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願い事

「おっと、従魔たちのことが気になるのはわかるが、まだもどせねぇよ。せっかく俺様の分体に勝ったんだ。お前の願いをかなえてやらないとな。」


「あ、そういえばそんなこともありましたね。願い・・・願いねぇ。」


こうなったらいいなというのがないわけじゃない。それはこの世界が異世界だと分かったからこそ望むことだ。でもそれは難しいことなのは容易にわかる。


「なんだ?言いたくないのか?でも考えてること丸わかりだぜ?お前、この世界に残り続けたいのか?」


「えっ・・・はい、そうですね、しいて望みがあるとすれば、元の世界よりも僕はこっちの世界にい続けたいかなって。もうすぐ気軽にはこれなくなってしまいますし。」


「なるほどな。できなくはないが、ほんとにいいのか?元の世界には戻れなくなるぞ。」


「え!?できちゃうんですか?」


「俺様だけでは難しいけど、イリハアーナの力も借りればできる。もちろんちょっと相談は必要だけどな。それが望みだというんなら呼んじまうぞ?いいんだな?」


「・・・はい、おねがいします。」


「よしわかった。んじゃ呼んでくるから少し待ってろ。」


そういうと大きな上半身だけのイギルガブラグは床の闇にへと消えていった。イリハアーナ様を呼びに行ってくれたんだろう。

ほんとにこの世界にい続けられるなら、僕にとって元の世界はつまらないものだったわけじゃないけど、こっちの方が大切なものが多いんだ。

そんなことをちょっと考えてるうちにまたイギルガブラグの上半身がにょきっと闇の床から生えてきた。そしてその前にはいつもは像で目にする姿、この世界に一番初めに来たときにも見たイリハアーナ様の姿があった。


「急に連れてこられたかと思ったら、来訪者の方の話だったのですね。おや、あなたは・・・」


「こいつなら変革起こせそうだろ?それに俺様の分体を倒せるほどの実力もある。もう予定を繰り上げて始めちまおうゼ?だいぶ数も減ったことだしよ。」


「なるほど。この方ならこの世界に変革を起こせる可能性が高いですね。実際今南端の街はあなたのおかげでかなり魔物に対する敵意が薄れました。従魔とすればコミュニケーションが取れることは王都でもわかっているはずなのですが、王都の従魔もちの連中はどうも奴隷感覚で困ります・・・」


「そうなんだよな、ただの乗り物くらいにしか考えてねぇやつらばっかで困る。こいつならもっと対等な関係を築くための存在になりそうだろ?」


「そうですね、予定を早めることにはなりますが、この方しか残らないとしても始めてしまってもいいでしょう。」


「え、えっと、何の話なんでしょうか?」


まったく何の予定の内容がわからないけど、僕がきっかけで早まるというのはわかった。でも何の予定の話なのかそろそろ混ぜてほしい。


「おっとすまねぇ。そもそもお前たちの世界のゆりかごに接続中の連中をそのうちこっちに完全に呼び込むつもりだったんだよ。」


「もちろん本人の意思をくみ、残るか残らないかの選択肢を与えるつもりです。あなたが残るというなら、完全転移の作業を始めてしまってもいいでしょう。」


「あ、あの、元の世界の体とかって、どうなるんです?」


「ん?そりゃなくなるぞ。」


「なくなる!?!?」


「イギルガブラグ、言い方が悪いですよ。元の世界の肉体をこの世界の肉体に同化させ、完全に意識をこちらの世界に呼び込むのです。」


いや、イリハアーナ様も言い方柔らかくしてるけど、やっぱり元の世界の体無くなるんじゃん!・・・まぁでも僕がいなくなって心配する可能性があるのは会社の人間くらいか。


「一度戻って連絡したりはいいんですよね?」


「あぁ、すぐにできるわけじゃねぇからな。準備に1日かかる。そしたらゆりかごで呼び込んだ来訪者の前に残るか残らないかの選択が出るから、後は残るを押してくれればいい。」


「結構早いんですね。わかりました。それじゃあ今日中にログアウトしていろいろ連絡は入れておくことにします。」


「選択が決まっているのであれば問題ありませんが、選択できる時間は限られています。おそらくゆりかごの騒ぎが始まるかと思うのであなたたちの世界で1日の猶予もないかとおもいます。」


あ、そりゃそうか、失踪騒ぎとか始まったらゆりかごは全部停止なのかな?そう思うと他のプレイヤー、というか来訪者は困るんじゃないかな・・・


「そのあたりは大丈夫です。わたくしから[アナウンス]を入れておきます。もちろん元の世界でゆりかごを作った製作会社の方にも・・・」


「そういえばゆりかごを作らせたとかっていってましたっけ。」


「あぁ、一応同意のうえでだぞ?こっちの世界に呼び込む話もしてるんだけどな。そいつらもかなりの金が入ってきたはずだからうぃんうぃんだろ。」


「失踪騒ぎになるとおそらく責め立てられるでしょう。こちらからも対策は入れてありますが、最終的にどうするかは彼ら次第ですから。」


な、なんか生々しい話で怖くなってきたけど、もともとそうする予定だったというのを聞いたうえでの一万台配布だったってことか。っていうかそれだと、増産予定とかも嘘だった可能性も高いなこりゃ。

いや、それともほんとに新しいゲームシステムとだけしか思ってなくって失踪騒ぎになるとかはおとぎ話感覚だったり?ちょっとありそうで怖い。


「まぁそんなわけで俺様もちょっと面倒な作業しなきゃいけねぇし、そろそろ戻らせるぞ?」


「イギルガブラグに付き合っていただきありがとうございました。彼も今回でかなり戦闘意欲を満足できたようなので、しばらくは大丈夫でしょう。」


「おいおい、なんだよその言い方は。まぁ実際しばらくは自分が戦わなくてもいいかな。それよりお前の今後をもっと見てみたいしな。」


「あははは・・・あ、そういえば最後に一つだけ。もしかして完全転移後は生き返るシステムもなくなるんですかね?」


「残念ながらそうなりますね。あれは仮の肉体を再生し、世界に戻った意識をまた呼び込むものですからゆりかご無しではできません。」


あぁやっぱりそうなのか。まぁ今まで一度も使うことはなかったけど、ないと思うとちょっと不安にもなる。まぁそれでも僕がどっちを選ぶかはもう決まってることだけどね。


「そんじゃあ戻すぜ?戻ったらおそらく朝だろうから時間自体はほぼ経ってないも同然だな。普通に起床したと思ってもいい。俺と戦った話をしてもいい。あの兎は話さなくても気付くだろうがな。」


「なるほど、わかりました。多分話すのはレイトだけにです。」


「それでは、あなたに世界の加護がありますように。」


イギルガブラグが指をパチンと慣らすと、僕の意識がふっと一瞬切れる。そして再び目を開くと、自宅のベッドの上だった。


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