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南の肉の街のギルド長

 バンダー商長を先頭に、僕は人の多い通りを従魔三人連れ歩くわけだが、レイトは僕の頭上、モイザはベードの上なので、実質幅をとってるのはベードくらい。ベードも僕の後ろについてあるいてるので、基本問題は起きないと思ってた。


「んげっ!なんだ?うぉ!?なんだなんだ!?」


「あ、やばっ・・・」


 僕の後ろを走り抜けようとした人が、ベードに気が付かずにぶつかってしまったのだ。気配を消して歩いていたことが災いしちゃったな。昨日は何も起こらなかったから、油断もあったかな?ベードとモイザもちょっと困ったような顔をしている。


「あの、大丈夫ですか?」


「お前の従魔か!?こんなデカイの連れ歩いて何様のつもりだ!でかいのは外で待たせておけよ!じゃまなんだよ!王都じゃあるまいし、この街にはこの街のルールがあるんだぞ!」


 うぇ、なんだこの人、いやな感じ。とりあえず謝っておくかと思ったら、バンダー商長がスっと僕とその人の間に割り込んできた。


「あなたは何を勘違いしているのですか?この街のルールはわたし達3人にゆだねられています。あなたが決めることではないですよ?それにあなた、本当に気が付かなかったのですか?」


「なっ、バンダー商長さん!?いえ、そんな、俺は、ただ・・・」


 さっきまでのバンダー商長とは全然違う、僕と話してた時にずっと両手をにぎにぎしてた人じゃない。じっとぶつかってきた人をにらむその人からは、長と呼ぶにふさわしい圧を感じた。そしてその男の言葉を遮るようにつづけた。


「今回は見逃します、わたしたちも忙しいのですよ、忙しいのですね。行きますよスクーリ様。」


「あ、はい。」


 その場に膝をついたまま放心してしまった人を後ろ目に、バンダー商長についていくしかない雰囲気だった。というか、バンダー商長の口ぶりからして、わざとぶつかられた可能性があるの?なんかそうだったら嫌だな・・・

 しばらくそのままの重い雰囲気が続きながら、少し早めに歩いていたけど、バンダー商長の歩く速さが少し落ちた。


「このあたりなら大丈夫ですかね。ですよね。申し訳ありませんでしたね。でしたよ。まさかあのような方がいるとは思いませんでしたね、でしたよ。」


「あの、彼わざとぶつかってきたのですか?そのようには見えなかったのですが・・・」


「どうでしょう、わかりませんね。わかりませんよ。ですがワザとであれ、なかれ、非は向うにありますね。ありますよ。わざわざ狼のベード様は気配を消して、おびえさせたりしないように気を使っていただいていますからね。いるんですよね。気配が読めなかったとはいえ、そもそもあんな風に人の後ろを通るべきではないわけですね。ないわけですよ。」


「そ、そうなんですか・・・」


「スクーリ様がもし今後、似たようなことが起きた際は、絶対に謝ってはいけませんね。いけませんよ。向こうに謝罪させてくださいね、くださいよ。それが街を守るためですからね、ためなのですよ。ぶつかった相手が人種の場合は、ぶつかってきた側の問題ですからね、問題なのですよ。従魔も同じように対応するというのが基本の街の規則ですからね。規則なんですよ。」


 もしかして、僕が謝ろうとしたのを感じて、あんなふうな態度をとってまで対応してくれたのかな?だとしたらすごいんだけど、申し訳もないな。

 こんな感じのことが起こっても僕から謝ってはいけないか。ちょっと気を付けよう、僕が謝ってしまうことで、ベード達の立場も変な感じになっちゃうのだろう。せっかく人種と同等の立場として扱われてるんだ、しっかりそれを維持できるようにしよう。


「わかりました、ありがとうございます。」


「ひと悶着あってしまいましたが、もうすぐ冒険者ギルドですね、ギルドですよ。」


 バンダー商長が指さす先には、南端の街で見た冒険者ギルドとうり二つの建物が見えた。北門大通りを進んできたけど、門のあるだろう石壁との距離的に、ちょうど中央と北門の真ん中あたりかな?

 中の作りも一緒かと思ったけど、受付カウンターの1列分が少し狭くなって、そのかわり7列分あるようだ。そこ以外は机とか、階段とかの場所もほぼ一緒。

 冒険者であろう人が結構いたけど、みんな何かを話してるようで、こちらを気にする様子はない。バンダー商長も特に気にせず階段で3階まで上がる。

 ギルド長室も同じ場所か、他の街も同じなら、きっと冒険者ギルドはほとんどこのつくりと思っていいだろうな。なんて思いつつギルド長室にお邪魔する。


「よぅバンダー、来たか。お連れさんもどうも。」


「あ、はい、どうも、よろしくお願いします。」


 金髪の髪から見えるとがった耳、顔のほほにあるタトゥーのようなとても濃い緑の星のマーク。エルフの特徴が色濃く出てる人だ。エルフの顔にマークがあるのは初めて見たけど、一応トレビス商長が教えてくれてたので知ってはいた。

 顔のマークや色は人によって変わるそうだけど、ドワーフの手のライン模様と同じで色が濃い人ほど、才能や力のある人らしい。できればイリハアーナ様にもそこまで教えてほしかったよ。


「なんだ?珍しそうに見て、エルフは初めてか?」


「いえ、話したのが初めてだっただけです。」


 ちょっとエルフのイメージ崩れそう。なんというか顔のイメージと声色と性格が違いすぎる。ぱっとみはさわやかイケメンなのに・・・


「まぁエルフは外にはあんま数いないからな。ほとんどが里籠りだ。まぁそんなことより、今は君の話だ。」


「あ、はい、えっと、リュクス・アルインです。今回の要件は新しい魔物ってことですよね?」


「はい、そうなりますね。そうなりますよ。わたしは管轄外なのでお話を聞くだけにとどめますね。とどめますよ。」


「おぅ、バンダーが珍しく魔物について聞きたいっていうくらいだからな。ちょっとそこの狼さんと蜘蛛さん、識別させてもらうぜ。」


 僕の後ろにずっといたから気配は消してただろうけど、さすがにギルド長は感づいてたか。多分レイトにも気が付いてるだろうけど、今回の調査外かな。

 むしろベードにも識別をかけるってことは、ベードも未確認種の可能性があるのか。


「ベード、モイザ大丈夫だよな。」


「ばぅ。」「――――。」


 二人とも横まで出てきてうなずいてくれる。その二人をじっと見つめるのがギルド長だ。


「ミエスギルド長、識別中に申し訳ないですね。申し訳ないですよ。リュクス様に自己紹介してないですね、してないですよ。」


「おぉッと、そうか、もう識別は終わっちまったけどな。遅くなったが俺が南の肉の街冒険者ギルド長、ミエスレネアン・フルエノルク、って長すぎるんでミエスと呼べ。」


 おぉ、長い名前、なんかエルフっぽい。


「そうさせてもらいますね、ミエスギルド長、ところで、二人はどうでしたか?僕も能力は見ているんですが、詳しく知っているわけではないんですよね。」


「結論から言うが、どっちも未確認種になるな。危険度は狼くんがD、蜘蛛さんがEとでたんだが、ちょっと気になるな。見た感じ思うのは、まだ二匹とも自身が育ちやすい時期なんじゃないか?特に狼くんの進化はかなり早すぎる進化のように感じるな。」


 まるでステータスを見たかのような的確さ、というかステータスを見たのか?まぁ二人とも不快な感じではないからいいか。


「そうですね、二人ともまだ成長段階なはずです。」


「やはりそうか、ならこのくらいの危険度で問題はないな、識別通りだわ。めんどくさいが、報告書はしっかり書かないと後でぼやかれるんでね。」


「な、なるほど。それと、実は今僕が識別しようとすると二人とものステータスだけ見れてしまって、詳しいところも聞いてみたいんですが。」


「なるほどな、狼くんのほうはグレートディープナイトウルフ、深夜巨狼とでもいうのか?狼種でもグレート種なのでその大きさなわけだ。ディープナイトは夜とか影とかに関係する部分を指してるみたいだな。そういう場で気配を消しやすいだとか、戦いを運びやすいとか言われてるそうだ。

 蜘蛛さんのほうはクラフタースパイダー、製作蜘蛛だな。生産活動を重視した種族のようだな。できる糸も生産用の糸といっていいようだな。もしかしたら今持ってないような生産スキルも覚えさせるのもいいかもな。あとでバンダーから何か紹介してもらえよ。」


「なるほど、ありがとうございます。バンダー商長ももしよければ、後で何かモイザに新しい生産スキルをお教えいただけますか?」


「はい、大丈夫ですね。大丈夫ですよ。わたしの得意分野である製薬や合成はおすすめですね。おすすめですよ。」


 薬作りと合成か、作った薬を合成するのかな?なんというかちょっと怖いイメージもあるけど。


「モイザ、やってみたいか?」


「――――。」


 どうやらやってみたいようだ、マザー種の時にあった技術貸借は今はないけど、代わりに新しくスペシャリティにできた生産技術というのがあるから、それが作用してうまく覚えられるといいな。


「んじゃ、俺はこの後報告書まとめて飲みに行くんで、バンダーのとこでやってくれ。」


「お手数ですが、ここでは生産具も広げられませんので、また商業者ギルドのほうへと戻りますね、戻りますよ。」


 また西門通りに向かうとなると、着く頃には結構昼すぎちゃうかな?でも野菜類使ってみたいし、着いた後に料理セット広げられたら何か自分で作ろうかな。ダメならモイザの手製サンドを食べよう。


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