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土地の権利を買ってしまった

 ログイン!あれだけ長々話してたけど、忘れてなかったぞログアウト!もっとも、ログインするまでに飯だのトイレだの風呂だのしっかり済ませてきた。どうせすぐにログインしても、こっちの体が目を覚ますまで寝てるからね。

 寝たのが闇の咲く刻くらいで、起きたのが光と火の刻。6時間か、まぁいつもどおりの睡眠時間だろう!今日はさっそく南東の扉から犬狼の縄張り森にと向かった。


 扉を出たら、さっそくベードを探す。


「うぉん!」


「うぉ、なんだ、扉の横にいたのか?」


 扉からすぐ横の境界壁側の狭いスペースに座っていた。忠犬だなこいつ、そこは聖域だから魔物にはつらいんじゃないのか?それとも従魔になると平気なんだろうか?そのあたりもこの後もう一度会う予定のアーバーギルド長に聞いてみるか。


「よし、ベードはどれがいい?」


 さりげなくアーバーギルド長から買い取ったイアーカフスもある。一応全部見せたが、首輪をつついてきた。


「やはり首輪か、よしつけてやるから大人しくしてろ。」


「わふ。」


 座っておとなしく首輪をつけさせてくれる。苦しくないように、でも外れないようにつけてあげる。茶色いレザーが灰色の毛並みに輝く。


「似合ってると思うぞ、このまま狩りにでも行きたいんだが、今日はこの後お前の登録がある、まずはギルドに行くぞ。」


「ぐぅ?」


 証明を水晶にかざして扉を開けたが、首をかしげてベードが入ってこない。


「どうした?入らないのか?」


「ぐぅ・・・」


 なんだろう、恐怖感?そういうものを感じてる気がする。


「大丈夫だ、安心しろ。その首輪をつけてれば襲われないし、街に入っても大丈夫なんだ。」


「きゅ!」


「ぐぅ、がう。」


 僕の言葉に続き、レイトが一鳴きしてにらみを利かせる。ベードもそれで意を決したのか街にと入ってくれた。いい仕事するじゃないか、ノビル大盛にするか。あぁ、そう言えば少なくなってきたからまた取りに行かないとな。



 わかっていたことだけど、畑を過ぎて人通りが出てくると、すごーく目線がこっちに集まってる。

 まぁベードは目につくよな、他に魔物が町にいるわけないんだし。いつもはピンと立ってるベードの耳がぺたりと垂れている。多分目線が集まってるせいだな、足早にギルドにと入ろう。


 ギルドの中でもまだ残っていた冒険者に見られつつ、ちょっと逃げるようにギルド長室にと入る。

 ベードもおとなしくついてきてくれてるので、ちょっと目線が多いくらいで済んでるのが幸いだったかな。


「ふむ、その狼が従魔契約したものか。本当にインヴェードウルフなのじゃな。

 確か怪我を治癒したところが始まりじゃったよな?どんなけがだったのかを詳しく教えてもらってもよいかの?」


「どんな怪我ですか?横腹に大きな打撲傷がありましたね。」


「ふぅむ、やはりそうか。これはやはりまずいの。とりあえずは従魔の登録をしてもらおうかの。そのあと説明するわい。」


 うーん、気にはなるけど確かに登録が先だよね。


「はい、了解です。種族はインヴェードウルフ。名前はベード・アルインです。」


「うむ、確かに承った。登録の仕様上明日にはなるじゃろうが早めに登録するでの。レイト殿の登録はすんでおる。

 これで他の者から何か言われたときも、登録した従魔証を見せることで所有を示すことができるのでの。付けた従魔証を変えたい場合はまた言ってくれればよい。」


「わかりました。」


 従魔証ごとに登録してるのか。どういうふうに従魔証に登録したのかはよくわからないけど。まぁ便利になったはずなのでとりあえずはいいだろう。


「一応言うのじゃが、従魔が何か問題を起こした場合、そなたの問題として扱われるのでそこだけは気をつけよ。」


「はい、それは元からそのつもりです。」


「まぁそなたなら大丈夫だとは思っておる。さて、おぬしは来訪者じゃから、インヴェードウルフの習性をよくは知らぬと思ってよいな?」


「そうですね、インヴェードウルフに限らず、魔物についての知識は浅いです。」


 魔物知識もちゃんと覚えたほうがいいのだろうか。せめてその周辺の魔物だけでもおいおい覚えていくべきかもな。


「やはりそうか、まぁそれはよい。インヴェードウルフの習性についてじゃな。

 インヴェードウルフは基本数体の群れで行動するのじゃが、複数の群れが大きく他の区域に侵略することがあるのじゃ。その際についていかない個体がまれにおる。群れ単位のリーダー格を務めておる個体が反乱を起こすらしいの。

 しかし、複数の群れを統率する上位個体がその個を蹴散らす。蹴散らされた個体は横腹に大きな痣を作り、弱り切った状態で縄張りの境目に投げ出されるそうじゃ。

 過去に偵察に長けた冒険者が観測した結果じゃから、おそらく今回も複数の群れが集団で縄張りを広げておるのじゃろう。街付近の森に狼が群れ続けると厄介じゃからの。早めに知れてよかったわい、急ぎ討伐隊を組む必要があるの。」


「くぅん・・・」


 伏せていたベードもどこか悲しげな声を上げる。群れで過ごした仲間を討伐というのは、悲しいのだろうか。

 いや、違うな、仲間に捨てられたことを思い出したのか。ベードからはそんな風に感じる。


「落ち込むな、お前を捨てたやつらを見返してやろうぜ。」


「ばぅ!」


「ぬぅ、気合を入れているところ申し訳ないのじゃが、討伐の際にベード殿がいると、倒すべき魔物と混ざるかもしれぬのじゃ。」


「あ、まぁそうですよね・・・討伐隊とかち合わないようにするか、そもそもいかないかですよね。」


「そうなるの。」


 いい返事をして気合を入れてたベードだが、またしゅんと落ち込んでしまう。


「ベードはどうしたい?かち合ってしまう危険を追ってでも、森に行くか?」


「ぐる・・・」


 悩んでいるようだな、ゆっくりと悩めばいい。決まった時に討伐隊がすべて終わらせてしまっているかもしれないがな。


「ふむ、そこはそなたらで決めるとよい。このあと時間は空いておるかの?実はトレビスがそなたを商業者ギルドに呼んでおった。悪いが早めに顔を見せてやってくれ。」


「この後特に決まった予定もなかったので、行ってみます。」


「うむ、ベード殿にも目が集まるじゃろうが、これだけおとなしいのであれば問題は起こらないじゃろう。では、またの。」


「はい、失礼しますね。」


「ばぅ。」


 伏せていたベードも小さく声を上げて立ち上がる。さて、トレビス商長は僕に何の用があるのかな。



 商業者ギルドに入ると、受け付けは男性のドワーフの人だった。ドワーフ族はやはり体型が小さいな。でも、ベードを見て少し驚いただけで、ちゃんと対応したところを見るに、仕事のできる人だなと思った。

 不思議な扉を開けて案内された先は、すぐにトレビス商長のギルド長室だった。


「おや、来ていただいたんですね。急にお呼びしてしまいすいません。そちらが従魔契約した狼ですね。インヴェードウルフは私は初めて見るのですが、凛々しい姿ですね。」


「ばぅ!」


 おう、見事にお世辞に喜んでいるようだな。尻尾振ってやがる。


「ベードというんです、仲良くしてあげてください。」


「ベード様ですね、よろしくお願いします。そのベード様にも関するお話をさせていただきたく、今日はわざわざお呼びしました。」


 ベードにも関する話?まさかもう討伐隊の話を知っているのだろうか?


「どのような話なんですか?」


「お話の前に、先日、リュクス様は大量にリラを手に入れましたが、まだ大きく消耗していませんか?」


「はい、まだあれからリラは使っていませんね。」


 朝飯は作ったサンドで済ませたし、昨日は使う暇もなかったからなぁ。


「それはよかったです。実はですねリュクス様に土地をお譲りしようと思いまして、ちょうど他の方では触れにくい土地がありまして、東の端の壁沿いの土地ですね。

 さらに、そこに無人露店を設営させていただこうと思います。東門はそこそこ人通りが多いので、売れ行きはかなりのものになるはずです。土地と無人露店を合わせ、破格の40万でお譲りしようと思います。いかがでしょうか?」


「い、いかがでしょうかと言われましても、僕は来訪者なので、いつかはこの土地から離れる予定です。土地を持っても腐らせてしまう可能性があるので・・・」


 あんな広い土地をもらっても、ちょっと困る。


「すでに空白状態が続き、誰も手のつけれない土地なのです。来訪者であるあなたならば問題はないのです。土地があれば、そこにベード様を待機させることもできます。とにかく、この街から出るまでの期間でいいので、露店であなたのサンドイッチを販売するべきです!」


「え?」


 サンドイッチ?昨日食べた肉だけサンドのことか?


「あ、私としたことが、つい本音が・・・こうなってはお伝えいたします。

 肉と醤油とパン、それだけであの味を出せるのです。あなたの料理は商業者としては、販売を行うべきだと思います。」


「う、うーん、無人販売も別にいいんですけど、もし肉を焼いて料理提供するなら、その場で焼いてその場で出すのをやってみたいんですよね。

 さらにいえば、木炭を仕入れることができれば、炭火焼にするととてもいい商売になると思うんですよ。」


 まぁもし露店をするならそんなことをしたいなとは思ってたけど、たぶん無理そうだよね?こんな話を言っておけば、すこしは引き下がるかな?


「す、素晴らしいですね!なるほど、リュクス様の案は素晴らしいものです!木炭はある程度仕入れがあるので、あとは専用の器材があればできそうですね!そちらの準備は少し時間がかかってしまうでしょうが、こちらで用意しましょう!

 あぁ、商業の波が見えますよ!これなら40なんて言わず30万でお譲りします!もちろん今言ったものすべてをお付けします!後、一応ですが農作業の道具もお付けしますね。ノビルなどが栽培できないか試してみてください。」


「え、あ、はい。・・・え?」


「商談成立ですね!では証明をお出しください。」


 あぁ!なんか押されてはいって言っちゃったよ!はぁ、もういいや、なんかどっと疲れた。ベードも伏せて寝ちゃってるし、証明をおとなしく出して30万リラがなくなった。


「はい、成立しました。東壁側の東門から南東扉までの土地はリュクス様の物となりました。基本的には土地に入れるのは許可したものだけとなります。

 区分けを行えば、誰でも入れる場所、自分だけが入れる場所など、区ごとに切り替えることも可能です。詳しくはこちらの土地のパンフレットをお読みください。」


 渡された冊子には土地の整理方法、整備方法と書かれている。宿に帰ったら見ておくか。

 さて、もう買っちゃったけど、気になってたことが一つ。


「あの、そこの土地がほかの人には買えなかった理由ってなんですか?」


「そちらの件ですか、そうですね、お伝えいたします。あそこの土地は元はとある騎士の土地だったのです。魔物から一番近い土地を買うことで、他の農地を守るといっていました。

 もっとも、聖域の石壁があるので、効果はほとんどなく、騎士の方は土地の権利を、私たち商業者ギルドに売り払ったのです。

 ですが、一度は騎士の買った土地です。農業を行うものにとって、その土地をおいそれと買うわけにはいかないのです。

 また土地が広すぎるのも問題で、農地とする以外に使い道が少なく、わざわざ高い金額を払い購入するものはこの街にいませんでした。

 正直なところ、元のあそこの値段は知らないほうがよろしいかと思います。」


「は、はい、わかりました。」


 いったいいくらだったのか、こわいこわい。というかそんな土地を買っちゃってよかったのだろうか?


「あなたは来訪者ですから、元騎士の土地ということも問題ないでしょう。

 さらに従魔がいるので、従魔を飼う土地のために私共が土地を与えたと思う方も多いでしょう。なので、ご心配には及びませんよ。」


「わかりました、ありがとうございます。」


 まぁ確かに気を使ってもらったとは思ってる。ベードを連れていけないような場所に行くとき、街中に待機できるところがあったほうがいい。そういう風に思っておこう。


「あとは、教会との兼ね合いも必要ですが、土地に家を建て、室内に簡易神殿を作れば、そこに祈ることで帰還場所とすることができます。

 そちらはすぐには難しいでしょうが、帰還石をご購入した際はご検討ください。」


「なるほど、了解です。」


 家を帰還場所にできるのはいいな。もっとも家を建てるところからが大変だろうけど。


「では、明日までには無人露店は設置しておきますので、もしよければ料理の展示をお願いします。

 あなたの料理はきっと良い商業の波を立てるでしょう。では、本日はありがとうございました。」


「はい、失礼します。」


 なんかすごい持ち上げられてからの退室。うーん、狩りに行こうと思ってたんだけど、とりあえず宿でサンド作って明日並べてみるか。醤油マヨの豚肉サンドを作るか、おいしいからな。



 宿に戻って一つ気が付く、ベードは部屋に一緒に入ってもいいのかな?元気のいいドワーフの女性の店員に聞いてみたら、汚しすぎなければ全然オッケーとのことで、ありがたい。

 部屋でちょっとソファーに座って休憩。休憩ついでに忘れてたことを一つ片づけよう。


「ベード、お前のステータスみるけど、いいよな?」


「ばぅ。」


 うなずいたので大丈夫なのだろう。


------------

<キャラクター>

名:べード・アルイン

性:雄

種:インヴェードウルフ

<ステータス>

種:Lv18

命:2400/2400

魔:30/30

力:40

技:32

速:488

知:7

秘:3

<スキル>

【牙Lv15】【爪Lv9】【聖族言語Lv2】

<スペシャリティ>

なし

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 うーん、思ってる以上に何とも言えないステータスだな。速さはかなりの物のようだけど、他は僕との差があんまりない。特に魔と知と秘は低いな、しょうがないのだろうけど。おそらく術法なんて使わないだろうからな。

 この牙と爪がメインの攻撃、あとは突進するくらいか。これでもリーダー格を務めていたんだよな?というかこれでFランクだと、Gランクのあの犬はどうだったんだ?結構苦戦したんだけどなぁ、やっぱ数値と実戦は違うか。


「よぅし、まぁわかった、ありがとうな。」


「くぅん。」


 撫でてやれば気持ちよさそうに声を上げる。かわいいじゃないか、気に入った。ちゃんと僕が面倒見てやろうじゃないか。

 特別に豚肉だぞ、使いすぎて結構少なくなったと思ったけど、昨日アーバーギルド長におすそ分けされたからまた増えたからな。

 レイトはノビルだな、これは取ってこないとそろそろまずいか。まぁ明日の売る用のサンドにも少し挟むけど。露店施設の出来上がりを見て、展示ケースに入れたら集めに行くか。


 鼻歌交じりにじゃんじゃん肉と野草を焼いて、白パンにはさんでいく。おすそ分けされたいい豚肉をせっかくなので使ったけど、どのサンドも質3Aといい出来になったと思う。

 兎肉はおすそ分けしてもらわなかったので、自分で取るか露店で買うかするかな。


----------

≪職レベルが上がりました1ポイントを任意のステータスに振り分けてください≫

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 おぉ、今回は職レベル上がるの早かったな。もしかして料理スキルがかなり上がったか?だいぶ作ったからな、途中から数を数えてないや。

 もってる袋型ポーチ一つ分以上は突っ込んだはずだ。あふれ始めたのであふれた5つは僕の昼食だ。さて、どんなふうに上がったかな。


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<ステータス>

種:Lv1

職:Lv3

命:1400/1400

魔:830/830(+1)

力:29

技:79

速:38

知:112

秘:293

<スキル>

【テイムLv15】【個別指示Lv2】【分担指示Lv1】【統制指示Lv1】

【永続待機Lv2】【時空術Lv2】【魔獣言語Lv4】【愛でる手Lv5】

【料理Lv10】【集中Lv12】【火術Lv10】

<スペシャリティ>

【全識別】【六感分析】【テイム上限解放】【暴力的幸運】

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 あれ、なんか、まったくレベルが上がってなかった識別がスペシャリティに、あと六感分析も、なんでだ?

 表示を見てみると、どうやらスペシャリティ化したことで損失しなくなったらしい。なるほど便利だ。

 それにしても前回識別のレベルが上がってなかったのは気になるな。質や危険度も見れるようになってたのに。

 もしかしてスペシャリティ化をすでにしてて表示バグとか?うーん、まぁいいか、考えてもわからん。魔のステータスを+2にして、これでよし。

 さて、光の満つ刻は過ぎたけど、闇の刻までは時間ある、どうするかね。明日行くつもりだったけど、今日ノビル取りに行くか。そのためにもアイテムポーチを一つ買い足しておこう。


今年もよろしくお願いします。

僕が続けられるまでという話にはなってしまいますが、

できうる限り書いていきたいと思います。

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