宿の一日
部屋に戻ってから、モイザの染色練習用に染色桶を出したけど、これだと他の生産セットがよごれる可能性あるんだっけ。面倒だけどそれぞれ出し入れしたほうがいいのかな。
料理以外ですごい失敗したことがないから、いまいちどんな風になるのかわからないけど、染色は色水が飛び散るとかいってたっけ?
とりあえず、店員さんの染色部屋みたいに、廃棄空間につながるダストボックスだけがあるわけでもないし、失敗もしないと思うから他生産具はだしっぱなし。
料理セットと錬金セットについてるから、ダストボックス買ってなかったけど、布かけ買う時に一つくらい買っておくかな。
さて、モイザは染色練習しはじめたし、僕は空間術の練習でもしようかな。
「ベード、フレウド、また空間術手伝ってくれるか?」
「ばぅ!」「ココ。」
昨日もやった空間術練習法を今日もなぞる感じで行こうかな。まずベッドの部屋とリビングの境の引き戸を閉めておく。そしてリビングでフレウドを抱きかかえて、ここからベッドの上にフレウドを送るイメージ。
フレウドが光り始めて、手元からいなくなる。引き戸を開けて確認すると、ベッドの上でフレウドが左翼を上げて、大丈夫だと示してくれる。
これは昨日からやり始めてる練習法、この引き戸で視線を遮るか遮らないかで転送しやすさが全然違うんだよね。
フレウドを送るのは昨日時点でも成功してる。次は僕自身を引き戸越しにベッドの上に転送させる。
「トランスポート。」
僕の体を包む光に目をつぶる、足元がフローリングの感触から、布地の感触に代わってるのがわかる。目を開ければちゃんと僕もベッドの上、成功して一安心して、フレウドはちゃんとよけつつベッドに倒れこむ。
昨日もできたっちゃできたけど、成功するまで10回以上は転送イメージしたけども、僕の体を光が包むこともなかったからな。それなのに魔素はちゃんと減ってたから、失敗しても変なところに飛ぶってわけじゃないのは安心できる。って休んでる場合でもないな。次に行こう。
ダブルベッドの端に僕はフレウドと一緒によっておく。空いたベッドスペースにベードを引き寄せるイメージ・・・
「トランスポート・・・ダメか。もう一回!トランスポート。」
イメージしてトランスポートと声に出すたびに、体に入れた力が抜ける感じがする。ステータス上でも魔の数値が結構ごっそり減ってるのがわかる。
結局魔素の残量的にあと1回もできなくなったところで一旦中断。いくら宿内とはいえマイナスに行くのは危ない。昨日意固地になって一度やったけど、倦怠感と吐き気がひどくて、早めの就寝になってしまったわけだし。
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≪職レベルが上がりました1ポイントを任意のステータスに振り分けてください≫
≪種レベルが1上がりました1ポイントを任意のステータスに振り分けてください≫
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おっと、レベル上がったな、時空術のレベルが職と種のレベルにも結構影響があるんだろうな。
お、魔素を消耗することが多かったからかかなり魔の数値が上がってる。ありがたいことだ。このまま魔につぎ込んでいこうかな。というか魔の数値が命の数値も抜いちゃったけど、命の数値も低いのかな。今は魔のほうが消耗しやすいし、とりあえずいいか。
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<キャラクター>
名:リュクス・アルイン
性:男
歴:18
種:ヒュム
職:テイマー
<ステータス>
種:Lv4
職:Lv9
命:5200/5200
魔:320/5270(+11)
力:116
技:246
速:114
知:544
秘:1610
<スキル>
【テイムLv45】【個別指示Lv14】【分担指示Lv12】【統制指示Lv5】
【時空術Lv10】【魔獣言語Lv10】【愛でる手Lv12】【料理Lv30】
【集中Lv30】【火術Lv30】【合成Lv3】
<スペシャリティ>
【全識別】【六感分析】【テイム上限解放】【暴力的幸運】【従魔永続待機】
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あれ、なんかいつの間にか永続待機がスペシャリティになってる。スキルレベルが上がった影響かな。まぁモイザの子蜘蛛達に、ずっと待機指示してることになってるんだもんな。思ってる以上にスキルレベルが上がってたんだろう。
別に使えなくなったわけじゃないようだから、これは別にいいか。あとは魔獣言語も2桁になってるか、何か変化あるだろうか。
「レイト・・・は寝てるか。じゃあベード、どこまで話せるかやってみるか。」
『御意!』
おぉ!最近ずっと翻訳・・・でいいのかな?オフにしてたからわからなかったけど、結構しっかり聞こえるもんだな。
『ぬ?』
『主、話す!』
『ぬ。』
えっと、今のはフレウドとベードの会話なんだよな?フレウドは『ぬ』としか聞こえなくて言語としては全くわからん。何の話だ?みたいな感じに聞いたんだとは思うけど。
それに比べてベードは結構聞き取りやすいな。ほぼ単語のつぎはぎのようだけど、これなら充分に会話になるんじゃないか?
まぁ言葉としてわからなくても、ある程度意味が分かるから、無理に会話する必要はないのかもしれないけど。
「さて、話すとは言ったけど、何話すか。とりあえず今日の夕飯はただの肉と焼肉、しっかりした料理、どれがいい?」
『焼肉!』
『ぬ。』
『お前、違う!』
「すまんフレウド、お前が食いたいのはもしかして熱した油か?あれ用意するのは僕が油物食いたくなったらだな。」
『ぬ・・・』
『ぐっ・・・フレウド、熱、欲す。』
「ん?フレウドが食いたいものは熱ってことか?ファイアボールじゃなく?そうか、なるほど!」
おそらくだけど、熱いものなら何でもいいんじゃないのか?まぁ夕飯には少し早い時間な気もするが、一つ作ってみるか。
「モイザ、料理セット使うぞ。」
『――――。』
う、なんだ、耳がこそばゆい。あぁそうか、翻訳切ってなかったからモイザの声も翻訳されて聞こえたのか。でもどういう言葉を発したのかわからないから、耳が変な感じしたんだろう。意味は了解みたいな意味だったと思う。
とりあえず一旦魔獣言語の翻訳をオフにして料理開始。まずフレウド用のを作ってみる。購入してあった大豆のスープだ。
大豆と一緒に豆乳を使ってみたいところだけど、多分熱ければ熱いほどいいんだろうから、分離しちゃうことも考えると今回はなしがいいかな。
スープといったけど、コンソメとかはないから、沸騰した湯に大豆を入れて、塩コショウのみの味付け。これスープって言っていいのだろうか?
フレウドはかなり喜んで、鍋ごとスープを吸い込み、大豆をほおばっていたので、まぁ良しとするか。
ベードにも焼肉というより、豚肉のステーキを用意。なんだかんだ一番頑張ってくれてるしな、たまにはご馳走してあげるべきだろう。
しかし体格のせいもあって、ベードの分は塊1つ分以上焼いたのに、ペロッと平らげちゃうのね。まぁ美味しそうに食べるので、作り甲斐もある。
レイトには塩もみキャベツを上げる。最近のお気に入りは生よりもこれのようだ。僕も好きだから結構作り置き済み。
モイザはリンゴそのままが一番いいようだけど、僕が切ってあげるとさらに喜ぶので、ちゃんと切り分けてあげる。
僕はみんなにあげたその4つを夕飯として食べるわけだ。リンゴはデザートだけど。みんなに作ったのをみんなと食べるのは結構楽しいもんだ。
さて、食事も終わったし、空間術の練習の続き、ベード呼び寄せを頑張ってみよう。これができるようになったら、この街の教会から自宅まで転移できるか、やってみるのもいいかもしれない。
まぁ天気次第だな。この雨いつまで続くんだか。雨がやんだらこの周辺の魔物と戦闘、そしてこの町の名にもある熊を目指さないとな。