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南の肉の街ギルド長の薦め

 ベードに乗っていることで、モイザも気配を一緒に消せるように、フレウドも同じように気配を消せるようで、特に門でも注目されることはなかった。もちろん従魔証はちゃんと水晶にかざしたけどね。

 街中でも問題は起きずに冒険者ギルドに到着、資料室は勝手に入っていいと言われたけど、ギルド長に会うなら受付したほうがいいよね。

 従魔登録が受付でできるならいいけど、わからないからなぁ。確実な手段で行くしかない。そう思って受付列が僕の番になったのだけど、どうやら今はギルド長忙しいらしい。テーブルに座ってお待ちくださいとのこと。

 今は誰も座ってないのでまぁいいか。座って待たせてもらおう。


 1刻半くらいベードをなでたり、フレウドの胸毛をつついたりして暇つぶしていたら、受付の横から出てきた人が、こちらに近寄ってきた。


「お待たせしました、ギルド長室へどうぞ。」


「ありがとうございます。」


 ギルド長室へと階段を上る際に、すごいうなだれたヒュムの四人衆とすれ違う。なんというか、悲壮感漂っていたので、できるだけ端を歩いてあげておいた。


「おう、待たせて悪いな。昇格試験で結構時間かかっちまってな。」


「いえ、大丈夫ですよ。ギルド長が昇格試験するんですね。」


「いやぁ、俺じゃなくても担当職員がいればいいんだけどな。ちょうどCランクにあげれる権限のあるやつが今いなくてな。相手も相手だったし、まぁいいんだけどよ。」


「何か問題のある相手みたいなこといいますね。」


「あぁいや、問題はあんまねぇよ。ただ来訪者ってだけだよ。」


「来訪者ですか・・・」


「あん?問題はないって言っただろ。そもそも違う街なら来訪者かどうか判断するなら、来訪者の装具付けてないとわからねぇしな。ただこの街の職員だと結構な人数がそいつが来訪者かどうか覚えちまってるってくらいさ。」


 あぁそういえばこの街で装具変更したときに、この街で装具変更した来訪者が多いっていってたもんなぁ。


「来訪者がなにか問題を起こしてるのかとちょっと不安になりましたよ。」


「あー、問題っていう問題じゃないんだがな。来訪者は好意的じゃないって住人からの声が上がっててな。さっきの四人もそんな感じだったからCランクに昇格させれなかったわけだ。」


「好意的じゃないですか?どういうことなんでしょう?」


「君はそんなことないんだけどな。なんでもひどい奴だと、住人風情がとかいう発言をしたやつもいたらしいな。」


 えぇ・・・住人はいわゆるNPCだけど、そういう差別的発言をしないようにって記入テストでもあったし、契約書も書かされたはずだけどな。


「それは、なんというか申し訳ありません。」


「あん?なんで君が謝る必要がある?というか来訪者ってひとくくりにしちまってるけど、他の奴は他の奴だ。そもそも来訪者じゃなくても変な難癖つけてくる奴だっているからな。」


「なるほど、そんなもんなんですね。ところでCランク昇級試験って何なのですか?」


「あん?なんだ気になるのか?まぁCランクとなることで、二階依頼板を使える一流冒険者といえるからな。俺としてはDランクでも十分色々任せられるけどな。」


 Cランクの昇格試験が少し気になっただけなんだけど、そんな特典もそういえばあったな。


「二階の依頼板って何か違うんですか?」


「あー、依頼金額が全然違うな。期日指定も短いものが多い。指定日依頼とか一日拘束依頼なんてのもあったりするからな。あと指名依頼も来るようになる。まぁ断れるけど入る額は更に良い。」


 指名依頼か、断れるとはいわれても、断りづらい雰囲気作られるといやだなぁ。


「それで、Cランクの昇格試験だったか。要は一つの指名依頼になるのを、丁寧に達成してもらうことだ。今回は対応した俺からの依頼だったんだが、指名依頼ってのは指名した相手に敬意をもってやってもらわなきゃ困る。立場的には依頼者が下じゃなく受けたほうが下になるわけだな。」


「何というか、指名してまでその人がいいということなら、普通逆な気もするんですけど・・・」


「ほぉ、君もそう思うのか。やっぱ考え方の違いは難しいところだなぁ。まぁそういうもんだと納得してもらうしかねぇな。」


 僕もということは、さっきの四人も同じことを思ったのかな。この辺はこっちが納得しないといけないところか。


「まぁ、それもそうですね。僕がCランク昇格する時が来た時の参考にしますね。ありがとうございます。」


「おぅ、いいってことよ。んで本題はその鶏くんだろ?」


「あ、そうでした。フレウドの従魔登録をお願いしたいんです。」


 やば、僕のほうが本題のこと忘れてたよ。フレウドもベードの上で寝ちゃってるか。まぁ飽きちゃうよな。むしろ伏せてはいるけどしっかり起きてるベードが偉い。


「おう、従魔登録は王都に行くまでは必ずギルド長通しておけ。王都なら職員でも普通に仕事で経験あるからいいかもしれないけど、俺ですら受付での従魔登録なんて、上級職員試験の時に一回やったきりだからな。まぁやり方は覚えてるし、権限もある。王都への書類報告だけでいいから受付よりも楽だな。んじゃあ口頭で教えてくれ、こっちで書くほうがいい。」


「あ、はい、わかりました。種族はラウンドバーンチキン。名前はフレウド・アルインです。」


「おーけー。あとは君の情報と合わせて転送して終わりっと。楽なもんだな。この後の従魔証記録との照らし合わせ作業が必要ないからな。」


「従魔証記録って、僕が従魔証作っちゃってますけど、平気なんですか?」


「あん?門を通る時にかざしてるだろ?そのときにちゃんと登録記録されてるからな。」


 あぁなるほど、なら大丈夫なのか。そしてその記録と今僕の記録とかを照らし合わせるのかな?結構大変そう。


「それにしても、この書類送りも楽なもんだ。王都が開発した空間術の術式と、魔素のみで発動する術式を合わせた、魔素動高位術式ってやつを魔道水晶に組み込んでるらしいんだけどな。本音で言えばこういうのできるならもっと街に配ってほしいと言いたいが、あっちはあっちで大変だろうからなぁ。」


「空間術の術式ですか。そういえばアーバーギルド長はかなりの空間術の使い手でしたね。何か関係あるんですかね?」


「あん?どうなんだろうな。俺はあんま仲いいわけじゃねぇからな。そういえば空間術といえば、君は帰還石は持ってるか?」


「いえ、持ってはいないですね。」


 帰還の術法はすでに自分一人だけなら使えるし、自宅に戻っちゃったらここまで来た意味ないしなぁ。


「やっぱそうなのか。一応帰還石持っておいたほうがいいぞ、使えばパーティー単位で最後に祈った神殿にまで帰還できるからな。一応アーバーのじじいから聞いてるぞ、空間術使えるんだろ?」


「え、あ、はい、そうですね。でも帰還場所は自宅にしておきたいんですよね。」


「あー、なるほどな。まぁでもそうだな、祈らなくてもいいから、一度この街の教会には寄っておいたほうがいい。ここからさらに北に行って北門前にあるからよ。」


「は、はぁ、わかりました。とりあえずあまり長居してもあれなので、これにて失礼しますね。」


「おう、それもそうだな。お疲れさん。」


 一度教会に寄っておいたほうがいいか、どうしてなのかはわからないけどギルド長がそう言うのなら一度は行っておくかな。


 そうして教会に到着、いや外観で教会って一目で分かったよ。現実での実物は見たことないけど、テレビだのアニメだのでよく見る三角屋根の上に、十字架が乗った建物だ。

 中に入ると広々とした空間が広がる、奥の台座に鎮座する一つの像以外は、壁明かりの装飾しかないシンプルさ。南端の街の教会より広いかも。

 奥を見ていたけど、入り口横にいた神官と思われる人がこちらに気が付き、話しかけてきた。


「おや、参拝者ですか?イリハアーナ様の縛り地をここに定めに来ましたかね?」


「あ、いえ、ちょっとギルド長に言われて、見学に?」


「ギルド長にですか。では満足いくまでごゆっくり見学してください。もし参拝する場合は教会内のどこでも大丈夫ですので、このポーズをとり、半刻ほど祈りをささげるとよいですよ。」


 神官と思われる人が右片膝をつき、胸の前で両手を組んで首を下ろすポーズをとった。


「あの、それって自宅の簡易神殿を作った後にも行ったほうがいいのですか?」


「おや、なるほど、そういうことですか。自宅の場合はその土地の神官が代わりに祈りをささげているはずなので、他の土地で祈りをささげていなければ大丈夫ですよ。そしてこの地のこの教会内を、ぜひ覚えていってくださいね。」


 すごくにっこりした表情で何かを納得したようだけど、どういうことだ?


「あの、この教会内を覚えるんですか?」


「えぇ、とはいっても朧気でも大丈夫ですよ。思い出として覚えている程度でいいのです。そうすれば転移術式を使った際に自宅だけでなく、こちらの教会にも転移できるでしょうからね。ここからはちょっと秘密の話なのですが、今はまだ王都神殿から他の教会への転移しか行えないのですが、街教会から街教会への移転を行える術式が、開発中らしいですからね。」


 なるほど、訪れた教会は転移先として使えるようになるのか。それで一度は行くようにって言ったのか。というかそんな便利なのが開発中なのか。


「もしかして、その術式が完成したら、自宅の簡易神殿にも飛べるようになるのですか?」


「そうなりますね。この話は他言しないでくださいよ?ギルド長がこちらに来るように伝えた方ですので、お教えしたのですから。」


「わ、わかりました。ありがとうございました。」


 もしかしたらその術式技術ができる前に、僕が転移のスキルアーツを覚えるかもしれないけどね。そうしたらいつでも肉類を買ったり狩ったりしに来れるな。とりあえず中も見たし、今日は宿に帰るか。


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