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合成スキル

 翌日は朝から呼ばれていた通りにモイザを連れて商業者ギルドへ。今日は合成のスキルを学ぶわけだ。

 ちなみに、昨日の夜に豚野菜サンドを作れたので、夜まで野菜類を使った料理はいったん取っておく。

 商業者ギルドにつくと受付の人にすぐに奥の扉にと通され、昨日と同じ錬金セットの部屋に通される。バンダー商長も待機済みでさっそく話しかけてくる。


「さて、本日の合成なのですが、こちらはリュクス様にもぜひ覚えていただきたいのですね。覚えていただきたいのですよ。よろしいでしょうか?」


「僕にもですか?」


「はい、合成は多岐にわたって使用できるスキルです。単に薬と薬を合わせるだけでなく、薬と術法を合成、術法と術法を合成といったスキルアーツもあるのですね。あるのですよ。初めは薬と薬を合わせるところからですが、始めると思いもよらない合成ができるかもしれませんね。知れませんよ。」


「なるほど、それは面白そうですね!」


「そうでしょうそうでしょう。というわけでちょっと狭いので、もう一台机を用意してありますね。ありますよ。とりあえずわたしがこちらの机で手本を見せますので、モイザ様とリュクス様はそちらの机でどうぞ。」


 なるほど、理科室みたいな机が二つあるのはそういう理由だったのか。まぁ初めから誘うつもりだったんだろうからな。


「わざわざ準備していただいてありがとうございます。」


「いえいえ、準備は済んでいますので早速合成を始めますね。始めますよ。とはいっても合成自体は実はかなり簡単なのですね。簡単なのですよ。まずは昨日製作した二種の水薬を合成してみますね。合成してみますよ。

 まずは二種の水薬を一本ずつビーカーにすべて注いでしまいます。そして弱火で少し熱したら、かき混ぜ始めます。混ぜてる水薬から淡い光が出たら加熱を止めて、光が止まるまでかき混ぜます。光がやんだらかき混ぜるのをやめて、きれいなポーション管にいれれば終了です。熱しても量は減らず、2本分になるはずなのでご安心くださいね。安心ですよ。」


「なるほど、かなり簡単ですね。」


 やってることは簡単そうだったけど、相変わらず一連の流れがすごく早いと思う。


「ではさっそくどうぞ、材料はこちらをお使いください。」


 バンダー商長がポーチから出したのは商長作の痛軽の水薬と毒消しの水薬だ。モイザの作ったのはこっちが所持してるけど、より効能の高いので合成したほうがいいのだろう。

 さっそく見せてもらったやり方通りにやっていく。二本分をビーカーに入れるのはすぐだ。そして弱火で少し熱を入れたら、かき混ぜていく。

 ・・・まぁ当然すぐ光るなんてことはなく、ただただ混ぜていく。モイザも隣で混ぜてるけど、どうやらもう熱を止めて混ぜている段階のようだ。緑色の水薬が淡く光っている。

 モイザのビーカーの光が消えるころにようやく僕のも光りだした。熱を止めつつ混ぜ混ぜし続ける。これ結構堪えるな。

 モイザは試験管に薬を移して満足げにしつつ、ビーカーを洗い二回目に突入。僕の一回目の混ぜ混ぜは続く。そしてモイザが二回目のビーカーが光り始めたころに、ようやく僕のビーカーの光がおさまる。ようやく完成か。試験管に移して、完成品をしっかり識別してみる。


--------

≪識別結果

傷口消毒水薬 質:2C

毒となった原因の傷口にかけることで効能を発揮する水薬≫

---------


 なるほど、ちゃんとでき上ったな。ただ少し気になるのは作った時間のわりにモイザの質2Eより高い点だな。さすがに商長の3Dには全然及ばないけど。


「ほぅ、まさかリュクス様のほうが質が高くなるとは、何かのスキルの影響ですかね。」


「うーん、ちょっと心当たりはないんですけどね。どちらにしろスキルが出てないので、何度かつくらないとだめですね。」


「そうですね。そうですよ。生産系スキルは通常の方だと、おおよそ20回ほど行うと発現するといわれていますね。言われてますよ。本日はしっかり作りこんでくださいね。くださいよ。」


 うへぇ、20回か、モイザが5回で済んだのはスペシャリティのおかげだろうかならな。

 しかし20回なら目標も見える、時間はかかるけど頑張って合成し続けてみるか。


 そんな調子で昼をまたぎつつ僕は23回目の合成をやり終えた。一個前よりも半分ほどの時間でできたので、自分のステータスを見てみると、ついに合成のスキルの文字が、念願の新しいスキルだ・・・


「初めて授かったスキル以外の新しいスキルを手に入れましたよ・・・スペシャリティは増えてたんですけどね。」


「なるほど、もしかしてですが戦闘系スキルがほしいのですか?武具系のスキルでしたら、かなりの回数を短期間にこなさないと難しいですね。難しいですよ。術法であれば属性に適合していれば、魔道具を利用したり、術法を持つ方に指導していただく方法で取得できるのですがね。取得できるのですよ。」


 あぁ、棒術を覚えないのはあんまり杖使ってないからですね、なるほど納得。ちょっと覚えるつもりなら頑張らないとなぁ。そう考えると先に合成のほうを極めるのもいいかもしれないな。


「なるほど、それと解体のスキルも全然でないんですよね。これは結構短時間にたくさんやったのですが。」


「あぁ、解体のスキルですね。解体の質などに問題がなければ所持していなくても平気ですよ。わたしも所持していませんが、そこそこ解体には心得がありますからね。」


「つまり、スキルが発現しないこともあるってことなんですね。」


「そうですね。スキルがなくてもできるのでこまりませんからね。こまらないのですよ。例えば解体のスキルが付く人は毎回手作業の解体を億劫に感じる方のほうが多いらしいですね。多いらしいですよ。解体のスキルは触れずに解体の作業をするためのスキルなので。億劫に感じても適合がないと発現しないということもあるでしょうからね。適合次第ですよ。」


「なるほど、それで解体のスキルが付かなかったのですかね。適合次第、ですか・・・」


 なんて僕たちが話してる横で、モイザのほうをちらりと見ると、少し違ったものを製作を始めたようだ。牙でもある鋏角の部分から、すでに沸騰済みのビーカーに何やら黒紫色の液体を少し垂らしてるんだが?


「おぉ、毒液ですか!なかなか純度が高いですね。高いですよ。しかしあまり量は出せないのですかね?これならば原液のほうが効果が高くなるような気もするのですがね。気がするのですよ。しかしこのように毒薬を作るのは面白いですね。面白いですよ。」


「そうなんですか?毒術とか持ってる人も居そうな気がするのですが。」


「毒術ですか、わたしの聞く限りでは今のところ所有者はいらっしゃいませんね。いらっしゃいませんよ。もしいたとしても、製薬に使わずに、直接術法として打ち出すでしょう。」


 あぁ、確かにそれもそうか、モイザもこれは実験的なものなのかな?しかしこれで毒薬が作れるなら合成練習用に作ってもらいやすい気もする。モイザが疲れないのであればだけどね。

 二本分となる毒液を作り終えるまで見てたけど、どうやら疲労度はなさそうだ。出来上がったのをバンダー商長が食い入るように見つめている。僕も見てみるか。


 ---------

≪識別結果

 製作蜘蛛の毒液瓶 質:3H

 毒性のある液体の詰まった瓶、誤飲には注意≫


「これはなかなかに面白いですね。面白いですよ。それほど毒性は強くないかもしれませんが、投てき具として使用してみたいですね。使用してみたいですよ。」


「いまいちどのくらいの毒性なのかわからないですね。ってモイザ何してるんだ?」


 なぜか出来上がった毒液瓶の試験管の一つと毒消しの水薬をきれいにしたビーカーに入れ始めた。あ、今思ったけどいくらきれいにするとはいっても、毒液用のビーカーは別に買おう・・・

 それよりモイザの行動がよくわからないな、効能真逆の二つを合成しようとしてるのか?熱しながら混ぜてるとビーカーの中が光り始め、さらに熱を止めて混ぜてると、光がおさまった。出来上がった液体は紺色というか青紫というかそんな感じの色だった。


「おぉぉぉ、これは予想外の切り口ですね。切り口ですよ。いやはや、わたしも長年製薬と合成をやっていますが、わざわざ真逆の効能の物をまぜることはしませんでしたね。しませんでしたよ。このようなものができ上るのであれば、わたしも試してみるべきでしたね。試すべきでしたよ。」


 どれどれ、どんなのができ上ったんだ?


---------

≪識別結果

製作蜘蛛毒対抗薬液 質:3G

クラフタースパイダーの毒に対しての対抗力を上げる薬液、経口することで効力を得られる≫

--------


 おぉなるほど、モイザの毒専用の対抗薬になったわけか、面白い反応だな。でも他の毒に対しては効かないのであればちょっと残念だな。


「ふむ、これがほかの蜘蛛の毒にも効くのか、さらにほか生物の毒にも効くのかなど試してみたいところですね。良ければ買い取らせていただいてもよろしいですか?それとこのような合成製薬法があるという情報を買わせていただきますね。いただきますよ。」


「とりあえずモイザだけでもまた作れると思うので、売るのは問題ないですよ。情報のほうもそれで構いません。」


「ありがとうございます。それでは薬のほうが1本5000リラ、情報のほうが100、いえ150万リラで買い取らせていただきます。他の方が見つけている場合はもっとお安いのですが、見つけていない可能性も十分あり得ますからね。あり得ますよ。わたしたちの街は自慢として輸出入が多いので、情報の流入も多いのですね。多いのですよ。それで知らなかった情報なので、期待度は高いですね。高いですよ。」


「そ、そうなんですか。ちょっと意外ですね、結構すぐ試しそうなことなのに。」


「それもそうなのですよね。そうなのですよ。わたしがこの手法を試していなくても、他の方が試していそうなのですよね。試していそうなのですよ。今わたしが行ってみてもいいですかね?」


「全然かまわないですよ。」


「ありがとうございます。ではさっそく一つ使わせていただきますね。いただきますよ。


 バンダー商長はそういうと、さっそくモイザのつくった毒液瓶のもう一本と毒消しの水薬を合成し始める。しかし熱しながら混ぜている最中に何やら商長の顔が渋くなる。

 ビーカーを見てみると光りだすどころか、中身が茶色の謎の液体にと変わり果ててしまっていた。


「どういうことなのでしょう、何かしらのスキルの影響ですよね。モイザ様のスキルをお伺いしてもよろしいですか?」


「あ、はい、モイザ教えてもいいか?」


 モイザは何も言わなかったけどうなずいてくれたので、まぁ今回は教えて大丈夫だろう。


「モイザからの許可も出たのでお教えしますね。スキルには操糸、牙、毒生成、統制指示、分担指示、聖族言語、料理、裁縫、糸術、製薬、合成がありますね。

 スペシャリティは生産技術というのと、契約借技というものです。」


「スキル自体には影響のありそうなのは毒生成ですね。しかしこれとは少し考えにくいですね。気になりましたのはスペシャリティの二つですね。どのようなものなのかご存知ですか?」


「モイザに聞いてうなずくかどうかで判断しただけの内容ですが、生産技術はその名の通り生産に関するスキルに恩恵が生まれるようですね。それ以外はわかりませんでした。もう一つの契約借技はどうやら僕の持つスキルから、何かを借りるスキルのようですね。前のレッサーマザースパイダーであったときは、技術貸借というスペシャリティを持っていたので、それから少し劣化したのだと思います。」


「なるほど、技術貸借についてはこちらにも情報は流れてきてますね。流れてきてますよ。マザー種であることが消えても、主であるリュクス様から何かのスキルを借りたいと感じていたのですかね?」


「どう、なんでしょうね?僕にはちょっとわからないですね。」


 さすがにモイザにそこを聞いても、モイザも返答に困る感じだったようだし。便利だなくらいにしか思わず、あんまり深くは考えないでいたんだよなぁ。

 あと集中する話が終わったからか、バンダー商長がまた繰り返し言葉出てきちゃたよ。


「さすがにリュクス様のスキルまで探るのは、わたしはしたくありませんので残念ですがわからずじまいということですね。しまいですよ。それでももう少しこの対比合成ができるかを試したいので、モイザ殿、毒液の製作をお願いしてもいいですかね?」


「――――!」


 やる気満々といった感じにうなずいて足を上げた後、さっそく毒液生成を始めたようだ。ちょっと興味があるので見ていることにした。

 モイザの毒液ができた後、すぐにまた一本を使用してバンダー商長が合成を試みるも失敗。出来上がる茶色の謎液体は汚染された水と識別で出たので何かはよく分かった。

 繰り返すこと20回は超えたと思う。僕も途中で見るのに飽きて、超暇そうなベードにかまってみたり、合成の再復習したりしていた。バンダー商長はかなりがっくりとした表情でまた合成物を捨てていた。


「どうにもなりませんね。なりませんよ。しかしわたし以外ならば成功したという例がここにあるので、これは引き取らせていただき、情報金額も先ほどの額をお渡ししますね。お渡ししますよ。」


「え、そんな、誰が作れるかもわからないのに、申し訳ないですよ。」


「そうはいきません。わたしたちの商売において一度宣言した金額が基本です。特に商人側から見てお客様側が不利になるようなことは、絶対あってはいけません。逆にお客様がより有利になるような金額調整、情報提示などは問題ありませんね。問題ないですよ。」


「な、なるほど、もしかして露店の料金とかも下手に上下させないほうがいいのですかね?」


「それは違いますね。違いますよ。この日は数が取れたのでお安く、この日は数が取れなかったけれど、質はよく出来たので高めに、売れ行きが良すぎるので値段設定を高めに、購入制限も設けますなど、臨機応変な対応が必要ですね。必要ですよ。お客様に負担をかけてはいけないのはこういった商談の場合ですね。場合ですよ。」


「そういうことですか、ありがとうございます。少しホッとしました。」


「そういえば、南端の街では無人露店とそのために土地もお持ちなのですよね。さすがはトレビス様ですね。さすがですよ。南端の街とはいえ、若くして商長の座まで駆け上がったトレビス様の商売の勘はずば抜けてますね。ずば抜けてますよ。もしリュクス様がまだ土地を持っていなければ、わたしからこの街に土地を持たないかご相談しているところでしたね。相談していましたよ。白銀商にまでなればもう一つ土地をもてるので、その際はご検討くださいね。ご検討くださいよ。」


「は、はぁ、わかりました。検討しておきます。」


 なるほど、トレビス商長が僕に無理にでも土地を持たせた理由はこれか。まぁなんだかんだ蜘蛛達のために広い土地を持てたから十二分に満足はしてるけど。


「さて、いろいろとこなしていたために日が暮れてきてしまったようですね。くれてしまいましたよ。明日にはローブも完成するので、隣の直轄店でスクーリ様のお名前を出し、お受け取りくださいね。お受け取りくださいよ。」


「はい、ありがとうございます。あと錬金セットのビーカーを購入させていただきますね。」


「はい、お買い上げありがとうございます。お疲れさまでした。」


「では、今日はこのあたりで失礼しますね。」


 軽く会釈をして商業者ギルドを後にする、そのあと隣の店舗で予定通りビーカーの追加と試験管とフラスコも買い足しておいた。錬金セットに突っ込んでおけば1つまとめにできるし、売ってるところで集めておかないとね。


ようやく新しいスキルを一つ手に入れました

実は何も手に入れられない設定にするか悩んでましたけどね・・・

あと金額表記「リラ」の記載ミスを再確認して修正してきました。なにしてるんだろうね・・・

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