無人露店始めました
商業者ギルド横の店に入って、アイテムポーチを発見。鞄型の小サイズは8000、でも鞄型は持っているのでもういい。
袋型の小で5000、中で8500か。うーん、まぁお金もあるし、中を買っておこう。残額は131964か、全然あるな。
そこでちらっと近くの防具売り場が目に入る。皮の腕あてと、皮の靴だ。靴は今、布の靴を履いている。履き心地は悪くないが、防御性能はないに等しい。歩きにくいわけじゃないが、あの革の靴のほうが圧倒的に歩きやすそうだ。
そして腕あてがあれば、魔物に噛まれたとき、腕を守ることができそうだ。二つで4000か、質も3Dと悪くない、購入しちゃおう。
ほんのり装備を更新して、南兎平原へ。ちょっと心躍るけど、この装備は耐久値がある。耐久が0になると粉々に砕け、修理不能になる。そうなる前に装具は修理する必要があるそうだ。
さっきの店でも修理依頼を出すことができるようなので、耐久値が減ったら修理に出そうと思う。そんなことを考えつつノビルの群生地へ。
周囲を警戒してたからか、兎には会わずに到着。ただ、ベードは僕と離れて自由行動させておいた。
先にレモングラスを発見、20ほどまとまって生えていたので引っこ抜いておいた。
ノビルも発見、たっぷり100以上は集めたと思う。そんな折にベードが合流。鼻で押されたので、どこかに案内したいようだ。
案内されると兎が10匹、山になっていた。自由にしてもいいとは言ったが・・・まぁいいか。体に牙跡も爪痕も少なく、殆どが頭への致命傷でとどめを刺したようだ。
もしかして僕のことを考えてくれたのかな、だとしたらえらいぞ。ただ、僕が解体すると質が落ちてしまうから、練習しないとな。
そうこうしてたら、暗くなりそうなので急いで帰宿。これでDWD10日目終了か。宿に帰ったら寝る前にパンフレットを読んでおくか。
翌日、東門への大通りを歩く。やはりまだベードへの目線は多い、仕方ないな。門付近に行けば人通りはなくなって、窮屈な感じはなくなった。ただ、門の手前の空いた土地に、なぜかトレビス商長が待ち構えていた。
「私達が昨日中にかけて、設置いたしました!こちらでよろしかったですか?」
できうる限り門から離された位置に、無人の露店が設置されている。柵からは人一人分くらいしか離れてないけど、いいのか?まぁ設置場所については何も言わなかったし、いいか。
「はい、大丈夫ですよ。さっそく入れたいんですが、ちょっとご相談が。」
「はい、お聞きいたしますよ。」
メガネをくいっとあげて、にっこりとほほ笑む。彼女の商業に対する情熱を知らない人が見たら、ころッとやられそうだな。
「実はサンドなんですけど、値段設定に悩んでいるんです。とりあえずポーチから直接、展示ケースに移しちゃいますね。」
豚肉サンドの入ったポーチを展示ケースに触れさせ、送るようにイメージすると、ちゃんとサンドがケースに展示される。もう一つの袋からも移して、これでオッケー、計124個だったか。
「かなり作りましたね、これは豚肉の仕入れ数を上げる必要がありますね。仕入れ数はこちらで何とか対処しておきます。えっと、値段ですよね。そうですね、適正価格はこの質ならば・・・150リラといったところですかね。」
「えっ、そんな値段付けちゃっていいんです?」
サンドイッチひとつに150か・・・あ、でも現実世界のコンビニイメージならそのくらい普通か?あれは2~3個入って250とか300とかするもんな。
「そうですね、ただ、こちらには付加価値を必要とすると思いますので、180リラでも売れると確信しております。とりあえず私は180でも買いますね。」
「う、うーん、なるほど、ではちょっと下げて175リラにしておきますね。」
「まぁいいでしょうかね、すぐに売り切れてしまわないことを祈ります。」
そういいつつ、僕が値段決定後に水晶に証明をかざして、客側から一つ、サンドを取り出して頬張り始めた。僕も朝食べてきたけど、人が食べてるの見てるとまた食べたくなるな。
「それと、露店商売の際のお名前ですが、できれば違うお名前を付けるべきですね。
同じ名前でも不便はしませんが、冒険者と商業者兼任の方の露店に、いいものを作れるのならば製作だけをやるべきだという、よくわからない苦情を出す方がまれにいらっしゃいますので。」
あー、そういうのは別のゲームで問題視されてたのを聞いたな。なるほど、DWDではそれを避けれるように偽名仕様もできるのか。露店の店舗所有者名にリュクス・アルインと書かれてる。
うーん、じゃあちょっと変えるだけにしてみるか。スクーリ・ルンアイブにしよう。
「スクーリ様ですね、かしこまりました。今後公的場ではそちらの名で呼ばせていただきます。
商業を行う際はそちらの名をご使用ください。こちらで登録手続きは済ませておきますね。」
「ありがとうございます、よろしくお願いします。」
「いえいえ、では良き商業を。」
お辞儀して足早に中央のほうに行ったので、多分商業者ギルドに戻ったんだろう。
露店に兎肉を入れる、質の設定を3D以上に変更。僕じゃ3Gになっちゃうからね、ここで買い取っておこう。
数は1000まで、値段は一つ5リラ。冒険者ギルドなら10集めて30リラだからここに売れば少しもうけが上乗せする。そんな感じにしておけばいいだろう、質の指定もしてるし。
気をつけなきゃいけないのは、証明の残高だな。ここで取引すると勝手にお金が増減するらしい。土地のパンフレットと一緒に挟まってた露店のパンフを読んでおいたので、予習はちゃんとしてきている。
この水晶にリラを入れておくことができる、とりあえず5000リラ入れておこう。これで僕の証明からじゃなく、この水晶から先に消耗してくれる。
取り出すのも一気に取り出さなきゃいけないわけじゃないそうだから、もし1000個買い取ってしまっても、100ずつ取り出したりもできる。まぁさすがにそんなことないだろうけど。
露店はこんなものでいいかな?少しづつ東門の人通りが見えてきた。あれはパーティーだろうか、6人固まっている。もしかしてインヴェードウルフの討伐隊なのかな。さて、僕は何をするかね。
よし、せっかくだから露店横の農具を回収。ちょっと露店近くも恥ずかしいので、奥に移動。この辺なら見ようと思えば見れる、くらいの位置だな。
ベードには離れてもらっておいて、地面の土にくわを振り下ろす。おぅ、思ってるより簡単に土に刺さるなこれ。
ザク、ザク、ザクと2畳分くらい耕したところで、ちょい疲れた。これやるの大変だな、なんかもっといい方法があるのか?まぁいいか、とりあえず耕したところにノビルと、対角にレモングラスを20ずつ植えてみる。増やしかたなんて知らないのでとりあえず植えただけだが、どうなるかね。
耕してる間、ベードが東門を出ていく人たちを見続けていたようだ。伏せてはいるが、その眼はしっかりと開いて、門を見つめている。光の満つ刻に近い時間なのに、人の行き来がおおい。
本格的に討伐がはじまっているんだろう。一度、冒険者ギルドに行ってみるか。
昼はポーチから出したサンドを歩きながら食ったので問題なし。冒険者ギルドで討伐隊がどのくらい組まれてるのか、話を聞いてみよう。
そのあと、どうやらベードがどうしたいか決まったようなので、その意志をくんでやろうと思う。
ギルド内は想像以上に閑散としていた。6人の1パーティーが机を囲んでいるだけのようだ。受付にはドーンもいない、そして今、受付にいるのは一人だけだ。たしかあの人は前にドーンに食事に連れられたときにいた人だ。
「どうも、こんにちは。」
「おや、こんにちわ、君は確か先輩・・・ドーンさんが最近気にかけている人だね。」
あぁ、向うはこっちのことをよく知ってるのかな?まぁ職員なら冒険者の情報は知ってるよね。
「そうですね、挨拶しておきます。僕はリュクス・アルイン、こっちはベードです。」
「うぉん。」
おとなしく座っていたベードが小さく一鳴きした。うん、いい返事だ。
「自分はクエルム・オーノマーです、よろしくお願いします。そちらはインヴェードウルフですよね。すごいですね、そんなにおとなしいなんて。
私は炎術を得意としているのですが、発動が遅いので素早い彼らは苦手なんですよね。発動までの時間を稼いでくれるような人と組まないといけないので、自分は今回の討伐隊に加わらず、こうして後方事務を担当していますよ。」
あぁ、やっぱり討伐隊はもう組まれたのか。ギルド長の行動は速いな。
「ドーンさんも討伐に出ています、索敵能力はこの街一ですからね。ドーンさんにご用でしたか?」
「いえ、討伐隊の話を聞こうと思っていただけなんです。どのくらいの人数参加しているのか、どう展開しているのかなどですね。」
「なるほど、それならギルド長に通したほうがいいですかね。ギルド長も自分と同じく後方事務で残っていますので、ギルド長室を訪ねてみてください。」
「わかりました。」
言われるままに階段を上ってギルド長室へ。こんなに何度も来ていいんだろうか?まぁいいのかな、案内されたし。
「失礼します。」
「ぬぅ?そなたか。今日はどんな爆弾かの?」
「やめてください、人を爆弾扱いするの・・・」
「ほほっ、冗談じゃよ、して何用じゃ?」
今のがギルド長の冗談なのか・・・笑えないんだけど、まぁいいや。
「討伐隊の話を聞こうと思って、受付の方に話をしたら、ギルド長にとおしたほうがいいといわれました。
聞きたいのは、どのくらいの人数参加しているのか、どう展開しているのかなどですね。」
「なるほどの、その答えをどうするかはクエルムにはちと早いかの。そうじゃの、なぜそれを知りたいと思うのかにもよるのじゃが、場合によっては答えることができぬ。」
あぁ、やっぱりそうだよね、簡単に教えちゃいけない話か。
「ベード、お前はもう決まってるんだろ?」
「ばぅ!」
あぁ、東門を見つめるお前の目、その返事、やっぱりな。お前は追われた群れに見返してやりたいんだな。そっと撫でてやって、高ぶってるだろう気持ちを落ち着かせる。
「ふぅむ、ベード殿も討伐隊に参加、もしくは討伐隊と会わぬように戦わせたいということかの。」
「そんなところです、教えていただけますか?」
「そうじゃのぅ、その前に二つほど話すことがある。その話をしようかの。」
うん?討伐隊の話じゃない話ってことかな。
「まず、従魔証を付けた魔物が門を通る時の話じゃ。言わなかったのじゃが、従魔証を付けているのであれば、門を通る際に認証の魔道具、あの水晶じゃの。あれに従魔証をかざしてから通行するほうが良いのじゃ。もっとも、他の街ではという話じゃがの。
この街ではすでに儂も、トレビスも、街長も、おぬしと従魔が共になら門を自由通行することを認めておる。」
「街長も認めてくれているのですか?」
「こちらで手続きは済ませておくといったであろう。」
そんなところまで気を使ってくれるなんて、ありがたい限りだ。
「まぁ今の話で他に疑問に思ったことはないかの?」
「他に疑問に思ったところですか?」
なんだろう、変なところがあったか?しいていうなら・・・
「僕と従魔が共になら門を自由通行できる、ってとこですか?」
「察しがよいの、ここからは聞かなかったことにしてもかまわん。従魔証をかざせば通行許可が出る。つまり門などは無理じゃが自動で開く扉の場合は・・・これ以上は言えぬ。」
自動で開く扉って、北門が閉まった後の扉もだけど、南東の扉だって僕が証明をかざすと少しの時間勝手に開く。多分10秒くらいだ、通らなくても勝手に閉まるんだと思う。
だからベードも一緒に入れたけど、あんな短い時間に魔物が狙って入ってくることはないだろう。
もし来てもこちらは聖域だ、魔物が弱るらしいから対処もできるだろう。そもそも聖域には魔物は基本入ろうとなんてしてこない。
そして、従魔証をかざせばあの扉が開くなら、ベードやレイトは自由に街外に行き来できるってことか。
ちらりとベードを見るけど、相変わらずおとなしく伏せている。理解をしているのかしていないのか・・・
「その話、僕聞いちゃってよかったんですか?」
「知らぬ、儂が従魔証を流してくれた友人から聞いた話じゃ。そもそも王都の従魔のほとんどが移動用として使われておる。つまり、体格が大きいものばかりじゃ。知っておったとしても、扉を通れないか、通るのに無理が必要じゃろう。」
なるほど、王都の従魔はそういうのばかりか。なら普通に門を通るだろうな。
「そなたの従魔はそんな大きさではないからの。そして門や扉の認証はあくまでも犯罪歴の確認のためで、従魔だけが通ったとしても認証されるのはそなたじゃ。そなたに犯罪歴がなければ何も問題はないの。
ただし、従魔が不祥事を起こした場合、そなたの罪になる。それだけは心得よ。」
「はい、わかりました。」
きっとこんなことを教えてもらってるのは、それだけ信頼してもらってるってことだ。もっとも、犯罪なんて起こすつもりはないけど。
「そしてもう一つの話は、討伐隊が組まれ、冒険者のほとんどが東にと出払ったために、西の森の冒険者が少なくなったの。いつもは人気のあるスポットじゃ、人の少ないのは今だけじゃろう。」
「なるほど・・・」
それは、とても魅力的な話だ。蜘蛛の魔物がどんなものなのか見てみたいし、戦ってみてもいい。
ただ、すでに何かと目立ってる僕だ。人の多い西の森に行くのを結構ためらっていた。
「そなたがどうするのかはそなたが決めよ。東に出払っているのはこの街の冒険者の8割ほどじゃ。
だいたい2500人くらいかの、あまり仕事しないのも混ざっておる。おそらくE級、もしくはD級の魔物が出たはずじゃ。インヴェードウルフを束ねるボスとして進化した個体じゃな。
そやつを見つけるためにかなり広く展開させておる。さすがに北方面に広がる別種の狼の縄張りまで、やつらが進行してないとよいのじゃが。」
「北の別の狼ですか?」
「そうじゃ、危険度C、もしくはBとも言われる狼の縄張りじゃ。しかも、その1個体のみで強大な縄張りを敷いているのじゃ。
北の南兎平原の街道がまっすぐでなく、途中から西側に曲がっておるじゃろう。西側に森と街の切れ目となる大きな丘があっての、そこが聖域になっているためでもあるんじゃが、直進出来ぬ大きな理由はその狼じゃ。種族名は不明、偵察に行ったものは命からがらだったそうじゃ。
縄張りにさえ入らなければ、手を出しては来ぬ。むしろその存在がいるおかげで、他の危険な魔物がこの付近には少ないともいえる。それゆえに大きな討伐隊も組まれずに放置されておるのじゃ。最近じゃと、何人かの来訪者が無謀にも挑んで敗北した様じゃの。」
そうか、北を目指すなら馬車か徒歩。徒歩を選んでまっすぐ北に行った人は・・・うーん、こわいこわい。おっと、聞いておきたいことがもう一つあった。
「ところで、2500人って、思ってるより少ないと思うのですが。」
「ふぅむ、確かにこの街の大きさからすれば、少なく感じるかもしれぬが、この街自体がそれほど人の多い街ではないのじゃよ。詳しくは知らぬが、6万行かぬほどじゃったかの。
そのほとんどが職といえるものにつかず、採石という手段で稼いでおる。この街の一大産業の南西の聖域境界壁の石じゃ。おぬしはそっちのほうには行ったことあるかの?採石が行われておるので、一度見てみるのもいいかもの。」
「そういえばそっちのほうにはいってないですね。でもなんで南西だけなんですか?」
「東側は土質が多いのもあるが、何より壁の修復時間が西のほうが短いのじゃよ。
昔は東側でも採取してたのじゃが、修復に長いと10日はかかる場合もあったそうじゃ。
西側なら長くても5日には修復する。そういう面も含め、人を調整するのであれば西だけのほうが良いのじゃ。」
確かに、あんまりにも広範囲に人を配置すると、統率をとりにくくなるのはわかる。
「冒険者のように、何かあった時に証明ですぐわかればよいのじゃが、採石程度にいちいち証明は必要ないのでの。
向かいの露店や商店に直接売り込めばそれで金は入る。それで取りすぎぬように、ある程度の見張りも必要じゃからの。」
「なるほど、結構いろいろ事情があるんですね。」
街で暮らす分には証明を使う人は少ない。そういうところが影響している問題だな。
「まぁ街の住人のことまでは、さすがにおぬしの管轄外じゃ。そこは気にせんでもよい、儂とトレビスと街長の仕事じゃ。なにやら話が脱線しすぎたかの?」
「いえ、大丈夫です、いろいろ知れてよかったです。」
「そうか、そういってくれると嬉しいの。じじいの話は長いといわれたりしたら、儂は悲しいからの。ところで、この後はどうするのじゃ?」
このあとか、まだ闇の刻までは時間が結構ある。せっかくだから、いろいろ調べる時間にするか。
「そうですね、魔物について詳しく知りたくなってきました。せめてこの街の近くや、隣町に行くまでの魔物などの情報だけでも。」
「ふむ、良い心がけじゃの、ついでに他の術法についても調べるとよいと思うぞ。そなたほど術法の安定性があれば、もっと複雑で威力のある技も使えるじゃろう。
自身で見つけるのであれば、そのほうが良いじゃろうが、ヒントくらいに使うと思ってもよい。
資料室は儂の部屋の隣にある、ある程度は丁寧に扱うように。」
「なるほど、ありがとうございます。」
前に聞いた術法のスキルアーツをまとめた書のことかな。新しい技か、自分で考えようと思ってたけど、書を頼ってみるのもいい。
グリーディードッグに苦戦しちゃったからな、もう少し自分を強くしたい。伏せてるベードや、頭上のレイトに頼るようじゃだめだと思うからね。
後半タイトルと関係ないけど、いいよね??
掲示板回がもう少し先になりそうです。
掲示板で書きたいことまで主人公がたどり着かない・・・




