キャラクタークリエイト
世界観の説明やキャラクタークリエイトな回
目を開けた感覚はあるのに、目の前は真っ暗だった。
もし、僕が盲目になったのなら、こんな感じになるんだろうか。
「よく来たな、【異界の来訪者】まずは俺様からのお話だ、悪いが飛ばせないから観念して聞けよ。」
何とも言えない大雑把な男性の声が響く。
なるほど、いわゆるオープニングなのかな。
でも本当に何も見えない暗闇とは、また意外なオープニングだ。
「まずお前の状況だが、お前はこっちでの体がない。
そんで、念話のように俺の話を聞くことができても、お前からは無理だし、体も動かないから気を付けろよ。」
なるほど、声を出そうと思っても声が出せないのはそのせいか。
肉体すらないようだ。
とてつもなくもどかしい状態だけど、まぁゲームのオープニングだと思えばいいのかな。
「んじゃめんどくさいが、お前に伝える。
お前ら【プレイヤー】は、こっちでは【異界の来訪者】、それか略して【来訪者】って呼ばれてる。
お前らがこっちで【プレイヤー】と言っても、【異界の来訪者】って【住人】には聞こえるから気を付けろよ。
んで、【NPC】ってのが、いわゆる【プレイヤー】じゃない、俺達のようなののことをいうんだっけか。
【NPC】っていうと【住人】って聞こえるから気を付けろよ。」
あれ、オープニングじゃなく注意事項?
そういえば契約書にも、生き方の注意事項なんて項目に、言語についての注意があったような記憶がある。
「んで、一応の主目的はまず最北の王都につくこと、次に四魔帝を倒すことだ、一応四魔帝は俺様の力で何度もよみがえるけどな。」
なるほど、RPG定番な感じの目的でいいね。・・・ん?俺様の力?
「あ、俺様は邪神イギルガブラグな。まだ【未実装】っていうやつで、こうして面倒な開幕の説明役をやってるんだわ。」
え、邪神っていわゆるラスボスとかやるやつだよね。
こんなノリ軽い奴で、しかもオープニングの説明役なの?
「一応全員にこの説明、えーっと、なんていうんだっけ、あぁ【録音】か。それで説明されてるから、
個々に違うってことはねぇはずだ、多分?」
えぇ・・・これ録音なの?
いや、まぁ確かに個々に違う説明されても困るだろうけど。
「おっと、話がずれちまったな。んで、この世界の【魔】をつかさどるのが俺様で、その【魔】の力に対抗するのがお前ら【来訪者】な。
お前ら【聖】族が安全区域とかいう結界を広げて、陣地を広げようとするように、俺たち【魔】族も陣地を広げようとしてるってだけなんだが、この状態を【聖魔戦争】なんて言ってるやつもいるな。」
聖魔戦争とは、またとてつもない単語が出てきたもんだ。
「まぁそうは言うけど、俺様の力で生まれた【魔】族が全部悪い奴ってわけじゃない。
中には【聖】のほうにつく奴もいるし、【聖】族で【魔】につく奴もいる。」
つまりどっちに生まれたから良い、悪いって簡単な話じゃないってことか。
「まぁ、面倒な話がいやなら【魔】族の魔物はどんどん狩ってくれて構わない。
捕まえて育ててみてもいい、俺様の力で増やしているから好きに使ってやってくれ。」
なんだか自分で生み出したはずなのに適当だな。
「俺様は楽しければ何でもいい、戦いをするのも楽しいが、見るのも好物なんだ。
もちろん戦いをすることを俺様は強要しない、好きにやってくれ。そういうのを見て楽しむのが俺様たち神だ。」
なるほど、そりゃほんとう、まさに【神】という立場だ。
「あー、あと何の話あったっけ?イリハアーナの奴に回す前にもう一個話があったはずなんだが。あぁ、王国についてか。【聖】族の中で最も多い【ヒュム】、えっと【人間】って言ったほうがいいか?
その種族の王が作った国がこの世界の真ん中にドンとある。
お前らは最南端の街から、そこ目指すことになるって設定だったっけな。一応、こっちの【エルフ】の里がある大森林が東方向にあって、東には海と技の【ドワーフ】の街がある。っていってもどっちにもこっちの【ヒュム】や、【ビスタ】も住んでいるけどな。
あ、思い出したわ。【ビスタ】はお前らの言う【獣人】な。まぁなんかわからなかったらイリハアーナに聞いてくれ。俺様はあいつのような【分体】つくりは苦手なんだわ。だから【録音】にしてる。
一応この【録音】も聞かせてるから大丈夫だろ。
もういいだろ。この後は聖神イリハアーナから体もらって、俺様たちの世界にご案内だ。
長々と悪かったな、会えるのかはわからねぇが、お前が楽しむのを俺様も楽しむぜ?」
邪神というイギルガブラグの、長々とした説明のオープニングが終わったようだ。
真っ暗だった視界が開ける。
今度は真っ白な世界、美しいほど白いけれど、何もないように感じる。見ているのに、見ていない、そんな感じだ。
「初めまして【来訪者】よ。イギルガブラグとの接触を経て、ようこそわたくしの領域へ。」
澄んだように美しく頭に響く女性の声、おそらく聖神イリハアーナ様の声だろう。
イギルガブラグは様を付けるような感じはしなかったが、この声には聖神イリハアーナ様と言わざるを得ない。
「あなたの状態を早めに安定させるため、【名】と【体】を作ります。
先に【名】を決めましょう。まずは呼び名からです。呼び名にしたい【名】を思い浮かべてください。
なお、そちらの世界でいう【カタカナ】の【文字表記】になります。」
呼び名ということは、その名前で基本的には呼ばれるということか。
カタカナってことは、いつも使ってるやつが使えるかな、【リュクス】で。
「リュクスですね、では縛り名、そちらの世界でいう【苗字】のようなものですね。そちらをお決めください。」
おっと、そういうのも必要になるのか。うーん、自分の名前をちょっといじって【アルイン】でいいか。
「アルインですね。リュクス・アルインでよろしいですか?今後変更はできません。」
結構慎重に聞いてくれるけど、それもそうか。
【DWD】では【サブアカウント】は作れない。そのキャラ以外は作れないのだ。だからこの【リュクス・アルイン】が【DWD】の僕になる。
「よろしいようですね、声が出せないのは不便でしょう。すぐに【体】を作らせていただきます。」
真っ白な空間に、電子的ゆがみが発生する。
ちょっと電脳的、なんて思っていたら僕の体そのものが出てきた。
黒髪短髪、身長165cmのその体は、決して筋肉質ではないけれど、太ってたり、すごく痩せてたりするわけじゃない。
男としては少し小さめだけれど、満足している。
そんな僕の体が、カプセルに入った時のパジャマの姿でたたずむ。
「このままの姿ですと、こちらで起きた問題が、そのままそちらでの支障となって発生する恐れがありますので、顔の形をこちら側に少し近づけます。」
そういわれた後、僕の体の顔の形がほんの少し変わったようだ。
正直どう変わったのかはわからないのだけれど、僕の顔じゃないと思える。
鏡を見たら自分じゃないような気分だ。ちょっと気持ち悪い。
「やはり【来訪者】の方は慣れないのですね。申し訳ありません。
ですがこれで、一応基本が出来上がりましたので、あなたをお入れいたします。」
一瞬意識が飛んだ。再び目を開ければ体の感覚がある。
目の前の鏡に映るのは、どこか違和感のある顔の僕だ。自分とわかるが、自分の顔じゃない感覚だけど、僕だ。
手を上げれば手が動く、足を出せば足が動く。いや、当たり前なんだけれど、それがついさっきまでできなかったし、鏡に映ってるそれを見ているからこそわかるんだ。
「いかがでしょう?声を出すこともできますので確認してください。
そのあとは鏡を見ながらあなたの髪型、髪色、目の色をご自由に変えられます。
イメージすればその色に変わりますが、難しい場合は【設定表示】を出すこともできます。」
「いえ、【設定表示】は大丈夫です。」
目の黒い部分を灰色に、髪色も灰色にして、短髪すぎる髪を少し伸ばす。
「髪は【来訪者】の方は基本何もしなければ変化しません。
変化する【設定】にもできますが、【育毛】【散髪】などの、【スキル】によって変化もできます、いかがいたしますか?」
「とりあえずは、このくらいで固定したいです。」
「はい、わかりました。ではいったんの体が決まったところで、すぐに種族の変更に入ります。
そちらの今の姿は【ヒュム】、【人間】の姿になります。
種族の変更をすると、その姿から変わることがありますのでご注意ください。
何かなりたい種族はありますか?」
なるほど、これはあれだな、基本は【ヒュム】プレイをしてほしいという、運営のテコ入れなんじゃないだろうか。
まずヒュムでの体設定をさせ、そのあとで種族変更というと、体設定で凝った人ならば凝った人ほど、それが変わるのを嫌がるもんだ。
「たしかに、そのような意図もあります。
ですが種族変更した後も【エルフ】は、さほど大きな変化はいたしません。耳の形が変わるくらいでしょうか。」
おっと、心を読まれるんだったな。話せる前からそうだったの忘れていた。
しかし、まぁいい情報が来たからいいか。
「耳は大きくとがったりするのですか?」
「少しとがりますね。ある程度は変更も可能です。ただし種族依存なので、あまりいじりすぎることはできません。
【偽装】のスキルでかなり見た目を変えることができたりしますが、本質の形は変えれません。」
「なるほど、他に選べる種族は?」
「はい、【ヒュム】【エルフ】のほかに【ドワーフ】【ビスタ】、あとは【ランダム】が選べます。」
「ランダム?」
「わたくしの【聖】族は、四種族以外にも、聖獣や天翼なんていう種族などもいるのですが、それらや【魔】族の種族、リザード、スケルトン、魔人などのような種族も含め、どんな種族になるか不明の【ランダム】です、なお一度決定すると変更はできません。
【ランダム】は全くお勧めしません、【来訪者】の方の中に数人、【ランダム】にした方はいましたが、全員が思っていた種族ではないと抗議されました。
残念ながら抗議は受け入れられませんので、そのままになりましたが。」
あー・・・ランダムはないな、絶対ない。
「じゃあ、基本の四種族について、特徴を一応教えてください。」
「おや、珍しいですね、ほとんどの方がすぐに種族を決めて、職業を決めて離れて行ってしまうのに。」
まぁある程度なんとなく、定番通りなのだろうというのはわかる。
でも、まちがっていたらまずいと思うところはある。
「良い心がけですね、では【ヒュム】の特徴から。【ヒュム】は大器晩成の種族です。
あらゆる【ステータス】に恩恵がある反面、すべてを伸ばそうとすると時間がかかります。
ただし、あらゆる道への分岐があるため、もっとも行えることが多い種族です。
伸ばせば一点特化も、万能型もどちらにもなれるのでお勧めですよ。」
短い、けれど特徴がないけれど、特徴的になれるのが基本の【ヒュム】なんだろう。
僕の第一候補だ、まぁよほどじゃなければ【ヒュム】だな。
「つづいて、【エルフ】ですね、【エルフ】は初めから、【術法】に恩恵の高い種族です。
魔法、魔術といえば伝わりますか?・・・大丈夫そうですね。
そういった力や聖術、聖法にも優れた種族です。
【ヒュム】を選ぶよりも【術法】の育ちは早いでしょう。また弓の扱いにも長けていて、そちらでも【ヒュム】より先を行けるでしょう。
ただしあくまで、風、土の属性の場合です。逆に、火と闇の属性はまず覚えられません。
水や光は伸ばすこともできますが、苦労は【ヒュム】とあまり変わらないでしょう。
また、力という点では【ステータス】的にも種族的にも、【ヒュム】のほうが育ちやすいでしょう。
【エルフ】の種族差別や、奴隷、食的問題はありませんが、【エルフ】の里の中枢は【エルフ主義】が残っているので、少し問題が発生しています。
【来訪者】の【エルフ】の方が、【エルフ主義】問題に巻き込まれないとも限りません。
そういった点には【エルフ】以外の種族でもご注意していただきたいですね。
見た目的には耳以外は【ヒュム】よりですね。」
あー、【エルフ主義】か、なんだか厄介そうな問題だな。
まぁ、【エルフ】になるつもりはあんまないけど。
「続いて、【ドワーフ】ですね。どうやらそちらでは、よく【エルフ】と【ドワーフ】は仲が悪いとされているようですが、こちらでも少なからずそういった面があります。
顕著なのは先ほどの【エルフ主義】の方々ですね。
【ドワーフ】の【住人】は横のつながりの固い方が多いです。
【来訪者】の【ドワーフ】の方でも好意的に受け入れてくれるでしょう。
彼らの特徴は何と言ってもその技術です。
海や湖に面した地域で【ドワーフ】の開発した船が、【ヒュム】を運ぶのに役立っています。
ただし、【ドワーフ】はどれだけ訓練しても泳ぐことができません。もちろん【来訪者】の方でもです。
そのため船は作れど水に出ずな方が多いです、そのあたりをご了承ください。
【ドワーフ】の種族になると、身長が最大でも140㎝ほどになります。最大でもです。
低身長族であるため、種族変更後、身長が縮みます。
身長は変更できませんのでご了承ください。
【ステータス】では速さが異様に低く、また【術法】に関しても発達しにくいです。発達しても火と土の属性ですかね。
他の属性を持つ【ドワーフ】の【住人】はいませんので、魔法を目指したり、素早く動くことを目指すならばおすすめはできません。
また、力強さや頑丈さを伸ばすか、器用さを伸ばすかで【ドワーフ】は変わります。
【来訪者】の方ならばどちらも伸ばせますが、【住人】の方はどちらかに傾いてます。
受け入れられない可能性もありますので、ご注意ください。」
どういった面で受け入れられないかもしれないのかは、きっとここで説明してないから教えてはくれないのだろう。
もしくは、神でもわからないか・・・
まぁ、【ドワーフ】もなしだな。
「最後は【ビスタ】、あなたたちの言う【獣人】ですね、肉体が全体的に獣的になり、二足歩行の獣という状態になります。
【ビスタ】を選ばれますと、かなり肉体的な違和感があるでしょう。
【ビスタ】の中にも細かく種族がいますが、彼らにとってはみな【ビスタ】です、
【来訪者】の方はここにご注意ください。
兎のようでも、狼のようでも、熊のようでも、【ビスタ】と呼びます。
ただし、その見た目と同じように、兎の【ビスタ】ならば跳躍力があり、狼の【ビスタ】ならば噛みつく能力が強く、熊の【ビスタ】ならばその爪の切り裂きは強力です。どうやらあなたは何となくお分かりのようですね。
【ビスタ】の種族は【ヒュム】とは手が異なります。
一応、種族によっては武器が持てなくもないのですが、細かな作業はできなくなるでしょう。
基本はその肉体そのもので戦うことになります、肉弾戦向きですね。ただし、兎などは体重が軽く、致命傷を負いやすかったりします。
そして【ビスタ】を選んでも、どの【ビスタ】になるかは不明です。さらに、知能が低くなるわけではないのですが、【術法】には全く向きません。
一応、【術法】を覚える場合もありますが、どれか一つの属性がいいところです。それも【住人】では先天的にその属性に恩恵がある場合なので。
もし行うのであれば、【ビスタ】で、【ウィザード】を選ぶしかないでしょう。
戦闘性の低い鼠の【ビスタ】になってしまった場合は、それも一つの道かもしれません。
そういう意味では【ビスタ】もランダム性のある種族かもしれませんね。」
うーん、まったく僕のやりたい感じに合わない。
やっぱり自由性の高い【ヒュム】しかないな。
他でもいいかもだけど、いろいろやって、いろいろ伸ばしたいんだ。
「どうやら初めに決めていた通りになったようですね。」
「いいえ、為になりました。他の種族を知っておくのも重要なので。」
「本当に良い心がけです。では【ヒュム】で決定し、職業の選択に移ります。」
おー、ここはじっくり悩みどころだ。
「基本職5つ、それと【ランダム】があります。基本職は【ウォーリアー】【ウィザード】【ハンター】【クラフター】【ファーマー】があります。」
おっと、ここでも【ランダム】があるのか、でもとりあえずは・・・
「では、職業の特徴を教えてください。」
「ふふ、あなたなら聞いてくると思いました。説明しがいがありますね。さっそく【ウォーリアー】から説明いたします。いわゆる【戦士】ですね。
【戦士】といっても騎士や傭兵、護衛など、初めにつく方がもっとも多い職業です。
特に近接戦闘に長けた職であり、あらゆる武器を扱えるでしょう。もちろん素手もですね。
【ウィザード】はいわゆる【魔法使い】や【癒し手】ですね。【術法】に長けた職業です。
よくイメージされる炎の球を出して攻撃、というものはもちろん。他にも、光の力を癒しに変えて、肉体と疲労の再生を魔力で促す癒しの力や、剣に魔法の文様を描き、雷を纏う剣に作り替えるのも、この職からの派生と言えます。
さらに、薬草、水、ガラス瓶を用意し、【錬成】の【術法】でポーションを作りだすこともできます。
【ハンター】は主に弓術を扱い、獲物の発見、観察、調査、分析、解体などに長けています。
また、ダンジョンでの罠の発見、解除はもちろん、罠を設置し、獲物をおびき寄せる技術など、狩りと探索の技術を身に着けたい場合は、こちらですね。
【クラフター】は生産職です。鍛冶、裁縫、細工、料理、調合などなど、冒険にも日常生活にも重宝します。ちなみに、5種の職の中では【クラフター】を初めにするのがお勧めです。もちろん、初めから戦いたいのであれば、先ほどの3職から選んだほうがいいですけどね。
最後は【ファーマー】ですね。こちらも生産職ですが、農業や畜産業のほうですね。食に直結する職業で、とてもやりがいのある職なのですが、【来訪者】の方で、この職業を選んだ方は、今のところとても少ないです。意外と農具も武器になるので、強いのですけどね。
基本職については以上ですね。なにかご質問はありますか?」
うーん、悩む、とても悩む、どの基本職もやりたいこと満載。
どうしよう、選べないぜ・・・
「どうやら質問はないようですが、選べないようですね。
大丈夫です。例えばですが初めに【ウォーリアー】を選んでも、魔法が使えないわけではないのです。
もちろん【ウィザード】よりも難しいですが、剣を使いながら魔法も使い、【魔剣士】となった例もあります。」
あれ、魔剣士はなんか英語っぽい感じじゃないんだな。
「ふふ、いわゆる【上位職】となると、自由性が増すのです、もう何でもありですよ。
【剣豪】もいますし、【剣魔士】という方もいます。【魔剣士】と何が違うんでしょうね。
たとえば、一つの魔法、炎を極めると【炎術士】となったりします。では、職業は何なのか、意味はあるのか、という疑問に満ち溢れてますね。」
おぉ、やりたいようにやれるってのはいいんだけど、もうそりゃもう疑問だよね。
やりたいようにやって、やったのが職業になるのがいいのかって。
「職業はその方がどういう方なのかを表す【称号】の一つなのです。
【職業称号】といいましょうか、職業は一つしかなれませんが、その恩恵は偉大です。
その職業にあったものが育ちやすくなり、その職業に合った力が強くなります。
【剣士】なら剣による攻撃力が上がったり、【炎使い】なら炎の威力が増します。
【囮盾】なんて職業がありますが、囮と盾の役割として、【ウォーリアー】の時よりもさらに向上するでしょう。
そういった面から、おそらく【上位職】が決まった時には、その方向にどんどん引っ張られ、【剣士】が【剣豪】に、【炎使い】が【炎術士】に、そういう形でさらに上位になっていくでしょう。それが職業なのです。」
なるほど。育ちやすくなって、しかも強くなるなら、そりゃ引っ張られるよね。
「さらに言えば、【剣士】になる前に槍と剣の両方を使っていた場合、いつの間にか槍を使いづらくなるのです。
不思議ですね。使えないわけではないのですけれど、使いづらいから使いたくない状態へ。そして、いつの間にか使えない状態になっていく方も多いのです。」
おぉ、もうそりゃ【剣豪】ルートまっしぐらかな。
うーん、それじゃあ上位職になるまでに、いろいろやっておくほうがいいってことか。
そうなるとますます、何を選ぶべきか悩んでしまう。
「悩んでいらっしゃいますね。ではいっそ、【ランダム】にしてみますか?」
「う、気にはなっていたんですよ、説明お願いします。」
「はい、では【ランダム】ですね、こちらは基本職5職ではない、下位職といわれる職が選ばれます、すべて【カタカナ】な職業ですよ。
基本職と同じように、あとから進路変更もできますが、大きなメリットがあるんです。
基本職を選ぶと職業適性スキルを覚えるんですが、そちらも【ランダム】になるんです。」
職業適性スキルか、おそらく先ほどの説明の剣だの弓だの魔法だののことかな。
「その通りです、イメージが早くて助かります。まずスキルについて説明しましょうか。スキルは基本常時発動しています。
【剣術】は剣を持っていないと使えませんが、剣を持っているときは、常時発動します。
識別系スキルも、常時発動していますが、意識して【見る】と情報を読み取ります。
発動していても、意識しないと結果が出ないのは、剣術も似ています。
剣術を持っていれば剣の腕が上がりますが、さらに意識して使うことで剣の技として昇華し、スラッシュアップ、ブラッドスタブというような、スキルアーツという個々に得る特別なものになるのです。それがスキルです。
スキルにはそういったスキルアーツと、スキルレベルが存在し、鍛えれば鍛えるほどより強力になり、慣れれば常時発動ではなく任意発動にもできます。
任意発動にすれば、緩急のついた戦いになり、相手を翻弄できるでしょう。」
なるほど。スキルもそれだけで完成というわけじゃなく、そこから鍛えて自分のものにしなくちゃいけないってことか。
「それを踏まえたうえで、職業適性スキルについて説明しますね。
職業適性スキルはわたくしから差し上げるスキルの一つです。
本来スキルは独自に特訓して得るものですが、【住人】と違って【来訪者】の方は、小さいころからコツコツ学ぶ期間というのがありません。
なので、あなたの年齢ほどの基本技能はもちろん、そちらでは学べないような技能をスキルとしてお渡ししてます。
あれ、そういえば年齢のお話ししましたっけ?」
「いえ、していないですね。」
おっと、話脱線しちゃったけど大丈夫か?
「先ほど顔を変えたときに、こちらでの18歳程度の顔に変化しています。
おそらく自意識では違和感程度に感じるでしょうが、冒険者登録などをするときに、年齢の欄が18歳となりますのでご了承ください、なおこちらの成人は16歳です。」
おおう、30近いおっさんである僕が18歳だと、そりゃ違和感バリバリだわ。
30近いのに僕を使うなって?はっはっは、どう自分を呼ぼうといいじゃないか。
まぁ聞いといてよかった、あたふたしてたかも。
「年齢に関しても【ヒュム】の場合の年齢なので、あまり気にすることもないのですがね。
さて、お話をそらしてしまい申し訳ありません。
その18歳ならばわかりそうな基本技能、まず会話や読み書きは、こちらとそちらでの言語は同じなので、問題なく行うことができます。
ただし、一部古代言語や異界の言語などは、【解読】のスキルが必要です。
もう一つの基本技能として、通貨認識です。
通貨に紙幣はありませんが、魔術移転による受け渡しに書面を使うことはあります。
一応ですが貨幣が存在し、石貨、銅貨、銅板、銀貨、銀板、金貨、金板、白銀貨、白金貨があります。石貨1枚で1リラ、または1Rです。銅貨は10Rですね。」
同じようにリラといってるはずなのに、【R】と認識できるのも神の力ゆえかな。
わかりやすくていいけどね。
「そういった基礎技能はスキルとは違うので、授けることができます。
それ以外の例えば【解体】は、あなたがそちらの世界で、動物の【解体】をある程度行っている環境だと、スキル習得なしに発現します。
1,2回ではなく、常用していることが重要ですね。」
なるほど、それじゃあ僕には解体は発現しないだろうな。
「そういった必要スキルを習得するのに選択式なのが基本職の5つです。
ただし、職を確定した時点で、発現可能性のあるスキルは自動発現します。
【剣道】というものを常用している方なら、自動的に【剣術】のスキル発現ですね。
そういった自動発現とは別に、最低でも5つほどはスキルを選択していただきます。」
「なんだか、人によってスキル取得数が違う、みたいな言い方ですね。」
「はい、そのとおりです。才能や努力の可能性というのは、ある程度分かってしまうのです。
与えるスキルは特殊なものになるので、かなり消滅しにくいものになります。
それをいいことに、お渡ししたスキルを隅に置き、他のことを先に習得しようとする方が後を絶たない現状です。
悪くはない方法なのですが、あからさまな意思を持つ方には、申し訳ないのですが5つのみにしています。
他を努力し、保険とするためのスキルなら最低限でいいでしょう。
逆に明確な意思を持って、一つ一つのスキルを選ぶ方には、10ほど差し上げたこともあります。
その方の話をしても・・・大丈夫のようですね。
今最前線にいる、【攻略組】の方で、剣に雷を纏わせて戦いたいという、明確な目的があったので、
【剣術】はもちろん、【雷術】【付与術】【魔力操作】のような、雷を纏わせやすい力をお渡ししました。
さらに【看破】【生物識別】【武具識別】の識別系。【解体】【地形調査】【生命探知】の便利系スキル。それらを私の判断で付けさせていただきました。
わたくしとしても渡しすぎとは思います。
でも、はじめの彼は【剣術】と【雷術】だけでいいなんていうのですから、ついうっかり、そのまっすぐな目にやられてしまいまして。わたくしからそんな風に差し上げてしまうこともあるのです。」
なるほど、スキルの数は神の機嫌次第ってわけか。
こりゃ機嫌とれなかった【プレイヤー】は、さぞ苦労するだろうね。
「さて、わたくしがお話したいのは【ランダム】で得られるスキルです。【ランダム】の職を選んだ方は、実は今のところいらっしゃいません。」
「えっ。」
意外だ、こういうのでは全部ランダム!なんて人もいるだろうに。
「はい、いらっしゃいました。全部【ランダム】で、とおっしゃった方が何名か。
ですが例を一人。種族【ランダム】でスライム、職業は【マウント】、魔物専用職ですね。何かを乗せて運ぶ職業です。」
あれ、いるじゃん、全部ランダム。しかも結構よさそう?
「一見、いい組み合わせのように感じるかもしれません。ただしスライム種族は、習得しなければ、
【聞く】【話す】などの対話ができません。
説明も聞かずに【ランダム】で早くといわれたので、5つのスキルしか渡しておりません。
一応、マウントとしての最低スキル【乗せる】は出たようですが、初期体格が最低値となるスキル【ミニマム】で、スライムの最小体格を入手して、大きくなるのに必要な【吸収合体】は覚えず、逆に【分離脱】を入手する。もうこの時点で、マウントとしてはかなり不合格です。
【分離脱】は逃げるためのスキル、スライムとして逃げ続けるのなら、そこまで悪くない構成だったんですけれどね。
マウントの【存在感】であらゆる相手に存在感を示し、【不可避】のスキルで無意識に追い込まれる。あとは一度他の魔物につかまって消滅。それから彼は来ませんでしたよ。」
おぉぅ、それはやりたくなくなるな。
この【DWD】はキャラクターが死亡すると、とんでもないデスペナルティを受ける。
現実の世界で約一週間、【DWD】で50日のログイン制限。復帰後は初期状態と同じになる。
スライム開始がどんな装備かは知らないけれど、まぁろくでもないだろう。
「それが種族と職業だけはよかった方です。他の方は組み合わせ最悪で、始める前からいなくなりました。なのでもう残っている方はいらっしゃいません。」
何もしないで消えたのも、気になるといえば気になるな。
「トレントでファイアユーザーの方ですか?」
藪蛇のようだ、やめておこう。
「はい。ですがあくまでも皆さん種族も職業も【ランダム】で、というだけ言って、わたくしの説明も聞かなかった方たちです。
聞かないならともかく、なんというか、彼らにはあなたのような、この世界への欲求というのが少なく感じたのです。」
開幕2000人に選ばれた枠、いわゆるどんなこともやります!という人が集まったらしい。
世界初フルダイブVRだ、問題が起こらないとは限らない。
だから、すべてランダムでうまくいかないからやめたプレイヤーだったのだろう。もったいない、本当にもったいない。
僕はそんなことはしない、現実だって大切だ、ちゃんと生きていかなきゃいけない。
それはこの【DWD】も同じだとおもってる。
「本当にいい目をしています、絶対後悔させません。【ランダム】やってみませんか?
万が一、結果に満足いかなければ、特別に基本職への【転職】をスキル付与しますので、あなたならば10のスキル付与でも問題ありません。ここまでお話したのですから。」
「なんか推されてますね、【ランダム】職業っていいものなんですか?」
「えぇ、【住人】の方は【ランダム】を知りませんし、わたくしが教えることもできません。
教えたとしても、【ランダム】は【来訪者】に与えられた特別なものなので、【住人】では受けることができないでしょう。
残念ながら【来訪者】で残っているのは、もうあなただけになりました。他の方はすべて洗礼を終えて街に出たようです。」
おっと、そりゃそうか。キャラクリエイトでここまで話し込んでるのは、僕くらいだろう。
「説明とはいえ、長々と時間を取らせてしまいました。ですがどうしても、神であるわたくしとしては、可能性の一つを見てみたいのです。」
神として、職業【ランダム】の可能性を見てみたいってことか。
種族の【ランダム】は全部ランダムでっていう連中や、へんてこ種族希望がいたんだろうし。
今回の5000人の大体は、攻略情報や掲示板での情報で構成決定済みだったんだろう。
僕はちょっとちがう、まだ道を決めてる途中だ。
なら、やり直し券もくれるみたいだし、【ランダム】やってみるのも悪くない。
「じゃあ職業は【ランダム】で。」
「はい、では授けます。」
とんでもなく長くなったけど、まだ続きます
※変更:鑑定→識別 リア→リラ
※読みづらい気がするので、少しでもましになるように改行入れました
まだ読みづらい気がする・・・