によっては買うのもいい。
「えっと、実はアイテムポーチが早めにほしいので、金策のために商業者ギルドに入ろうと思ったのですが、時間がかかるのであれば・・・」
「でしたら、こちらに来たのは正解ですよ。
登録完了と同時に鞄型アイテムポーチの小をお渡ししていますので。ちなみにですが、鞄型の小でも、相場額は8000リラ、露店でやすく買えても極小サイズで5000リラというところでしょうか。」
う、かなーりたかい、でも必須アイテムだもんなぁ。
というかそんなに高くて他の来訪者はどうしてるんだ?
「かなりの値段ですね、冒険者を始めたての人はアイテムポーチどうしてるんですか?」
「冒険者ギルドでは分割袋型の極小サイズを、100リラで3日間レンタルしているそうです。
種類は3つ、量は20しか入れられないものですが、軌道に乗るまではそちらを使う方も多いとのことです。」
おぉう、レンタルがあるのか、でもそのサイズを聞くとちょっと残念感あるな。
「鞄型の小サイズはどのくらい入るのですか?」
「量は60ですが、種類は30入れることができますよ。」
うん、なら決まりだな。
「教えていただき、ありがとうございます。商業者ギルドの登録試験、受けたいです。」
「かしこまりました、では内容をご説明します。
試験の一つ目は生産試験です。こちらは得意なものでなくても構いません。もちろん生産系スキルを所持していない方でも大丈夫です。
行いたい生産を申していただければ、その生産の基礎を含めて指導させていただき、指導終了時点で試験は終了です。
試験二つ目は売買試験です。有人露店を模した設備で売買を学んでいただきます。
露店をお客様として使用する場合は、商業者ギルドに登録をしていなくてもよいのですが、露店主を行う場合には様々な制約があります。」
まぁ、売買の主軸側が自由すぎることするのは、よくないからなぁ。そういうのは必要になるだろう。
「まず、一つ目の生産試験を行うのですが、ご希望はありますか?」
うーん、他のことをやってもいいけど、やっぱ料理で行くか。せっかくスキルがあるんだからな。
「料理でお願いします。」
「かしこまりました、ではこちらへどうぞ、ご案内します。」
立ち上がって、受付のスイングドアと、奥の扉を開け、その扉の先を手でさしている。
ちょっと入るのをためらったけど、僕も立ち上がり、誘われるまま中へ。
中は見事な台所とその上に台所用品が並ぶ。
壁際の大きいけど低い机には木箱に入った野菜、肉の数々。
「すごい・・・」
「はい、私たち商業者ギルドは設備にこだわりがあります。
空間切り替えといわれるスキルアーツで作られた術式をもとに、扉を開けたときに、こうして必要な場所につながるようになっております。
料理をするためのこの部屋は、素材の品質劣化が起こらないように、部屋ごと魔道素材で作られた魔道具なんです。
お客様が来られた際にも、数人同時に接客されることを希望しない限り、個人個人でちがう受付で対応させていただいております。」
なるほど、だからあんな目の前が受付にもかかわらず、僕の接客中にほかの人が入ってこなかったわけだ。
そしてこの台所にもそのスキルのおかげで来ているというわけか。
「改めまして、今回、生産指南、売買指南をさせていただきます。キャロライン・クリスチーヌと申します。よろしくお願いします。」
「あ、えっと、リュクス・アルインです。よろしくお願いします。」
自己紹介は大事だよな、うん。
「ではさっそく生産指南を始めさせていただきますね。初めに、野菜の下処理、肉の下処理をおこないます。
まずは私の説明の手順通り行っていただきますね。」
「はい。」
そこからは本当に普通の料理の下処理の手順だった。
ニンジンのような根菜のヘタを切り落とし、包丁を当てて回しながら皮をむいて、そのあとは細切りにする。
キャベツのような葉菜は、芯に切り込みを入れた後、外側から丁寧に一枚一枚剥がして、ボウルに入れ、ふるうようによく洗う。
水は一応、蛇口があるのだが、これは井戸かなんかにつながってるわけじゃなく、水の出る魔道具らしい、おのれ開発め。
他にもネギ、ピーマン、ナス、ブロッコリーのような形の野菜たちを、一つ一つ下処理していく。
野菜が終われば次は肉だ。大きな塊の肉だ、なんの肉だこれ。
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≪識別結果
切り裂き豚の肉塊
リッピングホグの肉塊
この肉塊は食用として人気が高いおいしい部分が詰まった塊である。
美味しさのあまり舌まで噛み切らないように≫
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あぁ、見るつもりはなかったのに!
ここでは、何となく識別しないようにしてたのに、くそう・・・まぁ見ちゃったもんはしょうがない。
まずは食べやすいように、薄くスライスしていく。なんだこの肉、固い筋の部分が一切ないぞ。
塊全部がきれいな赤身だ。筋切りしなくていいのなら、おいしい部分余すことなく使えるな。
「良い手際ですね、包丁さばきも問題ないです。次は炒めていきましょう。」
下処理した野菜を、熱の通りにくい根菜から順に、油を敷いて熱したフライパンに投入。
渡された醤油のような液体を回しながらかけいれて、菜箸を使ってかき混ぜる。
全部にほんのり焼き色が付いたら、野菜炒めの出来上がり。
今度は豚肉を投入、色が変わるまで両面しっかり焼きあげたら、野菜炒めと一緒に盛り合わせ。
完成、切り裂き豚と野菜の炒め物です。
「識別しますね・・・はい、合格です、すばらしいですね。
今のような下ごしらえを手作業で丁寧に行うほど、料理の質がぐんと上がります。スキルアーツで下ごしらえをすることはお勧めしません。時間のないときには便利ですけどね。
識別をお持ちならば、識別レベルを上げると質を確認することができます。
ただし、料理や薬などを識別するには、少し上の識別が必要ですけどね。」
キャロラインさん、多分それ、僕持ってます。
「また、下ごしらえも、今行ったのは基礎であり、そのあとの炒め方も基礎です。
やり方を変えることで、質が向上するかもしれませんね。
料理はレパートリーがたくさんあります。一つ一つ、あなたの手で見つけてみてください。」
「はい、わかりました。」
「では次に参りましょう、こちらへどうぞ。」
再び扉を開いて、移動を促される、おそらく別の部屋につながってるのだろう。ただ、作った料理はどうなるんだ?
「あの、料理はどうなるんでしょうか。」
「あぁ、申し訳ありません。先ほど質まで見せていただいたので合格なのですが、最後に別の方が食されるまでが試験の内容です。
それと、この部屋の物なのですが、私の権限では部屋の外に持ち出すことはできませんし、必要以上の消耗を行なわないように言われています。」
つまり、この空間切り替えで来てる空間は、それだけ特別ということか。
きっと何かしらの制約を持っているんだろう。
ヘタなことして崩したらたいへんだ。
「わかりました、ありがとうございます。」
それなら、そそくさと台所部屋からは退散。
そして次の部屋は、大通りでもみた露店が1つぽつんとある。
ルーフの屋根と、店付けの展示ケースが印象的だ。
「こちらの露店が基本的な貸し出し露店となります。
この街ですと露店を出してる方はすべて、この形の貸し出し露店を使用しています。
露店を購入した場合は少し異なるのですが、この貸し出し露店を基準に説明いたします。
まず、展示ケースには裏から商品を入れるだけで、入れた商品順に左上から展示されていきます。
この展示ケースの中も、品質劣化しないように、また出し入れ、値段などの数値設定が簡単にできるよう、魔道素材をふんだんに使って作らせてます。
このタイプですと9種類の展示が行えて、それぞれに50の数を入れておくことができます。ケースに入った商品は自動的に識別され、このように情報を表示させます。」
キャロラインさんが腰の鞄ポーチから、青の液体の入った瓶を取り出し、展示ケースにと入れる。
すると左上の場所に先ほどの、青の液体の入った瓶が表示されて、そこに文字も浮かんでくる。
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販売準備中
魔素補填ポーション
値:R
数:1
質:2F
魔素を体内に取り込みやすいよう、液状薬として生成された薬
飲むと体内魔素量をすこし補填する
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値段がついてない、おそらくこれからつけるのだろう。あと質の2Fってなんだろう?
「御覧の通り値の数値が入力されていません。では、こちらの商品いくらで入荷したと思いますか?」
「え、わかりません・・・」
いや、いきなり言われてわかるもんなのか?あぁでも、露店見てたりすればわかるのかな。
「そうですね、これで急に正しくこたえられる方なら、もう売買試験を合格でも構わないくらいです。それについて、ご説明しますね。
まず、このポーションですが、この街の露店ではまず見つからないでしょう。周辺では取れないような素材を、使用していますからね。
私たち商業者ギルドに登録している方が利用できるようになる、他の街からの輸入商品に、まれにあるような商品です。
さらに、輸入ルートの危険度変動によって、入荷時の値段も変わるので、現状の輸入ルートの危険度を知ることも必要です。
ただし、ポーションは消耗品です、使われてこそ価値があります。
ある程度の危険度上昇なら、値段は上がってしまいますが、輸入ルートの危険度が著しく高い場合は、むしろそのルートの危険度を減らすため、街同士で冒険者を派遣し、国からは騎士が派遣され、ポーションの消耗は多くなります。
そんな中でどんどんポーションが高くなり、金銭面的に使えなくて死亡してしまった、など起こさないように、むしろ金額が下がったり、ギルドで配布したりもします。
今回は大きな危険もなく、輸入までに一本も欠けなかったため、100本を5000リラで買い上げることができました。つまり、一本の輸入額は50リラですね。」
「欠けることがあるんですか?」
「はい、この商品では少ないですが、ポーション輸入では、戦闘中に起こった負傷度合いによっては、輸入中の高品質ポーションを使用して癒すことは、よくある話なのです。」
なるほど、そういう事態もあるのは普通ってことか。
「では、露店に入れたこちらの1本の商品に値段を付けます。あなたでしたらいくら付けますか?」
「えぇと、75リラくらい、ですかね。」
僕は他のゲームでよくやってたのは、別の場所で買ったものを、そこでは買えないから1.5倍の値段で売るという感じ。輸入と似たようなもんだろうと思うんだけど、どうだろう。
「それは、とても低い設定ですね、あっという間に売れて、他の方が200リラで売るでしょう。
大体はこれ一本で200リラです。」
「そんなに高くするんですか?」
消耗品だから高いとまずいって、言ったじゃないか。
「そうですね、今回のように問題なく入荷できているなら、一気にさばくために150リラで販売する方もいるでしょうし、すこし安めにと180リラを付ける方もいるでしょう。
逆にそのルートの危険度が低いならば、危険度の少し高いルートに赴き、250リラで売る方もいるでしょう。
この商品でしたら250が限度ですかね、それ以上の値段は、まず買う方はいないでしょうね。」
「なるほど、でも入荷先での値段とそんなに差がついて大丈夫なのですか?」
「はい、そういうものと思っていただいたほうがいいです、確かにこちらの商品を製作しているところの露店では、100リラほどで購入できますけれどね。」
「うーん、それって製作者はあんまり儲けていないのですか?」
「そうでもありませんよ、街と街でつながっているからこその、この値段ですからね。
私たちのギルドからも、お相手の街にいろいろ輸出します。お相手の街周辺では取れないような素材はもちろん、その素材を使った消耗品や防具に加え、この街特有の工芸品など、様々なものを輸出しますので、こういった消耗品に関してはお互いにあまり高い値段はつけません。
製作者の方は、おそらく製作依頼として納品している方たちでしょう。
商業者ギルドの製作依頼の場合、素材を渡し、品質管理をして製作していただいております。
品質の低いのはもちろん、高すぎても納品できません。
依頼内容によっては、空間切り替えを使っていないその土地のギルドの施設を利用し、指示のもと作っていただく、という場合もあります。
ギルド依頼なので、報酬金は個人の負担ではありません。
この商品だと実際の金額はわかりませんが、私たちのところですと、消耗品10個作った際の報酬は、この街の市場平均額で売った場合から、およそ2個分ほど差し引いた金額になっています。材料費を考えれば、かなりお得となっています。」
なるほど、材料費でそれくらいの差し引きならお得だろう。
素材をお金で集めようとすると結構馬鹿にならないってのは、MMORPGあるあるといえるだろう。
「それでも露店があるのは、先ほど言ったように違う場所での転売による収入、そして冒険者として自身で調達した素材を使い生産して、それを露店販売する方が多いですね。
もちろん素材だけで販売する方や、素材や製作物の買い取りしてる方もいます。
先ほども言ったように、製作依頼は質を一定にするため、質を安定させるのが苦手な方ができるだけ高く売るために、やむなく露店しているという場合もあります。
ただ、この街は有人露店しか今はありません。
それは、この街の露店のほとんどの方が、止む無く露店している方達だからですね。」
「あの、そういう品質違いはギルドで買い取っていただけないのですか?」
「いえ、私たち商業ギルドでも買い取ることはできます。ただし、製作依頼とちがいますので、品質が少し高くても素材費に少し色が付いた程度のしかお出しできません。
また、品質の低いものですと素材費にも満たない場合もあります。私たちも買い取ったものは売る、というのが基本になりますからね。そういった低品質のものでも、露店に出せば変わります。
ギルドで買い取ったものは、ギルド直営店で売るか、輸出の際にくる旅商の方にお売りします。
そういう場で付ける値段より少し安く提示したとしても、結構儲けられますからね。」
あぁ、まぁそうだよね。買い取ってはくれるけど、そうやって露店で自分で売ったほうがほんのり儲かるよね。
「ただ、このあたりの素材での生産はあまり難しいものではないので、
ある程度の生産技術を磨いたら、製作依頼を受けられるほどの腕になります。
露店よりも自由度は低いですが、儲けは依頼のほうが大きいです。
自由に作りたいという方は品質が高いものを作っていますが、わざわざ市場価格を調べて露店経営をするよりも、ずっと生産作業にいそしみたいという方ばかりで、お値段のかかる無人露店はこの街にはまだないのです。」
「無人露店には、やはりお金がかかるんですね。宿で見たような水晶を使うんですか?」
「はい、あの水晶はリラと小さな道具の受け渡しができるのですが、無人露店と展示ケースをリンクさせることで、お支払いしたお客様が展示ケースから直接取り出すこともできます。
そういった魔道具連携まで行いますので、お高くはなってしまいますね。」
「ちょっと、参考までに聞いても?」
いや、無人露店をやるつもりじゃないけど、好奇心には勝てなかった。
「無人露店ですと、この街で一番安い場所での設置を想定しても、レンタル料金は初めの10日が300万リラですかね、その後は10日ごとに維持費も兼ねて100万リラが必要です。
ちなみにですが、有人露店はすでにいくつも設置済みなので、初めの10日は試験期間として、無料レンタルしています。
その後も継続される場合は、10日ごとに1万リラいただいております。
新しく場所を指定して設置するとなると、設置料金はかかりますがね。」
うん、そりゃみんな有人露店を使うわな。
「想定よりも露店の説明が長くなってしまったようです、申し訳ありません。次の露店での実際の動きに入りますね。」
「あ、はい、お願いします。」
「では、露店の店員側にお立ちください。」
言われるままに店員側についた。あの革細工の露店の店員みたい感じでやればいいのかな。
「まず初めに、有人露店でのリラの受け渡しは証明取引でのみ行ってください。
硬貨を使うと、露店と証明のリンクが正しく反映されず、場合によっては違法取引と判断される恐れがあります。」
「わかりました。」
「今、展示ケースのポーションは値段が設定されていません。その状態ではお客様がわからないので、値の欄に触れながら200リラを指定してください。
イメージ指定もできますが、難しい場合はサイドに数値入力が表示されるのでお使いください。」
うーん、これは値のとこに触れれば指定できるようになるのか。
触れると右に電卓のような表示が出るけど、これもイメージ変化で練習、200リラと設定された。そして販売準備中が、販売中に変化した。
「はい、これでそのポーション1つを売る露店となりました。では、はじめます。まずは気軽に対応してくださいね。すいません、このポーションをください。」
おぉ、いきなり始まったよ!とりあえず丁寧にやればいいのかな?
「はい、どうもありがとうございます。そちらは200リラになります、証明を重ねてください。」
自分の証明を差し出したら、キャロラインさんの証明が重ねられる。所持金が600リラから800リラに変わったことを確認。展示ケースからポーションを取り出して、手渡す。
「ありがとうございました。」
どうだろう、よかっただろうか。
「はい、完璧ですね、丁寧すぎるくらいです。そこまででなくても大丈夫ですよ。
では、次は買い取りについてです。今、売る状態としてまだポーションが登録されてますね?」
あ、ほんとだ、まだポーションが登録されてる。数は0で、販売終了となってるけど。
「買い取る際には一度、実物を用意して、販売準備中の状態までにしなければいけません。
なお、質に関しては、以上、以下、2Hから3Bまで、なども設定できます。
逆にその設定を忘れると、表記されている質以外の買取ができなくなりますので、ご注意ください。
変更する際はリラと同じように、質の欄に触れてください。」
なるほど。素材も消耗品も、なんにだって質はあるみたいだし。
わざわざ指定された質の物を露店で買い取りしたいなら、たぶん多少なりとも値段に色を付けないとだめだろうな。
「今はそちらの質設定のままで大丈夫ですよ。販売終了となっている部分に触れて、買取準備中に変更してください。その後、数を1に設定すると、買取中になります。」
なるほど、ではチャチャっと設定変更。買取中になったのを確認。
「準備出来ましたね、では私のポーションをお渡しします。
お客様ですと、この質ほどのポーションを貴方に売りたいのですがと、買取中の展示ケースを指さしたりするでしょう。
そうしたら、確認しますので展示ケースにお入れくださいと、展示ケースにアイテムを入れていただくようにお伝えください。
そしてこのように入れていただきますと、展示ケースの中で識別が行われます。
問題がなければ、数の数値が入れていただいた分だけ減ります。
最後に証明を重ねて、指定金額を払えば終了です。
買い取ったアイテム、売れ残ったアイテムは、店員側展示ケースから取り出すことができます。
展示ケースの数が0の商品の登録を消したい場合、手のひらを当てて続けますと登録が消されます。
買い取り続けたいアイテムの登録を消すと、また実物を用意する必要があるので、ご注意ください。
以上で売買試験は終了です。何かご質問はありますか?」
ふぅ、終わったか。ちょっと疲れたけど、まだ気になることがある。
「露店販売の売買試験でしたが、実際のお店などを持った場合や、旅商として活動する場合はどうなるのですか?」
「おや、そこまでお考えですか?
そういった場合は商業者ランクを上げていただく必要があります、ランクは製作依頼を受けなくても、露天店員として売買を行うだけでも上がりますよ。
石商、銅商、銀商、と、硬貨の素材ごとにランクが上がるのですが、銀商で旅商を行う権利が与えられます。
旅商は旅先の街の商業者ギルドに一度声をかけていただけば、その街の中で露店を出さずに販売、買取が行えます。
ただし、あまりにも他人の邪魔になるような売買行為を行うと、
旅商の権利を剥奪されますのでご了承ください。
店舗を持つのであれば、一応ですが銅商から露店施設をお買い上げいただけます。
ただし、施設は所有地がないと作れません。
借用地でも、その街の商業者ギルドを通して作ることもできますが、借用終了とともに、撤去以外で動かせないので施設も失うことになります。
金商からお買い上げできる、店舗施設でも同様ですね。」
ふぅむ、なるほど。設置店舗やるにしても、露店使わない商人するにしても、まずはランクを上げるのが必要か。
まぁ、店員活動するだけでいいってことはありがたい。製作依頼は今の僕じゃ敷居が高そうだ。
さて、問題はあれだ。
「最後に、レンタルの露店などで代行店員を頼むことはできますか?」
「代行、ですか。ちょっとお待ちくださいね。」
おっと、鞄型アイテムポーチから本が出てきたぞ。
イレギュラー質問だったか、ちょいと申し訳ないが、あんまり露店に張り付くわけにはいかない。
代行ができれば助かるんだけど。
「お待たせしました。申し訳ありませんが、商業者ギルドは露店の代行店員の依頼を受けた記録がありませんね。
ただ、店舗スタッフの依頼は商業者ギルドにもありますので、その系列として可能ではあると思います。その場合個人依頼となりますので、依頼料をご負担いただくのでご了承ください。
なお、依頼として代行ということになりますので、売買を行った方と、ランク上昇の評価が分けられることも、ご了承ください。」
なるほど、依頼として相談することでできなくはないわけか。
まぁお金がたまって、アイテムもたまって、一人でさばききれなくなったら考えてみよう。
「了解です、ありがとうございました。」
「では、証明をお貸しください。はい、商業者ギルドへの登録が完了しました。
商業組合員として、ギルド依頼、生産試験と売買試験の合格を確認。報酬1000リラをお受け取りください。以上で試験を終了します、お疲れさまでした。」
「はい、ありがとうございました。」
ふぅ、長かったぜ、証明にもしっかり追加されてるな。
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リュクス・アルイン
冒険者ランク:H
商業者ランク:石商
【隠蔽】
所持金:1600R
依頼:納品依頼・突撃兎の炭
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「さらにこちらをお受け取りください。」
手渡されたのは鞄型アイテムポーチ、キャロラインさんやドーンが使っていたものよりも全然小さい。
とりあえず、腰ベルトの鞄型ポーチの留め具に取り付ける。うん、いいね!
「ありがとうございます。」
「いえ、アイテムポーチは商業者として歩むのに必須と言えますからね。試しにそちらの杖を入れてみるといいですよ。」
言われるままに杖を留め具から外して、ポーチのほうにと入れてみる。
あきらかに縦幅は足りてなかったのに、収まっていくのは、ちょっとシュールだけど、便利だ。
中に手を入れて杖を取り出そうとすれば、またちゃんと出てくる。
「大丈夫のようですね。では、本日は以上になります。商業者ギルドのまたのご利用をお待ちしております。」
「はい、また来ます。」
キャロラインさんに見送ってもらいつつ、商業者ギルドを出たら、日はすでに傾いていた。
※書き忘れた内容を追記しました