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緑甘樹の実と劣蜘蛛の糸玉

 蜘蛛たちは西の扉外で待機指示。遅くても明日には来るから、人は襲うなとは指示しておいた。

 扉を入れば、昼時だというのに人の波が治まっていない。思い切って渡らないとな思ってた時、洞窟からサンギリーさんが出てきた。こっちをみてにぃっと笑みを浮かべたように感じた。


「早い帰りだ!渡るか?手伝うか?」


「すいません、手伝いお願いします。」


「ガハハッ!気にすんな!」


 相変わらずズカズカと進むサンギリーさん。彼の前では波が止まる、ここの指導者の一人なのか?それで僕が通るのを助けているのかな。波がなければすぐに洞窟部分を抜けれた。


「ガハハッ!楽だろ?」


「はい、ありがとうございました。少ないですが、これでも受け取ってください。」


 ポーチから豚肉サンドを2つとりだすと、なんだか面食らった顔をしつつ、受け取ってくれた。


「ガハハッ!なんかすまん!少しの足しだな!じゃあな!」


 すぐに洞窟のほうに振り返っていたサンギリーさんを後に、僕も急ぎ気味で商業ギルドにと向かっていた。



 受付の人に話をすると、すぐにトレビス商長の部屋につないでくれた。トレビス商長にあらかたのことを話したら、ちょっと懸念していた通り、木の実についていろいろ聞きたそうだった。でもいったんぐっとこらえて、ある提案をしてくれた。


「従魔証を自分で作る、ですか?」


「そうです、それだけ従魔を従えているのであれば、おそらく従魔証を作るためのスキルが発現しているでしょう。従魔契約のようなスキルは所持していませんか?」


 あぁ、なるほど、そういえば従魔契約はスキルがなくてもできる。でも複数の魔物を従魔契約すると契約のスキルを入手するんだったかな。たしかギルドの資料室でほんのり読んだ気がする。


「持ってますね、それで作れるんですか?」


「簡単ではないのですが、従魔契約の術法をかければ、ある程度の物は従魔証として機能できます。

 おすすめは首輪、足輪のようなリング型ですね。作りやすいですし、術法をかけやすいそうです。

 イアーカフスのように体に穴をあけるのは作りにくいですが、より術法が安易に付けれるそうです。どちらにしても、従魔に合わせて作ることができますよ。

 王都で作られているものはどんな個体にも合うように、リング型は可変式のものが多いですが、すでに決まった個体に対し作るのであれば、それは不要ですからね。」


 なるほど、確かにそれもそうか。付けるものさえ作ってしまえば、あとは僕次第なわけだ。


「従魔契約の術法のかけ方さえわかれば、行けそうですね。」


「それはそれほど難しいものではないそうですよ。コンフォームプルーフというスキルアーツだったはずです。お持ちの従魔証に触れつつ、同じ性質をもたせるイメージを作ればいいでしょう。」


「なるほど、イメージしづらい現象はすでにあるものと同じように、ですか。」


 それなら従魔証のイメージがつかめなくてもできそうだな。あとはリング型のを蜘蛛糸で作ってもらえばいいだけか。まだそっちの話はしてないんだよな。緑甘樹の実で蜘蛛を21匹手なずけたとだけしか伝えてない。


「そうですね、ではここからが本題ですね!ぜひ緑甘樹の実の皮の取り方を教えていただきたいのです!蜘蛛たちも私たちもあれはどうにもならない代物だったのです。

 樹液も十分に甘く蜘蛛たちには無害ですが、私達聖族にはあまりよくない成分が含まれているようで、どう加工しても何かしらの影響が出てしまったのです。」


「うぇ、ちょっと待ってください。それ、木の実のほうは大丈夫なんですか?」


 中身舐めちゃったよ、大丈夫かな僕。


「今の時点で湿疹、動悸不良の発生、眩暈や嘔吐など発生していなければ、問題はないといえますね。」


 それ、樹液を使用した際の悪影響?怖いんだけど・・・


「えっと、もう一つ。たとえ僕が平気でも、住人の方には毒かもしれません。僕は来訪者ですからね、それで平気だったのかもしれませんよ。」


「御心配には及びません、初めに私が責任をもって試食します。緑甘樹によっておこる影響に対して効き目のある薬も用意しています。その薬はどんな時でも所持しているものですがね。他の危険症状が発生した際にも使える万能薬ですから。」


「そ、そんなものまで使って調べなくても・・・」


「いえ、商業長ならばみなさん毒をも食し、新たを求めるのですよ。もちろん私も例外ではありません。ぜひ皮を取る方法とともに試食させていただきたいです。」


 商業長、トレビス商長だけじゃなく恐るべき人たちばかりなのか・・・そしてこの話にケリをつけなきゃ、従魔証の話にはうつれないよな。


「わかりました、では見ててくださいね。後、結構きついにおいがするので気をつけてください。」


 ポーチから緑甘樹の実を取り出して、蔕をひねって見せる。僕は息を止めていたけど、トレビス商長はしかめっ面になってる。息止めてなかったんだな。


「確かにきつい匂いですね、樹液はこんな匂いはしなかったのですが。それにしても今行ったのは蔕取りですか。そのように蔕をとれば周辺の皮も一緒に取れるのですね。なるほどなるほど、ではすいませんが試食させていただきますね。」


 渡した木の実の皮の取れた部分から、器用にナイフを入れてさらに半分ほど皮を剥いでいく。


「なるほど、皮の内側からならはぎ取れるようですね。内側からだとかなり柔らかいようですね。ただ、気を付けなければ実の部分を大きく削ってしまいますね。こうしても果汁はほとんど出ないようですね。では、いただかせていただきます。」


 一口大に切っても汁がこぼれだしたりはしないようだ。そのままパクリと食べてしまったけど、大丈夫だろうか。何やら難しい顔をしながらも、ゆっくりと味わっているようだ。

 さらにもう一口、すごいな、僕はちょっと舐めただけで飽きたぞ。あれはまだポーチの中で眠ってる、蜘蛛にあげればよかったな。


「なるほど、とても甘いですね。シャクシャクとした噛み応え、舌触りなどは悪くないですが、

 この甘さはこのまま食べるには向かないでしょう。少しあぶってみてもいいですか?」


「どうぞ、いろいろ試していただいて構いませんよ。」


「そうですか、では失礼して、いろいろ試させてもらいます。」


 ポーチから料理セットを出して、部屋の広いスペースにと展開させる。なるほど、書類作業以外に広いスペースがあるなと思ったけど、こうして自分ですぐにいろいろ試すためのスペースなのか。

 二つのコンロにそれぞれ鍋とフライパンを用意して、鍋には水を入れて火をかけ始めた。そういえば僕は鍋使わずにフライパンばかりだな。今度鍋も試してみるか。

 フライパンにも火をかけて、残った半分ほどの中身を焼き始めた。むききった皮も丁寧に机の横に残している。皮にも用途を見出そうとしているのかな。


「あの、良ければもう一つ使ってください。」


「おや、申し訳ありません、ではお言葉に甘えて使わせてもらいますね。」


 さすがに少ないと思ったので、蔕は取らずにもう一つ渡した。

 焼き目だけを付けた木の実をすぐに皿に取り出して、渡した木の実の蔕を取ろうとし始める。

 しかし、トレビス商長が蔕を僕と同じように捻りはじめて、難しい顔になる。


「・・・後にしますね、まずは焼いたものを試食します。」


 なんだ、何があったのだろうか。横に置かれた木の実の蔕はちゃんと取れてるようだけど。それから目をそらして焼き目のついた実を口に入れていた。


「なるほど、焼いてしまうとせっかくの甘みに苦みやえぐみが出ますね。先ほどまでのただただ甘いよりも食べやすいですが、この食べ方もあまり向きませんか。さて、茹で始める前に、この実をどうしましょうか。」


「あれ、それ、蔕は取れてるけど、皮が・・・」


 トレビス商長が蔕をとった実は蔕がちゃんと取れていたが、僕のように周りの皮は一緒に取れていない。


「同じように行ったはずなのですが、何が違うのでしょうかね。これではさすがにもう処理しようがありませんね。この皮は鋼よりも固いですからね。もし無理に破ろうとすると中身がダメになってしまうのです。」


「試せそうなことは試した後、ということですよね。」


「はい、私としたことが少し舞い上がっていたようですね。こうして蔕取りを行った方はきっと以前にもいたでしょう。そしてこのように失敗をして、無理だと判断されたはずです。どうしてリュクス様が蔕取りをすると一緒に皮が取れるのでしょうか。」


「申し訳ありません、僕もどうしてなのかは見当が付かないですね。」


 残念ながらさっぱりだけど、来訪者であることが関係してるのかな?でも現実でやってたのなんで果物の皮むきくらいだぞ。

 うーん、わからないことはあんまり考えてもしょうがないな。とりあえず今度はちゃんと蔕を取ってから一つを渡す。


「そうですか、ですがこれはなかなかに・・・いえ、やめておきましょう、まだ結論には早いですね。とりあえず丸々茹でてみますね。」


 沸騰した湯で渡した実を残りの皮をむかずに茹で始めた。少し経つとすごい甘い匂いがあたりに立ち込め始める。苦手な人には苦手だろうな、この匂い。前に旅先で行ったとこにあったハワイアンショップの匂いに似てるかも。あそこも無駄に甘ったるいにおいが充満してたなぁ・・・


「こんなもんですかね、皮に触れてみてください。」


「え、はい、わかりました。」


 言われた通り皮に触れてみると、とてつもなく硬い。そのままの状態よりも余計に硬いんじゃないかこれ。


「お分かりになりましたか?熱にさらされると外皮はさらに固くなるのです。しかしこの甘い匂いはしませんでしたね、これは中の実の匂いでしょう。かなりグズグズの状態になっていますね。中身はこうして長く熱を与えられることには弱いようですね。」


 茹で上がった実の皮が内側からはがされていく。確かに見た目茹でリンゴのような感じだな。

 一口大に切り分けてトレビス商長が一口。その瞬間、目を見開いていた。


「・・・これは、リュクス様、一つお食べください。」


「え、あ、はい。」


 言われるままに僕も一つ手づかみでもらう。口に入れた瞬間広がる甘み、でもそのままの状態のしつこい甘みではない。

 ゆでたことによって実は柔らかくなっているので、シャクシャクとした噛み応えというのは味わえなくなってるけど。これはあれだな、甘さの強い茹でリンゴだ。それも苦みやえぐみもほとんどないよ、おいしいじゃないか。


「美味しいですね、これなら木の実そのままでも食べれますね。」


「それどころではありませんよ。この街の甘味にはリンゴしかなかったのです。砂糖は非常に遠い町の原産で、この土地では育ちにくい作物からできます。これはリンゴを煮たよりも甘く出来上がっています。

 リンゴを煮ると苦み、えぐみも出てしまうので、リンゴは主にそのまま食すか、オイルと酢の材料に使われてます。

 この木の実ならこうして食すだけでなく、そのままを甘味の材料として使うこともできます。砂糖の代わりとしてこの街で重宝されるでしょう。ますます西の森の需要が増えますね・・・」


「えぇっと、でもそれって皮をむければですよね?僕以外にもむければいいんですが。」


「そ、そうでしたね、申し訳ありません。その問題点を解決できたらのお話になりますね。ですがもしお手数でなければ、蔕をとった状態の物をお売りいただきたいです。とりあえず失敗してしまった1つも含めて、お支払いさせてください。」


「は、はぁ、わかりました。」


 この人にお金のことや融通を聞かせてくれることで遠慮すると、逆にいろいろ増やされるので従っておくことにする。そして証明に600リラが追加されていた。


「えっと、おおくないですかね?」


「いえ、妥当な価値ですね。ひとつ200リラの計算です。私がこうして失敗しなければそれだけの価値をとるべきなのです。1つ300リラでお支払いでも問題はないと思うのですが、リュクス様がこれ以上だと引いてしまう気がしましたので。」


 うん、西の森であんなに大量になってた木の実を、蔕取っただけで300も出されたらさすがに引いちゃうよ。200でも結構気まずいけど、妥協してくれたんだろう。


「ご自身で使う分のみしかお持ちでないのでしたら、後日に露店に出していただけると幸いです。

 こちらからも買い付けますが、他の方にも回していくべきでしょう。それと、こちらをお渡しいたしますね。」


 なぜか袋型アイテムポーチの特大を押し付けられた。これで思う存分回収してねということか、わかりました。

 ここで時空術のことを言うとややこしくなりそうだし、これはもう先行投資ってことでもらいますよ。


「ありがとうございます、使わせていただきます。」


「お受け取りいただきありがとうございます。では、本題の従魔証の件ですね。レッサースパイダーの糸があればすぐに作れますので、こちらでご用意いたしますよ。」


 あぁ、その件が残ってたんだった。でも冒険者らしく、自分で集めた素材で作ってもらう!これは譲らないぞ、絶対いろいろ言われるけど。


「えっと、実はレッサースパイダーたちに木の実を上げたとき、その報酬としてこういうものをいただいてるんですよ。」


 とりあえず出したのは劣蜘蛛の糸玉のほうだ。トレビスさんは取り出したそれを見て、口に手を当てた。絶句というのはこういうのを言うんだな、初めて見た。まじまじとしばらくその状態で糸玉を見た後にようやく話し始めてくれた。


「そうでしたか!確かにレッサースパイダーを従魔としたなら、こうした糸玉を作らせることも可能。つまり今後も作ることが可能であるということですよね。素晴らしい、こんな大きさで、質もいい。これが21個ですか、いったいどれだけの物を作れるのか。胴着、ズボン、手袋、マフラー、帽子・・・キリがありませんね。おっと、すいません、失礼いたしました。」


「いえ、予想はしていたので、大丈夫です。」


「そうですね。これがあれば十分に従魔証としての性能を持たせるリングを作れます。一玉もあれば30匹分は作れるでしょう。すぐにお作り致しましょうか?」


 うーん、どうしようか、僕が作るってのは時間がかかっちゃうだろうな。あ、でも作ってもらうにあたってちょっと思うところがあるな。


「一玉で大丈夫ならこの玉を使ってほしいのです。それと、これを見るとわかると思いますが、一匹はただのレッサーじゃないので、大きさが違うんですけど。」


 出したのは劣母蜘蛛の糸玉だ。これで作ってやればあいつらも十分に満足するだろう。・・・トレビス商長がそれを鑑定したのか、身震いしたように見えた。


「・・・ギルドの者に頼んで作るつもりでしたが、やめます。少々お待ちいただけますか。」


「え、あ、はい。」


 僕が返事すると同時に料理セットをかたづけた。そしてポーチから別のセット用の四角いボックスを取り出す。そこから出てきたのは糸車と、台に乗った糸縫い道具。


「私が作りますね、こんな素晴らしいもの他の者には譲れません。」


「わ、わかりました。」


 断れる雰囲気ではなかったのでおとなしく糸玉を渡す。糸車に糸玉を設置したかと思うと、恐ろしい速度で糸を紡ぎ始めた。


「マザーの糸は殺害によっては取れないのです。レッサースパイダーと違い、死の寸前に体内の残り糸を溶かしてしまうのです。おそらく体内の毒か酸で溶かしているのだろうということしかわからないのです。使い物にならないボロボロの状態で少量残っている場合があり、その現象が発覚したのですよ。」


 器用に僕に話しながらあっという間に糸を巻き終えてしまった。正直、どうやってたのか僕にはわからなかったほどだ。

 そして編み道具のほうに椅子を移動して、恐ろしい速度で編み上げていく。でき上った一つは指輪のようなリング状だが、穴がかなり小さい。


「広げようとしてみてください、少しだけ穴が広がります。その大きさならレッサースパイダーにちょうどいいはずです。閉じた後もやわらかいので締め付けるような痛みはないですよ。」


「なるほど、これはいいものですね。」


「それだけでは従魔証としては出来上がってませんよ。最後はリュクス様が仕上げてください。」


 あぁ、そうだったな、使っていない首輪型の従魔証を左手に取り出す。右手で作ってもらった糸指輪を握りしめて、コピーするようなイメージで。


「コンフォームプルーフ。」


 握った左手から淡い黄色の光がほのかに漏れ出す。光はすぐに収まったので、手を広げてリングを見てみると、内側に見慣れない文字が刻まれている。これは確か古代文字だな、少しだけ資料室で読んだぞ。なかなか神秘的でいいじゃないか。

 問題はこれを21個やるということだけど・・・やってみるか、すでに4つ出来上がっているのを全部左手に包む。


「コンフォームプルーフ。」


 左手から淡い黄色の光がほのかに漏れ出す。光が収まったらリングを確認、おぉ4つ全部文字が付いてる。これなら何とかなりそうだな。


「その方法で行うのでしたら、5つまでに抑えることをお勧めします。それ以上は魔素の消耗量が一気に跳ね上がるはずです。」


「そ、そうですか、わかりました。」


 見てたのか?いやずっと手元に集中してたよな。今も一つ一つ、すごく早いけど丁寧に作ってくれている。5つ溜まったところでもう一度。


 ・・・5個ずつやったおかげで結構早く終わったと思う。最後に渡された一個は他のよりも少し大きく、形もただのわっかじゃなくて、うまい具合にダイアの形の部分ができてる。これがマザーようってことか、ちゃんと特別感出してくれてるのはありがたい。


「コンフォームプルーフ。」


 これで終了か、すぐ作ってくれて助かったけど、トレビス商長も疲れ・・・てるというより、なんというかやり遂げた満足感しか感じない顔だな。なら良しとしよう。


「大変いい経験ができました、ありがとうございます。記述がないことからおそらくですが、劣母蜘蛛の糸を使って製作をしたのは私が初めてになるでしょう。これを他の者に譲るつもりはありませんよ、私も生産者ですからね。もっとも、こんな機会を逃したら商業者としても失格ですね。我々はあらゆる転機や幸運をつかんでこそですから。」


「そ、そうですか、それはよかったです。では製作費用についてなんですけど・・・」


「いりませんよ、今言った通り素晴らしい機会を得たので。」


 なんとなくそういう予感はしたんだけど、そうはいかない、いかせない。


「そうおっしゃると思いましたので、金銭ではなくこちらも物資作戦で行きます。今そこに少し残った糸と、こちらの20個の糸を差し上げます。もし納得できないようなのでしたら、土地代で融通していただいた件のお礼とでも思ってください。」


「なるほど、どうやらこれはこちらが引き下がるしかないようですね。せめて胴着とズボンをこの糸で製作してお渡しするので、そちらはお受け取りください。」


「わかりました、でもあまり大量に使ったりしないでくださいよ。糸量が多くて着づらいとかは勘弁です。」


「そのあたりはしっかりと作らせますのでご安心ください。」


 よし、うまい具合に押し付けれたな。いろいろ安くしてもらったり、作ってもらったりとやってもらってばかりだからな。


「ところで、今後は蜘蛛たちに糸玉を製作させるのですよね?」


「え、どうなんでしょう、彼らの意思次第にはなりますかね。」


「なるほど、従魔たちの意思を尊重するのですね。ではもし売り出すのでしたら、この大きさであれば一玉の相場は250リラですかね。これが劣蜘蛛の糸玉のほうです、大きさ、質どちらを取ってもこれ以下はまずいですね。安すぎればあなたの露店に人だまりが出来る可能性がありますので、もう少しお値段を張ってもいいと思いますよ。劣母蜘蛛の糸玉をもし販売するのであれば、その倍の値段を付けてください。それでもお安いかもしれません、ご注意ください。」


 おぉう、まじか、まじか・・・まぁそこは蜘蛛たちの意思次第だからな。


「あとは、21匹の食事問題ですかね、何かお考えはありますか?」


「うーん、そういえばその問題がありましたね。」


 さすがに毎回勝手に東から西に蜘蛛が移動するのはまずいよなぁ。それができれば勝手に樹液吸いに行ってもらえるのだけど。

 木の実を僕が用意するのは論外だな、時間かかりすぎる。まぁ、思いついたプランがないわけじゃない。


「とりあえず、育つのかわからないですけど、実をそのまま植えてみるつもりです。」


「な、なるほど、栽培してみるということですね。ではこちらをお渡しします。」


 渡されたのは地面から腰ほどの長さの木のくいだ。何やら杭に2つの突起が付いてる、それを20個ほど渡された。


「そちらを囲いたい四方に、膝ほどの高さになるよう突き刺してください。そうすることで柵で囲われて、囲われた中から栽培している植物が広がらなくなります。

 樹に関しては大きく育ち、実ができてからでも問題ありませんが、囲っておくと実が落ちて新たな樹が勝手に生えてしまうということを防げます。四方を囲えば、突起部分から他の突起部分に向かい柵ができるので、その際に巻き込まれて怪我をなさいませんようご注意ください。」


「わかりました、ありがとうございます。」


 また貰い物をしてしまったが、これノビルとレモングラス分けるのに使っておこう。たぶん隣の土地との境にある僕の背より1,5倍は高いあの木の柵も、これと同じように作られてるんだろうなぁ。

 さっそく植えに行かないと、結構な時間になっちゃったな。これを用意してくれたってことは植えれば育つんだよな?ならば、早めに用意できるに越したことはない。いそいで僕の土地に向かうか。


「では、農作業を行うので、僕はこれで失礼しますね。」


「わかりました。最後に胴着とズボンについてだけお伝えしておきます。製作品ができましたら冒険者ギルドのほうに通達しておきますので、お手数ですが隣の店舗のほうにまでお受け取りをお願いします。」


「了解しました。」


 軽くお辞儀をして、僕は商長の部屋を後にした。


ちょっと気が付いてしまった。

もしかしてだけど、一部にはフリガナ振ったほうがいい?

これなんて読むの?とは言われてないからいいよね・・・?


ログインから3日たってるのか、たってないのか自分で分からなくなり始めてます。

日数経過を話ごとに一定にしてないつけが回ってきましたね。

打開策はあることにはあるけど、最終手段なので今は使いません。

日数の再確認をしっかりやっていきます。

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