戦闘指南を受けてみよう
冒険者ギルドの横にある大通りに並ぶ露店はすでにほとんど商品がなく、武具を取り扱っていますという看板のかかった店なんかも、ほとんどが入り口は閉まっている。
そんな光景をちらちらとみながら歩いてたら、石壁にある門にいつのまにかたどり着いた。その大きな門に目を奪われてしまっていたけど、ドーンに言われるままに門の横に備えられた受付口のような場所へ。
そこにある水晶に証明をかざして、その大きな開いたままの門から外に出た。
この街の北門は流通で一番使われる門らしく、馬車3台は通るほどだという。
槍を持つ兵士のような二人が、門の外の両端を守っていた。
ちょっとそれを見て緊張したけど、草原からぞろぞろと街に入っていく人に意識が行く。
「これ以上暗くなると、南兎平原でも初めての奴にはあぶねぇのが出るからな、もう店なんかはほとんど閉まってただろ。いろいろ見れないだろうけど、こんな遅くに来たお前が悪い。というわけで、少し急ぐぞ。」
ずしずしと早歩き気味に、街からまっすぐ続く石畳みを上を歩く。
「この街道の石は教会やあの街壁にも使ってる石でな、
聖域としての力のある石だ、聖域って言ってわかるか?」
「えっと、魔物などが寄ってきにくくなってて、人が過ごすための区域、ですかね?」
石にも聖域の力があるってことは、魔物除けにいろいろ使われてるんだろう。
「あー、まぁそんなとこだな。教会があのでけぇ崖壁に埋まってただろ。
あの崖壁の素材は聖域の力が込められててな、安全にしたい場所にはよく使われるんだ。残念ながら、万能というわけじゃないがな。」
「万能じゃない?」
「あぁ、魔物が聖域素材に触れると、確かに著しく弱くなるといわれてるが、俺としては誤差だな。過信するのは危険だ。この街道にだって魔物が乗ってくることはある。
まぁ、街道の聖域の力は弱いけど、街の力は強いぜ。ドラゴンが降ってきても崩れなかったほどさ。」
ドラゴンとはまた壮大なと思うけど、もしかして事実なのだろうか・・・
「おっと、くっちゃべってる場合じゃねぇな。草原のほうを見ろ。地面が盛り上がってるだろ。」
ドーンが指をさすとこは、街道から結構離れたとこのようだけど、確かにほんのり地面が盛り上がって、そこだけ草がない場所がちらほらと見える。
「あそこにアタックラビットってのが潜ってる、見境なく突撃してくるあいつらが、この草原の問題児だ。
何を思って突っ込んでくるのやらな、ただあいつらははっきり言って弱い。なんかの拍子に街道に入っただけで、震えて気絶するようなのもいるくらいだ。」
おぉ、なんという初心者用モンスター。
「ラビットってことは、兎なんですよね。」
「そうだな、突撃兎でも間違いないぜ、んじゃいくぜ。」
ずしずしと草原に入ってく。一つの盛り上がった土に近寄ると、ガザっという音とともに、くるぶしほどの大きさの兎が土から出てくる。
「よし、自由に戦ってみろ。他のが来そうになったり、危なかったら助ける。」
「えぇ!?」
まさかの自由戦闘宣言!
左手にずっと持ち歩いてた、一メートルほどの杖を両手に握って構える。一応VRゲームで杖殴りプレイ経験のある僕を舐めるなよ!
ダダっと兎がこちらに駆け寄ってきて、そのまま僕に向かって飛びついてくる。
血走るような赤い目を持つその顔に、相手の勢いも利用して杖をたたきつける。
「ギュ!」
兎は悲鳴とともに、地面にたたきつけられた。まさか一撃で倒せたのか?
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≪【全識別】【六感分析】発動、対象:アタックラビットの死体
顔面強打による一撃で召天したため、肉体の素材状態が良い≫
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なるほど、どうやら意識したことでスキルが発動したようだ。いや、常に発動してるけど、意識しないと使えないのがスキルだ。発動と使用は違うから、もっと意識して使わないとなぁ。
それにしても、よく見てしまったけど、兎の顔はぐちゃぐちゃだ。グロいのが苦手な人はきついだろう。
「見事なもんじゃねぇか、杖持ってるから術法使いたいとわめく他の来訪者の奴らと同じかと思ったんだが、近接戦闘訓練したいって言ってただけのことはある。」
「えっと、ありがとう?」
どうやら褒められたようだ、ちょっとこそばゆい。
「さて、倒した魔物はどうするかってのはしってるか?」
「えぇと、その肉体全部をギルドに提出して素材にしてもらったり、その場で解体して自分で素材にしたり、ですかね?」
「ほぉ、大まかにはその通りだ。解体はその場だと危険だから、街道横なんかのセーフエリアで行ったりもする、一応聞くが解体のスキルは持ってるか?」
「いいえ、持ってないです。」
「そうか、解体のスキルがあれば、スキルアーツで触れずに解体もできるが、おすすめはしない。なぜなら素材が少なくなっちまうからだ。
この兎ならこうやってナイフを使って、皮、肉、足、余すことなく入手できる。」
ドーンは僕の倒した兎を、ちいさなナイフで手慣れたように解体した。なにをどうしてたのか、あまりの手さばきにわからなかったくらいだ。
そしてドーンが腰に下げた革鞄から革袋を取り出す。
「死体を持っていく場合は、こういうアイテムポーチを持っていれば、それに入れるといい。
この鞄も袋もアイテムポーチなんだぜ。ちなみに、俺が袋に分けてるのは多く入れられるようにだ。
鞄は種類が多く入るが、量が入りにくい。逆に袋は量が入るが、種類が少ないからな。
俺だとこうやって解体したら、その種族の素材は一つの袋に入れておく。あとは袋ごと鞄にしまって、あとで種族ごとに袋から素材を出すってわけだ。」
「なるほど、いい使い方ですね。」
よく考えられた使い分けだ。これなら数種類の魔物を討伐しても大丈夫そうだ。
「まぁ、いまはお前はアイテムポーチ持ってないからな。いったん俺が預かるが、問題ないか?」
「はい、ありがとうございます。」
「良いってことだ。さて次だな、今度は俺の言うようにやってみてくれ。」
「はい。」
ドーンに言われるように、まず息を殺して、草原と一体となるほどに、体をかがめて進む。
土の中の兎がいることを意識する。そして気づかれないように、音をできるだけたてない。
感じる、足元の盛り上がった土の下に、兎がいる。
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≪【六感分析】発動、対象:盛り上がった土
アタックラビットが掘り潜むために盛り上がった土≫
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杖を縦にもって、その土にと突き刺す!
「ギュ!」
土の中からかすかに兎の悲鳴がした、掘り起こせば兎の死体が出てきた。
あっけない、土が威力を緩和しただろうに、兎たち本当に弱いんだな。
「センスあるじゃねぇか。いまのは冒険者としては必須と思ったほうがいい、どんどん練習するといいぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
「・・・この兎のような鈍いのに対しては、今くらいのでもいいだろう。
だが、狼みたいな嗅覚の強いやつ、蛇のような熱で相手を見るやつには、その程度の付け焼刃は通用しないからな。」
うん、まぁその通りだろう。気配を消すようなスキルだってないわけだし。
「さーて、次だ、次だ、仕留めたのをこれで解体してみろ。ナイフは貸してやる、指示通りやってみろ。」
「はい。」
言われるままにナイフを手にして、まずはその四つ脚を切り取る。
兎の首に刺し、腹沿いに一気に切り裂いたら、皮と肉の間に刃を入れる。面白いように皮が取れたけど、肉のこびりつきがあるのがわかる。
うーん、こりゃグロ苦手な人は絶対無理だろうな。そのための解体スキルアーツなのかな。
「ふむ、まぁまぁだな、練習しとけよ。次は、そうだな、攻撃を一発うけてみろ。」
「う、了解です。」
やっぱり必要だよね。攻撃を絶対受けないなんて、冒険者ではないことだろうし。
今度は気配を消そうとせずに、盛り上がった土に近づく。
そして、出てきた兎はやっぱり僕に向かって突進してくる。ちょっと怖いけど、よけずにそのまま受ける。
「ぐっ!」
お腹に激突した、痛い・・・
でも屈んだりするほどじゃない、跳ね返った兎は再び僕に突進してくる。
「うっ、捕まえたぞ。」
今度はそのままは受けなかった、僕の体にぶつかった瞬間に捕まえてやったのだ。
ただ、今も両手の中で暴れていて、ほんのり痛い、でも毛触りは心地いい。
「へぇ、根性あるじゃないか。それじゃあ、そのままちょっと面倒なこと試すか。杖持ってるんだし、遠距離戦闘の指南も受けたいなら、なんか術法のスキルは何か攻撃的なの持っているんだよな?」
「え、はい、火術のスキルもってます。」
攻撃的なのってことは時空術は違うだろう。
「良いのもってるな。じゃあそいつを燃やそうと念じてみろ。」
うっ、ちょっとかわいそうな気もしてきた。
このじたばたと僕の手の中でうごめくのが、かわいくも思えてきちゃったんだよなぁ。
まぁ割り切って冷血に行くしかない、では、燃えてしまえ。
「うのわぁぁぁぁぁ!?!?」
「ギィィィ!」
兎が燃え上がる、ついでに僕のローブの袖口も燃え上がる!
うひぃぉぉぉぉ!どうしたらいいんだぁぁぁ!
「ぉぉぉ!ウォータエクスティンション!」
水が空中からか現れて、炎に向かって思いっきりバシャリという音をたててかけられる、そのおかげで兎を中心として起こった猛烈な炎を鎮火したけど。
僕は思わず、その場に跪いた、握った手には燃えカスの炭が残っていた。
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≪【全識別】発動、対象:突撃兎の炭
強力な火によって炭化した、アタックラビットの一部≫
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「あ、焦った、思わず動けなかったよ・・・」
「いや、焦ったのはこっちだぜ! 火術って言ったじゃねぇか、炎術の間違いじゃねぇのか?
初めの火術なんてアタックラビットでも、ちょっとこげあとつけばいいほうだ。
来訪者の他の奴も、こんくらいの火球を飛ばせて喜んでたくらいだぜ?」
親指と人差し指で、目の大きさくらいを作っている。なるほど、それくらいが初めなら普通ということか。
うーん、やっぱりあれか、僕の秘のステータスが高いせいなのか。それ以外の心当たりがない。
「実は、僕のステータスで秘のステータスが高めなんです、それが原因なのだと思いますね。」
「ほぅ、周りには人はいないな。もし差し支えなければだが、聞かせてもらってもいいか?」
「はい、大丈夫です。えっと34です。」
「・・・なるほど、確かにそれだけあれば不可能でもないか。魔素切れは起こしてないか?
立てるなら大丈夫だろうが、つらいならば素直に言ってくれ。」
「いえ、大丈夫です、立てます。」
「そうか、そうやって自己判断できるのはいいことだ。
証明から確認すれば、ステータスの魔、命という、戦いで消耗する数値も見れる。 だがな、戦闘中はそういうのを見る余裕なんてまずない。
さらにいえば、あくまでもそれらだって基準の数値だ。
俺達だってそれを基準に強さを図るが、お前ら来訪者は数値を重要視してるやつばかりだ。
あまり数値に縛られないようにしろ。俺たちはそれを心がけている。」
確かに僕たち来訪者にとって、どんなにリアリティがあっても、これはゲームの世界。その意識が強いやつほど、ステータスにはこだわるだろう。
だけどここではそれが枷になる、あくまでも指標の数値なんだ。
「あー、とにかくだ、立てて歩けるなら帰るぞ。遠距離戦闘の訓練はできなかったが、それだけイメージできてればお前ならできるだろ。
慣れるまで付き合いたいんだが、これ以上暗くなるとレイスラビットが出てくるからな。」
「幽霊系ですか、苦手なんですか?」
「バカいえ、怖いとかそういうのじゃねぇ。実体がないから倒した感触がしないんだ。
肉体がないからこういう物資的なドロップも期待できないし、何よりここは無駄に弱いのに数だけは多い。厄介だろ。」
さっきの素材を入れた袋をちらつかされて、何となく納得する。
もっと強いレイスなら何かドロップが期待できるかもしれないけど、この兎の霊体じゃあ期待値はゼロだろう。
「それは厄介ですね、帰りましょう。」
おとなしく街道まで引き下がり、街にと帰還した。
なお、門の前の兵士はいなくなっていて、水晶の受付に証明をかざしたら、門ではなく受付横の人3人くらいが通れそうな扉が開いた。
僕たち二人が通ると、そのまますぐにしまったけど、自動ドアなのか?
もし個々を認証しているのだとしたら、中世的な見た目なのにハイテクノロジーすぎる。さすが魔法というべきか。
ギルドまで案内されてた頃には日は完全に落ちて、街灯の明かりが頼りになっていた。
ギルドに入ったが、すでに受付にも人はいない。
「日が落ちると受付はいなくなるが、呼び鈴があるだろ、ならせば誰かしらは来る。
まぁ呼ばれるまでは、奥で休憩してたり、寝てたりするから、不機嫌な対応になっても、そいつを怒らないでくれよ。遅いやつが悪い。
急用じゃなきゃ、日が落ちたら次の日にするべきだ。そのほうが受付の身として嬉しい。」
「了解です、そうしますね。」
「あぁ、そうしてくれ、とりあえず証明を出してくれ。」
言われるままに証明を出すと、ドーンの証明がそれに重ねられた。
「冒険教官として、アタックラビット3匹の討伐を確認、
ギルド依頼、戦闘指南の終了だ。報酬1000リラを受け取れ。」
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リュクス・アルイン
冒険者ランク:H
所持金:1000R
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「うお、こんなに、あんな兎3匹でもらっていいんですか?」
「あぁ。ただ素材は戦闘指南をした俺が3匹分もらうことになってる、それは問題ないか?」
「はい、おそらくですけど3匹分の素材じゃ、1000リラもいかないのでしょう?」
「あぁ、よくわかってるじゃねぇか。どんなに質のいい素材状態でも、商業者ギルドでうまく売ったとして100リラ行けばいいほうだな。
この受け取った炭だって識別したが、正直どう扱うのか、俺にはわからん。」
それは僕もわかりません、どう使われるんだろうか・・・
「そして、俺は証明のおかげでリュクス、お前の戦闘指南をしたことが記録されてる。
どうやらお前が教官評価を満点くれたおかげで、俺にも5000リラが入るからな。
俺のほうこそ感謝するぜ、戦闘指南は基本3000リラなんだからよ。」
「え、教官評価って何ですか、聞いてないんですけど。」
評価した覚えなんてないぞ。
まぁありがたかったし、ためになったし、助けてくれたし、遅くにやってもくれたことも含めて、
いうことなしだとは思っていたけれど。
「ははは、そりゃ言ったら評価の基準が変わっちまうからな。
報酬1000リラ渡した時点で、指南相手の思うままに評価が決まるんだ。
ただまぁ、ふつう終わったって言わないものさ、大体が普通の評価だからな。
数値的に言うと、満足度が1から5まであるらしく、大体が3、よくて4、そして1,2はまず出ない。
出したやつは教官として何をしたかと、後で問い詰められるくらいさ。
指南相手がわざと高く、低く評価しないように、戦闘指南の終了まで評価があることを教えられないんだ。教えたら評価0になるらしいぜ。」
どういう基準で評価を教えたのか判断されてるのか気になるし、評価した心内を読まれてるなんてかなり恥ずかしいけど、まぁ、その辺はゲーム思考して、そういうものだと納得しちゃおう。
「そういえば証明にリラの表示が出たのですが・・・」
「あぁ、それは大丈夫だ、俺には見えない。それは自分にしか見えないようになっている。
他の表記もそういう風にできるぜ。ただ相手によっては、隠してるのに見破られるかもな。どうしても気になるなら消すこともできるぜ。」
まぁ、隠しててるのに見破られるってのは、聖神イリハアーナ様からも言われたことに似てるかな。
「おっと、あんま長々話すと闇の刻になるな。隣の大通り挟んだ宿ならば、受付の水晶に証明払いするようになってるからな。
かざせば100リラでいつでも入れる、水晶から鍵が出てくるから、番号を見るといい。来訪者が多かったがまだ空いてるだろう。」
「宿まで教えてくれるのか。ありがとう、また明日来ます。」
「あぁ、そうしてくれ。」
軽く手を上げて挨拶したら、さっそく宿に向かう。
人通りがほぼなくなった大通りを渡り、入ったデカイ宿。カウンターに水晶が3つ、多分どれでもいいのかな。
一番右の水晶に証明をかざすと、水晶に文字が浮き出てきた。
客名リュクス・アルイン、期限3日後の闇の刻まで、部屋番504、それだけの単純な内容だ。
水晶から鍵が出てくる、ちょっと異様だ。ついてる金属タグには504と書かれている。
階段の横に一応見取り図がある。どうやら5階建て、1階ごとに16部屋あるようだ。
5階まで登れば、左には501と書かれた扉、右には516と書かれた扉がある。
ちょっと好奇心で、516の扉の取っ手に手をかけてみる。
・・・取っ手が動かない、結構力をかけているつもりなんだけど、下にも上にもどうにも動かないし、当然扉は開かない。どうやら間違えた部屋に入るとかはないようだ。
504の部屋の扉の取っ手は、簡単に下げることができて、扉を開くことができた。
ほんと便利な認識機能、この鍵で認識してるのかな?
ベッドの横のランプの明かりがついている、あれだけで部屋中がこんなに明るいのか。窓はあるけど、街灯の光は入ってきていないようだ。
室内はシングルサイズベッド、四角机に背もたれのある椅子、鎧かけまで入ってるクローゼットに、小さな個室、トイレだ。
僕たち来訪者は入ってもいいし、入らなくてもいい。
説明書にはそう書かれていた、いまいちわからないが、催したら使おう。
ローブを脱いで、クローゼットにしまいこんでおく。ローブの下は麻布のパンツと服、初期インナーというやつだ。切り替わったのはおそらく、こちらの教会にくる直前だろう。
別段変な恰好なわけではない、この格好の人も大通りであるいていたからだ。
貧相な見た目ではないけど、インナーでも、ほとんどは違う服を着ている人だし、
防具として皮鎧やローブを着ている人だっている。
まぁ、インナーもそのうち変えようと思う。茶色の初期ローブ以外でうろつきたいからな!
耐久度はないといえ、一日だけで草の跡などでほんのり汚れている。
道行く防具を着た人たちだって、汚れてなかったわけじゃないけど、来訪者である僕はこういう汚れたままは、少し気になる。
気にはなるが、麻布の服よりもこれのほうがかっこいいと思うので、明日も着ていく。
汚れを落とすときにインナーになるからな・・・
ベッドに背中からダイブイン、半日も動いていないかもだが、なかなか楽しい。
明日からが本番だろうけど、まだすこし眠気がたりない。せっかくなのでスキルを使うか、気になるしこの鍵でも識別するか。
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≪識別結果
南端の街の簡易宿の鍵 504号室 所有者:リュクス・アルイン
有効日数:3日
南端の街の簡易宿、504号室の鍵
有効日数が0日になった際、闇の刻と同時に消滅する
呪い:所有者にしか扱うことができない≫
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おぉう、消滅するのか。これ消滅後も部屋にいたらどうなるんだろうか。
そういえばなんか、扉の内側に看板があったな。ダイブインしたけど、起き上がろう。さて、何が書いてあるかな。
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注意
鍵の消滅後に室内にいるお客様には、延滞料として刻が過ぎるごとに1000R必要となります。
お支払いが済まない限り、扉が開きません。
一日経過し2万Rの延滞金が発生した時点で強制退去となります。
そこでお支払いできない場合、犯罪歴に加えられます。
滞在延長したい方はこちらの看板に証明をかざしてください。
1度かざすと100Rが支払われ、有効日数3日分が追加されます。
ごゆっくりとおくつろぎください。
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鍵は別に返す必要はなく勝手に消えるけど、延長したいなら鍵のあるうちに、この看板にかざしておけというわけだ。
不安をあおる文章だな、気を付けなければいけないと思わせてくれる。でもまぁ、どのくらいいるかわからないし、とりあえず今は延長しなくていいだろう。
改めてベッドにダイブイン、ちょうどいい眠気が襲ってくる。ランプについたスイッチを押して消せば、明かりは窓からほんのり差し込む月光だけになる。
DWDで初めてのおやすみなさいだ。